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台北の隠れ家にひきこもる旅(6)ひとり旅と61noteと旅行ゴミノート

ひとりで台湾に来た(行った)と言って(日本でも台北でも)何回か驚かれたのだが、ひとり旅はそんなに珍しいのだろうか。

いや、わかるよ。旅行会社で申し込む場合、おひとり様料金が追加されるので経済的でない。
個人旅行だとしても、ひとりでは料理を何種類も頼んで食べくらべることなんてできない。
夜市名物の巨大な鶏排(じーぱい)だって、ひとりなら買うのを躊躇してしまう。

でもひとりは気楽だ。夜中に目が覚めて深夜番組見てもいいし、ベッドで甘いジュースを飲みながら旅行ゴミノートにゴミを貼り付けていても「お菓子の袋は捨てて! 虫がわくよ!」とか言われない。

っていうか、誰かと一緒に行く場合、経済状況が著しく違うとお互い疲れるでしょう?
わたしはできるだけ安いホテル、場合によってはゲストハウスの相部屋でもOKぐらいに思っていても、友人はフロントのひとがビシッと制服着ててシャンデリアが下がってて見るからにお湯の温度が安定してそうな朝食ビュッフェつきのホテルに泊まりたいかもしれない。
「LCCはちょっと抵抗がある……」って言われるかもしれない。
だからもし誰か海外旅行するなら、現地集合・宿泊先ばらばら・現地解散の旅がいいかな……。

あと、ちょっと考えたのは、本当はみんなひとり旅なのに防犯上「友達と一緒に来てる」とか「ツアーで来てる」とか言い張ってるんじゃないの、っていう。
台湾はギラギラかつニヤニヤした感じでガン見されることがないからつい正直にひとり旅だと白状してしまっているが、もしかして言わないほうがいいのか。今後気をつけます。

さて、わたしのようなソロ活動がお好きな方にも自信を持っておすすめできるビールのお店が61noteです。

61note

このソーセージが甘くてじゅわっとしておいしいの。

ビール、甘いソーセージ、きゅうりでさっぱり。
うっかりすると無限ループだよこれは。
(と言いながら一杯しか飲んでいない。酒に弱いので)

朝食も昼食もさっと食べてさっと出ていくタイプの店だったから、61noteでゆっくりのんびりできたのはすごくよかった。お店の内装もスタッフの女性もおしゃれだった。こういうとこで一人でビール飲んでるとかっこいい大人になったような錯覚に陥るわ。ヒャッハー。

旅行ゴミノート

旅行ゴミノートの一例です。

余談だが旅行ゴミノートを始めると

「ゴミノートに張り込んだらかっこよくなるかどうか」という目線でものを買うようになる

らしい。
自分はそこまでではないと思っていたのだが、徐々に一度手にしたゴミは可能な限りノートに貼りこみたいという欲望に支配されるようになっていたようだ。
台湾から帰ってきた際に空港のバス乗り場で
「台湾岡山便の搭乗券をお持ちの方は岡山駅までのバスが無料です!」とにこやかに言われて俺の大事なゴミを回収しようとするとは……!」と敵意を覚えた。

(でも結局おとなしく搭乗券を差し出して無料で乗せてもらった。)

台北の隠れ家にひきこもる旅(5)万人におすすめできるタイペイ・アイ

タイペイ・アイ(台北戯棚)は前回の台湾旅行のときから気になっていた。
市内中心部にある京劇など伝統芸能の劇場だ。

前回はホテルから劇場まで歩いてすぐだったので、自然と目に入っていた。
いかにも観光という場所は息がつまるような気がしてあまり得意ではないのだが、京劇と言えばうちら世代的には「さらば、わが愛/覇王別姫」であり皇なつきじゃないですか。

これは見ておかねばなるまい。
そう思ってウェブサイトをチェックしたら完売!(大きな団体さんが入ってたのかもしれない。)

今回はぬかりなく、日本にいる間にKKdayでチケットを購入しました。(事前にカード払いしておき、現地ではスマートフォンにバーコードを表示するか、バーコードを印刷した紙を提示するシステム)
タイペイ・アイの公式ウェブサイトからも購入できます。割引の条件などを見比べて選ぶといいと思う。

タイペイ・アイは海外旅行客向けに特化してる劇場なので、字幕が出ます。英語、韓国語、日本語。劇場内は案内スタッフがたくさんいて、だいたい英語か日本語が通じるので中国語が話せないひと(わたし!)にも安心だ。

席はほとんど埋まってたけど、おじいちゃん二人組の隣がひとつ空いてたから「お隣いいですか」って丁寧に声かけたんですよね。
そしたらそのおじいちゃんが「隣でも膝の上でもどうぞ」って言ったのよね。
は。なんだてめえいますぐし…
しーふぇん(十分)で天燈にくくりつけられて飛ばされろ(婉曲表現)。

こういうノリのオッサンたちが台湾を含めてアジア各国に買春ツアーに行っていたのだろうな。
海外旅行に来て日本人の気持ち悪さに鳥肌を立てるとは思わなかった……。

それはさておき。
実はこの劇場は開演1時間前からロビーで俳優さんたちが化粧の様子を見せてくれたり、衣装を借りて写真撮影ができたりするんだ。
だからほとんどのお客さんは早めに到着している。
わたしのように開演開始ぎりぎりなのがわかっているのに春陽茶事雙連店のかわいい電飾に引き寄せられて梅子緑茶を外帯してる場合ではないのです(よく間に合ったよね)。ぜひ30分以上余裕を持って到着してロビーで手に模様を描いてもらったり普通の男の子が妖怪に変身する様を凝視したりしてください。

開演後も舞台の写真撮影OK(フラッシュ不可)なんだけど、手に汗にぎりすぎてそれどころではなかった。
下記がこの日の演目。

第一部:歓楽民俗マーケット「鼓舞獅躍」(竣越芸術劇団)
お坊さんが獅子を探し、その獅子が山に登る様子を表した獅子舞が中心のショー。
獅子舞って頭側の人が尻尾側の人の上に乗って前脚を上げた様子を再現するじゃないですか。あの動きを交えて、これ絶対無理じゃろっていうぐらぐらした小さい足場を登っていくんですよね。その足場と足場の間でかなり大きくジャンプしないといけない距離があり「どうやって飛ぶの?」「どうするどうする?」とかなり焦らした挙句一瞬で飛び移るんだけど、何が起きたか理解が追いつかなかった。頭側の人視界悪いと思うしほんとうにどうやって……。もう一回見たい。
獅子舞の目がばっちんばっちーん! って瞬きできるようになっててそれがすっごくかわいいです。

