書斎に犀を | 俳句さんに似合う香水を見つけてあげる(6)

父を嗅ぐ書斎に犀を幻想し 寺山修司

書犀さんとお呼びしていいかしら。
今回は突然結論ですが、書犀さんに香水をおすすめするなら唯一絶対のファイナルアンサーとしてこちら。

厳格のち溺愛 – ライノセラス EXTRAIT DE PARFUM –

RHINOCEROS EXTRAIT DE PARFUM
ブランド:ZOOLOGIST

トップノート:ラム、ベルガモット、ラベンダー、エレミ、セージ、アルモアズ、針葉樹の葉
ミドルノート:タバコ、シダー、ゼラニウム、松、アガーウッド、イモーテル
ベースノート:サンダルウッド、アンバー、煙、ベチバー、ムスク、レザー

(今回紹介するのは旧バージョンのライノセラスです。調香を見直した2020年版ライノセラスも公式サイトから入手可能です)

ZOOLOGIST公式サイトより引用

ライノセラス。ずばりという名前の香水です。
紙に吹き付けて試香するとラム酒を感じた直後にベチバーらしき土っぽさがガッツリ出てきて飲みにくい漢方薬のような苦さ。
それに加えて火をつけていない煙草の葉の香り。
これは犀のいるサバンナの土埃と乾いた草か。
そしてレザーがいます。レザーがしっかりと主張してきます。
ジャンル的にはレザー香水です。革の匂い。(※1)

「この香りで外出するとしたらどういう意図で纏ってるんだろ……?」

香水を嗅いでそういう疑問を持つことがあるのですが(※2)ニシャネの「ウヌタマン」、エタリーブルドオランジェの「トムオブフィンランド」に続いて「ライノセラス」がそこに加わりました。あ、全部レザー系か。

何、これは何、わたしは何を嗅いでいるんだろう……と思ってるうちに病院っぽい、消毒液っぽいような匂いもしてきて若干トムオブフィンランドに近づく(どちらも松が入ってる。病院っぽさって松由来なんだろうか)。

クリニックの待合室のような清潔な革の匂い、アンバーの気配。そしてずっと漂っている乾いた煙草の香り。
背中を向けた犀の首筋から友好を拒絶するように発散されている、これは詩的に表現された加齢臭だ。

それが、数時間後のある瞬間突然に親しみやすい、心から落ち着ける柔らかな香りに変わるので驚きます。
驚くを通り越して戸惑うほどのギャップ(※3)
ムスキーでほんのり甘い。
リラックス感を与えているのはサンダルウッドだろうか。

この親しみやすさは知ってるぞ。この部分に関してだけ言うならば、ALGHABRAのLABYRINTH OF SPICESにちょっと近いんだ。LABYRINTH OF SPICESはわたしにとって記憶の中の若く美しい父親(顔はレスリー・チャン)のサマーセーター、パパと二人で乗った遊園地の回転木馬、幼いわたしが手を伸ばして触れた父の顎、ぽつぽつと髭の感触。もちろんそんな父親がいたことはないのですが、なぜか鮮やかに記憶が捏造されてしまう。

おや、失敬。書犀さんのことを置き去りにしてわたしの架空のパパの話をしてしまった。
ライノセラスとLABYRINTH OF SPICESはサンダルウッド、アンバー、ベチバー、ムスク、シダー、タバコ等が共通しています。ただしLABYRINTH OF SPICESは土っぽさがマイルド。パイナップルやトンカビーン(単体だとちょっと桜餅っぽいアレ)が入って最初っから甘々です。トップノートは全く似ていません。あと両腕につけて比べると全然似てる気がしない。「めっちゃ落ち着くベースノート」という一点のみにおいて似てるのか。いやそんなことはないと思うんだけど。

父を嗅ぐ書斎に犀を幻想し

父の書斎に父はいない。そこにこっそり入ってみる。書斎に犀を幻想するのは「サイ」という音からの連想によるもの、だけではなく、書斎のにおい(書物、家具、煙草、父の加齢臭etc)からも犀のイメージが立ち上がって来たからでしょう。父親と犀が重ねられている。
書斎の椅子に父の代わりに座っている犀、というものを想像するならば、それはこのズーロジストの軍服を着た犀がぴったりではないか(自宅の書斎に仕事着のまま座るケースは稀かな、とも思うけれど)。
ライノセラスの公式設定には書斎要素は書かれていないのですが、ウッディでレザリーそしてタバコという組み合わせ、本棚に革の表紙に葉巻でしょ。偶然にも完全に書斎です。

Image by shell_ghostcage from Pixabay 

さて。唯一絶対のファイナルアンサーと書いてしまいましたが、そういえばペンハリガンのポートレートシリーズにも犀(悪い男テディ)がいました。ごめん、うっかりしてた。どこかで試したら追記したいと思います。

※1 革が香水のジャンルとして確立してることに最初驚いたわ。
※2 と言いつつ一人で行動するときは「変な匂いだいすきぃ〜! ひとからどう思われても気にしない〜!」と軽率になんでもつけてお出かけする。
※3 肌に直接つけるよりも布や紙の上の方がこの激しいギャップを感じやすいかもしれない。

能村登四郎の僧侶たち | 俳句さんに似合う香水を見つけてあげる(5)

shell_ghostcage / Pixabay

まずは『能村登四郎全句集』からの引用をご覧いただきたい。

しづかな熱気寒行後の僧匂ふ 「枯野の沖」
杉の花降らす杉山に僧入れば 「幻山水」
逃げ水に逃げられて逢ふ美僧かな 「天上華」
素裸の僧ゐてやはり僧なりし 「寒九」
坊主めくりの引き当てし僧うつくしき 「長嘯」

僧、僧、僧、僧、僧。
能村登四郎が僧侶を詠んだ句の中から特にわたしのお気に入りのものを抜粋しました。僧侶や僧侶の行動を描写した句を全部数えれば数十句。仏教つながりでお遍路さんの出てくる句まで入れると70句くらいあります。
能村登四郎先生の僧侶萌え(と敢えて言わせてくれ)は他者として僧侶を熱く見つめるだけにはとどまらず、

青滝や来世があらば僧として 「民話」
僧形を恋ふもきさらぎ初めごろ 「有為の山」
黒揚羽僧形われに似合ふかも 「有為の山」

といった僧になりたいという願望(コスプレ欲?)にまで発展し、最晩年の句集『羽化』では、

秋の滝めぐりてわれや痩法師 「羽化」

と詠んで、ついには「われ」と「法師(=僧)」の一体化を果たしてしまう。

本日は能村登四郎先生の僧侶俳句さんたちに僧侶感の強い香水をおすすめしたいと思います。

おーっと待ってくれ。
何が言いたいかわかるよ。お香でしょ?
僧侶感を満喫したいなら香水を振るんじゃなくてお香を焚くのがベストだとおっしゃりたいんでしょう?
でもちょっと考えてみてほしい。香水ならお香の香り以外の僧侶的要素も表現できるんですよ。
そう、たとえばスクーターで檀家を廻る前に飲む一本の栄養ドリンクとかね。

