不定期連載」カテゴリーアーカイブ

【岡山市北区表町】至高のダルカレー/俳枕DIY(第3回)

春浅しダルカレーは辛くないカレー  石原ユキオ

ダルカレーをはじめて食べたとき、(相対的な)辛くなさに驚いた。ゼロ辛を選んだわけではないのにマイルドでとても食べやすい。スパイスは強く香るのに唐辛子のピリ辛は抑え気味。それ以来インドカレーの店でカレーを選ぶチャンスがある場合には積極的にダルカレーを選んでいる。
クワイエットビレッジはわたしが生まれて初めてダルカレーを食べた店で、そしてここのダルカレーを超えるダルカレーを食べたことがない。ひよこが初めて見たものを親と思い込むように、わたしにとって唯一無二のダルカレーだ。余談だがダルカレーの原料はひよこ豆です。

【岡山市北区後楽園】桜の季節に賑わう大名庭園/俳枕DIY(第2回)

耳石たゆたう回転性の桜かな  石原ユキオ

花・新婦・レフ板・新郎・カメラマン 石原ユキオ

当時三十代だったわたしは、ある日突然それまでの人生で体験したことのないグルングルンの眩暈におそわれた。こういうときインターネットの情報に頼るのはよくない、とは思ったものの、検索してみると「耳石剥離」というのが近いように思えた。もし正解ならば三日ほどで治るらしいので、吐き気に耐えながら仕事に行き、週末は育児中の友達とゼロ歳児ちゃんと三人で花見にも行った。肌寒いが天気はいい。結婚式の前撮りのひとたちが和装でポーズを取っている。
見上げると桜の花が回っていた。
楽しくて、気分は悪くて、景色が美しかった。

【岡山市中区門田屋敷】礼法室のある中学校/俳枕DIY(第1回)

礼法室みんなで雑に障子貼る  石原ユキオ

地元の中学校はわたしが小学校高学年になる頃には窓ガラスがあらかた割れ校庭を原付が爆走し廊下を自転車が行き来するマッドマックス(1979)もかくやの世界となっていた。両親と祖父母と塾の先生に心配されたわたしは中学受験をすることとなり、門田屋敷にある中高一貫の女子校の入試説明会に放り込まれた。パンフレットや過去問をもらい、学校生活や入試の内容についての説明を聞き、そのあとで礼法室という障子のある広い和室に移動して茶道体験をした。お茶菓子はグラデーションのきれいな紅葉の形の練り切りだったのを覚えている。実際にはそこには進学しなかったのだが、もし進学していたら礼法室の障子を張り替える日もあったのだろうか。
「障子貼る」は秋の季語。昔は冬が来る前に障子を張り替えていたらしい。