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第3回超人 #タッグマッチ句会 プレイバック

恒例になりつつある古本斑猫軒店主ミコシさんとわたくし石原ユキオの句会プレイバック対談、今回は2019年11月〜12月に開催された第3回超人タッグマッチ句会の俳句を振り返りたいと思います。

タッグマッチ句会とは

「タッグマッチ句会」とは、二人一組で参加する句会です。共作した句を投句し、選句・選評も二人で相談して行います。

兼題は【食べ物しばり】【別に】【加湿器】。2名1組のタッグチームが兼題を含む4句を共作し、代表者がシステム上から投句しました。
句会参加者は特選1句、並選12句をタッグで選ぶというルールですが、我々もだいたい同じくらいの数を選ぼうということで各自特選1句と並選6句を選びました。

(CM)石原の句も掲載されてる『俳句は入門できる』をよろしくおねがいします。

ミコシ(古本斑猫軒)選
【特選】
記憶する水の冥きを鮟鱇が  (クリームソーダ)
【並選】
寒昴アル・アヒージョの海老縮む  (Jサポーターズ)
風花や霊柩車から空撮る子  (Jサポーターズ)
一匙の羊の脳やクリスマス  (ヘル⭐︎コンビ(from Hell))
年の瀬のトングの掴むちくわ天  (モストドンジャラスコンビ)
加湿器に重くなりゆく楮紙  (けむ子とめぇ子)
加湿器にバリスタのつぐ美しき水  (馬鈴薯姉弟)

石原ユキオ選
【特選】
どのポケットに手を入れようか寒鴉  (ヘル⭐︎コンビ(from Hell))
【並選】
小春日のフィレオフィッシュの軽さかな  (ゴールデン💘アローズ)
くらやみにトマト缶ある寒さかな  (ペーパードライヴァーズ)
タッパーのさまざま集い聖夜来る  (閉所と暗所)
雪女遅れます先はじめてて  (ラブ&サンダー)
ふりかけのをはりは粉よクリスマス  (たいやきズ)
湯気立てて職員室は明るい部屋  (ペーパードライヴァーズ)

かっこ内は(久しぶりに見るとぎょっとしますが)チーム名です。並選は選句用紙の番号順に並べました(川柳の句会みたいに評価の高い句から順に並んでいるわけではない)。

八宝湯ぜんざい

不穏なので特選にしました

どのポケットに手を入れようか寒鴉  (ヘル⭐︎コンビ(from Hell))
[ ユキオ特選 ]

ユキオ これ自分がポケットの多い服を着ていて「どのポケットに手を入れようか」と言っているのか、そこらへん歩いてる人の誰かの「どのポケットに手を入れようか」なのかどっちかわからない。他人のポケットに手をいれる話としたら、これって…
ミコシ スリですよね。
ユキオ そう。あるいは、ポケットの中で手をつないだりすることを考えて、適当にそこらへんにいるひとと不適切な関係を結んじゃおっかな的な、そういうのも感じて。
ミコシ すごい。特殊な読み方だな。
ユキオ なんかひととの距離感がいきなり変になる句じゃないですか、後者の読み方をすると。寒鴉という季語ゆえに不穏な読み方を誘ってしまうのだと思います。寒々とした街でスリを働くのかあるいは…
ミコシ そうか。ここは寒鴉じゃなくて何か穏当な季語だったらシンプルに。
ユキオ そう、シンプルに自分のポケットって思っちゃうかもしれない。でも自分のポケットってどれに手を入れようって思いますかね。ズボンかジャケットかぐらいしかない。だからどうしてもこれは他人のポケットを考えてしまいますね。

記憶する水の冥きを鮟鱇が  (クリームソーダ)
[ ミコシ特選 ]

ミコシ 今回の句の中にこういうザ・不穏! ていう句があんまりなかったということもあってこれが際立って見えました。あと、倒置法ですよね。
ユキオ 水の冥きを鮟鱇が、記憶する。
ミコシ 普通に語順を入れ替えて「鮟鱇が水の冥きを記憶する」でも成立する。というか、むしろ文章としてはそっちのほうが正解なんだけど。敢えて倒置法にしたことで鮟鱇の水底の暗いところにいる感じが出たと思います。ここは鮟鱇という文字は一番下に持ってこなきゃだめだ、という妙な納得をさせられました。
ユキオ 「記憶する」で切れて「水の冥きを」で切れて「鮟鱇が」でまた切れる、ぶつ切り感がありますけど、でもまあ鮟鱇ってぶち切られてますしね。
ミコシ 誰かも言ってたかもしれないけど鮟鱇って「吊るし切り」で解体されるんですよね。その感じと言われたらそんな気もする。語順を入れ替えたことにも意味があるように見えてしまう。
ユキオ より凄惨な感じになってるかもしれない。
ミコシ バラバラにされながらも記憶が、意識がまだそこにあるという一種のグロテスクさですね。鮟鱇ってそういうグロテスクなものに似合う言葉な気がするし。

雪女は萌選です

ユキオ 今回「萌選」というシステムは設けてなかったんですけど、自主的に萌選を挙げさせてください。

雪女遅れます先はじめてて  (ラブ&サンダー)
[ ユキオ並選かつ萌選 ]

ミコシ うん、これはシンプルにかわいいですね。
ユキオ なんか「あ~、すみません山田遅れます~」とか「秘書課遅れます~」とか自分の名前や部署名を言う感じで「雪女遅れます」って言ってる。雪女っていう役職の人なのかなとか。
ミコシ どこかで集まって口頭で言ってるのかそれともLINEメッセージみたいなもので言ってるのか。
ユキオ LINEかもしれないですね。
ミコシ このLINE感がどこから出てくるかはちょっとわからないけど。
ユキオ シチュエーションとしては飲み会ですよね。忘年会か何か宴会の前のメッセージ。友達同士というよりお仕事感覚がある気がする。ぬらりひょんの人とかも来ると思うんですよ。
ミコシ うん、来ると思います。
ユキオ そういうかわいい妄想をさせてくれるところがいい。あと雪女の職場での苦労も勝手に考えちゃうんですよ。彼女は季節労働者なので一年中いるわけじゃない。
ミコシ ああ。仕事で遅れるのかなあ。いま繁忙期だから。
ユキオ そう。夏に働くわけにはいかないですからね。
ミコシ 待ってる側もそんな話をしてるんですね。「繁忙期だからねー」って。

悲しみに対する整理のつけ方

風花や霊柩車から空撮る子  (Jサポーターズ)
[ ミコシ並選 ]

ユキオ いかにもありそうな風景ですが。
ミコシ 霊柩車に同乗しているということは亡くなったのは近親者。気軽に写真を撮るっていうのは割と最近の風俗なのでそこでなんとなくこの子の年代や雰囲気が見えてくる。
ユキオ 中学生か高校生ぐらいでお父さんかお母さんが亡くなったっていう。
ミコシ 一種無作法とか不謹慎とはたからは見えることでも、近親者の中ではその無邪気さが救いになることってやっぱりあるわけで。みんなで沈み込んでいれば不謹慎ではないけど救いはない。そこにいっこ穴を開けちゃう存在でもあるし、この子自身としてはこの子なりの悲しみに対する整理のつけ方なのかもしれない。
ユキオ なるほど。
ミコシ 風花っていう、舞いながら空から降りてくるものと、天に帰っていくものという対比もそこにあると思う。風花という季語を活かしながら近親者であるからこその心の機微を描けていると思います。