注:本記事ではノート(トップノート・ミドルノート・ベースノート)に関してブランド公式サイトもしくはFragranticaを参考にしています。

24時間戦う僧侶 – ピアノ サンタル –

PIANO SANTAL
ブランド:オーケストラパルファム

メインノート:ホワイトサンダルウッド、シダーウッド、火照った肌、ベルガモット、アンブロキサン、ホットミルク、キャラウェイ

寺の香り、お香の香りと言えば、サンダルウッド(白檀)。
ピアノサンタルは離れて嗅ぐとミルキーなサンダルウッドなんだけど、鼻を近づけるとフルーティな酸味が目立ち、腰に手を当ててオロナミンC(リポビタンD、リゲイン等も可)を飲み干す元気な僧侶を想像せずにはいられない。超絶いそがしいお盆、スクーターにまたがっていざ出動。
っていうかそもそも「ミルキーなサンダルウッド」って未体験の方には何言ってるかわかんないと思うんですが、「ミルキーなサンダルウッド」と言うほかない。
ブランド側が提示しているコンセプトとしては「目をさますと、ピアノの中。」たしかにピアノクリーナーでピアノを拭いた時こんな匂いがしたかもしれないが、香水に引っ張られて記憶を捏造しちゃってる可能性もある。
最初はむしろ苦手な香りだったんですが、ドライダウンが本当に美しくうっとりとしてしまう、しかも鬼拡散超持続。10mlとか15mlっていうサイズがあったら絶対ほしい。

出陣する僧侶 – サトリ EDP –

SATORI EDP
ブランド:パルファン サトリ

トップノート:ベルガモット、コリアンダー
ミドルノート:シナモン、クローブ、カカオ、バニラ
ベースノート:オリバナム、サンダルウッド、アガーウッド

サトリ -Satori- 公式サイトより引用

「同じ重さの黄金より価値のある最高の沈香木・伽羅の香り。その香りが一本の道筋となって香炉から立ち上る」と公式にも書かれている通り、すっごくリアルに再現されたお香の香り。最初に試したのは数年前、とても好きな香りではあるのだけれど自分の人生には合わないと判断して見送ってしまった。というのも、僧侶であると同時に死と隣り合わせの戦国武将みたいな雰囲気があるのです。出陣前夜、兜に焚きしめられた香、のような。
サトリを纏うなら部屋は片付いてないといけないし、仕事で勇ましく自分の意見を言えなくちゃいけない。そしてその両方がわたしには無理だ。
……と、当時のわたしはそのように思ったんですよね。
いまの感覚としては「香水は見えないコスプレもしくは合法幻覚剤と割り切って似合う似合わない気にせずに所有すればいい」ってなもんなのですが(いや、部屋は片付けろよ)。
それはさておき、能村登四郎の描く美しい(理想化された)僧侶たちにはこのハンサムな香りがよく似合います。

落飾せし皇子 – アンブルスュルタン EDP –

AMBRE SULTAN EDP
ブランド:セルジュ ルタンス

メインノート:樹脂、アンバー、ベイリーフ、ミルラ、サンダルウッド、ベンゾイン、コリアンダー他

「落飾」という言葉を知ったのは澁澤龍彦の『高丘親王航海記』「親王は翻然として落飾して」というフレーズがあったから。貴人が仏門に入ることを「落飾」と呼ぶの、かつての華やぎとそれを削ぎ落とす痛ましさ、削ぎ落とされてなお、むしろ飾りを削ぎ落とされたがゆえににじみ出る美、という感じがしてもう、なんというか、あまりにも能村登四郎じゃない……?
さてアンブルスュルタン(←発音しにくい)別名「アンバーの王」は樹脂多め白檀控えめのお香という感じで、謎のゴージャス感(異国感)がある寺です。僧侶なら位の高い僧侶。それも薄幸のプリンスが出家して年齢を重ねたような雰囲気。スクーターには乗らない。敢えて似合う乗り物を挙げるなら牛車か天竺行きの船です。
アンバーという香りがなんなのかわかっていなかったのですが(花やスパイス類と違って手近に嗅げる実物がなく、しかもアンバーというくくりの中に琥珀のイメージを再現したアンバーと抹香鯨の結石であるアンバーグリスとが相互乗り入れしてるらしくて混乱している)、このアンブルスュルタンとZOOLOGISTのイカ(合成アンバーグリス)を試したことでちょっとわかってきました。甘みとちょっぴり酸味もある築百年の木造大豪邸の書斎(日当たりがいい)みたいな感じのこれがアンバーなのね!? あったかい感じの古い木の香り。

その他、僧侶みのある香水

FATE MAN EDP – AMOUAGE –
精進カレーを作る僧侶。アムアージュの香水ってインセンスっぽい香りが結構多いらしい。『世界香水ガイドⅢ 1208』でルカ・トゥリンにカレー呼ばわりされています(ごめん、これ前回も言ったね)。
SACRESTE EDP – LABORATORIO OLFATIVO –
キリスト教の僧侶。フランキンセンス(乳香)の香り。教会のお香。鉛筆ごりごり削った感じのウッディ。
KARMA(ソリッド) – LUSH –
柑橘系がしっかり香るのになぜか「寺……」という印象を与えるラッシュマジック。ソリッドパフューム(練り香水)として持ち歩いており、前髪の乱れを直そうとヘアワックスがわりに使ったとき薬品漏れ騒ぎが起きかけた因縁の香り。液体の香水バージョンも存在します。

まとめ

今回は一句一句に香水をマッチングさせるわけではなく俳句さんたちに香水さんたちを紹介してグループ交際をおすすめするにとどめたいと思います。
余談ではありますが、僧侶になりたがるコスプレマインドは能村登四郎先生からそのお弟子さんへとしっかりと受け継がれております。

被てみたきもの羅(うすもの)の緋の僧衣 正木ゆう子『静かな水』

秋風のアラブ服 | 俳句さんに似合う香水を見つけてあげる(4)

Photo by Rumman Amin on Unsplash

詩歌のイメージに合う香水を探してくるのはちょっとしたトレンドですよ。なぜならNOSE SHOPマガジンに “百人一首” 夏の詩と香水と題して和歌のイメージに合う香水をセレクトする回があったから!
こんな僻地のブログだけどこの最新トレンドを牽引するつもりでいくわよ。よいしょ! よいしょ!(鼻フックでトラックをひっぱる絵文字)

さて、今回お招きする俳句さんはこちらです。

旅客機閉す秋風のアラブ服が最後 飯島晴子

ボーディングブリッジではなくタラップを使っているのだろう。そうだよね、風が吹いてるんだもの。
アラブ服(地域によりトーブとかカンドゥーラとか呼ぶ白い服のことだと思う)がその風になびく。
なんて絵になる情景でしょう!