第二部:京劇テーマショー「虹橋で真珠を贈る」(国立台湾戯曲学院京崑劇団)
海に住んでいる凌波仙子という女性の姿をした神様と白詠という名前の人間(たぶんイケメン設定)が結婚したことが神々の怒りを買い大戦争となるも真珠のパワーで神々の軍勢を撃退。
凌波仙子がめちゃくちゃ強い。
戦闘シーンが曲芸に次ぐ曲芸なのでこちらも目が見たものに脳が追いつかない。投げ上げられた槍がありえない精度で適切な位置に打ち返されたり蹴り返されたりしていた。
歌えて踊れて曲芸もできないといけなくて、しかもちゃんとお化粧が乗るように美容にも気を遣わなくちゃいけなくて、俳優さんはめちゃくちゃ大変ですよね。
舞台の下で見てもなんだか発光してるみたいな感じがする。

めちゃくちゃ満足度の高いショーなんだけど、敢えてわがままを言うならお土産売り場でほしいものがなかったんですよ。トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団が履き古したトウシューズを売るように役者さんの身に付けてたグッズとか置いたら売れるんでは……と思ったりした。劇団がいろいろ入れ替わるからそういうのは難しいのかなぁ。

タイペイ・アイの獅子舞

獅子が客席まで来てくれます。

京劇の役者さんたち

第一部と第二部の間の休憩中のロビーにて。

ほんとうは客家花布などを売っている永楽布業商場の上の階にある劇場(大稻埕劇苑)の演劇も観てみたかったんだけど、それは今後の楽しみに取っておきたい。Faceboookページからポスターを見てみてほしい。メイクも衣装もかわいくて、なんだか楽しそうでしょう? でもこちらは外国人向けのチケット販売サイトには出ないみたいなんです。
たぶん演劇自体は言葉はわからなくても面白いと思うんだよね、ミュージカルみたいな感じだから。

春陽茶事

梅子緑茶(プラムグリーンティ)とわたし。

台北の隠れ家にひきこもる旅(4)台湾小吃にはハズレがないみたい

ごめんなさい。
ここで一度謝りたいんだけど、ひきこもる旅って書いた割に本当は結構出歩いたんだ。
でもさ、日本人って台湾に来たら九份(千と千尋の神隠しのモデルになった町のひとつと言われている)とか故宮博物院とか行くじゃない?
わたしはどっちも行かずに、ほとんどずっと迪化街周辺をふらふら歩いてるだけだから、相対的にはひきこもってると言ってもいいかなと思って。
要するにひきこもりたくなるようなホテルの快適さを言いたかったんだ。
シングルルームなのにベッドにいちいちよじ登る。
ベッドの頭側の壁は本棚になっていて、そこに飲み物などをちょっと置いておける。
客家花布のクッションをだっこして甘い飲み物を啜りながらバラエティ番組を見たり、ツイッターを眺めたり。そういうのが楽しい。

無精髭の大森さんは、フロントの前を通るたびに「はろー!」「ばいばい!」言ってくれる。
小さいカウンターに大森さんともうひとりの若者が二人でぎゅっと詰めて座って外帯(わいだい / お持ち帰り)した麺を啜りながら引き継ぎをやっていたりする。かわいい。

さて、食べ物のことを書きます。

評判の店は予習したけど、気楽なひとり旅なので適当に歩いてふらっと入った店で適当に注文することにした。
なにを食べてもだいたいおいしい。そのうえ安い。

台湾の朝食

豆乳のスープと肉まん。

これは朝食。
ラミネートされたメニューにホワイトボードマーカーで印をつけて注文できる。

ラミネートされたメニュー

なんと便利な! シャイで口下手なわたしに最適のシステムである。日本でも採用してほしい。

台湾は朝食専門の豆乳の店が多くて○○豆漿大王みたいな名前がついている。
この豆乳スープ「鹹豆漿(しぇんどうじゃん)」は思ったより薄味だった。
調味料を加えたほうがいいのかなあと思いながら取りに行くのも面倒でそのまま食べ切ってしまった。
肉まん(肉包)は皮のもっちり感がすごい。このままどこまでも埋まっていきたいような最高の感触だった。
肉まん中身抜き、みたいなメニューがあるのにも頷ける。
この鹹豆漿と肉包で40元(160円弱)です。

このパクチーがうまい2019

お魚のスープと温野菜。

こちらは行列ができてたスープとか麺の店「老阿伯胖魷焿」(読めない)。
わたしのようにニイハオとシェシェでなんとか乗り切ってるみんなは混んでたらどこに並んでいいかわからないはずなので店員さんに駆け寄って「ニーハオー! 我要内用(うぉやおねいよん)オーケー? メニュープリーズ!」とかなんとかウザめに自己主張して並ぶ場所を教えてもらってください。内用と外帯で並ぶ場所違うかもしれない。わたしは無駄に間違ったとこで待ってたかもしれない。
魚のスープは中からトロッとタレが出てくる。
あー、すき。パクチーが物足りない気もするけど、いや、むしろ敢えて抑えたこの繊細なバランスを評価したい。当方ひとりなので相席になりましたが、推定台湾人カップルが「ここどうぞ〜」という感じで招いてくれて、見知らぬお二人と額がぶつかりそうな距離でスープを啜りました。わたし台湾基準ではテーブルマナー悪いかもしれない…もしそうだったらごめん…とドキドキしながら食べました。
手元のレシートによると写真に写ってる食べ物は魚丸湯(60元)と燙青菜(35元)です。
台湾で野菜を食べる方法をぐぐりまくって「燙青菜」という言葉を覚え、これはぜひ実践しようと思って注文しましたが大正解です。カロリー高めになりがちな台湾ごはん、燙青菜のおかげで罪悪感がぐっと減ります。これから先も台湾で食べるときはひとまず食べたいもの一品に加えて燙青菜を頼むスタイルで行こうと思う。
参考:台湾で油がダメなら【燙青菜】がおススメ!サッパリ茹で野菜の種類は?

肉まん袋

中身の写真を撮り忘れたがわたしの多幸感はこのペンギンたちが完全に表現してくれている。

そしてまたしても肉まん。
この肉まん屋さん(明記包點)、閉店間際にわたしのためにレジをわざわざ開けてくれたみたいだった。なんかわたしみんなに迷惑かけてる気がするけどー! みんなやさしいー! 好き!!

