消費者庁構想は20年前から

2008年7月18日

今日の大学の講義は,製造物責任法に関してであった。1962年,ケネディ教書による消費者の権利宣言,ラルフネーダーによる「車はどんなスピードで走っても危険」という欠陥車問題の提起は,製造物責任を過失を要件としない欠陥という事実だけを責任要件とする「厳格責任」の考え方へと発展していった。そんな歴史から話を始めた。

1989年秋,日弁連の人権大会が松江で開催された。シンポジゥムのテーマの一つが消費者の権利に関してであった。パネリストの一人はアメリカの弁護士ラルフネーダー氏であった。このとき提言したのが直面する問題として製造物責任法,情報公開法の制定であった。そして,検討すべき課題として消費者庁の設置を提言した。そのとき,既に現在検討されている消費者庁の組織,権限,役割などの具体的構想を発表した。このときの成果は,後に「消費者に武器を」という冊子にまとめ,私もこの本の編集に加わった。韓国には既に消費者保護院という役所があった。日本でもその後,なんどか消費者庁構想が話題にのぼったことはあったが,具体的に立法に向けて審理がなされることはなかった。ここにきて,福田首相自ら,消費者庁設置を公言し,具体的に法案作成の段階までに至っている。我々が最初に消費者庁構想を提言してから20年近くになろうとしている。先見性があったというべきか,実現に至るなんらの力がなかった結果であるというべきか,,,。どちらもあたっているのだろう。

こうして,きょうの講義は,製造物責任法を消費者の権利確立の観点から触れた。製造物責任法が施行されて13年目である。私は,まだこの法律を使って裁判をしたことがない。全国的にもまだ100件程度の裁判しかない。ガス湯沸かし器,ファンヒーター,シュレッダー等による家庭での事故も多い。もっと使い勝手の良い法律に改正の必要がありそうである。

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