言葉が並んでいる順番通りに想像するなら、アラブ服の人がタラップを降りてくるシーンということになる。
階段から降りてくる純白のアラブ服の男性。背後で閉まるドア。彼は空港ビルへと向かう。
増殖する俳句歳時記ではこちらの解釈を採っているようだ。

でも乗り込むところと考えたほうがドラマチックじゃない?
「旅客機閉す」で旅客機のドアが閉まるところを見るでしょ。それから「秋風のアラブ服が最後」だったなあ、と回想する。そして去っていく飛行機。

もうちょっと妄想を膨らませるとですね、彼は日本でひと仕事終えた後です。何か重大な任務を果たして中東に帰ってゆくところ。この俳句の視点の位置を決めるなら、人々が搭乗を待っている待合エリア内の最前列あたりがいい。ガラス越しに外を眺めていると悠々と飛行機へ向かう純白のトーブの美しさに釘付けになってしまう。彼はタラップを昇り(そうここで晴れ渡った秋空の下、頭の布が一層大きく風になびきその白はますます輝く、でも遠いからぎりぎり顔はわからない!)飛行機の中に消えていく。この句の語り手は、いや、読者であるわたしは、閉まったドアを見ながら何度もそのまぶしさを反芻せずにはいられない。

っていう雰囲気の香水を探そうというのが今回のテーマです。

ざっくり要素を抜き出すなら、空港。秋の光とさわやかな風。日本から旅立つアラブの男性。
せっかくだから中東の香水から探してみたい。

注1:本記事ではトップノート・ミドルノート・ベースノートに関してFragranticaを参考にしています。
注2:本記事では「石油王」という言葉をNGワードに設定します。中東地域の方、民族衣装着てるだけで「石油王」って呼ばれてうんざりしてるんじゃないかな、と思って。ステレオタイプよくないよね。いままで軽々しく石油王の存在を求めすぎていたと反省しています。油田の有無にかかわらず喜捨は歓迎です。

中東の地図

<登場する中東地域のざっくりした説明>
わたしのように地理が苦手な方は左上にイタリアのつま先が見えているのを手掛かりに場所をイメージしてください。
トルコは小さじ一杯分くらいヨーロッパにかかって残りはほぼ中東。トルコに拠点を置くフレグランスブランドは烏龍茶香水が日本で人気のNISHANEのほかALGHABRA、PEKJIなど。トルコ旅行記も読んでね。
UAE(アラブ首長国連邦)といえばドバイ。でも首都はアブダビ。フレグランスブランドは(前回小粋なダジャレのネタにした)AL HARAMAIN、SWISS ARABIAN、ANFASなど。
オマーンはあまりなじみのない国名だけど1930年代に日本女性と結婚して神戸に住んだ(元)王様がいたり、1970年代に皇太子がクーデターを起こして父親を追放したり、なかなかドラマチックなのでウィキペディアでご堪能ください。AMOUAGEは王様の命を受けて設立されたフレグランスブランドで、オマーンの観光名所の一つ(工場見学できる)。

アラブ服は蜜にまみれた薔薇を抱く – アントンス カフェ EDP –

INTENSE CAFÉ EDP
ブランド:Montale Paris(仏)

トップノート:フローラル
ミドルノート:コーヒー、ローズ
ベースノート:アンバー、ヴァニラ、ムスク

Montale Paris…? いきなりフランスじゃん。中東じゃないじゃん。
いやいやいやいやいや。モンタルっていうのは中東でキャリアを積んだ調香師によるブランドなんですよ!
調香師のピエール・モンタルは長年アラビアの王族の専属調香師として働いていたらしい。 モンタルの公式サイトの説明文に書いてある “Kingdom of Arabia” がサウジアラビア王国(Kingdom of Saudi Arabia)のことなのかどうかちょっとわからない。アラビア半島のどこかの王国という意味なのかもしれない。

ブランドの特徴としてよく言われるのは香りの持続性と拡散範囲の広さ。
サンプルを肌に吹いてみると、評判通りスプレーした箇所がいつまでもきらきらしている。蒸発しにくい。これがロングラスティングの秘密か。
とはいえ、このアントンスカフェはモンタルの中では比較的おとなしくて日本でも使いやすいほうではないかと思われる。

というのは、Oh My Pouchという通販サイトで試香紙を5種類同時に取り寄せた際に、アントンスカフェの香りが最初に消えていったからです。鼻を近づけて(とは言いつつきついので他のブランドよりは遠めから)嗅ぎ比べてみてもいちばんマイルド。残り4つはちょっと頭痛が起きちゃいそうなレベルで強かった。

さて、アントンスカフェの香りの感想ですが、激甘なローズから始まり、そのローズを濃厚に継続しながら杏仁豆腐の気配を秘めた生クリーム盛り盛りの激甘ヴァニラ・ラテに移行。
カフェと言われてイメージするブラックコーヒーの感じではないですね。
ほぼ薔薇とヴァニラ。コーヒーはほんの一口。終始一貫して甘いです。香水なのに太りそう。
正直なところ日本人がイメージするアラブ感はない。空港っぽさは……うーん、どうでしょう。空港で飛行機待つ間コーヒーと甘いもので一息いれることもあるし、非日常のハイカロリーな飲み物を頼んだりするのも空港っぽさといえば空港っぽさか。食欲の秋! と思えばなくはないな。
なお、この項のタイトルは例の単語をNGワードに設定した反動でBLっぽくなりました。
禁止はBL神経を刺激する。

旅するアラブ服とスパイスの微風 – ジャーニー マン EDP –

JOURNEY MAN EDP
ブランド:アムアージュ(オマーン)

トップノート:四川胡椒、カルダモン、ベルガモット、ネロリ
ミドルノート:ジュニパーベリー、インセンス、タバコ
ベースノート:トンカビーン、レザー、シプリオル、ムスク

Amouage Journey Man

Amouage Journey Man(画像は公式サイトより引用)

はい。こちらは中東で製造された中東の香水です。ただしLuckyscent(ラッキーセント)というアメリカの香水販売サイトから0.7mlサンプルを取り寄せました。
海外通販デビューおめでとうわたし!!!
海外通販は香水沼の深部で行われている禁断の秘儀と思い込んでいましたが、いざ自分で通販してみると香水沼の深部にたどり着いた気はしないのでまだまだ香水初心者を名乗らせていただきますよ。

