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#副産物の会 vol.5

ブログでは告知できたりできなかったりいろいろですが、ネットプリントはすくすくと成長し、いまは5号が配信中です。
俳人の松本てふこさんと読書超人みやさとさん(すみません、この肩書きはいま考えました)に互いに積読本を勧め合ってもらう「お前も積読にしてやろうかバトル」、歌人・俳人で文芸同人「北十」代表の音無早矢さんによる「短歌テストステロン」(朗読も聴けるよ!)、そして石原の「ジェンダーアイデンティティとかのはなし」など、盛りだくさんな内容です。
諸事情によりコンビニから入手困難という場合にはツイッターのDMなどでご連絡ください。

#副産物の会 vol.5 セブンイレブン1月1日まで、その他のコンビニは1月9日まで。4ページ80円。
▼ネットプリント(セブンイレブン)
予約番号: 22411323
有効期限: 2023/01/01
▼ネットワークプリント(ローソン、ファミマほか)
ユーザー番号: WMDCTZEFLB
有効期限: 2023/01/09 09時頃

わたしたちこそが副産物ではないか

副産物の会 vol.2 先日配信終了しました。そのうちアンコール配信をするか、PDFにまとめるか、紙でまとめるかするんじゃないかと思います。
紙面のかなりの部分を占めていた「2044年の句会から」という小説は、アンチハラスメントポリシーが一般的になった未来の句会の様子を描いたものです。最後にまるでCMのように缶バッジが登場します(まだBOOTHからの引越しができておらず、メールやDMでご連絡いただいて発送する完全自力アナログ通販となるため、わたしに住所を知られても大丈夫な方のみご注文ください)。
実はこの小説自体、完全に「副産物」なのです。『俳句四季』8月号掲載の「俳句生活安全缶バッジに込めた思い」という文章を書きあぐねていたときに「どうしても書けなかったらこれを掲載してもらえないか交渉してみよう」と思って書いていました。結果として、小説を書いたあとはすっきりした気持ちで当該記事の執筆に移ることができました。よかった。
ちなみに 副産物の会 vol.3 では続編を配信予定です。

#副産物の会 vol.2 8月19日まで

「2044年の句会」

「2044年の句会」をテーマにAI(Midjourney)に描いてもらった画像です。

ネットプリント「副産物の会」vol.2 全国のコンビニで配信中です。
今回は俳句の未来について。
わたしの書いた「2044年の句会から」という小説が思いのほかボリュームが出てしまい紙面の約四分の三を占めていてすみません。
あとの四分の一はツイッターで募集した #2044年吟行 から何作か抜粋して紹介しています。
(忙しいひとはここだけ読みましょう)

#2044年吟行 と同時にもうひとつ、 #2044年の句会 というタグを作って皆さんに未来の句会はこうなってたらいいな、という夢を投稿してもらおうと思っていたのですが、こちらはみやさとさんが考えてくれたくらいのもので全然盛り上がりませんでした……。

いま句会をさかんに開催してるひとは、改善していきたい点とか、はやく手頃な値段で利用可能になってほしい新技術とか、存在していたらうれしい公共施設とか、そういう想像はしないものなんでしょうか。それとも22年後は戦争なり貧困なりのせいで句会なんてやってる場合じゃなくなってるだろうと思ってるんだろうか。塹壕の中でも、防空壕の中でも、俳句をやるひとがふたりいたら句会はできるとは思う。でもそんな悲劇的でドラマチックなシチュエーションは求めてなくて、俳句を含めて普通の生活を続けられる未来がいいです。

ところでこの記事を書き始めたら、台風の影響っぽい雨がやってきました。
家から出られないけど家にいても暇すぎるしネプリが読みたいぞ、という場合はお気軽にDMでご連絡ください。

『俳句四季』8月号に寄稿しています。

『俳句四季』2022年8月号「誰もが安心できる句座のために #MeTooのその先へ」と題した特集に「俳句生活安全缶バッジに込めた思い」という文章を寄稿しています。

ふだんからわたしを知る方には「またその話か」という内容だと思いますが、紙媒体に載って普段ならぜったい届かない相手に届けることができて(届いてるよな!?)よかった。