2種類、たぶん包子の上ふたつを買ったんですが、椎茸の入ってるほうはぎゅっ! と旨味がきて部屋でかじりながらちょっと唸った。こちらも皮がもっちりしてた。

ところで、台湾の食べ物の中で唯一これは無理かな、と思っているのが臭豆腐(ちょーどうふ)だ。
去年来たときに永楽布業商場の一階で腐肉を茹でるような異臭を嗅いで何事かと思った。ここは衛生的に大丈夫なのか、と。大げさではなく、身の危険を感じるにおいだった。

でもいま思えばあれは臭豆腐だったのです。
二回目の台北でやっと臭豆腐という名前と臭豆腐そのものが結びつきました。
街のあちこちですごい臭気が漂い、そこに目をやると行列ができていて、人々が厚揚げ状の何かを食べている。
ちょっと待て。
並ぶほどうまいのかよ、臭豆腐とやらは!

迪化街のこじゃれた文具店でヒカキン寄りの星野源みたいな日本語ペラペラの店員さんと話したのだが、彼が
「臭豆腐を試してみてよ!」
と強く勧めてくれた。
「納豆みたいな感じ! 臭いすごいけど食べるとおいしい!」
「納豆は食べられるけど臭豆腐はちょっと……」
「たしかに日本人の友達にはテロリストの食べ物と言われました!」

わたしはそこまでひどいことを言うつもりはないが(すでに言った気もするが)自分から食べる気にはどうしてもなれない。
ただし、もしこの先台湾人の友達ができたり台湾通の友達ができたりしたら「いちばん美味しい臭豆腐の店」を教えてもらって挑戦してみようかな……。

205 words

こじゃれた文具店のヴィンテージ鉛筆削り展のようす。設計図(ポストカード)だけ見ると昔の兵器の設計図みたい。

台北の隠れ家にひきこもる旅(3)台北12月上旬なに着ようか問題

台北の冬は日本と同じくらいの防寒が必要らしい。
気温は台北の方が高いけれど、小雨が多くて寒さが身に染みるから。
そのうえ冬が短いために暖房設備を用意していない場所も多い。
むしろ日本よりも寒い。

以上のような内容を、格安航空券を購入した後に(ぐぐって)知りました。

ハッハー。面白くなってきたぞ。

前回の台北旅行は11月だったのだが、飛行機の中は冷房がガンガンにきいて上着を羽織っても膝の寒さが耐えがたく、現地についたら真夏の暑さで上着が邪魔になり、とはいえ飲食店は景気よくエアコンをフル稼働させるので上着が必要、帰りのフライトのためにカイロがほしいが台湾はほぼ夏だからドラッグストアで貼るカイロが見つけられず、かろうじて貼れないカイロを見つけハンカチに巻いてベルトのように腹に装備したら岡山空港の金属探知機にひっかかって貴金属の密輸を疑われスーツケースを開けてファンシーな色柄物だらけの荷物を丁寧に調べられる、というなかなか貴重な体験をした。恥ずかしかった。

それはさておき服の話です。

前回の反省から飛行機の中で凍えない服装を考えました。
日本と同じくらいの装備で行った方がいいという説を信じて、基本的には日本の(岡山の)12月の服装。
ネルシャツの上にセーター。
タイツと靴下を重ねて、だぼっとしたジーンズ。
上着は片面ボア片面キルティングのリバーシブル(ユニクロ)。
小さめのカイロを腰にひとつ。

これはタイガーエア搭乗装備として正解でした。
機内では上着は膝にかけ、暑くも寒くもない快適な温度。
むしろ岡山空港で搭乗を待っている間が寒かった。山陰から来るひと、岡山は南にあるから油断すると思うけど気をつけてほしい。(※ 東京付近の方には伝わりにくいかと思いますが、山陰から関空ではなく岡山に来て岡山空港から台湾に行くケースがある)
機内食を(LCCなので追加料金払って購入して)お腹に入れたのもよかったのかもしれない。お腹がすくと寒くなる。「蒸し鶏のネギ油ソースがけご飯」は多少脂っこいけど見た目よりだいぶおいしかったので食べた後では文句ないです! 機内でスパイスの香りがふわっと香り立った瞬間「あっ。すごい、もう台湾にいる!」って感じる。宇宙人のキャラクターがとてもかわいかったのでフォークとスプーンを持ち帰ってしまった。

タイガーエア機内食

事前予約した機内食。香りがすごい。ジュースとお菓子もセット。

さて、滞在2日目の朝から何を着たか。

台北12月上旬に適した服装の例

裏ボアと書いたけど表をボアにしても着られるぞ。

小雨が一瞬ぱらついた程度で天気がよく、温かったのでちょっとだけ軽装備になりました。
長袖Tシャツの上にネルのワンピース。下は前日と同じジーンズ。
リバーシブルの上着は歩いてると暑くなって脱いだりした。

雨はほんとうに少しだけだったけど、飲食店のひとが水を流して通路を洗っていることもあるので防水シューズは安心できてよかった。

ほかの観光客のみなさんが何を着ていたか、参考までに龍山寺の写真をご覧ください。

龍山寺

ツアーの団体さんも多くて超混んでた龍山寺。

ダウンジャケット率が高く、チェスターコート的なやつはめったに見かけない。
寒暖差があるから脱ぎ着しやすさ優先で。

わたしの行った12月上旬は小春日和だったけど、12月下旬や1月、2月は寒波が来て冷え込むこともあるらしいです。
台湾は軽食がとにかく安いけど、着るものは日本と同じようなものが欲しいと思ったら日本より高くつくので、重ね着できるように一枚多めに持っておくのが無難かもしれない。

ちなみに、わたくし、日本国内移動は家から駅まで自転車、そのあと電車とバスで空港に向かったわけですが、自転車区間のために手袋とマフラーと帽子を持っておりました。え? スーツケース? LCCサイズのスーツケースって100均の自転車ロープ1本(約2メートル)あれば自転車の小さい荷台に積めるんだよ! すごいでしょ!
手袋・マフラー・帽子は台北では必要なかったです。手袋はリバーシブルの内側になるポケットにぎゅっと詰め、マフラーと帽子はスーツケースにしまって宿に置いたままでした。

