過払い請求事件と広告

2009年9月16日

今日の午後は津山簡易裁判所に8万円ばかりの消費者金融会社に対する過払い請求事件のためにでかけた。往復3時間以上は確実にかかる。この病弱であった原告の生活を実質的に支えていた妻の破産宣告事件を数年前に受任していた。破産宣告をすることによって,この人の生活はほぼ再建ができてきていた。しかし,原告はその病気のためにほとんど収入がなくなっていたためにいくらか残っていた借金の返済も思うに任せなくなった。あと100万円ぐらいになって,改めて相談があったのである。その取引履歴を調査して,利息制限法による再計算をしてみると8万円ほどの過払い状況となっていた。そこで,交渉では支払ってこないこの不当利得返還請求訴訟を消費者金融に対して提起しての第1回期日であったのである。たった8万円の請求ではあっても,この人の置かれている状況ではこの裁判を確定させることの意味は大きい。少なくとも請求を受けていた100万円は支払わなくてもいいことは確実なのだから。

最近では,このような過払いに対する不当利得返還請求事件を扱いますと大々的にコマーシャルをしている法律事務所がある。またこれらの事件を140万円までであれば司法書士も扱うことができ大量に処理している人もいる。都会に行けば,電車のつり革,窓,ベンチさらにはテレビコマーシャルまで広告がなされている。こうした事務所の多くの場合,弁護士が直接相談者の話を聴くことは無く進められる。システム的に話を聴き,多額の返還金が見込まれる事案だけを定型的に扱って回収し,そこから相当割合の報酬を受け取るのである。相談者の債務整理をどのように行い,今後の生活再建の方策を相談者と共に検討するなどというようなことは行われない。今回の事案のように裁判を起こしても8万円程度しか回収できないような事案は放置してしまう。そんなことが全国的に問題となっている。日弁連からは,各会員に対してこの種事件の相談のあり方について注意がなされた。当然である。真にサラ金被害者の為に闘った弁護士たちが,次々と救済のための判例を勝ち取ってきて,債務整理の力となってきた。大量に機械的に多くの依頼者を広告によって呼び集めて,これを儲かる仕事であると割り切って,依頼者の真の利益を考えない処理がなされていることに憤りを感じる。そして,そのようなやり方が一部でもてはやされている現実に,弁護士の社会的役割,社会的正義の実現という共通の意識は,彼らとはもはや共有されないのかとも考えてしまう。

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