高松霞さんと山本千晶先生の対談は、「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」の冊子やnoteで伝わりにくい部分を補足するような内容になってます。

執筆者それぞれがそれぞれの切り口で短詩界隈のセクハラ問題について書いていて、特集全体として充実した内容だけに、基礎的な用語解説とかあった方がよかったのかな、ということもちょっと思ったりしました。

セクシャルマイノリティ関係に関しては明石市のウェブサイトがわかりやすいのでおすすめです。

LGBTQ+/SOGIEの基礎知識

活動記録(2021年)

「俳句生活安全缶バッジ」を制作・販売

〈メディア掲載〉
・東京新聞2021年10月16日夕刊(外山一機「俳句のまなざし」)
・俳句総合誌『俳句四季』2021年10月号(野口る理「ただ俳句だけ作っていたかったけれど」)
・俳句雑誌『雪華』2021年10月号(鈴木牛後「余音−雪華集を読む」)
・『丘ふみ游俳倶楽部終刊記念句集』(中山奈々「缶バッジ」)
・短歌雑誌『心の花』2021年11月号(佐藤博之・時評「わたしは作中人物じゃないですよ」)

〈ちらっと登場〉
角川『俳句』2021年12月号
外山一機の評論「BL俳句という可能性」に、俳句生活安全缶バッジに関する文言が引用される。

●ウェブマガジン「Sisterlee」に『俳句コミュニティにフェミニズムの視点を。私が「俳句生活安全缶バッジ」を作った訳』を寄稿。

『文學界』2021年8月号
川野芽生「この言葉をあなたが読まないとしても」に石原ユキオの俳句「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 初詣」他が引用される。
(連作「ロココごころ」より)

●シリーズ「俳句さんに似合う香水を見つけてあげる」ブログ執筆

●YouTubeチャンネル「泣きみかん放送協会」を開設。「俳句を読む!」など配信スタート

活動記録(2020年)

●『野性俳壇』2020年2月号にて佳作(長嶋有選)
枯蔓をひいておわりのなき世かな

●『野性俳壇』2020年3月号にて佳作(夏井いつき選)
猫柳スパイ暮らしは辛かろう

●『野性俳壇』2020年6月号にて特選(夏井いつき選)
子燕にちかづいてゆくガンマイク

●『野性俳壇』2020年8月号にて佳作(長嶋有選)
カルキくさいゆびからもらうフエラムネ

「週刊俳句」(2020年8月9日)に太田うさぎ「息災」評を寄稿

長嶋有『俳句は入門できる』(朝日新書)に一句掲載
メフテルは寝起きによろし夏の雲

〈その他のトピックス〉
◎BL句会で提案した「萌え選」システムが歌誌『かばん』の歌会にて採用 →2020年6月号「短歌とBL」
◎短歌ムック『ねむらない樹』Vol.5に谷じゃこさんがコラム「石原ユキオになりたい」を寄稿

#俳句生活安全缶バッジ メディア掲載情報

『俳句四季』2021年10月号
「忙中閑談」のコーナーで、野口る理さんの「ただ俳句だけ作っていたかったけれど」と題した随筆にてご紹介いただきました。

俳句雑誌『雪華』2021年10月号
鈴木牛後さんの「余音(よいん)−雪華集を読む(八月号より)−」で「わたしは作中人物じゃないですよ?」バッジをご紹介いただきました。

東京新聞2021年10月16日夕刊
外山一機さんの「俳句のまなざし」でご紹介いただきました。

▼『丘ふみ游俳倶楽部終刊記念句集』
中山奈々さんに「缶バッジ」という随筆でご紹介いただきました。

短歌雑誌『心の花』2021年11月号
佐藤博之さんの時評にてご紹介いただきました。


Sisterlee寄稿の件と情報提供のお願い


インターネットとフェミニズムに関するウェブマガジンSisterlee俳句生活安全缶バッジに関する記事を寄稿しました。どういった経緯で缶バッジを作ったのかわかりやすくまとめていますのでまだの方はぜひご一読くださいね。

