虹と指サック
例外のほうが多いわ枯木に紐
とことわに春待つ顔の社員証
平凡な鱶であったよ桃色の
年度末進行ゆるく指サック
腕章のうれしくおそろしく四月
梅雨茸や患者らしさを保てない
漢数字としての京よ苔に花
睾丸のしんなりうごく油団かな
白南風や敵地に髪をふくらます
天井があなたには床アイスティー
極暑にて怨霊色の口紅を
昼寝しているのは正社員のひと
颱風のなみだぶくろにさしかかる
箱庭に空ひろすぎる彩虹旗
虹と指サック
例外のほうが多いわ枯木に紐
とことわに春待つ顔の社員証
平凡な鱶であったよ桃色の
年度末進行ゆるく指サック
腕章のうれしくおそろしく四月
梅雨茸や患者らしさを保てない
漢数字としての京よ苔に花
睾丸のしんなりうごく油団かな
白南風や敵地に髪をふくらます
天井があなたには床アイスティー
極暑にて怨霊色の口紅を
昼寝しているのは正社員のひと
颱風のなみだぶくろにさしかかる
箱庭に空ひろすぎる彩虹旗
風味Z佳
ウイルス性感染症が原因と見られる特殊神経疾患は都市部を中心に規模を拡大しており政府は各自治体に臨時診・所を・・感染・の隔離と治・・・・る・・を・・・・し・
鰻寄せられゼリーのなかをややうごく
フェンスごと屍を焼いている遅日
産声即断末魔となりぬ桜蕊
はらわたを指に巻き首に巻き風薫る
吐瀉物のやさしき色や土砂降りに
噴水の水に歩みて飽きぬなり
苔に花そとにとまどうアニサキス
墨色に蓮はつぼみのまま朽ちぬ
日盛の骨を咬まるる重さかな
舐めても吸っても歯茎しかないですよ
詩人の郡宏暢さんが制作・デザイン・世話人を務める詩誌Uneditedに「虹と指サック」と題して俳句14句を寄せています。
郡さんといえば労働の辛さを任意の酒で割って串刺しの色気をそっと添えたような詩を書かれる方なので、わたしも作品をまとめるにあたり「労働つら!」の要素を盛り込みました。
タイトルの種明かしをすると、
年度末進行ゆるく指サック
箱庭に空ひろすぎる彩虹旗
という2句から取っているのですが、「指サック」に象徴されるのが労働なら、「虹」は労働の場で異物扱いされてしまう、ひとそれぞれの自然なあり方と捉えてもらってもいいかもしれません。
六月、職場のロビーにレインボーフラッグが掲げられていました。いまは形ばかりの取り組みかもしれないけれど、形ってのが結構大事だと思う。
2023/7/9(日)開催・文学フリマ札幌8にて頒布開始の『砂時計』第5号に寄稿しています。
「創作と表象」をテーマとした特集に「俳句に憧れる八歳の女の子のためにーー俳句におけるはたらく女性の表象について」という題で文章を書かせてもらいました。
わたしは女性として生まれ育ち(実感はさておき)いまも女性として生活しています。小説、映画、ポップスの歌詞や広告などにおける「女性」の描かれ方には違和感を覚えることが多く、俳句や俳句評論でも「女の扱いがひどすぎんか?」とたびたび感じてきました。今回の文章ではそういった違和感やむかつきをエネルギー源にしつつ、特に労働する女性の表象に焦点を絞り、次のような俳句を紹介しました。
酌婦来る灯取虫より汚きが 高浜虚子
→超有名句ですが読むたびに新鮮に腹立つ。
炭俵かつぐ乳房を縛されて 菖蒲あや
→菖蒲あやさんは小節のきいたブルースだよね。
母という脱げ易きもの夏木立 花森こま
→「母」の描き方として発表された当時(1995年)としては異色だと思う。
銀漢や女所帯の編集部 松本てふこ
→この句については神野紗希さんの『女の俳句』での評が納得できないぞ! ということを書きました。
薔薇ピンクイエローのり子美容室 岡田一実
→かわいい。めでたい。好き。
ちなみに「俳句に憧れる八歳の女の子のために」というフレーズは、『オーシャンズ8』という映画の「これは私のためでもあなたたち自身のためでもない/この世界のどこかで犯罪者を夢見る8歳の少女/彼女のためにやろう」という台詞に由来しています。
世の中を変えていくのは容易ではないけれど、みんなで壁を少しずつ殴ったり削ったりして小さな罅を入れていけば、いつかはぶっ壊せるに違いないのです。わたしの文章は、先人の作った罅のそばを狙って打った小さな小さなハンマーの一撃にすぎないけれど、それでもきっとつぎの誰かの戦いの一助になるだろうと信じて書きました。(激重!)
