モラル

2008年11月15日

とんでもない訴訟を受任した。かつて金融業を営んでいた者を訴え,調停の申立もしていた。私は,その訴えを起こされた元金融業者のかたから相談を受けた。訴訟と調停とが同じ時期に係属していたが,訴訟が提起されていたのは被告に訴状が送達されてこなかったので知らなかった。調停手続きでは,当方が紛争の早期解決を図ることを了とし,調停の担当書記官からも本人に調停を成立させることを促され,調停を成立させた。ところが,その調停を成立させるや否や,訴訟の訴状を送達してきて,調停が成立した部分の取り下げ書とともにさらにその事件について残りの請求をしてきたのである。当方は,そんな訴訟がおきていることを認識していれば決して調停には応じなかったはずである。相手方から新たな訴状が送られてきて,当方に相談があった。かつて,激しく相手方としてやりあった人であったが,いつのまにか相談にくるようになった人である。こんなことを平気でしてくる弁護士がいる。どこかモラルが消え失せている人ではないかと私は思う。こんな訴訟が認められるのなら,調停の現場で,調停委員,裁判官,担当書記官がどのような説明をして調停を成立させたのか,つぶさに検討してみたいと思っている。

同業者のモラルの問題突きつけられいたところ,会社の倒産にまつわる相談があった。長年,その会社が好きで,そこの仕事が好きで,懸命に頑張ってきていた。持ち株会で自社株を買って,自社のために投資してきた。退職金制度も途中で廃止となったがそれも受け入れた。しかし,既に給与を数ヶ月支払われていない。近々,民事再生法の申立があるとの噂がでている。社長は,既に新しい業務のことを考えているようである。従業員の人生を掛けて会社に尽くしてきたその気持ちを踏みにじっている。労働基準監督署もてきぱきとは動かない。しかし,こうなってくるとなかなか法的に確実にこちらの債権を直ちに確保できる方法は少ない。一方において,会社に人生をかけてきた従業員がいる。また,他方において法的手続きをとることによって,痛みを背負うことなく次なる新しい人生を見出そうとしている経営者がいる。これが「資本」の現実といえばそうであるが,従業員の方の話を聞いていると経営者のモラルを問いたくなった。

そして,遺産分割の新件を受任した。単純に兄弟間の相続ではなく,代襲相続がからむ問題である。こうなるとなかなか互いの意思疎通が困難となってくる場合が多い。できるだけ,当事者間が感情的にならぬように,それぞれの人の立場と思いをじっくりと確認しながら進めていく必要のある事件である。年を重ねるとこのあたりの我慢が前と比べてできるようになるし,相手方の感情を理解しやすくにもなってきたと自分では思っている。

さらに,先日のクレサラ相談で相談を受けた事件の受任があった。債権者には悪質な業者名も見られる。貸し付け枠を作るから一定の金額を金融業者から借りて振り込めなどという詐欺まがいの事案も含まれていた。まずはしっかりと債務の実態についての調査である。

こうして,一日が過ぎていくが,事務所のなかで世の中をみるかぎり,事務所の窓の外で見えている雲のない青空に照らされている穏やかな様子とのギャップを感じてしまう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Links

Calendar

  • 2024年4月
    « 5月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930