俳句コミュニティにフェミニズムの視点を。私が「俳句生活安全缶バッジ」を作った訳

ツイッターではいろんな反響がありました。
好意的な意見もありますし、ハラスメント防止は大事だけど缶バッジの文言自体には抵抗を感じる、という立場の人もいる(うん、めっちゃわかるよ)。わたしの記事から考え始めたのにいつの間にか藁人形を叩いているひともいる。

ただ、わたしがどこか期待していた反応が返ってきていないなと思いまして。

「うちの句会(歌会)だってハラスメント防止の取り組みをしています! なんで子連れ句会だけ取り上げるんだ! そうやっておともだち同士で誉め合ってろこのあんぽんたんがーーーーーッ!」

という怒られが発生してほしいと思っていたのです。
そしたらさ、

「もっと! そこを!! アッピール!!! してください!!!! 大事なことなんだから!!!!!」

って言えるじゃないですか。
ハラスメント防止の取り組みって「ハラスメント防止の取り組みをしています」と大々的に言うことが大事だと思います。それだけでハラスメント予防になる(なんでもかんでもハラスメント扱いしやがってけしからん! なんていう歪んだ考え方のひとが向こうから避けてくれる)し、参加を検討しているひとの安心感につながる。わたしからも安心しておすすめすることができる。

ところがどっこい!
いまだに「うちだってやってます! ぷんぷん!」系のリプライが来ないんですよね!
敢えて言うならsororiさんが「現代俳句協会インターネット句会 利用規約」でハラスメント防止を掲げていることを教えてくれましたが、その一件のみなんです……。

うそだろ……ほんとはみんな宣言とか規約とか書いて持ってるけどあんまり周りに知られてないだけなんだろ。だって句会歌会結社協会連盟…って日本中にいっぱいあるもん。もっとあるでしょ。ガンガン来てくれ。外に向けて大声で言ってくれ。

ということで、
「句会のサイトにこんな規約を掲げています」「結社誌にハラスメント撲滅宣言が載ってます」「実は相談窓口があります」といった情報をお待ちしています。可能ならURLや画像など、具体的に確認できるものを添えてほしいです。口頭での案内をしている場合にはメモとかでも。自分の参加している会以外の情報もぜひお寄せください。
連絡先:Twitter @yukioi

Sisterleeをきっかけにプチバズった勢いに乗じてよい取り組みを紹介したいです。
誉めるぞ。誉めたい。誉めさせてくれ。

現俳協のインターネット句会の利用規約にしても、作るの、すごく大変だったと思うよ。飽くまでハラスメントや法的な問題についての素人のわたしが見てだけど、よく考えてくれてると感じる。

「性的な関心を引く行為(作品及び選評を含む。但し、文学上のエロスはその限りでない)をしてはならない」

これは「性的な関心」「文学上のエロス」の定義で揺れるかもしれないけど、必要な曖昧さだと思う。性的な句をすべて禁止するなら姫始めの句も消えるものなあ……。

「ジェンダーを強く意識させるコンテキストで、個人や作品を誉めたたえたり貶したりする行為をしてはならない」

ここはつまり女性的なハンドルネームを持つひとが「そんな男性的な句ではなく、女性にしか作れないような句を作ったらどうですか」「女性らしい柔らかな作風ですてきですね」などと言われなくて済むということだ。すばらしい。これ、いい視点だからいろんな句会で導入してほしい。

ということで、まだわたしの目に入っていないすばらしい取り組みをどんどん教えてください。造った仏に魂を注入しようじゃないか!

【関連動画】(2021.11.30追記)

【文學界8月号】川野芽生さんの文章に登場してるよ!

文學界8月号「ファッションと文学」という特集で、歌人の川野芽生さんのエッセイに俳句を引用していただいてます。
めっちゃ嬉しい。夢かな!?
お手元にココシャネルが表紙の文學界がある方は106ページを開いてご確認をお願いします!

『文學界』2021年8月号

『文學界』2021年8月号です。プイプイ!

