ショコラ

2006年10月3日

事務所にでると先週女性人権センターからの紹介で、同センターの援助を受けて受任することになった依頼者からの電話があった。事件の弁護費用の援助が得られるかどうかということと、つきまといのある前夫の行動の不安からの電話であった。離婚をして妻側が子どもの親権者となって入る事案であるが、まだ合意のあった養育費を一度も支払わないうちから金額を減額するとか、子どもを預けろとか、深夜に妻宅に押し掛けたり暴力をふるったりしていた事案である。二人の戸籍謄本をチェックすると、両親の姓が異なっていた。おそらくそれぞれが複雑な家庭環境のもと、愛情の不足した人間関係のなかで育ったに違いない。しかし、二人の間の子どもは素敵な名前が付けられていた。結婚して子どもができた時は、きっと子どもにいっぱいの愛情を持って育て始めたはずである。しかし、その家庭はいつしか激しい家庭内暴力の場と化していた。つきまといの行動のなかにさびしい人間関係をみてしまう。rnrnその処理をしているとき、かつての依頼者から電話があり、友人の相談にのって欲しいとのことであった。急いでいるようなので午後の空いていた時間に相談をいれた。不倫相手の女性から別れ話をネタに、次々と金銭の要求があるとのことである。しかも刃物をもってヒステリックに責めてくることもあり、警察を呼んで処理をしてもらったこともあるとのことであった。相談のあった男性は、既に家庭内別居が長く続いていて最近家を出ることを決断したばかりであり、そんなおり知り合った女性で、男性が既婚者であることも承知のうえでの交際であった。いったん男女の関係ができてしまうと激しく離婚を迫り、包丁を持ち出して暴れるなどの行動にでている。これも愛情をはき違えた人間関係の乏しさからの事件であろうか。男性はこうした騒ぎのなか、無事娘さんの結婚式を終えた。この新しい門出は、両親の子どもだけは幸せであって欲しいとの思いがかなうものであるよう、他人事ながら祈らずにはいられなかった。rnrn夜はある奉仕団体の教育助成基金の運営委員会があった。家庭環境に恵まれなく、親と分かれて生活している子どもたちへの助成金の使い方について、いろいろと議論された。助成を受ける候補者の子供らの名は、それぞれに「ビューティフルネーム」である。親の願いや思いが伝わってくるような個性豊かな名前がついている。しかし、今は両親と一緒に暮らせない生活をしている。精神的に不安定な状態となっている子どもたちもいるようである。そんななかで、少しの愛情があれば、彼らの表情が美しく輝き出す可能性を秘めている。少ない基金がそうしたことに役だっていると報告され、ほっとするとともに愛に育まれた人間関係が多くのところで欠落している事実を認識させられた。rnrn帰宅して「ショコラ」という映画をみた。舞台はフランスの片田舎で、教会を中心とした保守的な集落での事件の展開である。教会では人間としての信仰というよりも儀式としての伝統を守ることが目的となってしまっていて、体面を大切にする社会であった。その村にきたチョコレートのお店を経営する自由奔放な母娘をめぐり物語は始まり、最後には儀式よりも人間としての豊かな関係が村人の間に実現するという洒脱な映画であった。一日、稀薄な人間関係ばかりみてきたが、最後の映画ではなにやらほっとさせられた。

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