「主婦たちの壮大な実験」

2009年6月3日

このタイトルは,昭和47年から昭和48年にかけて,石油業界が生産調整をして価格協定をした結果生じた石油高騰の損害賠償請求をした事件の最高裁判決があったとき,この判決の報道の毎日新聞の見出しに使われた言葉である。歴史的言葉となってしまった「オイルショック」をめぐる事件である。カルテルの結果,業界は千載一遇のチャンスと沸き立ち,一方,消費者は高齢者,乳幼児を抱える家庭に厳寒のなか暖房用の灯油が行き渡らない命をも危険にさらされる状況となったのである。一人ずつの被害は多くても数万円に満たない金額である。しかし,こうした消費者の犠牲のうえに不当な利益をあげることの責任を追及しようと主婦たちがたちあがったいわゆる鶴岡灯油裁判のことである。

今日の法科大学院の講義のテーマは「公正な競争,価格」であった。その中で鶴岡灯油裁判にも触れた。この関連の資料にあたっていたとき,この裁判を紹介する1冊の本に気づいた。「消費者に武器を」である。この本にも「主婦たちの壮大な実験」の見出しを引用していた。実はこの部分の記事は,私が約20年前に書いた文章である。原文は,この裁判を担当した宮本弁護士が書いた文章をこの本用に私がリライトしたのであった。力強く消費者の主権を確立するための主婦たちの素晴らしい戦いであると評している。この本のなかで,消費者庁構想を紹介していた。縦割り,後追い,無責任消費者行政から消費者主権を目指す「消費者庁設置」構想であった。先週,この消費者庁設置法が成立した。20年前の自分の書いた文章が,なにか理想に燃えて,人を説得しようとする力強い文章に感じられ,若かったころの自分に出会えたような感覚をもった。

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