規制緩和と人権擁護

2007年5月11日

今朝ほどは嫌な記事をみた。消費者金融から利息制限法を超える支払い分を不当利得返還請求として取り返す事件を大々的にコマーシャルをだして引き受け,事務員を大量に雇ってこの処理をさせて利益をあげている法律事務所や弁護士として名義貸しをしている人たちがいると言う報道であった。

私が弁護士として独立した昭和53年頃,サラ金から暴力的取り立てで追われている人たちの事件を手がけた。独立したばかりで本来は暇なときではあるはずであるが,こうした事件を一つでも受けると連日,サラ金業者と怒鳴りあいの交渉が続き,「にぎやかな」日々を送った。異常な事態から貸金業の規制がなされるようになり,その罰則などに守られてやがてデスクワークのなかでこれらの交渉を進めることができるようになり,暴力的取り立ては少なくなっていった。その反面,高金利で借り入れをしている人たちが経済的に破綻し,これを自己破産宣告申し立てによって解決することとなった。やがて,この種の事件処理が極めて多くなるという経過を辿った。高金利の問題は,出資法との規定の矛盾をつきながら法廷での争いや運動に発展し,ついに最高裁判所が基本的に金融業者は利息制限法違反の支払いは返還すべきであるとの判断を下した。この判決を消費者問題を扱ってきた弁護士が勝ち取ることによって,クレサラ問題で多重債務者となった人々の救済が大きく前進することになった。

この判例がでてから,いち早くこれが商売になると考える人たちが生まれ,いままでクレサラ問題に取り組んできていなかった種類の人たちが大々的にコマーシャルをしてこの種事件を組織的に事務員を使って処理して多額の報酬をとって利益をむさぼっている事例が見られるとのことである。しかし,本当にこうした扱いが,依頼者の経済的自立を援助する事件処理となっているか疑問である。事件は一つ一つの事案でそれぞれ問題が違い,弁護士が注意深く関与してチェックしていかなければならない。一時的な需要をねらってそれを利益をあげる事業としてだけしかとらえないで処理している人たちの危うさを感じる。

実は,私の事務所でもこの事件に関わる事務量が増加し,事務員を増加してこの対応をするようになった。当然のことであるが業者との和解,訴訟手続き,交渉はすべて弁護士が最終的に直接関わって処理している。弁護士を大量に増加して,自由競争にし,コマーシャルにも規制をなくした結果は,前記のように誇りと使命を捨てた単に利益をあげることしか考えない業種としての変貌を生んでいる。人権擁護活動が自由競争にさらされることはよいが,その自由競争によって弁護士の仕事が利益優先の普通のビジネスとしてしか考えられないようになってきているのではないか。人権擁護に規制緩和は似合わない。

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