それはさておき、肝心の香りです。

オーケストラパルファンのテ ダラブッカに似てる! というのが第一印象。
テ ダラブッカは「ダラブッカ」という中東の打楽器をイメージした香りなので似ているのは納得感ある。ただ、テ ダラブッカほど金属的な刺激を感じないような。思ったより親しみやすい香り。
トップがすごくみずみずしく涼やかな柑橘。この柑橘感はベルガモットと、ひょっとしたら四川胡椒の香りなんだろうか。涼やかという印象はカルダモンから来ているのかもしれない。
それと同時に土っぽい青い香りがする。これがシプリオルかな?
ゆっくりゆっくりフランキンセンスのウッディさが加わりお香っぽくなりやがてムスキーに和らいで……という、結構複雑な変化をします。
ところでベルガモットって面白い香料で、精油を単体で嗅いでも「あ、紅茶だ」って感じる。
アールグレイティーは茶葉にベルガモットで香りづけをするから、ベルガモットを嗅ぐと紅茶を感じてしまうということらしい。
テ(Thé = 茶)という名前を冠したテ ダラブッカは時間を置いたあとに黒糖入りの紅茶っぽくなることがあるのですが、ジャーニーはつけたての状態でアイスティーのような雰囲気を感じました。アイスティーの香りとまで言うと言い過ぎで、飽くまで雰囲気。
強めの香水ではあるけど、そこまで重くない。トップノートの清涼感は秋空を思わせる。名前も「旅」だし、なかなか似合うのではないかしら。

ルカの認めた砂漠の至宝 – フェイト ウーマン EDP –

FATE WOMAN EDP
ブランド:アムアージュ(オマーン)

トップノート:ベルガモット、レッドチリペッパー、ペッパー、シナモン
ミドルノート:ローズ、ジャスミン、水仙、インセンス、ラブダナム
ベースノート:ヴァニラ、パチュリ、ベンゾイン、カストリウム、インセンス、レザー、オークモス

嗅覚研究者で香水評論家のルカ・トゥリンというひとが『世界香水ガイドⅢ 1208』で五つ星(=傑作。五段階評価の最高点)をつけた(香水コミュニティでは)たいへん有名な逸品らしい。
嗅いだ瞬間、香りというよりも重低音を感じた。ズーーーーーーン……!
ごめん、ちょっとこの良さを感じ取るためには経験不足みたいだ。時間を置いて再挑戦します。

人工島のトロピカルジュース – グリーン ガイア EDP –

GREEN GAYA EDP
ブランド:ANFAS(アラブ首長国連邦)

トップノート:マンゴー、洋梨、アニス、カルダモン
ミドルノート:ミルク、リコリス、ウード、シダー
ベースノート:アンバー、オリス

ガツンとくるマンゴー。トロピカルフルーツのミックスジュース。フレッシュな果物からジャムやグミのような濃縮された甘さに変化していきます。健全なパリピの匂いがする。
これは成田空港でも羽田空港でも関西国際空港でもない。日本なら那覇。さもなくば東南アジア。むしろドバイの高級ホテルのプライベートビーチで傘のついたジュース(ノンアルコール)を飲んでるのかもしれない。旅客機は空を横切って、ビーチチェアに寝そべったままサングラス越しにそれを見上げてる。搭乗する気配なし。

結論

今回は、暫定的にJOURNEY MAN EDPをおすすめしたいと思います。
もっともっと似合うのがありそうな気がするのですが。空港の広い空や白い服をイメージするためには(雪のイメージや清潔さの演出に使われたりする)アルデハイドの入ったものを探すといいのかもしれない。ってかそもそも中東の香水手に入りにくいのに中東縛りにしてしまったのに無理があったかもしれない。いやしかし諦めないぞ。
今後ビシッとハマる香りが見つかったら更新します!

ほかに試した香りは?

今回の俳句さんのために取り寄せた中東地域の香水について一言ずつ感想メモを添えておきます。

Labyrinth Of Spices Extrait de Parfum – Alghabra Parfumes(トルコ)-
パイナップルと柑橘のフルーティな甘さ+ベチバーの土っぽさ。ドライダウンはヴァニラとわずかにコーヒー。個人的に懐かしい香りのような気がするけど懐かしさの正体がつきとめられない。明るくて心地よい香りだけにうっかりつけすぎて酔いそうでもある。

Fate Man EDP – Amouage(オマーン)-
概念としての朝鮮人参みたいな、根っこっぽい漢方薬の匂い。塩辛い。『世界香水ガイドⅢ 1208』でルカ・トゥリンにカレー呼ばわりされるのもわかる。わたしは嫌いじゃないよ。

Myths Man EDP – Amouage(オマーン)-
熟れすぎた蜜柑と苦い土。Lushの何かに似てる。重めのパウダリーになる。

橋本直『符籙』を(やくざ映画として)読む

Photo by Frank Lloyd de la Cruz on Unsplash

橋本直さんの句集『符籙』をやくざ映画として読むと非常に胸熱なんです。
いや、以前瀬戸正洋さんの俳句をやくざ映画として読んだりしたけど、あたしだってなんでもかんでもやくざ映画にしてるわけじゃないんですよ。やくざ映画として読んで楽しいかどうか、その句集が持ってるポテンシャル次第だから。
『符籙』は濃い。やくざ成分が濃い。カルピス原液を感じる(ちなみに「仁義なき戦い」シリーズにはカルピスを飲むシーンが登場します)。

冬の日の寺に修羅場を見てゐたり

いきなり「仁義なき戦い」一作目のエンディング「弾はまだ残っとるがよ」じゃないですか! 寺で盛大に行なわれている葬儀。祭壇へ発砲する広能昌三。あるいは男女関係の修羅場かもしれないけれど、寺でそれが行なわれているシチュエーションなら当事者は50代60代ということも想像に難くない。軽い言い争いで済みそうな気がしない。「修羅場」の語源は仏教用語であり、その点では「つきすぎ(=言葉と言葉の連想関係が近すぎる)」とも言えるし、そこがまたちょっとしたおかしみにもなっている。

ふだらくのあかりへあめりかしろひとり

「夜行性ヒトリ! 夜行性ヒトリ!」と思わず歌ってしまった(クロマニヨンズ「夜行性ヒトリ」参照のこと)。誘蛾灯に向かって突き進むアメリカシロヒトリ。その姿はまるでそれが本能であるかのように死に向かって突き進む極道者を思わせる。

ネクタイの柄槍と盾熱帯魚

槍と盾柄のネクタイからすぐにブランドを思いつかないのだが、これはあれでしょ、槍とか盾とかゴールド系で背景色がエメラルドグリーンとかバーガンディとかでコントラストが激しいやつでしょ。そしてそのネクタイの人の背景に巨大水槽。行き交う極彩色の熱帯魚。座るだけで5万くらい吹っ飛んでいくお店ではないか。カタギの人間はなかなか足を踏み入れられない。

蚊を叩き下手な芝居を打つておく

たぶん、蚊を叩くところから芝居だ。何かを問い詰められて派手に蚊を叩いたふりをしたりして勢いで誤魔化す。たとえば「なんの用事で神戸へ行ったんなら?」と聞かれたとして、バッチーンと蚊を叩く振りをして「蚊がおる! 蚊に食われてしもうたわい! わしゃあ帰らしてもらいますけえ!」と大げさに騒いで退散する。芝居は下手でもかまわない。決して答えないこと、非を認めないこと、言質を取られないことがすべてだ。

美しき味方の汗をふいてやる

やくざ映画目線で見ていると「美しき」にも「味方」にも含みがあるような気がする。汗を拭いたりしてやって手なずけて利用していずれ見放すんでしょう!? ひどい!!