台北の隠れ家にひきこもる旅(2)タクシーに乗ってみた

順番は前後しますが建山ホテルにたどり着くまでのお話です。

今回の旅のメインイベントは到着したその日にタイペイ・アイで夜8時開演の伝統芸能ショーを見ること。
わりとぎりぎりのスケジュールを組んでしまった。
桃園空港に到着するのが17:30なのだ。
もしも入国審査の行列が長かったり万が一係員さんに囲まれて別室にご案内されてしまったら空港を出るまでに二、三時間かかるのではないか。
台北駅に行くには桃園機場捷運(桃園空港線)の直達(急行)に乗って36分。
台北駅から劇場は遠くないが、わたしのことだから道に迷う可能性もある。
とはいえ、ホテルに荷物を置いて身軽になりたいし、気温に合わせて着替えたい。
あれこれやっているとショーの最初からは見られないかも、まあいいや、ショーは2部構成だから途中から楽しめばいいじゃん、と覚悟を決めて臨んだ。

入国審査はあっけないほど短く、ほぼ待たずに通過できた。
両替の列も自分の前に2人ほどですぐ終わった。
手荷物は機内持ち込みだったので荷物を待つ必要もない。
人の流れに沿って桃園空港駅に向かい、妙に暑いプラットフォームで汗ばみながら10分ほど待って直達車に乗った。

ほぼ定刻に台北に着いた。開演には間に合いそうだが、体力温存と迷子防止のためホテルにはタクシーで行くことにした。台湾のタクシーは安全だし安いと前回の旅の現地ガイドさんが教えてくれたので。
タクシー乗り場には案内係の女性がいて、いきなり中国語で何か聞かれた。おっと。これは前回なかったパターン。大学の時に中国語の授業あったけど、にいはお、しえしえ、うぉうーら(おなかがすきました)以外ほぼほぼ忘れちゃったんだよね! 申し訳ない! 中国語がわからないのが伝わると “Which hotel ?” とかなんとかホテル名を聞かれた。いや、わたしの泊まるとこ高いホテルじゃないからホテル名だと伝わらないと思う。どうしよう。

“I want to go to the hotel in 迪化街(di hua jie).” と言ってみた。
でぃーふぁーじぇーのところ、ちゃんと抑揚をつけて。

女性の係員さんはタクシーの運転手さんに「迪化街行ってくれる?」というようなことを聞いているようだ。

通じとるじゃないかー!!
YouTubeで予習した甲斐があったぜ。

ふたりにガイドブックの地図を見てもらって、無事乗車できました。

【反省】
・行き先の名前(中国語のホテル名)
・中国語の住所
・地図

以上の三点はすぐ見せられるように紙を準備しておきましょう。
老眼のひともいらっしゃるので字も地図も大きめにわかりやすく!
(スマートフォンだとどうしても字が小さいので紙がいいです)

さてさて。
タクシーにはナビがついているので安心です。
運転手さんは英語の接客に慣れている人でした。
食べ物がなんでもおいしいから来たんだよって言いたくて、台湾料理の名前をいろいろ挙げてみたけどそっちはわたしの発音が悪くて通じなくて「ごめんね、おっちゃん英語あんま得意じゃなくてわかんなかった!」って言われた。いいんだよ、中国語で言ったつもりだったよ。あたい次に来るまでに料理の名前ちゃんと言えるように練習しとくね……。

降りる前に運転手さんに「帰りは空港まで電車ですか?」って聞かれて。
こう来ると「電車なんてやめときなよ。混むよ。帰りは疲れてるから絶対座りたいでしょ。ちょっと安くするから空港までタクシー乗ってよ!」って名刺渡されると思うじゃん。違うんだよ! 「あなたのホテルから駅までって実はそんなに遠くないから歩いて行くこともできますよ〜」って教えてくれた。ありがとうありがとう。ってか近場でごめーん! 超親切!
(おつりいりませんって言おうかと思っているうちになめらかにおつりを渡されてしまいました)

台北の隠れ家にひきこもる旅(1)隠れ家にチェックイン

わたしの人生初海外旅行だった前回の台北滞在で花布を買いに訪れた「迪化街(てきかがい / でぃーふぁーじぇ)」という町がちょっとよかった。
リノベーション建築におしゃれなカフェ。漢方薬局。ドライフルーツ。
迪化街付近にお手頃価格のおもしろそうなホテルがあったのでExpediaから予約してみた。

建山大旅社(じえんしゃんだーりうしゅー、みたいな発音のはず)

おわかりいただけただろうか。
ここは昔懐かしい「これぞ台湾!」を再現した宿なのだ。

タクシーから降りてちょっと迷いながら上を見上げると建山大旅社の看板が出ていた。
道で煙草を吸っている30歳前後の男性(無精髭を生やして煙草を吸っている30歳の大森南朋をイメージしてください)に「ジェンシャンホテル?」と声をかけられる。

え。なに怖い。逃げよ。

と思ってダッシュしかけたが、冷静に考えればホテルの人だ。忘れていた。そう。建山大旅社はホテルというよりもゲストハウスに近い価格帯の宿だからフロントのお兄さんが極端にカジュアルでもおかしくない。
フロントの大森さん(仮)にパスポートのコピーを見せて、部屋のキーをもらう。Wi-Fiのパスワードがカードに書いてあってなかなか気が利いてる(去年泊まった宿はフロントの横に書いてあるだけだったので、部屋に入ってからしまったー! と思って電話で聞いた。複雑なパスワードでなくてよかった)。夜9時以降はフロントが無人になるそうで、エントランスのドアの開け方について簡単な英語で説明を受けた。

建山大旅社ロビー

ホテルのロビー。複数人で泊まったら記念撮影不可避じゃろ!

さて。
部屋は5階だけど、エレベータはない。
まじかよ、と思ったが大森さんが部屋の前までスーツケースを運んでくれた。

部屋は期待以上におもしろい感じだった。すっごく狭いけど一人部屋なのに二段ベッド。というかロフトベッドの下が書斎みたいになってる。わかりやすい写真が撮れなかったのでExpediaからシングルルームの写真をご参照ください

注意:次の次の写真にわたしの美しい足が写っているので目が潰れそうなひとはそっ閉じプリーズ。

ロフトベッドの下

ベッドの下が書斎っぽくなってる。

ベッドにいるところ

おひとりで心ゆくまで足をぱたぱたしていただけます!