文フリ札幌に参加される方は【お-25】北十のブースにてぜひお求めください。北十のウェブショップからも入手可能です。
今年度から雇用が(ほぼ)安定し年間の繁忙期・閑散期が予測可能となったため、繁忙期を避けて原稿依頼をお受けすることに決めました。俳句でおなじみの「渡り漁夫」「毒消売」といった季節労働者のように、「季節創作者」になろうと思います。
できること:俳句、随筆、書評、グルメレポート、簡単な動画制作、書店用POP制作、イラストレーション(デジタル、色鉛筆、コピック、刺繍、消しゴムはんこ)、声の出演、等
できないこと:シンポジウム登壇、インタビュワー、ストーリー漫画、その他気乗りしないこと全般
原稿料:応相談(現物、LINEギフト、LINE送金、Amazonギフト券も可)
下記のスケジュールを目安にご依頼ください。
(完成までに必要な時間は原稿の種類、文字数などによって変わります。ご相談ください)
5月オファー → 締切7月末以降なら可能
6月オファー → 締切7月末以降なら可能
7月オファー → 締切8月末以降なら可能
8月オファー → 締切9月末以降なら可能
9月オファー → 締切10月末以降なら可能
10月オファー → 締切11月末以降なら可能
11月オファー → 締切12月末以降なら可能
12月オファー → 締切1月末以降なら可能
1月オファー → 場合によっては可能かもしれない
2月 対応不可
3月 対応不可
この予定は昼の仕事の状況により変更する場合があります。
また、ご依頼が殺到した場合はうれしい悲鳴を上げながら予定表を取り下げるかもしれません。
連絡先: ishiharayukio*gmail.com
*をアットマークに変えてメールしてください。
ブログでは告知できたりできなかったりいろいろですが、ネットプリントはすくすくと成長し、いまは5号が配信中です。
俳人の松本てふこさんと読書超人みやさとさん(すみません、この肩書きはいま考えました)に互いに積読本を勧め合ってもらう「お前も積読にしてやろうかバトル」、歌人・俳人で文芸同人「北十」代表の音無早矢さんによる「短歌テストステロン」(朗読も聴けるよ!)、そして石原の「ジェンダーアイデンティティとかのはなし」など、盛りだくさんな内容です。
諸事情によりコンビニから入手困難という場合にはツイッターのDMなどでご連絡ください。
#副産物の会 vol.5 セブンイレブン1月1日まで、その他のコンビニは1月9日まで。4ページ80円。
▼ネットプリント(セブンイレブン)
予約番号: 22411323
有効期限: 2023/01/01
▼ネットワークプリント(ローソン、ファミマほか)
ユーザー番号: WMDCTZEFLB
有効期限: 2023/01/09 09時頃
副産物の会 vol.2 先日配信終了しました。そのうちアンコール配信をするか、PDFにまとめるか、紙でまとめるかするんじゃないかと思います。
紙面のかなりの部分を占めていた「2044年の句会から」という小説は、アンチハラスメントポリシーが一般的になった未来の句会の様子を描いたものです。最後にまるでCMのように缶バッジが登場します(まだBOOTHからの引越しができておらず、メールやDMでご連絡いただいて発送する完全自力アナログ通販となるため、わたしに住所を知られても大丈夫な方のみご注文ください)。
実はこの小説自体、完全に「副産物」なのです。『俳句四季』8月号掲載の「俳句生活安全缶バッジに込めた思い」という文章を書きあぐねていたときに「どうしても書けなかったらこれを掲載してもらえないか交渉してみよう」と思って書いていました。結果として、小説を書いたあとはすっきりした気持ちで当該記事の執筆に移ることができました。よかった。
ちなみに 副産物の会 vol.3 では続編を配信予定です。
ネットプリント「副産物の会」vol.2 全国のコンビニで配信中です。
今回は俳句の未来について。
わたしの書いた「2044年の句会から」という小説が思いのほかボリュームが出てしまい紙面の約四分の三を占めていてすみません。