永劫の迷子のための生麦酒

これはねえ、もうやくざというものは「永劫の迷子」なんですよ、と。そうやって酒場でちょっと甘えたそぶりを見せるのも悪い男のすることですよ。

始まれば止める術なき祭かな

抗争だ。復讐が復讐を呼び、血で血を洗う抗争が繰り広げられる。「仁義なき戦い」「BROTHER」「アウトレイジ」も。

良きシャツを着て男等の花火かな

良きシャツ。派手な開襟シャツ。打ち上げ花火を見ていてもいいけど、ここはやはり手花火が切なくていいんじゃないでしょうか。砂浜。波の音。いい大人が野太い声でわいわい騒ぎながら線香花火をやってるわけ。男たちが時間を持て余して遊ぶ様子ってすごく北野武じゃないですか。ああ久石譲がピアノ弾いてる……。

人飛ぶにふさはしき風秋に入る

「飛ぶ」は「あいつセブ島に高飛びしたらしいぜ」っていう方の「飛ぶ」です。

鶏頭花笑つて鼻血吹き出す児

これは回想シーン。腕白な少年時代。

寝転んで日向で殺す秋の蟻

日陰じゃなくて白日のもとに、手慰みのように蟻を潰すんですよ。蟻を潰しながら潰される蟻に自分の姿を見ているんですよ。追っ手はそこまで迫ってきてる。ここで突然マイフェイバリットやくざを発表します。「アウトレイジ」一作目から水野(椎名桔平)です。そのダサいタンクトップの背中が好き!

新宿花園熊手組合新酒酌む

「新宿花園熊手組合」実際にそういう組合があるんだろうけど、字面がいかつい。土地柄裏社会との付き合いもあろうかと思う。※妄想です

銃声で終はる映画や檸檬切る

「毒戦 BELIEVER」じゃないかー!って思ったけどむしろ「ソナチネ」か。

いくつかの言語の咳の響きけり

韓国系マフィアと中国系マフィアと日本のやくざが入り乱れてる冬の新宿ですね、わかります。

幾らでもバナナの積めるオートバイ

バナナもいっぱい積めるし意外にいろんなものが積める。

市場血なまぐさしわが裸足もまた

東南アジアまで逃げてきた。血なまぐさい市場を歩いた自分の裸足の血なまぐささ、それは単なる現実に過ぎない。これは悪夢ではない。人間の血ではない。ただの魚と獣の臭いだ。罪の具現化ではない。そう言い聞かせても血のぬめりが足首を越え膝を越え全身を冒してゆくように思えてならない。(こういう海外詠が多くて、高飛びしたんだなって感じさせてくれるところもやくざ俳句的に最高❤︎)

八月の夢の男はよく沈む

足を縛り手を縛りセメント詰めにして海へ沈める。魚の群れの間を沈んで深海へと向かってゆく姿がいつまでも見えるのはこれが夢だからだ。本当は見えないはずの男の顔が見える。気持ちよさそうに笑っているように見える。男の顔、それは俺の顔だ。水に沈んでいくのは俺自身だ。

蜻蛉のなんの地獄をみてきた眼

トンボの複眼に「なんの地獄をみてきた」と問いかける。蜻蛉は首をかしげて飛んでいってしまう。ああそうだ。地獄? そんなもん知らねえな、という顔をしてサングラスの下で泣くのが極道だ。

薬指小指についてくる晩夏

自分の手を見つめる。昔の極道なら何本指が飛んでいたかわからない。詰めずに済んだ小指を曲げてみる。

梅雨寒へ暗い仕事を棄ててくる

何かを棄ててくること自体が仕事だったのではないか。拳銃とか、人とか。

悪党に生まれて死んで雛あそび

「雛あそび」がいい。一般的に女の子の遊びとされるようなものを持ってくるところがいい。極道者の一生をそんなふうに表せるなんて。極道いうてもよ、他愛のないごっこ遊びよ、と。場末のスナックのママのように薄い水割りを作りながらこう言ってあげたい。「あんた、そんなこと言わんで。生まれたときから悪党じゃった子なんておらんのよ。まあ飲みんさいや」と。

どの靴も蝶踏んでくる新宿駅

夥しい数の人間が行き交う新宿駅。男の眼には踏まれる蝶が見えている。極道者だけではない。堅気もみな何かを踏みにじってそれに気づかず生きているものだ。

狂はぬやう冷たい時計嵌めておく

金属製の冷たくて重い時計。ギラリと輝く、それなりの値段のする時計だ。

はあ。すばらしいですね。やくざ俳句の世界。

橋本直さんのやくざ俳句がかっこよくて大いにじたばたしました、という話については気が済んだのですが、ついでなのでもう少し。

上で示したような、こういう男臭い、いかにも極道! という句が並ぶなかに、従来のマチズモからずれたような句が混じってくるところがまた面白いんですよ。

君目覚めるまで冬林檎煮てをりぬ

北原白秋の「君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」が踏まえられているんじゃないかと思うんですが、相手を雪の中を帰して自分は室内でぬるいポエム吐いてるんじゃなくて相手が目覚めるまで朝食のジャムを作りながら待っててくれる彼氏……! スパダリか!くそ! 好きだ!

江戸城の蜜吸ひにゆく黒揚羽

妖しい美少年が大奥に忍び込もうとしてるみたいでドキドキしませんか……。

生殖の済んで蟷螂身構へる

身構えているのは、喰い殺される側だろう。この「死にたくない」と「死んでもいい」が同時に成立しているようなオスの姿が新鮮に思える。

生牡蠣をまの口で待つ人妻よ

一見非常にわかりやすい昭和的エロスだが「ま」音連発という言葉遊び的要素でもって知的に構築されている。自撮り熟女こと写真家のマキエマキ氏の世界に近いかもしれない。ユーモアを込めて再現された過去のエロス。

蝶の腹やはらかやはらか中年よ

エロスという点で言うならこちらの方が自分にとっては生々しい。蝶の腹の柔らかさ、しかしそれは指先にすこし力を入れるだけで潰してしまえるという危うさ。蝶に触れるという行為は少年時代をも連想させる。また柔らかい腹は完熟中年ボディの柔らかさでもある。少年時代と中年の現在と、潰されそうな蝶と人間の肉体もまた脆いということ、サディズムとマゾヒズム、それらがすべて折重なり「やはらかやはらか」とフェザータッチで触れられている。

ところで阪西敦子氏は栞文において『符籙』の句を「知識や教養をベースとした句」(例:日脚伸ぶ改訂版に絶滅種)と対するように現れる「ワイルド系」のハードボイルドかつスマートな句(例:寝転んで日向で殺す秋の蟻)、そのスマートな一面を覆い隠してきた「ゴシップ」的な句(例:冬の日の寺に修羅場を見てゐたり)に分類して紹介しているが、「知識・教養」「ワイルドでスマート」「ゴシップ」これらはまるっとまとめて「スパダリでインテリヤクザ」ということでいいですよね!!(まとめなくていい。)