「この言葉をあなたが読まないとしても」と題してファッションがモチーフとなっている短歌を紹介されているのですが、一緒に引用されているメンバーを紹介すると、田丸まひるさん! 野口あや子さん! 平岡直子さん! ここに入れてもらっていいのか石原の俳句! このメンバーでバンドを結成するとかじゃなくてよかったと思う。プレッシャー半端ないですよ。このメンツに加わるのは。全身に血豆ができるまでタンバリンを練習しなければいけなくなるところだった……。

閑話休題。
かわいい服が好きだからかわいい服を着ているだけなのに、恋愛対象として見られたがっているように誤解されて苦しんだ大学時代の川野さん。セクシュアルハラスメントを行ってきた相手が卒業してようやくファッションやメイクを楽しめるようになったそう。そして昨年ついにロリィタ服を着るようになったという話からの流れで、田丸まひるさんの

わたしにはわたしを生きる意味がある BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 田丸まひる『未来』2020年9月号

に続いて

BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 初詣 石原ユキオ

を引いていただいたのですが、一足早く文學界8月号を手に入れた友人からの「ユキオさんの俳句でファッションが登場するものといえば!」というヒントからこれ一句かと思っていたらこの句を含む「ロココごごろ」という連作から何句も紹介していただいており、正直自分の俳句がここまで丁寧に読み込んでもらえるということがまったくの予想外で、わたしに憑依したひともどこかでびっくりしていると思います(憑依現象については過去の記事をご覧ください)。コミカルな部分を指摘されがちだったけど、その裏にある抑圧まできちんと読み取ってもらえるとは。すごい。

「この言葉をあなたが読まないとしても」川野芽生

「この言葉をあなたが読まないとしても」川野芽生

ものを書いていると、というか生きてると、こういうことがあるんですね……。
引用されてる他の方の短歌もすごくいいし、

わたしはうつくしいものが好きであり、そのうつくしさは世界に自分を贄として捧げるためではなく、世界に背を向けるためにある、という宣言を、旗印のように掲げることができる。

とか痺れるフレーズに満ちているのでぜひ読んでください。

ところで、

わたしにはわたしを生きる意味がある BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 田丸まひる

BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 初詣 石原ユキオ

BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 臣下みな解き放ちたる姫としてゐる 川野芽生

と、少なくとも現時点で3回も短歌や俳句になってるBABY, THE STARS SHINE BRIGHTすごいな!(コムデギャルソンで3つ即座に思いつく? なくない!?)

香水なんて季語は滅べ! | 俳句さんに似合う香水を見つけてあげる(3)

初回第2回はそれぞれ俳句に登場する「桃」「夏みかん」を手掛かりに似合う香水を探しました。
そのあと週刊俳句に出張して太田うさぎさんの「軽薄なふりで夜店に遊びしこと」という句に似合う香水をおすすめしてきました。
今回は「香水」という言葉が登場する俳句さんたちにどの香水が似合うか考えてあげようと思う。

俳句の中に「香水」っていう言葉は、まあまあの頻度で出てきます。
なぜなら「香水」は夏の季語だから。

でも香水好きの方は思うんじゃないだろうか。
夏は纏える香水の種類が限られてしまう。
重めの香りをつけて真夏の電車なんかぜったい乗れないじゃないか。
ちょっと歩き回ったら汗ですぐ流れちゃうし。
秋冬の方が選択肢が広がるしきれいに香らせることができるのに、と。
あるいは、次のようにも考えるだろう。
たった1本の香水でも、温度や湿度が違えば香りの印象が変わってしまう。
だから四季を通じてその香水を試し、さまざまな表情を楽しみたい。
夏だけを特別視するなんて馬鹿げている、と。

改造社の『俳諧歳時記(夏の部)』(昭和22年。たぶん初版は昭和8年)にはこうある。

香水

植物性の香料を酒精にて溶解したる化粧品なり。香料はそれより発散する微量の瓦斯蒸気又は微粒子が人の器官を刺激して快感を与ふるものなり。或ものは濃厚、或は温和、或は強烈、其他種々なる香を感ぜしむ。香料にはローズ・ジヤスミン・ヴアイオレツト・リリーなどあり。その適当なる調合によつて得らるゝ香水は近代人の薫りに対する感覚趣味に適する為め、在来の麝香・匂袋等に代りて用ゐられ、夏季殊に悪臭を消す為めに多く用ゐらる。近年天然香料の成分研究せられ、之が合成の研究進歩するに及び、人造香料の製造を見るに至れり・人造薔薇油の如し。《参照》 掛香