ダジャレか事故か

寒昴アル・アヒージョの海老縮む  (Jサポーターズ)
[ ミコシ並選 ]

ユキオ すみません、わたし全然調べなかったんですけど、アル・アヒージョって料理の名前なんですか。
ミコシ 海老のアヒージョのことをガンバス・アル・アヒージョというらしいんですよね。どうも「カンスバル」と「ガンバス(=海老)」のダジャレになってるようなんです。なのでこの句はとろうかどうしようかちょっと悩んだんですよね。季語の使い方どうなん? って。で、仮にダジャレではなくて「寒昴アル・アヒージョ」という架空の料理、「星座のオリーブオイル煮込み」だと解釈してみると、けっこう面白くなるんだけど今度は下五の「海老」が分からなくなってしまうし。じゃあ何故この句をとったかというと、「寒昴」という天体が、バル→アル→アヒ→エビと音の連なりを辿って食卓という地上に収斂する星座っぽさを捨ておけなかったというか。
ユキオ んー……やっぱり言葉に変な負荷をかけすぎじゃないですかね。わたしダジャレの時点でとれないな。
ミコシ じゃあ、この句はどうですか。

小春日のフィレオフィッシュの軽さかな  (ゴールデン💘アローズ)
[ ユキオ並選 ]

ユキオ 手に持ったときの物理的な軽さと噛んだときのサクッとカリッとした軽さが出ていると思いました。この変な明るさが好き。
ミコシ 屈託はないですよね。小春日にちょっとつきすぎてるかなとは思うんですが。そこは見逃していいんですか?
ユキオ 小春日、そうねえ。意外性はないですよね、たしかに。
ミコシ 変にひねってくるよりは屈託のなさという意味ではこのくらいでちょうどいいのかな。
ユキオ そういえばフィレオフィッシュってヘルシーそうに見えてカロリーが結構高いんですよね。白身魚とはいえ油で揚げているので。

ちゃんと調べてみるとフィレオフィッシュ(139g) 341kcal。ハンバーガー(104g)256kcalよりは高いものの、マクドナルドのメニューの中ではカロリー低めでした。

ミコシ 魚といえば。この「軽さかな」って「魚」とかかってると思います?
ユキオ ンッ!? え???
ミコシ 考えすぎ?
ユキオ あああああ。そう考えるととれなくなっちゃいますね。ダジャレかあ、と思うと。寒昴アル・アヒージョもダジャレかあと思うと絶対とれないし。
ミコシ わかる。それも気持ちとしてはよくわかる。
ユキオ いや、でもこっちは事故じゃない?
ミコシ うっかりダジャレかな?
ユキオ うっかりダジャレ。笑
ミコシ ところで昔の言葉遊びでこんなのがありまして。

You might think though today’s some fish.

ユキオ ????
ミコシ これ僕の中学校のときのおじいちゃん先生が教えてくれたんですけど「言うまいと思えど今日の寒さかな」って読むんですよ。
ユキオ へっ???
ミコシ You mightは「言うまいと」じゃないですか。thinkと逆接のthoughで「思えど」。today’sで「今日の」。some fishが「寒さかな」。
ユキオ これはひどい! たいしてうまくも面白くもないしなんでわざわざ!
ミコシ そうなんですよ。おじいちゃん先生がいかにも言いそうなことじゃないですか。
ユキオ たしかに!
ミコシ その寒い感じをフィレオフィッシュの句を見て思い出してとれなかったんです。
ユキオ そう言われるとわたしもとれないな。
ミコシ まあでも事故でしょうね。
ユキオ 事故だと思いたいです。

クリスマスとグロテスクさの取り合わせ

一匙の羊の脳やクリスマス  (ヘル⭐︎コンビ(from Hell))
[ ミコシ並選 ]

ミコシ これ逆にユキオさんとらなかったのが意外です。ハンニバルじゃないですか。
ユキオ あれ。ハンニバルってこんなシーンありましたっけ。
ミコシ そのまんまのシーンはないけど。脳を食べるのと『羊たちの沈黙』じゃないですか。一種のグロテスクさというか。羊の脳はハンニバル食べてないんだけど。選評でもハンニバルって書いてる人何人かいて。
ユキオ んー、なんだろう。クリスマスと羊のつきすぎ感でとれなかったのかな。
ミコシ 羊じゃないほうがよかったのかな。
ユキオ でも羊の脳は食べますもんね、実際。
ミコシ クリスマスにグロテスクなものを持ってきたという面白さ。
ユキオ 羊の脳はグロテスクなのかな。うーん。どこで誰が見た景色を誰が書いてるんだろうって考えちゃうと頭で作った感が出すぎちゃうかなっていう気もして。たぶんわたしハンニバルとか好きだからこそちょっとそこらへんには厳しくなっちゃうのかもしれないですね。

もろびとこぞりて

タッパーのさまざま集い聖夜来る  (閉所と暗所)
[ ユキオ並選 ]

ミコシ この句とろうかとるまいか迷ったんですけど。
ユキオ わたしこの「来る」のところに線を引いてるんですけど、「来る」は余計だなって思ったの。タッパーがさまざま集うっていうのは持ち寄りパーティとか、家族連れ子供連れで集まるパーティかもしれないですよね。聖夜のめでたさをいろんなうちから来たいろんな色の蓋のついたいろんな形のタッパーに託して…
ミコシ モノで示したという。
ユキオ そう。そこが面白い。
ミコシ この「集い」からクリスマスの「もろびとこぞりて」的なものを連想するけど、そこまで深読みすると面白くなくなるのかなあ。
ユキオ さまざまなタッパーが「ある」のではなく「集い」と書くことによっていろんなところから人が集まってきたことが伝わりますよね。何かを持ち寄るという行為自体が東方の三博士が贈り物を持ってやってくる姿を想起させます。
ミコシ そうですね。そこの想起させる部分をよしとするかやりすぎと取るかで分かれちゃったんですね。

加湿器と紙シリーズ

ミコシ 加湿器と紙の取り合わせの句がいくつもあったんですよね。

加湿器に重くなりゆく楮紙  (けむ子とめぇ子)
[ミコシ並選]

加湿器にあたる手紙のやわらかさ  (余花)

加湿器や校正指示を付箋紙に  (クイーン&マダムのダイナマイトお茶会)