香水なんて季語は滅べ! | 俳句さんに似合う香水を見つけてあげる(3)

初回第2回はそれぞれ俳句に登場する「桃」「夏みかん」を手掛かりに似合う香水を探しました。
そのあと週刊俳句に出張して太田うさぎさんの「軽薄なふりで夜店に遊びしこと」という句に似合う香水をおすすめしてきました。
今回は「香水」という言葉が登場する俳句さんたちにどの香水が似合うか考えてあげようと思う。

俳句の中に「香水」っていう言葉は、まあまあの頻度で出てきます。
なぜなら「香水」は夏の季語だから。

でも香水好きの方は思うんじゃないだろうか。
夏は纏える香水の種類が限られてしまう。
重めの香りをつけて真夏の電車なんかぜったい乗れないじゃないか。
ちょっと歩き回ったら汗ですぐ流れちゃうし。
秋冬の方が選択肢が広がるしきれいに香らせることができるのに、と。
あるいは、次のようにも考えるだろう。
たった1本の香水でも、温度や湿度が違えば香りの印象が変わってしまう。
だから四季を通じてその香水を試し、さまざまな表情を楽しみたい。
夏だけを特別視するなんて馬鹿げている、と。

改造社の『俳諧歳時記(夏の部)』(昭和22年。たぶん初版は昭和8年)にはこうある。

香水

植物性の香料を酒精にて溶解したる化粧品なり。香料はそれより発散する微量の瓦斯蒸気又は微粒子が人の器官を刺激して快感を与ふるものなり。或ものは濃厚、或は温和、或は強烈、其他種々なる香を感ぜしむ。香料にはローズ・ジヤスミン・ヴアイオレツト・リリーなどあり。その適当なる調合によつて得らるゝ香水は近代人の薫りに対する感覚趣味に適する為め、在来の麝香・匂袋等に代りて用ゐられ、夏季殊に悪臭を消す為めに多く用ゐらる。近年天然香料の成分研究せられ、之が合成の研究進歩するに及び、人造香料の製造を見るに至れり・人造薔薇油の如し。《参照》 掛香

※漢字は新字体に改めました

ほらこれが改造社『俳諧歳時記(夏の部)』の「香水」が載ってるページよ。

そしてこちらは皆吉奏雨『俳句鑑賞歳時記 夏の俳句』(1973年 / 明治書院)での記述。

香水

常時用いられるものでもあるが、汗の臭いなどを消すための身だしなみとして夏の外出などにふりかける。そうしたところからの季題であって、就中夏季に使用されることを基にして公約的に季題となったものであって、人事の季語にはこれに類するものが多い。

なんというか、日本が香水砂漠(諸外国と比べて香水が売れないから流通する数や種類も少ない)なのは、この「におい消しとしての香水」「身だしなみとしての香水」というイメージがまだ滅んでないせいなんじゃないのかな。
義務だとしたら、人間は適当に選ぶだろうよ。それが証拠にサラリーマンのネクタイ選びなんていいかげんなもんじゃないか。(※こだわりを持って選んでらっしゃるごく少数の方ごめんなさい)
香水を夏の身だしなみだとなんとなく刷り込まれてしまったひとが「夏だしなんか匂いつけとこ」「ブランドがお墨付き与えとるから文句ないじゃろ」くらいの意識で真夏に激重オリエンタル系香水を腋の下(ギャー!)にブシュッとしたこともあっただろう。腋臭ミーツ香水、奇跡のマリアージュ。香水分子と手に手を取り合って空中へ飛び立ってゆく悪臭分子。それを鼻粘膜でキャッチしてしまった不運な人々は香水全般を嫌いになってしまったのであった……。
というのはわたしの想像でしかありませんが、そういう側面だってなきにしもアラブ香水アルハラメインじゃない?
(おっと失敬! ついフレグランス駄洒落が出てしまったね!)

不快なにおいはデオドラント製品で消しましょうと先日香水屋さん( LE SILLAGE ル・シヤージュ / 京都 )にもらった説明書に書いてありました。
悪臭を消すために香水をつけるのではなく、悪臭を消したあと香水をつけましょう。

今後、「身だしなみ」じゃなくて「自分が心地よくいられるために身につける香水」という方向に意識改革していくべきですね。
つけたくなければつけなくていいし、どうせつけるなら心地いいものを厳選して、つける場所も季節による香り選びも工夫して。
そうすることがかえって他の人を不快にさせない香水の使い方につながるのではないかと思う。
少し前になりますがイソップのヒュイル(ひのきの香り)がツイッターでバズったのは若い世代が潜在的に心地いいものとしての香水を求めてるからこそでしょう。

だからもう夏の季語としての香水は滅べ。
今後香水を夏の季語とすることはまかりならん。無季じゃ無季!

※こちらが件のバズったツイート。個人的にはヒュイルを試す前にサンタマリアノヴェッラとかラボラトリオオルファティーボとか、いわゆる「香水」のイメージとは違う心地よさのある香水を試していたので言うほどの衝撃はなかった。でも、うん、気持ちはわかる。

というわけでようやく俳句さんたちの登場です。

香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男

とりつくしまのない感じ! 一分の隙もない感じ!
N°5  P / EDP / EDT その他いろいろ | シャネル …香水の代名詞とも言える定番中の定番。お出かけ用の香り。デパート、参観日のお母さん、スナックのママさん。キツイ! というイメージがあって避けてきた。しかしせっかく縁あって香水沼にドボンしたのだから名香と呼ばれるものは試してみなければ。今回はEDTとEDPを試香紙で試してみました。ていうかちょっと待って。パルファン(P) とオードトワレ(EDT)を調香したのがエルネスト・ボーさん(シャネルの初代調香師)で、オードパルファン(EDP)を調香したのはジャック・ポルジュさん(三代目)なのね? そしてN°5シリーズのなかにN°5ローっていう軽めのやつもあるのね? は? ヘアミトもある? 君たちはなぜ物事をそんなに複雑にしたがるのか。
中村草田男の句ですが、鉄壁さんとお呼びしましょうか。「香水キツッ!」と思って相手の懐に入っていけない感じがしたわけですよね。その香りに拒否感を覚えているのは自分なんだけど、全力で拒否されたようにすら感じる。こういうとき人は「●●の花の香りに似た香水」なんて分析はできないと思うので、初めから特定の何かの香りと表現できない(抽象的な香りとして設計された)N°5がしっくりくると思います。いかがでしょうか。あれ? おすすめされたくなかったですか? ああ、逃げていく鉄壁さんの姿が見える……。
まさに抽象的な香りなので形容しがたいのですが、EDTは思ったよりフレッシュで若々しい香り。20代のBA(デパートのコスメカウンターのスタッフ)さんの香りという感じがしました。EDPは粉っぽさを強く感じて、おとなっぽい。うん、たしかによく言われるように「お婆ちゃんの鏡台」と言えなくもない。EDTにしてもEDPにしてもわたし自身の考えるの心地よさとは全然違う方向の香り。でもベテランBAさん曰く「お好きな方は安眠効果があるとおっしゃるんですよ」と。そうか。マリリン・モンローはシャネルの5番を寝香水にしたと言いますからな。

