ロールプレイ

2009年6月20日

ロールプレイによる研修方法は,欧米ではいろんなところで活用されてきた。我々の身近なところでもロールプレイをつかった研修がなされることがある。昨夜は,いま岡山弁護士会が9月に立ち上げしようとしている医療ADRに関してメディエーション研修が医療関係者、法科大学院の教授らの協力をえて、ロールプレイを通じてなされた。「メディエーション」という言葉も最近よく使われることばであるが,修復型紛争解決とでも言ったらいいのだろうか,双方の話し合いによる調停機能をもった紛争解決の方法を目指している。

12のグループに分けて,医療側(医師),患者側,メディエーターの3者によるロールプレイである。それぞれにあらかじめその役割に必要な資料が渡され,その役割になりきって演じるのである。私は,医療側を演じることになった。事案は,長年介護をしてきていた長男が,介護疲れもあって嫌がる高齢の母親をショートステイに預けたところ,その夜から発熱した。翌日,日頃から診てもらってきていた主治医のいる病院に入院したが,主治医は大学の講義のため直接診ることはしなかった。高熱の他は,特に変わったところはみえなかったが,午後になり,嘔吐があり,小脳出血が確認され,小脳ヘルニアで症状が一転,急変し,手術をするまもなく死亡したという事案で,現実の事件に題材をとったものだ。医師に過失のない場合であるが,私は,懸命に過失のないことをアピールするという立場に終始せざるをえなかった。

この約45分の間に,合意に達したグループがあった。患者役の弁護士が,患者役を演じながら涙するという迫真の演技になっていたそうだ。この患者側が母を突然なくした思いを医療側にぶつけた。そのなかでメディエーターが,嫌がる母親をショートステイに預けたこと自体を患者側は悔やんでいる,別れ際の母親からのありがとうの言葉が心につきささっていて,突然の死をどうしても受け入れられない気持ちが医療側への攻撃的な気持ちとなって表現されているということを適格に感じとって,声かけを患者側にしていた。長い間の介護に対して苦労が多かったであろうことを慰め,最後の母親の言葉は感謝の真意を伝えるものであったろうと話しかけたのである。ところが,その一言が,大きく患者側の態度を変えたのである。患者役の弁護士もこのように感情が変わっていくことは自分でもおもっていなかったとのことであった。そうした,話し合いの基盤ができたうえでの話し合いが続けられた結果,患者側も医師の説明に納得したのである。ちなみに私たちのグループはまだ話し合いは平行線のままであった。これからがメディエーターの力量が試される場面であったろう。

この研修は,9月までにまだあと3回予定されている。医師会は反対している制度だけに,強力して頂ける医師(専門医)をどれほど確保できるか,そのこともこの制度の成否を決めていく重要な要素であるが,意外と反響は大きく,協力してくれる医師も確保できそうな状況である。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Links

Calendar

  • 2024年4月
    « 5月    
    1234567
    891011121314
    15161718192021
    22232425262728
    2930