行政ADR

2008年12月16日

紛争解決は,話し合いが一番,,,,,。そんな理念からいろんなADRが生まれている。岡山弁護士会もこの分野では取り組みは熱心な会員の存在によって全国的にも評価がたかく進んでいる。しかし,理念として「紛争解決は,話し合いが一番」という考えに全面的には賛成しがたいと思っている。もちろん,今のADRの役割を否定するものではないし,その必要性を認めてのうえである。

訴訟は,紛争に関して権利の存否について明らかにすることができる。権利と認められてこなかった新しい権利を裁判によって確立していくこともできる。たとえばセクシャルハラスメントは,当初のうちは慰謝料が認められることさえ珍しいことであったが,多くの裁判例の積み重ねで,相当な慰謝料を請求することができる人格権の侵害であるという考えが確立した。カルトの伝道活動の違法性を認めた「青春を返せ裁判」も裁判をして勝訴して確立できた論理であった。訴訟で闘うことの大切さはここにある。イェーリングの「権利の闘争」はこのことを言っていると思っている。

しかし,既に一定の権利関係が確立している分野,権利関係には大きくは影響しないが,「紛争」の存在そのものが問題となっているような場合には,ADRは有効である。実は,きょう,岡山弁護士会の行政仲裁センターに申し立てていた事件について,1回目の期日があった。岡山市との行政事件に関する仲裁である。権利の存在そのものよりも,感情的な立場の違いから紛争となってしまっている。ADRには適した事案である。申立費用も行政側が負担する。訴訟への対応とおなじく行政側からは代理人弁護士,市の職員である指定代理人数名と大がかりな体制ででてきていた。行政側も解決を是非したいとの意欲が伺われた。何よりも依頼者は,「はっきりとこれだけのことを直接市に言わせてもらっただけでも意味があった」と前向きに考えていた。こうして,ADRは,双方の感情的な対立を緩和しながら,納得できる道筋を探っていくという訴訟にはないメリットをもった紛争解決方法ではある。岡山弁護士会では,行政につづき,医療ADRの立ち上げを検討しているようである。

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