香水の香の内側に安眠す 桂信子

そしてこちらはまさに寝香水の句です。いい香りすぎて一瞬でスヤァ…( ˘ω˘ ) してしまうことありますね。目が覚めてもまた枕からいい香りがして再びスヤァ…( ˘ω˘ ) しちゃうよね。もうお布団から出られない。香水の香の外側に出られない。
サイプレスマスク EDP | トバリ …ひのきの香りと匂い袋のような甘さ。能の世阿弥をイメージした香りだそうです。あまりにも心地よいので大きく吸って大きく吐いてを繰り返しているうちに強烈な眠気に襲われました。イソップのヒュイルもそうですが、ひのきの香りってひのき風呂っぽいからリラックスしすぎちゃうんだよね。Byredoのジプシーウオーターみたいなとらえどころのなさも感じる。トバリのディスカバリーセット(全種類が少量ずつ入ってるセット)を買ってじっくり試したい気持ちもあるんだけど、全部大きいボトルでほしくなりそうで怖い。

香水をひとふりくよくよしてをれず 菖蒲あや

つらいこと、悲しいことがあったとき元気付けてくれるようなポジティブな香りですね。
お名前(菖蒲)にちなんでイリス(アイリス)の香水はいかがでしょう。
シルクイリス EDP | パルファンサトリ …上のトバリと同じくこちらも日本製の香水。フランキンセンスが入っているはずなのですがそこまでお香っぽさは感じませんでした。家事や仕事を落ち着いて淡々とこなせそう。

交換しましょ香水とフラフープ 石原ユキオ

アッ! 香水を夏の季語にするのはまかりならんと言いながら過去の自分が夏の季語としての香水俳句を作っていた!
フラフープと交換しそうなのは100mlの豪華なボトルではない。
ファッションブランド系やセレブの名前を冠した香水など大量生産されている商品には100mlボトルのデザインをそのまま縮小したようなミニボトル(5mlくらい)が手に入るものがありますが、ここで言う「香水」はそうしたミニボトルではないでしょうか。あるいは樹脂製の軽いボトルに入ったボディスプレーとかフレグランスミストのような商品かもしれない。
サムライ ウーマン EDT | アラン ドロン …石原本人の20代の愛用香水。桃とサンダルウッドの組み合わせによるものか、なんとなく和風。空き瓶を嗅いでみてやや経年劣化しているものの「若い女の子の香り!」と思った。懐かしさこそあれ、もはや「自分の香り」ではない。現在販売されているものは初代の香りの雰囲気を残しながらリニューアルされたものになります。

<<引用元一覧>>
香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男『新歳時記 夏』平井照敏・編
香水の香の内側に安眠す 桂信子『新歳時記 夏』平井照敏・編
香水をひとふりくよくよしてをれず 菖蒲あや『現代俳句の鑑賞101』長谷川櫂・編


さて、次回からは再び俳句を一句だけ取り上げて長々とあの香水がいいこの香水がいいと語る形式に戻ります。
ついに! ついに!
海外通販デビューするぞー!!!

注:2020年8月10日現在ラッキーセントというアメリカの通信販売サイトに香水サンプルを注文し出荷連絡が来た状態です。初めての海外通販がうまくいくかどうか一緒にドキドキしてください!

酢つぱし | 俳句さんに似合う香水を見つけてあげる(2)

Image by marijana1 from Pixabay

香水を誰かにすすめたい気持ちをこじらせた香水初心者が俳句に似合いそうな香水を探してくる企画の第2回です。
香りの登場する俳句ということで、本日はこちらの俳句さんにぴったりの香水を探しにいきますよ。

夏みかん酢つぱしいまさら純潔など 鈴木しづ子

この句って内容的には

夏みかん 酢つぱし / いまさら 純潔など
5 4 / 4 6

と真ん中でズバッと切れてるんですよね。
まるで指に力を込めて果実を二つに割ったようなパワフルさがあります。
こんなふうに真ん中でズバッと切れる句を中間切れと呼んだりしますが、さらに字あまりもしているので、元気に暴れてる感じがする。

「酢つぱし」という表記もすごいですね。普通は「酸つぱし」と書くけど、「酢」という字をあてることで酸味が強調されてる。

この記事を書くにあたり夏みかん実物を取り寄せようとしましたが季節商品のため叶いませんでした(現在7月)。
そうだった。夏みかんは夏と言いながら春の季語なんだった。
夏みかんの収穫期は春です。
そんなわけで夏みかんの味がよくわからないまま「超すっぱいらしい」というぼんやりとしたイメージで突き進ませていただきます。
(来年夏みかんを入手して答え合わせするからね……!)

さて「いまさら純潔など」について。
省略された部分を補うならば、
「いまさら純潔なんて守っていられるか」
だろうか。
俳句の言葉を借りながら2020年に生きるわたしが言うならもう一歩踏み込んで、
「いまさら純潔なんて馬鹿げたこと言うやつまじファ●ク」
と、その「純潔」って価値観そのものを否定するかな。

この句が作られた当時(第二句集『指環』出版は1952年)は終戦後の混乱期。
「純潔」を叩きつけるように否定しなければいけないほど「純潔」が問題になる状況で、かといって「純潔」にこだわっていては死にかねなくて、力づくで奪われる「純潔」もあり、世間が「純潔」と呼んでいるものに面と向かってNOをつきつけるにはハートの強さ、高潔さが必要だったことだろう。

マッド・マックス 怒りのデス・ロードの妻たちのようにこう言いたくなる。

WE ARE NOT THINGS(あたしたちはモノじゃない)

というわけで、やっと香水の登場です。
今回は「夏みかん」にちなんで柑橘類の存在感があり、世間と戦う女性にぴったりの香りをおすすめしたいと思います。

注:本記事ではトップノート・ミドルノート・ベースノートに関してFragranticaを参考にしています。

べらんめえ! – アンセンス・アサクサ EDP –

Encens Asakusa EDP

ブランド:オーケストラパルファム

トップノート:インセンス(=お香)
ミドルノート:アイリス
ベースノート:ムスク

ブランド公式サイトの記述によると、メインノートとしてオリバナムインセンス(教会のお香)、ピンクベリーズ(って何?)、サイプレス(ひのき)、アイリス(日本ぽく言えば菖蒲)、ヴァイオレット(すみれ)、ミルラ(これもお香。ミイラ作るときも使うやつ)、ホワイトムスク(石鹸っぽい)。

「お香(アンセンス) / 浅草」と言われたら、浅草寺の境内に立ち込める線香の煙をイメージするのではないだろうか。
ところがどっこい、その予想は鮮やかに裏切られるんだな。

最初に飛び出してくるのがめちゃくちゃフレッシュな柑橘!