ユキオ 加湿器で紙が湿るのってあるあるなんですかね。わたしそこまで加湿器と紙をリンクさせて考えたことがなかったんですが。そんな中ミコシさんが選んだのが「加湿器に重くなりゆく楮紙」。
ミコシ この3つでどれかと考えたときに加湿器との距離感のちょうどいい紙を選んじゃったっていうのが僕の理由なんですよね。楮紙って伝統的な和紙じゃないですか。それと加湿器っていう比較的近代的な機械との取り合わせで面白い紙を選んだという。湿気で重くなるというぱっと見ではわからない、見えない部分への洞察も面白かった。湿ってゆく紙を何で表現するかというところで手紙の句は「やわらかさ」で、楮紙の句は「重さ」で表現している。僕は「重さ」のほうがちょっといいなと思ったんです。ユキオさんは「加湿器」の句だと…
ユキオ 最終的には外したんですけど予選では付箋紙の句をとってました。加湿器と紙の関係が「湿る」ではなくて、発想はそこだったかもしれないけれど、完全に切れて全然関係ないものとして取り合わせられてる。単にオフィスかどこかの景を詠んだだけみたいな。

クリスマスの魔法

ふりかけのをはりは粉よクリスマス  (たいやきズ)

ミコシ これはなんで選んだんですか?
ユキオ スノードームをイメージしたんです、読んだときに。
ミコシ へええええ。そうですか。
ユキオ ふりかけって最初から粉だから終わりだけ粉ってわけじゃないんですけど、終わりって本当に細かい粉じゃないですか。それをさらさらさらさらご飯の上にかける様子とスノードームをひっくり返して雪が舞い降りる様子を重ねて幻視したので。
ミコシ なるほど。わりと特殊な読みではありますよね。
ユキオ ふりかけのことを詠んでいるのに雪が見える。季語がクリスマスじゃなければ雪はイメージしなかった。言葉による魔法を見せてくれたという気がします。
ミコシ この句はすごく「は」行と「り」が多いですよね。音読するとowariwaなんですけど字面で見たとき「をはりは」で。
ユキオ あああー! あれだ! ふはふはのふくろふの子のふかれをり現象だ!(ふはふはのふくろふの子のふかれをり/小澤實)
ミコシ そう。だからはらはら感が出るんですよね、ここに。粉雪が降ってる感が。
ユキオ そうかそうか。それもあるかもしれない、たしかに。

会場:無天茶坊(岡山県玉野市)

句やチーム名の間違いがあればお知らせください。

古本斑猫軒

古本斑猫軒
綺想・幻想・怪奇趣味の文学・芸術・人文書籍。民俗、妖怪、博物学、江戸趣味。レトロな暮しの本、手芸などの雑誌や児童書も。

タイマン句会W杯2019プレイバック #taiman_kukai

古本斑猫軒店主ミコシさん

得点表をチェックするミコシさん。(窓の外を台風17号が通過中)

今年8月15日から9月6日にかけて「ラグビー」として行われたタイマン句会ワールドカップ2019
石原率いるトルコは2度目の優勝。
昨年に引き続き古本斑猫軒店主ミコシさんをお招きし、全句の中から気になった句を3句(+α)挙げていただき感想を伺いました。

※最後にプレゼントのお知らせがあります。せっかちさんは一気にスクロールだ!(後で遡って全部読んでね!)

<今日ピザ取っちゃおうか! って夜学ならば実際ありそう>

教室にピザ届きたる夜学かな  波平(イングランド)
8/23 予選B3 題「ピザ」

石 原 対戦相手は米光一成さん、題は「ピザ」「台風」の試合ですね。学校でピザの出前を取ってみたいというのはみんな一度は考えることかと思うんですよね。発想としてはありふれているかもなー、と思ったんですが。
ミコシ 夜学はここでは「夜間学校」として取ったんですが、夜学っていう季語が持っているその奥深さというか、ここに集まる人たちがなにかしら事情を抱えている感じ、というのがこの句を強くしているんですよね。発想自体が多少安直ではあっても夜学っていう季語の強さがある。ちょっと叙情的にすぎるって言えなくもないんだけど。見えてくる景としては教室の中にカメラがあるんじゃなくて校舎の外から教室の窓の光が見えてる。一歩引いたところでちょっとざわざわした声も聞こえてくるっていうふうな客観的な景を想像してみるとなかなか味わいがあります。季語の力をよく活かした句です。
石 原 たしかにそう言われてみると、教室に出前を取ることは発想としてみんな考えるけどなかなか実行はしないだろうと思うんですよね。でも夜学と言われることによって「それなら実際あるかもしれない」という説得力が生まれてますね。
ミコシ そうそう。単純に教育だけする場じゃなくて、そこにいろいろな事情を抱えた人が集まっている場として、教室を一歩出ればみんなそれぞれ生活はあるんだけど、ここにいるときだけ仲間というか。「じゃあ、今日ピザみんなで取っちゃおうか」っていうそういう情景が見えてくる。自分としては珍しく叙情に傾いたものをとったなって思うんですけど。年を取ったのかな。
石 原 去年から一年間で年を……。
ミコシ そういうものにちょっと弱くなったというかね。秋の句はそもそも得意じゃなかったんです、僕。
石 原 秋って「叙情(ジョジョーッ)!!!」って感じしますもんね。
ミコシ 作るのも人の句を見るのもあんまり得意じゃなかったんだけど。今回の大会一通り見てたら攻めた句が多かったじゃないですか。その中でしっとりした句があるとぐっとくることがあるんですよね。たとえば……ちょっと試合単位の話になってもいいですか。
石 原 お願いします!

<叙情が炸裂したプールA第4試合>

ミコシ ここに至るまでに他の試合で一通り遊んだ句がいっぱい出てるんですよ。タイマン句会ならではというか。そういう句に票が集まっていた傾向もあって。ひとしきりお祭りとして騒いでたんですけど、そこに来てプールA第4試合では陰翳のある句が集まった感じ。急にひっそりとしたというか。この試合自体がすごくよかった。大会の流れがここで転換したかな、という気もしてるんですよね。

冷やかに倒れたままの屏風かな  鶴谷香央理(クロアチア)
とどこおりなくすべらかや秋の虹  鶴谷香央理(クロアチア)
秋冷や今日をかかえて終電車  ひろこ(スペイン)
星月夜ぼくをとがめぬスフィンクス  ひろこ(スペイン)

8/26 予選A4 題「冷やか」「くすという音を入れる」

石 原 この試合の中でベストを一句選ぶとしたらどれですか?
ミコシ うーん。どれもいいんだけど「とどこおりなくすべらかや秋の虹」がいいかな。ほかもいいんだけど敢えて取るならば。この句の向こう側に「とどこおりなくないもの」があるのを感じるんですよね。すべらかな秋の虹は自分の心の投影ではなくて、むしろこちら側には何かとどこおりが、ささくれ立ってるものがあるんだけど、それに対して秋の虹はとどこおりなくすべらか。その一種のさびしさみたいな。その奥行きがよかった。「とどこおりなくすべらかや」までを仮名にひらいたことで視覚的にもとどこおりなくすべらかになってますね。
石 原 得点としては4点しか入ってないけど、もっと入ってもよかったような。
ミコシ 他の句も全部良かったっていうのもありますよね。

