弁護士から裁判官へ

2008年5月2日

法曹一元とは,裁判官の供給源を弁護士に一元化した制度をいう。日本の制度は,キャリアシステムで,司法研修所の卒業時において弁護士,裁判官,検察官のそれぞれの道を選択することになっている。裁判官になっても,最初の10年間は判事補として完全な一人前の裁判官としては扱われない(もっとも,こんな悠長なことは言っておられないので,5年を経過すれば,「特例」がついて一人前として扱われることになっている)。

キャリアシステムは裁判所という閉鎖された社会で育成された裁判官によって,裁判がなされることになる。こうした弊害を打ち破ろうと司法改革運動のなかで生まれたのが,より市民に近いところで仕事をしている弁護士から裁判官に任官するシステムである。この人数を増加させていけば,法曹一元を実質的に実現することになる。しかし,その道を選択するにはなかなか決断のいることである。任官するにあたっては,その意味からある程度の弁護士としての実績を積んだ人でなければならない。事務所をたたんで任官していかなければならない。事件の整理も必要である。任期を終えて弁護士に復帰するようになっても,すぐに弁護士としての仕事は確保されない。こうした,事情から任官を希望する奇特な人がなかなかいないのである。もっと任官しやすいようにと,非常勤裁判官の制度もできている。

こうした勇気ある決断をして頂ける人がでてくると,その人の所属する弁護士会のある高裁管内に設置された民間の方もメンバーになっている諮問委員会で審査して,最高裁に意見を付して報告することになっている。私は,今年度からこの委員会の委員を担当している。今日は,急遽,この委員会が招集されて,広島にでかけていった。審査すべき弁護士任官の希望者がいたのである。裁判所にさわやかな風をそよがす存在になっていただけそうな,期待できる人柄の方のように感じられた。広島まで往復とものぞみを利用したが,片道40分とかからない。西の方向に出向くことは少ないが,広島は意外と近いところにあることに気づかされた。

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