「台湾の冬は短すぎるためにエアコンには冷房の機能しかない」

という話を聞いて身構えていたのだが、ちゃんと暖房もついていた。
当然湯船はないけど安定して温水の出るシャワーがあるし、トイレも清潔だ。
拭いた紙はちゃんと便器に流せる。
タオルも用意されてるし歯ブラシも石鹸もシャンプーもあるし。
(パジャマはないけど外国のホテルってないのがわりと普通みたい。わたしはもこもこの冬パジャマを圧縮袋で薄くして持参しました)

駅から頑張れば歩ける距離(20〜30分くらい)で、こんなにフォトジェニックな内装を揃えてこのお値段なのだから良心的だ。多少粗いところがあっても「おもしろいんだから許す!」という気になる。

ただ、冷蔵庫は冷たい飲料を冷たく保つみたいな小型のものだった。あまりガンガン冷やせるタイプではないと思う。買ってきた米乳(書斎っぽい写真に置いてある飲み物。ピーナッツ味)を入れておく分には不足はなかったけど、夏にアイスを買ってきてシャワーの後に食べたいときにはちょっと困るかな? ま、いいじゃん。アイスは外で食べれば。コンビニも甘味屋も徒歩圏内なのだから。
ちなみに米乳は宿の斜め前の店で買ったものだが、わたしは中国語が話せないので「米乳、外帯(持ち帰り)」とメモに書いて注文した。「内用(ねいよん)=お召し上がり」「外帯(わいだい)=お持ち帰り」は頻繁に使います。テストに出ます。

出かけるときに大森さんにサクマドロップスを渡したら “Wow! Thank you!” とにっこり笑ってくれた。ぶっきらぼうに見えるかもしれないけど親切だし案外気さくなのでこれから建山大旅社に泊まるひとは髭面の大森南朋に睨まれても逃げなくて大丈夫です。

ところで2019年初夏に訪れたトルコのことを「うたとポルスカ」に寄稿しました。読んでね。

行く予定のないトルコ旅行を計画する

8月に『地球の歩き方イスタンブールとトルコの大地2019〜2020年版』が出た。
ひとつ前は2016〜17年版だったので2018年に開港したイスタンブール新空港が載っていなかったのだが、今度はもちろん載っている。
嬉しいので1月にまとまった休暇が取れたと仮定して7日間(トルコ国内に4泊5日)の旅行を計画した。

所詮は妄想なので仕事を辞めて2ヶ月放浪することにしてもいいのだが、そうなると「宿とか予約いらなくね?」「トルコの人は親切だから誰かの家に転がり込めばいい」「安全な旅には面白みがない」「むしろアドレナリンどばどば出したい」「ていうか無事に日本に帰ってくることになんの意味が?」などと自暴自棄な妄想をし最終的に「古絨毯で簀巻きにされてマルマラ海の魚の餌になれるならオシャレ!!」という境地に達してしまうのでやはりよろしくない。一週間程度だからこそ真面目に計画するつもりになれるし、計画すること自体を楽しめるのである。

航空券はスカイスキャナーで見つけて、購入したことにした。
アシアナ航空。関空発、仁川空港(ソウル)乗り換え、イスタンブール空港行き。
往復83,100円。
(トルコって遠いイメージあるけど航空券だけなら10万切るやつ結構見つかるんですよね)

<1日目>1月15日(水)関空から韓国に飛ぶ日

関空には「はるか早得往復きっぷ」で向かう。これは前回やってみて心身が楽だった(渋滞の心配がないから)。
15:00頃関空に到着。
17:00 関空発
18:50 仁川着

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イスタンブール行きの便まで14時間45分あるので一旦入国する。自動両替機があるらしいのでサクッと5,000円分両替。この日の宿インチョンエアポートホテルゼウメスは無料送迎があるので迎えに来てもらう。
せっかくの韓国だし、ホテル付近のドラッグストアでシートパックを2〜3枚程度購入。預入手荷物はイスタンブールに着くまで預けっぱなしなので、機内持込できるものしか買えない。シートパックは液体物扱いになりそうなので今夜使う分とジップロックに入る量だけ。ホテルの1階にロッテリアがあるみたいなので元気が出なかったら夕食はロッテリアで済ませちゃおう。

<2日目>1月16日(木)12時間のフライトでイスタンブールに到着する

7:00 ホテルのシャトルバスに乗って仁川空港へ。
9:35 仁川発
15:40 イスタンブール着
12時間5分の長い長いフライト、朝から眠れるわけもないので暇つぶしを考えなければいけない。
・読書(2時間)
・機内食が出たら満腹を利用して昼寝(1時間30分)
・映画を真剣に見て、レビューを書く(2時間視聴+1時間執筆)
・斜め前のひとが見ている映画を盗み見てあらすじを想像する(視聴30分+妄想執筆1時間)
・そろそろ疲れてくるので寝る(1時間)
・目が覚めて虚無(3時間)
だいたいこんな感じだろうか。執筆用に紙のノートを持ち込んでおかねば。
トルコに入国したらATMで20,000円程度キャッシング。16:40のHavaist(空港と市内中心部を繋ぐバス)に乗りたい。前回の旅でイスタンブルカード(イスタンブールの様々な公共交通を利用できるICカード)を持っているのでカードに100リラ(約2,000円)程度積み増しする。Havaistで新市街のタクシム広場まで行くのが18リラ。
18:00タクシム広場着。ノスタルジックトラムヴァイ(レトロ車両の路面電車)タクシム駅からオダクレ駅へ。タクシムダイヤモンドホテルにチェックイン。荷物を置き、イスティクラル通りで書店を見る。トラムヴァイの終点テュネルから推定徒歩3分程の場所にあるホームスパというハマム用品(石鹸やタオル)の店に立ち寄る。ガラタ塔が見えるはずなので、上らずに見るだけで満足する。
軽く何か食べてペットボトルの水を買い、ホテルに戻って就寝。
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<3日目>1月17日(金)イスタンブールから対岸のブルサに渡る

ホテルの朝食ビュッフェで可能な限り野菜を食べる。昼間はついついスィミット(街角のあらゆるところに屋台が出ている胡麻パン)などで済ましてしまいそうなので。
9:00チェックアウト。
地下鉄テュネル駅からカラキョイ駅、カラキョイ駅でトラムヴァイに乗り換えて新市街と旧市街をつなぐガラタ橋を渡り、エミノニュへ。
9:30までにはエミノニュに着くはずなので、10:45発のBUDO(ブルサ高速船)のチケットを購入(40リラ)。30分ほど釣り人を見たりエジプシャンバザールを見たり。
10:45 ブド・エミノニュ桟橋からBUDO乗船
12:45 対岸のムダンヤ港着
ブルサカルト(ブルサ限定ICカード)を6リラで購入しひとまず10リラほど積み増しするのがいいのか、回数券を買うのがいいのか、ちょっとよくわからない。カードを全国で統一すればいいのに、と思わないでもないが、外国のICカード集めは楽しいので許す。市内バスF3路線で温泉街チェキルゲを経由し約45分で市内中心部ヘイケルに到着。
グランドヘイケルホテルにチェックイン。ここに2泊する。
荷物を置いてしばし休憩。徒歩でチャクル・アー・ハマムへ。入浴・垢すり・マッサージ含めて60リラ(約1,200円)らしい。バザールで軽くお土産探し。冬用のシャルワル(田舎のおばちゃんが身につける伝統的なサルエルパンツ)がほしい。この日は軽く下見のつもり。
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<4日目>1月18日(土)ブルサでのんびり寺院めぐり

