菅家さんの釈放

2009年6月5日

朝一番の便で上京し,東京から新幹線で福島まで出かけていた。福島地裁での口頭弁論手続きがあったからである。今日が最後かと思っていたが,裁判官の双方への働きかけで実質的に本日和解が成立した。手続き的にはもう一度弁論準備手続きがはいる。内容的には,代理人としては納得できる内容であった。そこそこ正義が通ったともいえるし,法的主張に危ういところもあったが,相手方の主張もずいぶんと制約した内容である。当方の依頼者はぎりぎりまで最高裁まで争うとも考えていたが,紛争に早くけじめをつけて,新規事業に集中したいとの企業利益をまずは優先した形であった。法的にはいろいろと双方に問題があったが,和解の内容はあるべき判決の内容だったのではないかと私には思えている。2年近くの時間を要しただけにきょうはホッとした気分になっている。

東京高等検察庁は、本件DNA再鑑定の鑑定結果が「無罪を言い渡すべき明らかな証拠に該当する蓋然性が高いので、本件再審の開始については、裁判所において、しかるべく決定されたい」とする意見書を東京高等裁判所に提出し、宇都宮地方検察庁検察官が、無期懲役刑で千葉刑務所に服役中であった菅家氏の刑の執行を停止した。一斉に報道は,DNA鑑定の問題点を指摘している。しかし,そもそもの誤りの発端は,虚偽の自白調書を作成されたところにある。再審事件においては,弁護側の再鑑定の対象となった菅家さんの髪の毛が本人のものかどうかわからないといって再審を開始しなかったことは,こんなに大切なことをいとも簡単に無視し,裁判所がだした確定判決の権威を守ろうとしたことこそ糺弾されなくてはならない。このような司法のゆがんだプロ意識に風穴をあけようとするのが裁判員制度である。市民の常識が生きる裁判員裁判に期待したい。

そして,やはり捜査の可視化が実現する必要性も指摘できる。しかも全課程の録画でなければならない。最後に自白したところだけだと意味がない。自白の任意性が争われたときに,この時の取り調べのすべての過程が録画されていれば,このような誤りを犯すことはなかった。17年の失われた菅家さんの人生は,どんなにしても戻ってこない。せめて,今後このようなことが決しておきないように捜査機関,司法が変わっていく必要がある。

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