銀杏の大木が美しく黄色で彩られていた早稲田大学で日本消費者法学会の設立大会があった。2年近くも前,金は出すが口は出さないことを条件に準備のための寄付をと言う要請を受けて,いくらか寄付していたのでどうなったのかと思っていたが,忘れた頃の案内で設立となった。大会資料に100名を越す弁護士の寄付者の名前が掲載されていた。名前はほとんどの方が存じ上げている方ばかりであった。いろんなことでご一緒したことがその名前をみながら思い出された。
大会のテーマは,「消費者法のアイデンテティ」である。「消費者法」が対象とすべき分野は何か,民法を対象としている私法学会とその分野は異なるとみるのか,すべての人が消費者でありうるということから,一般法としての民法との関わりをどう位置付けるかという議論がかなり厳しくなされた。もっともそのことを極めること自体が消費者法の一つの目的であると言う議論に納得させられる奇妙な議論でもある。いかにも学者の議論だとおもしろく聴いていた。
そんな議論にコメントした石戸屋弁護士のコメントが私には一番ピッタリときた。我々実務家は,常に消費者から問題を突きつけられ,消費者の被害救済を直ちに実現していかなければならない。私法学会とは別の消費者法学会が必要(一元論,多元論など)かどうかなどという議論を考える余裕はない。目の前の課題を解決するために,民法,特商法,消費者契約法,刑法,食品衛生法などあらゆる法的手段を検討しながらその道を切り開いていく作業をする。「消費者法」はそうした作業の体系化であり,未然に被害を防ぐ法的システムづくりでなければならないと思う。
いろんな角度から「消費者法」を眺めることができて有意義な一日と
なった。1便で上京し,最終便で帰岡した。