弁護士の仕事とカウンセリング

2009年1月18日

数日前に家事事件の依頼を受けた。家庭内のトラブルがストレスとなって,鬱状態となって治療を受けている。当方への事件依頼によって幾分かはストレスを和らげることができただろうか。初めてこられた時よりは表情が落ち着いてきていたとみられた。今回は,自分から話をすることも多く,落ち着いてきていた。しかし,そのトラブルをさらに拡大するような事件が家庭内でおきた。警察を呼ぶことになるような事件であった。そのことへの対応について至急相談に乗って欲しいと電話が午前中にあった。

事件を聞いて,本人へのストレスがさらにおおきくなって病状を悪化させる恐れがあるやもしれない。周囲の反応の状況から,互いに感情がぶつかり予期しない事件に発展するかもしれない。そんな危険性を帯びた相談である。法律的には家事調停事件の依頼を受けただけである。しかし,こうした事案では,事件の解決の糸口を見つけておちついて対応できる環境を整えるのも事件の受任をうけた弁護士の職務のひとつとなる。今日の相談は,法律的に対応できることではないので,できることなら断りたいと思うが,放置して別の方向に事件が発展してはまずいと思い,相談を引き受けた。午後からの相談であった。一応の現在の状況の説明と,問題点と課題について説明した。こうしてじっくりと解決への糸口を自ら発見できる環境作りによって,本人の平穏をまずは確保できるのである。

すぐに今日の相談を必要ないとして断らなかったことには,苦い経験があるからだ。弁護士になって4年目ぐらいのことであったろうか。深夜,私をタクシーに乗せたことがあるというだけの繋がりで,そのタクシーの運転手さんからの依頼であった。その人の知人の女性の離婚の相談であった。離婚はすぐさま裁判をすることはできない。調停申し立てからしなければならない。簡単に話を聞いて,調停申し立ての準備にはいることにしてその日は帰ってもらった。ところが,その日の翌日,夫の不倫相手を刺して殺してしまったのである。離婚調停事件として引き受ける予定が,殺人被告事件として弁護にたつことになった。相談にきたその翌日であった。私も若くて,その人の精神状況を十分に理解することができていなかったのだろう。この事件の発生を,相談をきちんと聞き取ることによって防ぐこともできたのでなかったかと悔やまれた。

こんなことになってはならないと,今は弁護士の仕事はカウンセリングでもあると思っている。

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