<ひらがなの「おしらせ」に凝縮された不穏さ>

政府からおしらせの来る秋の暮  亀山鯖男(モンテネグロ)
9/5 3位決定戦 題「政」

ミコシ モンテネグロの句は好きな句が多いんですけど、たとえば最高得点の「三人のこどもをふくむすすき原」とか「東京のにせの渚のさくら貝」とか、母音子音の反復と仮名にひらくやり方をすごく意識した句ですよね。

三人のこどもをふくむすすき原  亀山鯖男(モンテネグロ)
sannin no kodomo o fukumu susukihara

ミコシ お、お、お、お、お、う、う、う、う、う、と母音を反復して、さらにそこを全部ひらがなにしたことで「音」感を強めてる。

東京のにせの渚のさくら貝  亀山鯖男(モンテネグロ)
tokyo no nise no nagisa no sakuragai

こちらはn音とs音。これも効果的にひらがなを使ってきてる。

一方で、

具有する舌もちよりて鶴来る  亀山鯖男(モンテネグロ)

では、「具有」っていうワードのチョイスによって現実感のなさ、不思議な感じを出してくる。
石 原 「両性具有」以外で「具有」って言葉使った記憶がないです。
ミコシ そうそう。敢えてこうすることでちょっと変な感じを出してくる。言葉に対する感覚がよく出た句がいいんですよね。
で、今回選んだ「政府からおしらせの来る秋の暮」はそういうところを前面には出してないんですけど、技巧的な部分も踏まえた上でちょっと抑制させてきた。「おしらせ」をひらがなにしたところにこのセンスが集約してるんですよ。ひらがなで一見やさしくしたところでかえって不穏さが出てくる。不穏なものってこういう顔をして近寄ってくる、日常ってこうやって壊れるんだなっていう。『となり町戦争』のかんじですよね、小説の。
石 原 『となり町戦争』ってなんですか。
ミコシ 三崎亜記の小説で回覧板か町内の掲示板か何かで「隣町と戦争が始まります」って始まるんです。そういう日常の何気ないことですよね。この句でも言ってることは「政府からおしらせが来たんだ」っていう。なんか、ほかの句に見せる技巧的な部分をぎゅーっとちっちゃく固く凝縮していってこの「おしらせ」に込めたことで、一見なんでもないことを言っているようで空気がただことじゃなくなってるっていう。言葉のうわべ以上の何かがある感じがしてる。そういう意味でちょっと見捨ててはおけないな、ということでとりました。
だって、鯖男さんのほかのおもしろい句はここで取り上げなくてもみんなおもしろいでしょ? ってことなんですよね。実際得点高いし。
石 原 (いまさりげなくすごいほめ方したな……?)あと季語のチョイスなんですけど「秋の暮」って付けるとなんでも俳句になっちゃうようなところがあるから、敢えて「秋の暮」って使ってるのはだいぶ意図を感じます。この句は一筋縄ではいかない句ですよっていうのを宣言するための「秋の暮」みたいなイメージ。
ミコシ なるほど。サラッと読むなよ、みたいなね。

<あざとくかわいく猿またぎ>

一匹の桃へ小猿の飛びかかる  登りびと(モンゴル)
9/3 準決勝2 題「桃」

石 原 さて、それでは問題の「猿またぎ」。(注:突然命名された新しい修辞法。詳しくはtogetterをご覧ください。
ミコシ 猿またぎ。……これ、どうします?
石 原 これ、桃を擬人化というか擬動物化して一匹って言っちゃったのかなって、最初思って。
ミコシ そういう取り方もできますよね。いくつか取れるんですよ。twitterでほかのひとの評を見てても「一匹(の猿)が持ってる桃」と取っているひともいれば「桃自体を(擬動物的に)一匹と数えた」と取ったひともいるし、単純に語順が入れ替わってて「一匹の小猿が桃へ飛びかかった」と取ったひともいる。いろいろ取りようはあるんですけど、どう取るのが面白いのかな。
僕は擬人化として取るのはあまり考えなかったんですけど「一匹が持ってる桃」「一匹の小猿が桃へ飛びかかった」っていうふたつの解釈のどちらにしても言葉がちょっと飛んでるんですよね。ジャンプしてる。これが小猿の飛びかかる躍動感や不規則性に合っていて、確信犯的にやったのかたまたまなのかちょっとわからないんですけど、かわいらしくて動きのある元気な句になっていますよね。
あとは、まあ、桃好きじゃないですか、みんな。我々は。
石 原 ええ。笑
ミコシ 岡山っていうのもあるし、西東三鬼(岡山出身)も桃好きだし。
石 原 「夜の桃」とかね。桃が嫌いな人類はいないし猿も桃大好き。(※桃太郎県に在住する個人の意見であり桃嫌いや桃アレルギーの方への配慮を欠いた発言ですが文化人類学的価値を考慮し原文のまま掲載しています)
ミコシ 桃と小猿を組み合わせてくるのあざといとも言えますよね。どっちもかわいいから。
石 原 かわいいですよね。ほわほわしてますよね。毛が。桃の産毛と小猿の毛がほわほわほわほわ。
ミコシ そうですね。毛尽くしの句だなあ。言葉足らずなところがかえって効果が出ちゃってて……
石 原 それが「猿またぎ」という手法ですね。
ミコシ そう。反則ギリギリと言われた「猿またぎ」。猿またぎを効果的に使うっていうのは字余りを効果的に使うとかと通じるものなんですけど。
石 原 猿またぎを使っている句の事例をいくつか探さないといけないかもしれないですね。
ミコシ ああ、過去の句の中から。ありそうありそう。
石 原 先行作品の中からこの句は「猿またぎ」を使っていると言えるのではないか、という句を見つけた方はtwitterからご連絡いただければ幸いです。
ミコシ(あ、自分で探さないんだ……?)

石 原 本日は台風の中お越しいただきありがとうございました。
ミコシ こちらこそ。お疲れ様でした。
石 原 ミコシさんのお店古本斑猫軒からのお知らせなどがありましたら一言どうぞ!
ミコシ 最近、当店オリジナルの缶バッジを作りまして。ハンミョウのロゴをあしらった青色バージョンと、本棚モチーフの白色バージョンの2種類。
当店サイトから本をご注文いただく際、備考欄に「缶バッジください(青or白)」的なことを書き添えていただければオマケとして1つ同封いたします。

斑猫軒缶バッジ

石 原 おっ。夏の季語としておなじみ(のわりにあまり遭遇しない)ハンミョウ! こんな虫だったのか……。
ミコシ さて。それでは最後にあれをやりましょうか
石 原 ええ。そろそろ風も強くなってきましたし。

ゲッツ!

ゲッツ!

もう一回ゲッツ!

もう一回ゲッツ!