ブルサでも朝食ビュッフェでしっかり野菜を食べる。
寺院めぐりの日なのでホテルでスカーフを巻いてしまう。徒歩でウル・ジャーミィへ。前日バザールで目をつけた土産物を購入。職場用の土産もお茶かチョコレートか、何か日持ちのするものを購入。一旦ホテルに荷物を置いてブルトラムヘイケル駅からチャンジュラル駅へ。チャンジュラル駅からトラムヴァイに乗り換えてメイダンジュク駅下車。イェシル・ジャーミィ、イェシル・テュルベを見学。
チャンジュラル駅まで戻って環状線になっているブルトラム(反時計回りのみ)に乗り、一周してみる。
グランドヘイケルホテルに戻って早めに就寝。

<5日目>1月19日(日)イスタンブール(旧市街)に戻ってカドゥキョイ泊

この日は朝食は軽めにしておく。おやつタイムに鯖サンドを食べたいから。
10:30頃チェックアウトして市内バスF3路線でムダンヤに向かう。
12:00 ムダンヤからBUDO乗船(40リラ)
14:00 ブド・エミノニュ桟橋着
エミノニュ名物鯖サンドを食べる。エジプシャンバザールで精油や干しいちじくなど購入。

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ジャルム桟橋からワプル(連絡船)でアジア側のカドゥキョイへ(3リラ)。
今回の旅ではつねにノスタルジックトラムヴァイの走っている街にばかり泊まることになってしまったが、カドゥキョイのノスタルジックトラムヴァイは一辺が500〜700メートルの正方形みたいな路線だ。
いいぞ。観光地っぽいぞ。
最後の一泊はサイドニアホテル。チェックインして荷物を置き、しばし散策。スィミット屋台はあちこちあっても焼きたてはなかなか食べられないからスィミット・サラユ(スィミット専門店)に入ってみてもいい。エタ・バルという蜂蜜専門店の蜂蜜がけヨーグルトがめちゃくちゃおいしそうなのでそっちも試したい。日が落ちてきたら海を望むカドゥキョイ公園に行って寒さに震えながら冬の夕日を眺めよう(ぜったい泣く)。

<6日目>1月20日(月)もうあとはイスタンブール空港から帰るだけ

11:00ごろチェックアウト。気分が乗れば一旦スルタンアフメット地区を見てから空港に向かってもいいし、カドゥキョイから直接空港に向かってもいい。
カドゥキョイからHavaistに乗るとすれば、
13:00 Havaist乗車(25リラ)
14:50 イスタンブール空港到着

アシアナ航空のカウンターでチェックインしたら、土産物を見ながら「全部ユーロ表示!しかも高い!」と心の中で叫びつつ、ちゃっかりロクムを試食。
17:20 イスタンブール空港発
夕方から搭乗で機内泊なので眠りやすいと思う。機内食を食べたら歯を磨いてすぐ就寝。10時間15分のフライト。

<7日目>1月21日(火)韓国経由でおうちに着くまでがトルコです

9:35 仁川着
今度は4時間30分で乗り換えなので入国せずに時間を潰す。

14:05 仁川発
15:50 関空着

はるかに乗って新大阪へ。新大阪から新幹線で帰る。

トルコを離れる日の行動を考えたりしていると、帰りたくなくてさびしい。
トルコに着いてさえいないというのに。

半分妄想トルコ日記 彼は老人と呼ばれた

「君の友人を危険に巻き込むことはない。むしろ24時間組織の警護が付くのだからどんなツアーよりも安全だ」

欺瞞だ。そう思いながらも拒否することはできなかった。組織の決定を覆すことは難しい。とはいえ何もかも許せるわけではない。彼女はここよりもずっと平和な国の人間だ。警戒心もなければ、恐怖に慣れてもいない。倫理的な問題ではない。彼女がパニックに陥っていれば任務は失敗に終わりかねなかった。

「まさかご自身で現場にお見えになるとは思いませんでした、イルハン部長」
「任務とも呼べないような単純な調査だからね」
イルハン部長は白い髭を指で撫でつけながら目をそらして言った。
「調査の必要があったのですか」
「トルコ語がわかりすぎている疑いがあったからさ。確かめる必要があった」
「お言葉ですが、あれは少しやりすぎです。彼女はひどく怯えていました」
「どうして? 私たちは楽しく会話しただけだよ。エミネにトルコ語検定初級の認定証をあげたいなあ。うち、そういうの作れるかな?」
「部長、我々の任務は……」
「はは、冗談だよ」
「彼女があれ以上怖がっていたらギョレメに向かうこともできなかったかもしれません」

あの年齢でまだ結婚しないでいるのにはそれなりの理由があるはずだ。過去に心的外傷を受けるような体験があった可能性も否定できない。

「そんなにショックを受けていたか」
「ええ」
「かわいそうに。抱きしめてやったか?」

私は無言で部屋を出てそのまま駐車場へ向かった。私たちはジェームズ・ボンドじゃない。女性は壊れやすい宝物だ。たとえ異教徒であっても。

ユキサンを日本に返したあとの数日間は多忙を極めた。アンカラ行きの飛行機の中で次の任務に関する資料を読み、その足で諜報部のオフィスに戻って留守中に溜まった事務仕事を片付ける合間にバックパックを開けて私物と備品を分け備品を返却、乾留液が国境を越えたという報告を受けた直後車両部の工場へ足を運んでねぎらいの言葉とともに移送用車両の改善を求めた。水を一本投げ込むためにだけ出てきてもらった元諜報員には謝礼と共にハジババの菓子折を届けるよう手配した。この菓子代は経費で落ちない。前の部署とは違って業務を円滑に運ぶために自分の財布を開くことが多くなった。

