悲惨な先物取引被害

2009年5月21日

今日の打ち合わせはこの事件はなんとも気の毒な商品先物取引被害者の方である。
始まりは,職場への執拗な取引の勧誘であった。つい気を許し,結婚記念日の妻へのプレゼントのためにと貯金通帳においていたお金の範囲で,1ヶ月後には元に戻すつもりで始めた。そんなに高額な金額ではなかった。始めて見るとすぐさま追証,しかしやがて利益がでだすが,出資したお金を元に戻すのではなく,次々と取引が拡大されていく。計算上利益がでているが,決してその利益を手にすることはなかった。担当者に一任された取引であった。手数料だけは確実に業者がとっていった。口座には数億の計算上の利益が計上されていたが,その翌年には逆に利益分はなくなっていった。1億以上の手数料を業者はとり,本人には数千万円の損失だけが残った。この依頼者は普通のサラリーマンである。

やがてその数億の利益のあがっていたことについて所得税がかかってきた。そんな払えるお金が残されているわけがない。こんな税金がかかってくるなどしらされていなかった。単に損失だけが残っているのに億の単位の税金がかかってきたのである。払えるはずはない。給与は差し押さえられた。利益を一度も手にしたことはない。この取引は違法であると業者を相手に争った。最終的にその違法な取引を認め,損失分全額について支払いを受けた。しかし,税金は課税されたままである。支払われたその損失分についても国税がすべて持っていった。給与の差し押さえのある弱みである。

業者相手の裁判では100パーセント業者が責任を認めた。しかし,国税は所得が当方に帰属したと主張する。依頼者は,国税によって人生を台無しにされてしまった。生涯差し押さえを受け続けることになっている。こどもらの教育資金も自分の力ではできなくなった。差し押さえがあることが,勤務先での重要なポストを任されなくなった。仕事に生きがいをみつけてしっかりとやってきたその仕事にも誇りをもって遂行することができなくなった。大きな大きな人生におけるミステイクであった。今日の打ち合わせでこの国税の課税処分を法的に争うことを決めた。同じような手口で被害を受けている人の為にも本人は頑張りぬきたいと言っている。誠実に生きてきた実直な方を前にしているとこの人の人生を取り戻してあげるために私も頑張りたいと気力がわいてくる。普通のサラリーマンに突如訪れた、勧誘によって、大きく人生が狂わされた。先週のロースクールでの講義でも触れたが「不招請勧誘」の禁止が必要だとつくづく思わされた事案であった。

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