渾身のゲッツ野分へ身を反らす  登りびと(モンゴル)
8/29 A5 題「芸人しばり」

2019年9月22日(日)岡山市内にて対談

1/27(日)常夏ハワイ句会のおしらせ


 
 
お申し込み・お問い合わせはTwitterもしくはEメールからお願いします。
 

タイマン句会W杯 投句一覧 #taiman_kukai

トルココーヒー

俳句同人「傍点」主催タイマン句会ワールドカップ2018
我がトルコチームの投句一覧です。
祝勝会の様子はこちら

水タバコの水を人魚の泳ぐ音
7/20 題「シーシャ(水タバコ)」

姉妹来てチェリータルトを鈍角に
7/9 題「角」

ギュレギュレとみんな手をふる避暑の荘
7/31 題「拗音が3つ以上ある句」

城傾く箱庭の木を抜けば
7/13 題「抜」

蓴菜をちいさく掬う接続詞
7/26 題「接」

口中に骨片のある夏の月
7/26 題「骨」

夜のプールにかぶとがに連れてきて
7/13 題「カブトガニ」

袋いっぱい金魚をくれるココ・シャネル
7/20 題「人名しばり」

避難所に寝かされているエレキング
7/9 題「安全しばり」

五号室に夏は果てたり面格子
7/31 題「格子」

(得点順)

 

【祝優勝】タイマン句会W杯2018 #taiman_kukai

 

俳句同人「傍点」主催「タイマン句会ワールドカップ2018」
トルコ代表監督として出場し、優勝しました!
やったー!
(は? なんぞそれ? という方、石原監督の勇姿をtogetterからご覧ください)

そんなわけで8月某日、祝勝会を開催すべく地元の句友である古本斑猫軒店主ミコシさんを強引にお誘いしターキッシュレストランへ。
トルコの優勝を祝っていただくとともに、惜しくも勝利を逃したチームの作品について語ってもらいました。

石 原「今日はどうぞよろしくお願いします。シェレフェ(乾杯)!」
ミコシ「おめでとうございます。シェレフェ!」

Efes

トルコビールEfesで乾杯。

石 原「ではさっそくタイマン句会W杯に投句された全作品の中から3句取り上げていただき簡単な感想をいただければと思います」

炎昼超能力バトル反る少女  凡コバ夫(ブラジル)

7/31 決勝 題「拗音を3つ以上含む句」

ミコシ「文句なくよかったですね」
石 原「うん、これはやられましたね」
ミコシ「“バトル” “反る” の韻を踏んだたたみかけもうまいし “反る” という音から “sol(ポルトガル語などで太陽の意)” を連想させて南米の感じも出てる」
石 原「そこ……!? いやでもブラジルのサックー(タイマン句会W杯では作句をこう呼ぶ)はもう一定の評価を得ているのでスルーしてこれ以外で3句いきましょう」
ミコシ「えー……(野性俳壇でなかなか選んでもらえない※から拗ねてるのかな……)」

古本斑猫軒店主ミコシさん

古本斑猫軒ミコシさん。シーシャ初体験とのことだが毎日吸ってるひとにしか見えない。

トルコ代表監督 石原

監督らしくしようとスーツを着てみた石原。監督というよりはやさぐれた保険外交員だ。

ガードレール灼けて漁村の道に縄  黒木理津子(クロアチア)

7/10 B1 題「海沿いしばり」

 

ミコシ「句もいいんだけど、この試合自体がよかったんですよね。クロアチアチームの “正統派” 的な句に対してポルデヴィアからは実験的な句が出てきたわけで、この試合は双方が持ち味を出しておもしろい句が揃った。ここからどうしてもひとつ選びたかったんです。
その中でもクロアチアの “ガードレール灼けて漁村の道に縄”。漁村というひなびたものとして描かれがちですが、ガードレールを出すことで近現代の漁村になっている」

石 原「なるほど。たとえば灼けているのがガードレールじゃなくて石とかただの道だったら前近代の雰囲気になってしまうかも」

ミコシ「そうそう。漁村ということばに近代以前のイメージがつきまといがちなんだけど、そこへガードレールを持ってくることで現代的なリアリティが与えられている。
きっと人はそう多くない漁村で、灼けて真っ白な情景というのがそれにとてもよく合ってる。非常に夏らしい句だと思います。海のそば、人がほとんどいない中、道にぽつんと縄がある」

石 原「情景がしっかり見えますね」

ミコシ「叙情性もあるし、よくまとまってますよね」

夕菅にゆるい手綱の馬と行く  トオイダイスケ(スコットランド)

7/9 A1 題「安全しばり」

 

ミコシ「タイマン句会に出たものに限って言えば、トオイさんは全体にゆったりとした雰囲気の句が多くて、カメラワークで言うならば引きの画なんですよね。詠まれているものがはじめからひとつの画のなかに入っていて、カメラがパンしない。二物衝撃って要するにカメラがパンすることだと思うんですけど、そういうものをあまり感じさせない。
ゆったりとした時間の流れを引きの画で、なおかつカメラを動かさずに表現している。情報量としては多くないし情景として角の立ったものではないんだけど、空気感というのをよく伝えている、というのが今回トオイさんの句を読んで全体に受けた印象です。
その中でも “夕菅にゆるい手綱の馬と行く” は見事に言ってきたな! っていう。 “に” をどう解釈するかという問題はもちろんあるんですが、せっかくのロングショットなので細かい文字遣い以前にこの空気感を堪能したいですね」

石 原「“ゆるい手綱” は自分の語彙の中からは絶対出てこないフレーズなので痺れました」

内接円に半径とハンモック  ネル山ネル子(クロアチア)

7/26 準決勝1 題「接」

 

ミコシ「意外と点が伸びなくてもったいないな、ということもあって選びました。これたしか、しばりが “接” ですよね。そこからの句の連想の流れがスムーズで後を追いやすかった。
“接” から “内接円” を連想し、“内接円” から “半径” も連想しやすい。で、今度は単純なイメージの連想ではなく “半” という音から “ハンモック” に飛躍している。一回意味で連想を飛ばし、その次は音で飛ばしましたっていう。読者が連想の軌跡をたどりやすく、なおかつおもしろさもあるんです。結果的に、ひとつの抽象的な情景ができあがっている。そういうそつのなさがあったので、もうちょっと点が伸びてもよかったのかなと思います」

石 原「“半径と” までは実体のないもの、数学的なものなんですよね」

ミコシ「そう、形而上というか、概念」

石 原「それがハンモックでいきなり実体のあるモノが出てくる。そこがおもしろいですね」

タイマン句会得点一覧表

得点一覧表を見ながら語り倒す。たのしい。

石 原「それでは最後に斑猫軒からお知らせやおすすめ商品があればお願いします」

ミコシ「うーん、そうですねえ。俳句関連の在庫から具体的に何かおすすめしたいところなのですが、たぶんこのページをご覧になる皆さんのほうがよほど目も肥えていらっしゃると思うので、弊店ウェブショップの「短歌・俳句」カテゴリーページをご覧ください、という程度に留めておきましょうか。
つい先だって、『増補 現代俳句大系 全15巻揃』ほか、俳句の本を少し仕入れたんですが、すみません、まだウェブに掲載する作業を進めてない……。近日中にとりあえず何点かは載せますので。
他のジャンルでしたら、幻想文学妖怪関連書籍に力を入れていますので、ご興味ございましたら是非!」