乾留液は私の「表の」身分のメールアドレスを見つけてセルフィーを送ってきた。自慢げな笑顔のうしろには彼の故郷の有名な時計台が写り込んでいた。
諜報員としてはベテランの(といっても私よりいくつか年下だが)カラがラップトップを覗き込んで「罪な男だね」と言った。
「罪?」
「みんなあんたに夢中じゃん。空港行きのバスで大泣きした日本人の女も。乾留液も。」
「恣意的に解釈しないでください」
カラは黒く塗った爪で液晶を叩き、
「返信してもいいよ。みんなには黙っとく」
とウィンクした。

半分妄想トルコ日記(最終日)空港のお菓子が高すぎて泣き止む

毎日宿泊先が変わったので、一泊目と同じホテルなのに朝食会場がどこか忘れてしまった。
一階に降りるとレストランは閉まっている。
フロントの男性にトルコ語で「朝食会場どこですか?」と尋ねて教えてもらい「オーケー、ありがとう」もトルコ語で言ったら爆笑されてしまった。見覚えのあるアジア人がいつの間にかトルコ語しゃべるようになってるのも朝食会場わかんなくなってるのも面白いよね、そうよね。ホテルの従業員としてはカジュアルかつちょっと失礼だけどそういうとこ嫌いじゃないわ。

最上階のレストランに行って、窓辺の席で朝食をとった。

朝食においしいチーズが食べられる生活が今日で終わるだなんて。

朝食ビュッフェの料理を補充したりテーブルを片付けたりするのは学生アルバイトのように見える若い子たちで、ひとりは廊下の椅子で居眠りしていた。うん、そういうとこも好き。仕事を与えられたからといって頑張りすぎないとこ大好きよ。

ホテルの仰々しい内装を名残惜しく思いながらチェックアウトして、ロビーでフレディを待った。
エセンレル・オトガルに行くとケバブ屋の店員だか客だかわからない男たちから「ハロゥ、アンニョンハセヨ、ダバイダバーイ」とユニバーサルデザインを心がけたみたいなキャットコールを受けた。やはりエセンレル・オトガルはわたしにとって鬼門だ。
後にルークから「エセンレル・オトガルのドキュメンタリー観たんだけど、地下でドラッグの売買が行われてるんだってさ! 俺も知らなかったんだよ! あそこはヤバすぎ。もっと早く教えてあげられればよかったんだけど!」という連絡が入った。『地球の歩き方』はイスタンブル新空港の情報が載ったものが近く発売されるはずですが、新しい版にはよく目立つように警告が書いてあるといいな……。エセンレル・オトガルからバスに乗るのはいいが、地下には絶対降りるな、と。

空港行きのバス(Havaist)はクレジットカードで運賃を支払うことができた。
実は初日に空港のATMで四苦八苦しながらお金を引き出したんだけど、そんなことする必要なかったかもな……。クレジットカードでバス代を払って、レートがいいと評判のグランド・バザールの両替屋に直接行ってもよかったかもしれない。
バスの運転手さんにトルコ語でお礼を言ったらほめてくれた。

イスタンブルは、のんびりとした休日の朝。
バスに揺られながらわたしはいつのまにか泣いていた。
まだ日本に帰りたくない。
わたしはうんざりするまでトルコにいるべきだ。

「なんで泣いてるのってなんで聞いてくれないの?」
「泣いていたんですか」
「泣いてるよ」
「なんで泣いてるんですか」
「離れたくないから」

フレディは、バスが非常にゆっくりと進むのを気にしていた。渋滞はないけど、とってもゆっくり。

「空港で買い物をする時間がないかもしれない」
「いいよ。わたしはひとりで買い物できるから。先に行って」

泣きすぎて頭がくらくらしてきた。
脱水症状だ。ポカリスエットを飲まなきゃ。ポカリスエットってトルコではどこで買えるの?

「君にお菓子を買ってあげたかったのに……」

ああ、そうか。
このひと、昨日わたしが多めに出した分、お土産で返そうとしてくれてたんだ。律儀だ。
律儀さに感動してまた泣いた。ひどい顔になってると思うけど、もういい。

空港に着いて、ありがとう、すごく楽しかった、帰りたくないけど帰るね、と伝えて握手をした。
「もう行って。先に行って。これ以上泣きたくない」
フレディは父親のように微笑んで国内線ロビーに向かっていった。

わたしは空港のソファでしばらくの間ぐったりと休み、シンガポール航空のチェックインカウンターに進んだ。
男性スタッフはどう見てもトルコ人(もしくはヨーロッパ人)だけど、航空会社の方針なのか、目が合った瞬間にっこりと微笑んで話しかけてくれる接客だった。YouTubeで見たアメリカのスターバックスのような、日本の百貨店のような。空港はもうトルコの外なんだな。

通路側と窓側どちらがいいか尋ねられ、ちょっと考えていたら、
「景色が見たい?」
と彼は言った。

そうだ。わたしは景色が見たい。
臙脂色の屋根の並ぶ景色を見たい。
金角湾が見たい。
モスクの尖塔が見たい。
本物のトルコをミニアトゥルクのサイズで見てみたい。

「OK。イスタンブルからチャンギ、チャンギから関空、両方とも窓側をお取りしますね」

空港内の免税店は値札がいちいちユーロだった。財布に残っているのはトルコリラ。リラ払いも言えばできるのかもしれないが、お釣りは使うあてのないユーロで受け取ることになるのかな……。まあここは普通カードで買い物だろう。いやしかし、かなりお高い。感覚として日本のお土産の2倍か3倍くらいの値段が設定されている。
ロクム(ターキッシュ・ディライト)を試食してみたら結構おいしかったのだけれど、粉があるから職場で食べるお菓子には向かない。チョコレートはシンガポール滞在中に溶けないかやや心配だ。冷房が効いているから大丈夫とは思うけど。

ゆっくりと悩んで、結局エルマ・チャイの素とチョコレートを買った。「エルマ・チャイ」は直訳するとアップルティー。紅茶に香りをつけたアップルティーではなく、紅茶成分ゼロの実質りんごジュースだ。トルコではそれをエルマ・チャイと呼ぶ。

ふらふらと搭乗口に向かい、時間が過ぎるのを待ち、飛行機に乗り込んだ。土産物を吟味していたから涙は止まっていたけど、水分が足りなくて気分が悪い。
機内で白湯がほしいなと思いながら「水をください」と言ったらちゃんと白湯が出てきた。無意識のうちに “hot water” と言ったのだろうか。それともわたしの顔が青ざめていたからCAさんが東洋医学的な配慮で白湯にしてくれたのだろうか。
先日何気なく鞄に入れて取っておいたPide by Pideの塩を舐め、白湯を飲んだ。

そして関西国際空港に帰ってきました。

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半分妄想トルコ日記(5日目・後編)言い値で買うことは許されません

ラマザン(英語だとラマダン)は終わった。いまはバイラム(ラマザン後の祝祭)。バスやら電車やらほとんど無料になっていて、チャージしていない空っぽのイスタンブルカード(イスタンブル専用ICカード)をかざして乗車することができた。(じゃあカードかざす必要なくない?)

