朝日新聞社説「司法改革の原点に戻れ」

2008年7月23日

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法曹人口増加スローダウンを表明した日弁連の意見に対して,すかさず朝日新聞が反応した。しかし、この批判の基本的な論理は同意できるが,今起きている弊害をどのように克服するのか,展望がみえてこない。現に,新規登録弁護士の就職難が存在していること,法科大学院を卒業して司法試験に合格した人の学力不足の指摘など,その原因と展望について現実をみていない。それでも,就職できない弁護士をつくってはならないと日弁連はプロジェクトが動いている。私も,このことに貢献できるよう新しい弁護士の雇用を考えるようになった。

確かに,世界的にみると3000人ベースで増加していっても,日本の弁護士の数はかなり少ない。過疎の地域にまで弁護士が十分にいるかと言えば十分ではない。多くの人が経済的事由で弁護士を依頼できていないという現実もある。被疑者国選が始まれば,今の体制で問題なくやりきれるかどうかについては未だその目処が確実ではない。しかし,このことは,国の司法予算にかける金額が世界的にみて著しく少ない現実があるからだ。法律扶助予算にかける費用は、イギリスなどに比べると桁が違うのである。法テラスから受ける民事事件,国選刑事事件は,まさにボランティアそのものである。これで,国選を担当する弁護士が少ないといっても,ボランティアで司法を支えろというのと同じである。法科大学院の制度趣旨は立派であったが,各大学が法科大学院を次々と設立したことが問題を複雑化させている。さらに,弁護士の仕事は,このように高い学識と倫理性に裏付けられて資格が付与されるが,一方において,圧倒的な政治的圧力で司法書士,社会保険労務士,行政書士らに対して同様の資格,権限を与え、さらに拡大させようとしている。

もともと,司法の世界では政治の世界とは一線を画そうとする意識がある。政治的に解決するのではなく,司法におけるその論理性で解決すべきであるという精神である。しかし,現実には制度は立法によって作られる。この立法の世界と無縁であってはならない。死刑廃止問題、捜査の可視化などまさに政治問題化してきている。他の業界では,政治連盟が高い加入率をもって活動しているが、弁護士会は,その加入率は低い。当然,活動は特定の政党を支持することにはならない。よりよい司法にしていくためにどうするべきなのか,論理でもって一人一人の国会議員の賛同をえる活動することである。あまりにもこのようなロビー活動が不足しているとして,きょう日弁連政治連盟岡山支部の立ち上げがあった。本部から本林会長,当会の会員資格での参議院議長江田五月さんの出席などを得て、結成された。司法の現実とこれからの司法のあり方を政治の場で理解を得ながら,国民から信頼される司法を目指して活動することになる。金と票は出さないが口は出す活動に加えて、人を出すことを見据えているようである。

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