すぐには引き返せない

2009年7月20日

大雪山系での夏山登山で多くの犠牲者がでた。ある程度の危険性は,主催旅行社,参加者も一応は認識はしていただろう。それぞれの立場の人が,ふと危険を感じながらもその評価をきちんとせず,前に進んでしまった。引き返す勇気があったらと悔やまれる。しかし,人はいったんスケジュールが決まり,方針を決めるとなかなか引き返すことの判断が難しい。そこで,引き返してしまえば,それまでのことが無になってしまうという感覚にとらわれるからである。まして,これに今回のように営業判断が加わっていればなおさらのことである。まさに引き返すことは「勇気」のいることである。

こうしたことは,日頃の相談案件でもよく経験する。騙された人は,さらに騙されやすくなっていて,さらに被害を拡大してしまうことはよくある。一度騙された人はさらに騙されやすい心理状況になっているのである。商品先物取引の被害者の場合も,継続的な取引のなかでいったん損害が発生して止めようと考えるときがあっても,「両建てして様子をみましょう」「今がチャンス,損を取り戻しましょう」などという外務員の言葉にのってしまい,なかなか止められず,財産を失ってしまうまで取引を続けてしまうことがある。おかしいと途中で気づきながらも引き返してそれまでのことを無あるいは大きなマイナスと評価してしまう結果になることを恐れて,引き返せないのである。取引においても引き返す勇気を必要としている。

麻生さんにも引き返す勇気があれば,こんなに混乱したときに解散をしなくてすんだはずである。福田全首相は自分が止めて新しい顔になったときに解散をして信を問うべきであると判断した。しかし,滑りだした麻生内閣はついに追い込まれて解党的な解散になってしまった。どこかで,いや最初のときにきちんと引き返していればよかったのである。しかし,「ぶれる」ことがはたまた麻生さんの信頼性を失わせた。これは常に方針が一貫しないでぶれていったことが問題で,方針の転換が肯定しがたい感覚が伴う。まっすぐに突き進むことがなぜか判断のなかでは肯定的に捉えられてしまう。何度もぶれるから問題であり,引き返す勇気があれば,今の混乱は最小限に避けえたのでは無いかと思う。

的確な情勢判断で,突き進みたいと動く心理のなかを,冷静にそれまでの行動を否定的に捉えても引き返す勇気をもちうることは,心理的にやはり難しいことではある。

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