あとの四分の一はツイッターで募集した #2044年吟行 から何作か抜粋して紹介しています。
(忙しいひとはここだけ読みましょう)
#2044年吟行 と同時にもうひとつ、 #2044年の句会 というタグを作って皆さんに未来の句会はこうなってたらいいな、という夢を投稿してもらおうと思っていたのですが、こちらはみやさとさんが考えてくれたくらいのもので全然盛り上がりませんでした……。
いま句会をさかんに開催してるひとは、改善していきたい点とか、はやく手頃な値段で利用可能になってほしい新技術とか、存在していたらうれしい公共施設とか、そういう想像はしないものなんでしょうか。それとも22年後は戦争なり貧困なりのせいで句会なんてやってる場合じゃなくなってるだろうと思ってるんだろうか。塹壕の中でも、防空壕の中でも、俳句をやるひとがふたりいたら句会はできるとは思う。でもそんな悲劇的でドラマチックなシチュエーションは求めてなくて、俳句を含めて普通の生活を続けられる未来がいいです。
ところでこの記事を書き始めたら、台風の影響っぽい雨がやってきました。
家から出られないけど家にいても暇すぎるしネプリが読みたいぞ、という場合はお気軽にDMでご連絡ください。
『俳句四季』2022年8月号「誰もが安心できる句座のために #MeTooのその先へ」と題した特集に「俳句生活安全缶バッジに込めた思い」という文章を寄稿しています。
ふだんからわたしを知る方には「またその話か」という内容だと思いますが、紙媒体に載って普段ならぜったい届かない相手に届けることができて(届いてるよな!?)よかった。
高松霞さんと山本千晶先生の対談は、「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」の冊子やnoteで伝わりにくい部分を補足するような内容になってます。
執筆者それぞれがそれぞれの切り口で短詩界隈のセクハラ問題について書いていて、特集全体として充実した内容だけに、基礎的な用語解説とかあった方がよかったのかな、ということもちょっと思ったりしました。
セクシャルマイノリティ関係に関しては明石市のウェブサイトがわかりやすいのでおすすめです。
ふわっとした言い方であれだけど、ドアが開いた感じがした。やはりいろんな立場のひとがいろんな言い方で問題について言及することは必要なんだと思います。石原は親しみやすいカジュアルな言葉で缶バッジの話をしています。
『俳句四季』8月号[特集]誰もが安心できる句座のために pic.twitter.com/N9dpAxTvba
— 石原ユキオ (@yukioi) July 23, 2022
●「俳句生活安全缶バッジ」を制作・販売
〈メディア掲載〉
・東京新聞2021年10月16日夕刊(外山一機「俳句のまなざし」)
・俳句総合誌『俳句四季』2021年10月号(野口る理「ただ俳句だけ作っていたかったけれど」)
・俳句雑誌『雪華』2021年10月号(鈴木牛後「余音−雪華集を読む」)
・『丘ふみ游俳倶楽部終刊記念句集』(中山奈々「缶バッジ」)
・短歌雑誌『心の花』2021年11月号(佐藤博之・時評「わたしは作中人物じゃないですよ」)
〈ちらっと登場〉
・角川『俳句』2021年12月号
外山一機の評論「BL俳句という可能性」に、俳句生活安全缶バッジに関する文言が引用される。
●ウェブマガジン「Sisterlee」に『俳句コミュニティにフェミニズムの視点を。私が「俳句生活安全缶バッジ」を作った訳』を寄稿。
●『文學界』2021年8月号
川野芽生「この言葉をあなたが読まないとしても」に石原ユキオの俳句「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 初詣」他が引用される。
(連作「ロココごころ」より)
●シリーズ「俳句さんに似合う香水を見つけてあげる」ブログ執筆
●YouTubeチャンネル「泣きみかん放送協会」を開設。「俳句を読む!」など配信スタート