俳句関連書籍入荷してます

店舗を持たない幻の書店古本斑猫軒へぜひお越しください。

古本斑猫軒(はんみょうけん)
〜幻想文学・人文書から絵本・暮しの本まで、古書買取販売いたします〜

「野性俳壇」「小説 野性時代」の俳句投稿欄。長嶋有(=ブルボン小林)夏井いつき両氏が選者をつとめており石原は毎月投句しているが長嶋さんに選んでもらえることは激レア。

スイーツ句会 ワッフルと珈琲

ワッフル、チーズケーキなど

4月14日(土)は2回目のスイーツ句会でした。
前回(2018年1月6日)は特に名前のない新年句会だったのですが、生クリーム山盛りのパンケーキを囲んだため「スイーツ句会」と呼ぶことになったのでした。

参加者募集はこんな感じ。

スイーツ句会の告知画像

進行役の自分を入れて4名(欠席投句2名)でこぢんまりと実施しました。
この句会では進行役はゲームマスター的な存在です。
通常の句会では出席者の俳句を無記名で並べて選句や合評を行う、場合によっては投句のみ参加の「欠席投句(不在出句)」も混ぜて行うのですが、ここにゲームマスター権限で手元の句集や入門書からピックアップしたお気に入りの俳句を加えます。
いわば部分的な「借り物句会」(別称「つくらない句会」)。

お借りした俳句はつぎの6句。

しやぼん玉ことばにふれて失明す  小津夜景『フラワーズ・カンフー』
死者生者こみ合ふ春の回転扉  はるのみなと/大井恒行著『俳句 作る楽しむ発表する』
▶︎「死者」と「生者」の語順はこれでいいのか、逆だとどうなるのか、と検討したのが面白かった。
抽斗につかはぬ音叉春の虹  菅原鬨也(大型俳句/俳句関連文書検索エンジン)
▶︎ひきだしにあるってことは使ってないんだから「つかはぬ」は説明的では? という意見あり。
しんじてもかぜはさくらを書きくだす  宮﨑莉々香/佐藤文香編著『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』
葉桜や空は疎にして鳴らせば葉  田島健一/佐藤文香編著『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』
つばくらや小さき髷の力士たち  津川絵理子/佐藤文香編著『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』
▶︎つばめのかわいさと力士のかわいさ。

以下、わたしの出した句。

蕗味噌トーストねむいとき怒るのね   石原ユキオ
宗教につかう音叉や暮の春
春日傘KGBに狙われたい

次回は5月下旬か6月にできるといい……かな?
開催地は岡山・倉敷・総社あたりのどこかの予定です。

葉ね文庫に二ヶ月ほど憑依します ۵

 

葉ね文庫の壁面スペースを若手詩歌人の新作発表の場にするプロジェクト「葉ねのかべ」に参加します。
前回は高塚謙太郎さんの詩とはらだ有彩さんのイラストレーションでした。
第二弾としてわたくし石原ユキオが葉ねのかべに取り憑かせていただきます!

【期間】2016年2月27日(土)から約二ヶ月間

【会場】葉ね文庫大阪府大阪市北区中崎西1-6-36 サクラビル1F

【こんなことをします】
(1)葉ねのかべ・・・憑依俳句を展示します。

(2)作家の本棚・・・憑依現象とアイデンティティについて考える本をえらびました。一部の本には書き込みあり。

(3)販促インレジデンス・・・会期中ときどき葉ね文庫に顔を出して俳句関連書籍を中心にポップ広告の滞在制作を行います。滞在日はTwitterでお知らせします。

(4)カンパバッジ・・・何回も葉ね文庫に来たい! でも大阪ちょっと遠い! そうだ、居住地岡山から大阪までの旅費をみなさんに援助していただこう! ということで缶バッジ(新色)を1個500円という強気価格で販売します。地方在住俳人にあいの手をソイヤッソイヤッ! ご協力よろしくお願いします。

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(5)トークイベント

句集の耳だけかじりたい
〜俳句の本の俳句以外(帯、序文、跋文、あとがき、奥付)を味わう〜

3月13日(日)13:30〜14:30
@葉ね文庫(大阪・中崎町サクラビル1F)
出演:石原ユキオ
参加費:300円
定員:10名程度 (要予約)

俳句の本の俳句以外の部分はアバンギャルドな表現に満ちている!
あまりにも喧嘩腰な序文、うんちくを語り過ぎる跋文、謎の動物が登場するあとがき、心配になるプロフィール欄などなど、俳句本の端っこにぎゅっと濃縮された味わい深いところをスライドトークで紹介します。

トーク終了後、休憩を挟んで15:00よりプチ句会(司会:佐々木紺)あり(希望者のみ)。
投句:当季雑詠(=いまの季節を詠んだ俳句)2〜4句予定。

スペースに限りがあるため、予約制となっております。
画像のメールアドレスあてにお名前、人数、句会への参加の有無をお知らせください。
(募集は締め切りました。当日券はございませんが、そのうち追加公演があるかもよ!)

句集の耳だけかじりたい
>>クリックで拡大

俳句ガチ勢、恐るるに足らず!〜BL俳句誌『庫内灯』リリースに寄せて〜

 

BLを好むひとが、BLを読むように俳句を読むこと。
BLを好むひとが、BLを書く(描く)ように俳句を書くこと。
BLと俳句の間でどんな楽しいことができるか探っていくこと。
それがBL俳句だとわたしは考えています。
(ここでの『BL』は、商業BLから二次創作、耽美の時代からいままでを全部含んだすごーく広い意味での『BL』と考えてください。)

BL俳句が生まれたのは、BL短歌がきっかけです。
BL短歌の先達が道を作ってくれていたおかげで(そして参加人数が少なくBL短歌ほど目立たなかったおかげで)、BL俳句は強烈な批判にさらされることはありませんでした。
しかし、『庫内灯』が出ることで、いままで届かなかったひとの目に触れて
「あんなの俳句じゃねーよ」
なんていう批判が舞い込んで来るのかもしれません。あるいはもっと率直に
「下手」
とか。
なんでこんなことを先回りして言ってしまうのかというと、BL短歌に関しては「あんなの短歌じゃない」「下手くそ」「痛い」「俺の短歌をBL読みするな」等々、悪口めいた非建設的な意見がさんざん飛んで来ていたからです。

ちょっと妄想してみます。
『庫内灯』を買ってくれたひとが自分もBL俳句を作ってみようと考え始める。
そのころTwitterで上記のような批判が出てくる。
『庫内灯』読者は萎縮してBL俳句の発表を思いとどまってしまう……。

いかーん!
それはいかんよ君!
どうか怖がらないでくれたまえ!

