4件の法廷事件,2件の新規相談,幾つかの事件処理と原稿書き,そして弁護士会の委員会であった。ほとんど机に座って記録を読む作業はできなかった。
その事件処理のなかで2件の労働事件があった。1件は,労働審判事件を経て,1審判決そして控訴審が結審して再度の和解期日の設定がなされていた件であった。裁判官からは,予想される結論とは大きく異なる当方にかなり有利な条件での和解勧告がなされた。私は,本人にその和解に応じることが金銭的には絶対有利であると,和解を成立させることを進言した。しかし,決して責められるべきことをしたとは思っていないので,会社を退職することになる和解は絶対受け入れられないとこの和解を拒否した。次回は判決である。予想は当方の請求を棄却した1審判決が維持され,金銭請求の部分が若干認められる程度であると考えている。依頼者は,それでも自分に非がないことを判決で明確にしたいと主張している。経済的にはもったいない話であるが,裁判に求めているのは,金銭よりも自らの誇りを回復することであった。
もう1件の労働事件についても同じようなことがあった。1審段階であるが,実質的審理は終結している。裁判官も,当方に有利な心証を抱いていることは明言している。パワーハラスメントのよる被害回復の事件である。予想される慰謝料の金額を大きく上回る和解金の支払いが相手方より提示されている。しかし,それでも当方は納得できない。パワーハラスメントがどのようなものであり,そのことが決して許されるものではなく,法的な賠償責任を問われる結果となることを,会社にわからせたいというのである。この案件も、依頼者が望んでいるのは、金銭的利益よりも名誉である場合である。労働者は単に金銭的なことで満足することなく,名誉の回復が一番の関心事である。当方の和解提案には,真剣に検討させてもらうと言う回答はあったが,判決によって当方の名誉回復をえたいのである。その気持ちを無視するような説得はすべきではない。守るべきは、金銭よりも誇りなのだから。