様々な人生

2009年8月7日

法律事務所での40分ほどの相談。似たような事件であっても,その時間にその人の人生のなかの一瞬をみることになる。

交通事故による後遺障害がおきて仕事にも大きな支障を残すことになった。しかし,保険請求したが,思わぬ理由でその支払いを拒絶されていた。その人は何でも我慢をし,おきてくることを人のせいではなく,自分が悪いというように生きてきた人だ。交通事故にあっても我慢できる痛みは我慢してきていたようだ。時の経過とともに悪化して,診断を受けると今までの診断と別の診断名がついた。保険会社はもはやそれは交通事故とは関係ないと支払いを拒絶した。事故は100パーセント相手が悪いことに違いはない。

前日,突然亡くなった親しい同期の弁護士が紹介してきた事件の打ち合わせをした。その方の話を聞いていて,まさに亡くなる二日前に,私が引き継ぐことになったことに安心したと筆談で話をしたばかりであったとのこと。もう長い間,この弁護士とはつきあいのある方で,その弁護士の家庭のこともよく知っていた。思わず,彼の新婚時代の話もその方となつかしく思い出しながら話をした。

生きていく術を持たない,あるいは生きていくことがへたな方の相談である。結局,法テラスに負債整理の援助をお願いすることにした。事情を話すのもへたである。しかし,それでも懸命に生きてきたことがよくわかる人である。2件の負債整理を行うのであるが,もしかすると過払いとなっているかも知れない。破産となった子どもと月々6万円支給される年金生活者である。

複雑な家族関係であった。兄弟の仲は悪かった。その兄弟は死亡し,残された子どもと相談者との母親の遺産の共同相続となる。相続問題もそれまでの血縁関係者との関係を一挙に表面化してあぶり出していくものとなる。

最後の相談は,もう7年ほど前に相談を受け,2年ほど前に相談案件についてほぼ処理を終結していた事案である。悪徳商法の被害であったが,クレジットが絡んでいて,数社となんとか問題解決をしてきていた。最後まで相手方の実態を把握できない業者がいたが,なぜかその関係者の民事再生の手続きが進んでいるようで,こちら側が債権者ではないかとの連絡が裁判所からなされたのである。時の経過とともに相談者の生活もずいぶん変わっていた。当時の被害の深刻さは消えていた。時の流れが新たな生活を始めさせていた。

さらに悪徳商法の被害者。最近示談をしたが,その約束を誠実に守らない。そのことを当方に責めてくる。えてしてよくあるタイプの被害でもともと回収が困難な事件である。そのことを当初から説明していてもそのことがなかなか納得いかない。被害の生活に与えるダメージとあくまでも自分が騙されたのではないと思いこみたい気持ちがなかなか納得できないことになっている。

こうして,いろんな人々の人生をかいま見る一日となる。しかし,ドラマを見るように楽しいことではない。それぞれに問題解決にむけて一歩踏み出すことを支援するのが我々の仕事だから。

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