フレディに、エジプシャン・バザールに連れて行ってほしいと頼んだ。残念ながらバイラム中はアーケードは閉店、ただし周辺にわずかに開いている店もあり、買い物する人でごった返していた。

「何が買いたいのですか?」
「石鹸が3つ、スカーフが3枚、お菓子を2箱、あとバラ水を1本か2本買いたいの」
フレディはとても真剣な顔で、
「バザールで買い物をするなら我々はトルコ式に交渉しなければなりません。値切らずに買うことは許されません
と言い出した。
「君が行くと観光客用の値段をふっかけられます。私が交渉しますから君は後ろにいてください。欲しそうな顔するの禁止です。笑うのも禁止です

なんだろう。許されないとはなんだろう。
たしかにガイドブックやらブログやら読んでもそんな風に書いてあるけど。わたしが損をするだけではなくお店の人にもすごく失礼みたいな感じなのかな。よくわからない。
ともあれフレディとわたしは化粧品やスパイスを扱う店を回り、わたしはサングラスをかけ眉間に皺を作って日本語でちょっとした悪態を(標準語だと日本語のわかる店員さんだったとき申し訳ないので岡山弁で)吐いたりして、数百円値切ることに成功した。これはけっこう楽しかった。
また再訪するとして、ひとりで同じように交渉できる自信はないんだけど、今度は安くしてもらった後に握手して「ありがとう友よ!!」みたいなトルコっぽいやりとりをしてみたいな。(君はまたそんな! この国の男は誤解します! とフレディに叱られるかもしれない。女性の店員さんが増えますように)

「でも、いいんですか。さっきの店員が、日本でも同じバラ水を売ってるって言ってましたよ」
「値段がぜんっぜんちがうの! 日本では高くて気軽に買えないんだよ」
石鹸とバラ水は手に入ったものの、お菓子はまだだ。最終的に空港で買うという手もあるし(と思ったのはかなりの誤算だった。後述します)ひとまずスカーフか。
「スカーフはどこで買えるかな。ホテルの近くにいいお店があったんだけど」
「おそらくそこもバイラムで休業です。ショッピングモールに行きましょう」

2日目に夕食を食べに行ったショッピングモールで、安くなっていた秋冬物のスカーフを何枚か選んだ。1枚20リラ(400円)くらい。日本人の感覚では1枚3000円くらいしそうに見える。物価の差と需要の差によってスカーフはものすごくお得。カパル(イスラム教の戒律に従ってヒジャブで髪を隠している女性)のひとにとってスカーフは消耗品なのだ。

いつもあなたが行くようなとこで食事がしたい、と旅行前から言っていたこともあり、この旅の最後の夕食もショッピングモールだった。いま思えばロカンタ(ずらっと並んでるなかから食べたいおかずを選んでよそってもらって会計する讃岐うどん的システムの大衆食堂)にも行きたいって言っておけばよかった。

相変わらずすべてにおいて量が多い。

彼は基本的には「赤い肉(牛、羊など)」が嫌いで、チキンをこよなく愛する。兵役を経験したひとにそんなこと言われると恐ろしいトラウマを想像してしまうが、子供の頃からの食わず嫌いのようだった。ここのチキンはフレディのおすすめ。ぱさつきのない、しっとりふっくらしたチキンだった。ペンネは薄味だったので塩を振った。

「まだそんなに遅くない時間ですけど、どこか行きたい場所はありますか」
「パブに行っていっしょにビール飲もう!」(注:半分くらい本気)
「ハハハ。だめです
「そうだよね、フレディは煙草も吸わないしぃ、お酒も飲まないしぃ」
「つまらない人間でしょう?」
「だが、そこがいい!」

結局わたしたちは少し散歩して、公園のベンチに腰掛けて翌日の集合時刻を確認した。フレディは国内線で親戚の家へ向かうのだ。わたしは昼過ぎの国際線に乗ってシンガポールを経由し、日本に帰る。

「新空港からエセンレル・オトガル(エセンレルのバスターミナル)までどのくらいかかったか覚えていますか」
「覚えてないけど、どこかにメモしたよ。ちょっと待ってね、えっと……30分」
「すばらしい」

こういうのはトルコの人がイメージする「日本人らしさ」にあてはまるのかもしれない。ルークにわたしが書いた旅程表を見せたら「日本人だね〜!」と大受けだった。

英語は適当だけどわりと細かくやりたいことをあれこれ書いた旅程表

だってツアーなら旅行会社のひとが旅程表をくれるんだもの。わたしにとっては初めての海外への個人旅行なのだから、詳細な旅程表がないと不安に駆られるじゃないか。
訪れる予定のない地方を外して束ね直した地球の歩き方に旅程表を貼り付け、(いかにもガイドブックらしい表紙が見えないよう)わら半紙の表紙を付け、それとは別に薄いメモ帳も持っていった。
出発前に確認する持ち物リストと何日目に何を着るかの計画は地球の歩き方に貼り付けてある。
どうですかトルコのみなさん。日本人っぽいですか、この行動。

ホテルに戻って、部屋の前の廊下でお土産を交換した。
フレディは、シャルワルを3着もくれた。わたしがマベル・マティスのミュージックビデオ(下の動画をご参照ください)を送って「こういうトルコのお婆ちゃんみたいな服がほしいの!」と無茶を言ったから田舎に帰省した際に買っておいてくれたのだ。シャルワルというのはトルコの伝統的な作業ズボン、いわばもんぺである。たぶんサルエルパンツの語源なんだと思う。布をたっぷり使って大きめに作ってあるのでサラッとして日本の夏にとてもいい。足を開いて座るのに適した服で、ソファなどにドーンと座ってもどことなく優雅に見える。
わたしは日本の文房具やてぬぐいを渡した。離れて暮らすお子さんがいるのを知っていたらポケモングッズでも持ってきたのに。

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