※漢字は新字体に改めました

ほらこれが改造社『俳諧歳時記(夏の部)』の「香水」が載ってるページよ。

そしてこちらは皆吉奏雨『俳句鑑賞歳時記 夏の俳句』(1973年 / 明治書院)での記述。

香水

常時用いられるものでもあるが、汗の臭いなどを消すための身だしなみとして夏の外出などにふりかける。そうしたところからの季題であって、就中夏季に使用されることを基にして公約的に季題となったものであって、人事の季語にはこれに類するものが多い。

なんというか、日本が香水砂漠(諸外国と比べて香水が売れないから流通する数や種類も少ない)なのは、この「におい消しとしての香水」「身だしなみとしての香水」というイメージがまだ滅んでないせいなんじゃないのかな。
義務だとしたら、人間は適当に選ぶだろうよ。それが証拠にサラリーマンのネクタイ選びなんていいかげんなもんじゃないか。(※こだわりを持って選んでらっしゃるごく少数の方ごめんなさい)
香水を夏の身だしなみだとなんとなく刷り込まれてしまったひとが「夏だしなんか匂いつけとこ」「ブランドがお墨付き与えとるから文句ないじゃろ」くらいの意識で真夏に激重オリエンタル系香水を腋の下(ギャー!)にブシュッとしたこともあっただろう。腋臭ミーツ香水、奇跡のマリアージュ。香水分子と手に手を取り合って空中へ飛び立ってゆく悪臭分子。それを鼻粘膜でキャッチしてしまった不運な人々は香水全般を嫌いになってしまったのであった……。
というのはわたしの想像でしかありませんが、そういう側面だってなきにしもアラブ香水アルハラメインじゃない?
(おっと失敬! ついフレグランス駄洒落が出てしまったね!)

不快なにおいはデオドラント製品で消しましょうと先日香水屋さん( LE SILLAGE ル・シヤージュ / 京都 )にもらった説明書に書いてありました。
悪臭を消すために香水をつけるのではなく、悪臭を消したあと香水をつけましょう。

今後、「身だしなみ」じゃなくて「自分が心地よくいられるために身につける香水」という方向に意識改革していくべきですね。
つけたくなければつけなくていいし、どうせつけるなら心地いいものを厳選して、つける場所も季節による香り選びも工夫して。
そうすることがかえって他の人を不快にさせない香水の使い方につながるのではないかと思う。
少し前になりますがイソップのヒュイル(ひのきの香り)がツイッターでバズったのは若い世代が潜在的に心地いいものとしての香水を求めてるからこそでしょう。

だからもう夏の季語としての香水は滅べ。
今後香水を夏の季語とすることはまかりならん。無季じゃ無季!

※こちらが件のバズったツイート。個人的にはヒュイルを試す前にサンタマリアノヴェッラとかラボラトリオオルファティーボとか、いわゆる「香水」のイメージとは違う心地よさのある香水を試していたので言うほどの衝撃はなかった。でも、うん、気持ちはわかる。

というわけでようやく俳句さんたちの登場です。

香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男

とりつくしまのない感じ! 一分の隙もない感じ!
N°5  P / EDP / EDT その他いろいろ | シャネル …香水の代名詞とも言える定番中の定番。お出かけ用の香り。デパート、参観日のお母さん、スナックのママさん。キツイ! というイメージがあって避けてきた。しかしせっかく縁あって香水沼にドボンしたのだから名香と呼ばれるものは試してみなければ。今回はEDTとEDPを試香紙で試してみました。ていうかちょっと待って。パルファン(P) とオードトワレ(EDT)を調香したのがエルネスト・ボーさん(シャネルの初代調香師)で、オードパルファン(EDP)を調香したのはジャック・ポルジュさん(三代目)なのね? そしてN°5シリーズのなかにN°5ローっていう軽めのやつもあるのね? は? ヘアミトもある? 君たちはなぜ物事をそんなに複雑にしたがるのか。
中村草田男の句ですが、鉄壁さんとお呼びしましょうか。「香水キツッ!」と思って相手の懐に入っていけない感じがしたわけですよね。その香りに拒否感を覚えているのは自分なんだけど、全力で拒否されたようにすら感じる。こういうとき人は「●●の花の香りに似た香水」なんて分析はできないと思うので、初めから特定の何かの香りと表現できない(抽象的な香りとして設計された)N°5がしっくりくると思います。いかがでしょうか。あれ? おすすめされたくなかったですか? ああ、逃げていく鉄壁さんの姿が見える……。
まさに抽象的な香りなので形容しがたいのですが、EDTは思ったよりフレッシュで若々しい香り。20代のBA(美容部員 / コスメカウンターのスタッフ)さんの香りという感じがしました。EDPは粉っぽさを強く感じて、おとなっぽい。うん、たしかによく言われるように「お婆ちゃんの鏡台」と言えなくもない。EDTにしてもEDPにしてもわたし自身の考えるの心地よさとは全然違う方向の香り。でもベテランBAさん曰く「お好きな方は安眠効果があるとおっしゃるんですよ」と。そうか。マリリン・モンローはシャネルの5番を寝香水にしたと言いますからな。

