ウィンブルドン

2008年6月28日

交差点でM弁護士に出会ったら「最近は夜がなかなか眠れません」という話であった。よく聞くと,真夜中にに中継されているテニスのウィンブルドン大会のライブをついつい見てしまうということであった。私は,テニスをしないので,特に興味はなく,ニュース報道などを通じて注目を浴びている錦織選手のことぐらいしか知らない。しかし,いつもこの「ウインブルドン」という言葉の響きは,明るいさわやかな日差しと緑の町並み,そして緑色で描かれたウインブルドンのロゴが思い浮び,しかもそれが6月23日であったと認識させられるのである。

日本の貿易障壁が高いと指摘され,アメリカから市場開放を強く求められていたころであった。このとき,消費者の視点から,日弁連として独禁法の運用の実態に関してヨーロッパ調査に出かけた。このときの調査の結果を報告書にまとめ,日弁連として独禁法の課徴金制度について提言をし,その2年後頃に法改正がなされたので,その時期は調べれば特定できる。季節は6月であった。6月23日という日と同時に思い出されるのだから,6月23日にはロンドンにいたに違いないと思っている。ロンドンに着くと,ウインブルドンのロゴマークのついた旗が空港内に,町並みにとあちこちに掲げられていた。テロのあったあとであったろうか,空港には銃を持った警察官が大型の犬を連れてパトロールをしていた異様な風景もあった。

日本の梅雨のうっとうしさはなかった。さわやかな風が流れていた。日は長かった。輝く緑に覆われていた。花もあちこちに咲いていた。そんな記憶がある。というわけで,「ウインブルドン」という言葉の響きはいつもこの光景を甦らせてくれるのである。翻ってみれば,独禁法が企業の公正な競争を確保するという企業のための法律という見方から,実は公正な競争を確保し,不公正な取引方法を禁止して適正な価格を形成するための消費者利益のための法律であることを意識させる転換点ではなかったかと思う。2週間前の大学の講義で,独禁法をこうした観点から捉えて「消費者法」として講義をした。この調査に行ったときは,ヨーロッパでは既に独禁法の本質は消費者利益のためにあると明確に意識されて運用されていた。

この調査は,さまざまな思い出を残した。この調査の責任者の発案で,どうせ出かけるのなら最高の旅にしようと飛行機は往復ビジネスクラスにし,ロンドン、パリ、ブラッセル、ベルリンと最高級の名門ホテルに宿泊し,由緒あるレストランで最高のものを食べることにしたのである。食事は常にネクタイ着用であった。日弁連の調査ではあるが,経費はすべて個人持ちである。当時の私には極めて荷の重いものではあった(この費用捻出にはエピソードも残った)。しかし,一生もう泊まることのないであろうホテルに泊まった思い出は残った。そして,その責任者は,後に弁護士登録を取り消し,自殺するという哀しい出来事へと続いた。

「ウインブルドン」の言葉の響きは,ヨーロッパの一番良い時期の,華やかな思い出を呼び起こすのである。

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