「下手」と言われたって大丈夫。下手な俳句は世界にごろごろしているんだ! 新聞俳壇、テレビの俳句番組、公民館の壁面。みんな下手くそながら俳句を楽しんでいるではないか。萌え転がりながら好きCPを描いているうちに超高レベルの画力を手に入れてしまう、などというのは同人誌界隈ではよくあることじゃないか。本人が上手くなりたいと思えば、いつかは上手くなるものだ。
「あんなの俳句じゃねーよ」に関しては一見とてもひどいことを言っているようにも見えるが、「BL俳句が俳句ではない理由を示すことで俳句というものの輪郭を明らかにすることができました。ありがとうございます!」の意味だ! 批判ではなくツンデレなのだ! 恐るるに足らず!

……ふぅ。ちょっと興奮してしまいました。

BL俳句誌『庫内灯』は2015年9月20日(日)に開催される「第三回文学フリマ大阪」でリリースされます(E-11っていうスペースを探してね)。わたしも俳句や鑑賞文を寄稿しました。
同じ会場内某所で13時半からBL句会を予定しております。当日投句もできますし、好きな俳句に投票して見学、という気軽な参加の仕方も。詳細は庫内灯ツイッターアカウントからのお知らせ (1) (2) (3) をご覧ください。
というわけで、9月20日、堺市産業振興センターでお会いしましょう。

 

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※2012年、Twitter上で「#BL短歌」タグの流行が始まる。創始者は佐木綺加氏。2012年11月BL短歌合同誌『共有結晶』vol.1発行。2013年にvol.2、2014年にvol.3が発行されている。

マッドマックス怒りのデス吟行お気に入りセレクション(3/3)

 

マッドマックス怒りのデス吟行お気に入りセレクション(3/3)
ついに最終回です。まだの方はぜひ第一回第二回もあわせてご覧ください。

◆フュリオサ部門

すべてこの裏切りのため裏切った日々のすべてに火は燃えてあり(昭 @31_ti)
https://twitter.com/31_ti/status/617722700568530945

イモータン・ジョーを裏切ったフュリオサ。忍従を余儀なくされた7000日を思えば、その日々のすべてに悔しさの炎が燃え上がるよう。
拉致された時点で健康な若い娘だったはずのフュリオサがほかの女性たちと同じ運命をたどらなかったのは、整備の技術や戦闘能力が高かったからでしょう(鉄馬の婆様たちを見ればいかにタフで賢い集団なのか推測できる)。とはいえ、女ゆえの苦しみを与えられなかったとは考えにくい。ジョーを殺すときにフュリオサが言う ”Remember me?” は「お前が私(たち)にしたことを思えば当然の報いだぜ」って意味なのだと思います。

◆ニュークスとケイパブル部門
「マッドマックス怒りのデス・ロードには恋愛要素がない」なんて言ってるひともいるみたいですけど、全然そんなことないと思う。ニュークスとケイパブルの淡い恋は二次創作のモチーフとして大人気ではないですか! #nuxable ←最高なので見てくださいぷんぷん!

WAR BOYねむる睫毛に溜めた砂朝焼け色の髪で払って(チナミ @hushabye_c)
https://twitter.com/hushabye_c/status/617599137605816320

ニュークスとケイパブルがもたれ合って眠っている場面。睫毛がくっきり映るほどズームしたショットは存在しないのですが、そこをチナミさんは想像力でズームして見せてくれています。ニコラス・ホルト(ニュークス役)、ビューラーで押し上げたみたいに睫毛がくるんとしてますよね。砂溜まりそう。ケイパブルの赤い髪を「朝焼け色」と表現することで読者は地平線から太陽が顔を出す明け方の砂漠を想像することができます。
下句まで全部読んでもう一回頭から見直すと「WAR BOY」という呼びかけも「ふわぁふぉ〜ぃ」ってあくびしながら言ってるみたい。明け方、眠りの浅くなったニュークスが無意識のうちにケイパブルの赤い髪にゴシゴシ顔をすりつけてたらすごくかわいい。

砂灼けて我を見つめてくれしこと(松本てふこ @tefcomatsumoto)
https://twitter.com/tefcomatsumoto/status/620286817867309056

ウォーボーイズが死に際して叫ぶ「Witness me!(俺を見ろ)」が、全然違う意味を持った瞬間です。ウォーボーイズにとっての「Witness me!」は同じウォーボーイズの誰かに「Witnessd!(見届けたぞ=よく死んだ)」されればそれでよかった。それに対してニュークスが最期に叫ぶ「Witness me!」は他の誰でもなくケイパブルに向けたものです。ニュークスが求めたのは一方的に見られることではなく、見つめ合うことだった。ケイパブルがニュークスを見たとき、ニュークスもケイパブルを見ていた。だからこの作品は、ニュークスの側から詠まれた句でもあり、同時にケイパブルの句でもあるのです。
ところでわたしはデス吟行に寄せられた作品を読みながら「もしこれがデス吟行句でなかったらどう鑑賞できるか」と考えて楽しんでいます。この俳句の場合は次のように読みました。
海水浴場の熱砂を踏んで立っていた。あなたが少し離れたところから自分を見つめてくれたことを覚えているよ。
若々しい恋の、ひりひりするような切実さが「砂灼けて」にこめられています。

◆ニュークスとマックス部門

はらから【brother】と輸血袋【blood bag】が似てること赤いケーブル静脈に刺す(yen @golden_wheat)
https://twitter.com/golden_wheat/status/617832135374733312

そうそう。わたしも初めて観たときニュークスの言う ”blood bag” が ”brother” に聞こえたのでした。
上句はすんなり共感できるのですが、下句はちょっと不思議な表現です。なぜわざわざ輸血用チューブをケーブルにたとえなければいけなかったんだろう。輸血を給油にたとえる公式設定に従うのではなく、同じ行為を新しい比喩で書かなければいけないのはなぜだろう。わたしなりの答えを考えてみました。
マックスのO型RHマイナスの血が「ハイオク」と呼ばれるように、イモータン・ジョーとその配下は人間の身体を自動車になぞらえて考えています。自動車に使うもので「赤いケーブル」と言えばたぶんバッテリーケーブル。この歌ではおそらく、輸血を給油ではなくバッテリー上がりの救援と考えている。
輸血を給油にたとえると、輸血を受ける人が車で血液の提供者がガソリンの貯蔵タンクですが、バッテリー上がりにたとえた場合、輸血を受ける人は故障車で血液の提供者は救援車ということになります。
ニュークスにとってのマックスは、単なる輸血袋から同胞(はらから)のような存在に変わります。もしもう一度ニュークスへの輸血が行われたとしたら、「自動車の俺がガソリンを入れるのは当然」という感覚ではなく「俺という車がマックスという車にバッテリー上がりを助けてもらう」という感覚に近くなっていたのかもしれません。つまり、ケーブルの比喩はニュークスがマックスを対等な存在として見られるようになったこと、マックスにとってニュークスが敵ではなく共に戦う仲間になったことを表しているのだと解釈しました。(なお、車の知識が極端に乏しい人間が書いておりますので間違いがありましたらTwitterなどでご連絡ください……)