香水の香の内側に安眠す 桂信子

そしてこちらはまさに寝香水の句です。いい香りすぎて一瞬でスヤァ…( ˘ω˘ ) してしまうことありますね。目が覚めてもまた枕からいい香りがして再びスヤァ…( ˘ω˘ ) しちゃうよね。もうお布団から出られない。香水の香の外側に出られない。
サイプレスマスク EDP | トバリ …ひのきの香りと匂い袋のような甘さ。能の世阿弥をイメージした香りだそうです。あまりにも心地よいので大きく吸って大きく吐いてを繰り返しているうちに強烈な眠気に襲われました。イソップのヒュイルもそうですが、ひのきの香りってひのき風呂っぽいからリラックスしすぎちゃうんだよね。Byredoのジプシーウオーターみたいなとらえどころのなさも感じる。トバリのディスカバリーセット(全種類が少量ずつ入ってるセット)を買ってじっくり試したい気持ちもあるんだけど、全部大きいボトルでほしくなりそうで怖い。

香水をひとふりくよくよしてをれず 菖蒲あや

つらいこと、悲しいことがあったとき元気付けてくれるようなポジティブな香りですね。
お名前(菖蒲)にちなんでイリス(アイリス)の香水はいかがでしょう。
シルクイリス EDP | パルファンサトリ …上のトバリと同じくこちらも日本製の香水。フランキンセンスが入っているはずなのですがそこまでお香っぽさは感じませんでした。家事や仕事を落ち着いて淡々とこなせそう。

交換しましょ香水とフラフープ 石原ユキオ

アッ! 香水を夏の季語にするのはまかりならんと言いながら過去の自分が夏の季語としての香水俳句を作っていた!
フラフープと交換しそうなのは100mlの豪華なボトルではない。
ファッションブランド系やセレブの名前を冠した香水など大量生産されている商品には100mlボトルのデザインをそのまま縮小したようなミニボトル(5mlくらい)が手に入るものがありますが、ここで言う「香水」はそうしたミニボトルではないでしょうか。あるいは樹脂製の軽いボトルに入ったボディスプレーとかフレグランスミストのような商品かもしれない。
サムライ ウーマン EDT | アラン ドロン …石原本人の20代の愛用香水。桃とサンダルウッドの組み合わせによるものか、なんとなく和風。空き瓶を嗅いでみてやや経年劣化しているものの「若い女の子の香り!」と思った。懐かしさこそあれ、もはや「自分の香り」ではない。現在販売されているものは初代の香りの雰囲気を残しながらリニューアルされたものになります。

<<引用元一覧>>
香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男『新歳時記 夏』平井照敏・編
香水の香の内側に安眠す 桂信子『新歳時記 夏』平井照敏・編
香水をひとふりくよくよしてをれず 菖蒲あや『現代俳句の鑑賞101』長谷川櫂・編


さて、次回からは再び俳句を一句だけ取り上げて長々とあの香水がいいこの香水がいいと語る形式に戻ります。
ついに! ついに!
海外通販デビューするぞー!!!

注:2020年8月10日現在ラッキーセントというアメリカの通信販売サイトに香水サンプルを注文し出荷連絡が来た状態です。初めての海外通販がうまくいくかどうか一緒にドキドキしてください!