◆鉄馬の女部門
鉄馬の女たちの祈りの仕草を詠んだ歌を二首。

ただ人として在りたいと願う時我らの祈りは片手で足りる(いさな(タグ遊び用) @op_isana)
https://twitter.com/op_isana/status/617710455163740160

砂風(すなかぜ)に散らばってゆく魂を掴んで胸に墓標を刻む(きりゆき @kiriyukiko)
https://twitter.com/kiriyukiko/status/620246056664563713

一首目は、フュリオサが故郷の仲間たちと共に、亡くなった母へ祈りを捧げる場面。両手で行うV8ポーズに対して片手で行う鎮魂の祈り。それは四輪で移動するイモータン・ジョーの軍勢と、二輪で移動する鉄馬の女たちのスタイルの違いを反映しているものとも考えられます(バイクを運転しながら両手離しで祈りのポーズを取るのは危険だから)。
その祈りの仕草にどんな思いが込められているか描いてみせたのが二首目。「砂風」という言葉は耳慣れない表現ですが、雰囲気は伝わってきます。
最小の詩型の俳句と比べた場合、短歌という少し大きな器は、物語に描かれなかった部分を補完できるもの、逆に言えば、音の数を埋めるために補完するように書かざるを得ないものなのだと感じました。「マッドマックス怒りのデス・ロードには短歌よりも俳句のほうが合っている」という意見を何人かのひとが書いていましたが、台詞で語ろうとしない映画だけに、下手に言葉を尽くして補完されてしまうと「わたしの解釈と違うぞ……」ということが起きるのかもしれません。

◆幻のラストシーン部門

苗植えてこれはニュークス・ラリー・バリー(るいべえ@Vault111 @ruibee)
https://twitter.com/ruibee/status/617462972592467969

植えているのはケイパブルですね。ニュークスの面影を重ねて見ているのだから、数ヶ月後に収穫してしまう野菜の苗ではなく長い年月をともに過ごすことのできる樹木の苗だと考えたい。ちなみに「苗木植う」や「果樹植う」は春の季語です。この句に関してはナッツ(@nuts12)さんのていねいな鑑賞がよかったのでぜひお読みください。
・まず苗… https://twitter.com/nuts12/status/623854948606840833
・これはニュークス、の部分… https://twitter.com/nuts12/status/623856005605031936
・ラリー・バリーと続くことで… https://twitter.com/nuts12/status/623857213728108544
・輸血袋がなければ生きられない体だったニュークスが… https://twitter.com/nuts12/status/623858453853790208
ナッツさんのツイートをRTされていた、葛原あゆの(@k_ayuno)さんの妄想もかわいかった。
・シタデルに戻って… https://twitter.com/k_ayuno/status/624196698668032000
・種にペンでラリーの顔とバリーの顔と青い目をした顔を描くんだ。 https://twitter.com/k_ayuno/status/624196898350436352
でもここは「種」ではなく「苗」を植えるからこそいいのだと主張したい。
苗床に蒔いた種が発芽したものが苗です。植えた種のすべてが発芽するわけではないので、ちゃんと発芽したものをしかるべき位置に植えなおして大きく育てていくことになる。たしかに白い種は見た目はウォーボーイ的ではありますが、もし種の時点でニュークスの面影を見てしまったら、それが発芽しなかったときに悲しい。「苗」と書いたのが作者の優しさなのだと思いました。
樹木の種が苗になるまでには、砦はすっかり平和な村になっていることでしょう。

最後に自作を。

ふるさとは花のころかも幻肢痛(石原ユキオ @yukioi)

#マッドマックス怒りのデス吟行に参加してくださったみなさん、本当にありがとうございました。ここで紹介しきれなかった作品の中にも面白いものがたくさんあったのですが、ひとまず終了です。
またいつか、オンラインまたはオフラインのどこかで一緒に吟行しましょう。

マッドマックス怒りのデス吟行お気に入りセレクション(2/3)

 

7月5日〜12日にかけて開催した「#マッドマックス怒りのデス吟行」から、個人的お気に入り作品を紹介します。第一回はこちら

◆これぞ吟行句!部門
吟行というのは詩歌を作るために散歩すること。リアル吟行をした場合、当然景色を詠んだ作品が多くなります。ということで今回はFURY ROADの景色が目に浮かぶような俳句を集めました。

スピードや振り落とされしものに月(るいべえ@Vault111 @ruibee)
https://twitter.com/ruibee/status/617468772090122241

スピードのあまり月が見えなくなることを「振り落とされ」ると言っているのだと解釈しました。遠くにある月が見通しのいい砂漠の中で見えなくなるなんて、絶対そんなわけないのでかなり大げさな比喩なんですけれども、速さの比喩としてなんだか妙にわかる。それはわたしたちが乗物に乗って移動しているとき、近くの建物に遮られて月が見えなくなるということを経験しているからでしょう。
上五(かみご※1)で「スピードや」と、とんでもないフレーズで詠嘆してしまうところもチャーミング。「や」の前って、「古池や」とか「降る雪や」とか、普通は和語・漢語が来るポジションですから。

風死して風を呼ぶなりウォー・タンク(ネムカケス @kakesunemu)
https://twitter.com/kakesunemu/status/617666387595497472

「風死す」は夏の季語。風が止んで暑い状態のこと。太陽が燦々と照りつける荒地をウォータンクが猛スピードで進み、ジョーの妻たちの髪やドレスが風にそよぐ様子が眼裏に蘇ってきます。進まなければ風は起きない。命がけで求めなければ何も得られない。マッドマックスの世界の過酷さを思いました。

道果てて晩夏の塩の明るさよ(ドーナツハンター正井 @kelmscott_masai)
https://twitter.com/kelmscott_masai/status/618388025991540736

ヒャッハー! 吟行句オブ吟行句ス!!
まるでその地に立って見てきたかのような書き方です。
この句をもし句会※2で見かけたら「道果てて晩夏の潮の明るさよ」(道がなくなったらその先は海でとても明るいなあ…)の書き間違いだと考えるでしょう。フュリオサたちが「塩の湖」と呼んでいるところは、かつて海だったという設定らしい。そのことを暗に示唆している俳句のように思えました。

さて。やや地味な場面に着目した作品もありました。

約束の地に整然と夏菜かな(千百十一 @L_Gar_2)
https://twitter.com/L_Gar_2/status/618833324753039360

砦の奥で植物が水耕栽培されているシーン。「約束の地」と呼ばれているということは、ラストシーンのその後なのかもしれません。他のひとが注目しないところを拾い上げていくのも吟行の醍醐味です。

次回はフュリオサ、マックス、ニュークス、鉄馬の女たちが登場します!

※1 俳句の五音、七音、五音を、それぞれ「上五(かみご)」「中七(なかしち)」「下五(しもご)」と言います。
※2 句会というのは俳句を無記名で提出し、誰がどれを作ったのかわからない状態で批評し合うMADなパーティのこと。高得点を集めた俳人はV8ポーズで讃えられます。