でもほら、上の香料見てもシトラスともレモンともグレープフルーツとも書いてないでしょ。
公式の画像にはピンクペッパーとかホタルブクロの仲間っぽいピンクの花が載ってるから、そこらへんがこの柑橘っぽさを出しているの? それともリストに載ってないだけで実は柑橘が入ってるの? この酸味はどこから来てるの? わからん。香水初心者には難しい。
でも信じて。柑橘(らしきもの)ほんとにいるんだもん。
で、その柑橘(っぽさ)と同時にスパイスも爆発してて、江戸っ子が啖呵を切るような威勢の良さを感じるんだ。
鮮烈なトップノート、酢つぱしさんもきっと気にいるはず。
ミドルノート以降はスパイシーさを残しつつ、アイリスのおしろいっぽさとムスクの石鹸ぽさで凪いでいく。
一貫して線香の煙の匂いではないんだけど、お香といえばお香。火をつける前の線香や粉末の塗香に似てるかも。

オーケストラパルファムは楽器からインスピレーションを受けた調香師が香水を作り、それをミュージシャンが音として解釈して演奏するという、コンテンポラリーアート的手法を取っているブランド。
YouTubeチャンネルから各香水のために制作された曲やミュージシャンのインタビューが試聴できるようになっており、この香水の場合は日本の琴奏者日原史絵氏が演奏を寄せています
たしかにトップノートの謎の柑橘爆発は琴の高音のキーン! とした感じに近いかもしれない。

シャワーのように浴びたい柑橘 – 4711 アクアコロニア –

4711 アクアコロニア
ピンクペッパー & グレープフルーツ

ブランド:4711

ノート:ピンクペッパー、グレープフルーツ ※時間経過による変化なし

ドンキで投げ売りされていたらすぐにお迎えするべきオーデコロン。
(わたしが買ったときは50mlが500円になっていました。)

アクアコロニアシリーズは絶世の美女になった気がしたり、戦闘力が高まったりするタイプの香水ではない。
そのかわり、肩こりや筋肉痛に塗る軟膏のように、気持ちをほぐしてリフレッシュさせてくれるものです。

酢つぱしさん、あなた世間に対して怒りを持っているはずだ。
その怒りにまかせてスプレーを押しまくってほしい。
そしてこのオーデコロンを全身に浴びてくれ。
酢つぱい! 酢つぱきもちいい!
ヒュー!
よし、ついでに冷えたビール飲んじゃお。
それからマイクロビーズ入りのソファに倒れ込んでネットフリックスで海外ドラマとか見るといいよ。

4711アクアコロニア、名前の通りオーデコロンなので、持続性も拡散性もありません。(香料の濃度で言うとパルファン>オーデパルファン>オードトワレ>オーデコロン)
同じシリーズのブラッドオレンジ & バジルは香りがもうすこし強め。でも甘すぎないオレンジ。どちらも愛用中です。
最初はいちばん小さいサイズを試して、気に入ったら大瓶を取り寄せるといいよ。
(なおこの系統が好きでもうちょっと贅沢に自分をもてなしたい方はゲランのアクアアレゴリアシリーズから何かお迎えすると幸せになれると思います。)

不潔ですが何か? – ダーティ レモン EDP –

DIRTY LEMON EDP
ブランド:ヘレティック・パルファム

トップノート:レモン、ベルガモット、ライム、シトラスリーフ
ミドルノート:ジュニパー、ブラックペッパー、イランイラン
ベースノート:パチュリ、オーストラリアンサンダルウッド
ブランド公式サイトに示されているメインノートはレモン、イランイラン、ブラックペッパー

ごめん、実はこれ試してない。
ムエット(試香紙)すら嗅いでないんだ。
でもコンセプトと広告ビジュアルがおもしろいからブラインドレコメンドしちゃう。
(香水沼界隈では香水を試さずにいきなり購入することを “ブラインド買い” “blind buy” と呼びます。)

ダーティレモンは「純潔」とかそういう次元じゃない、セックスがあっけらかんと受け入れられる世界の商品だ。
こちらの画像をごらんください。


Artist: Tony Futura | Instagram

乳房に見立てられたレモン。
片方の「乳首」に飾られたボディピアス。
明るくてエロティックでユーモラスなこのイメージは Tony Futura というベルリンに拠点を置くアーティストによるもの。
アメリカ(ヘレティックはアメリカのブランドです。)に比べたら日本はそうでもないとはいえ、セックスは昔ほど後ろ暗くないんだよね。
したいときにしたい相手とセックスすることも望まないセックスを拒否することも女性の(人間の)当然の権利だ。
それを認めさせるための戦いはいまもまだ続いているけど、少なくとも1952年から言えばいくらかましになってるとわたしは思う。だから、こう言うと失礼かもしれないけど、酢つぱしさんの作者、鈴木しづ子さんの俳句は現代の基準から言えばたいして大胆でもスキャンダラスでもないんだ。

裸か身や股の血脈あをく引き
情慾や乱雲とみにかたち変へ
娼婦またよきか熟れたる柿食(た)うぶ
コスモスなどやさしく吹けば死ねないよ
遊郭へ此の道つづく月の照り

鈴木しづ子『夏みかん酢つぱしいまさら純潔など』(2009)より引用

師・松村巨湫の跋文なども含めて鈴木しづ子の句集を読むと、当時の基準でのスキャンダラスな演出(あえて物議を醸しそうな句を積極的に採用したような選句、ストーリーの成り立つような構成)を狙った形跡と、役割を演じる痛みを受け取らずにはいられない。搾取だよなーとか他人の人生の消費だよなーとか感じてしまって無邪気には楽しめない。

夏みかん酢つぱしいまさら純潔など

「純潔」っていう言葉は古臭い。
現代ではセックスした経験がないことを「純潔」って呼んで特別視しなくてもいいの。
セックスしたことで汚れるわけじゃない。
レイプもセックスワークもあなたを汚しはしない。
セックスしたくなければしなくていい。しない権利がある。
処女をほしがる奴は女を人間として見ていない。

酢つぱしさんは自分の古風なところについてどう思いますか。
個人的には、世の中が前に進んで自分が古びて見えるのは自分の手柄だと思うようにしてるよ。
微力ながらわたしがじたばた抵抗した成果がいくらか出たのだと。
だから酢つぱしさんもそう思うといいんじゃないだろうか。(いや、わたしなんかに言われなくてもあなたのほうがよっぽど影響力大きいけどさ。)
あと、このブランドのビジュアルのセンス自体も一昔前のSMカルチャーのパロディみたいな雰囲気を感じるから、ひょっとしたらいまの10代20代が見たら古臭いと思うのかもしれない。

結論

今回はどれが一番おすすめというより用途別です。
戦いに際して景気付けに2〜3プッシュいってほしいのはアンセンス・アサクサ。
風呂上がりに今日も生存お疲れ様〜! と5プッシュ〜10プッシュいっときたいのは4711アクアコロニア。
ダーティレモンは世の中かわったなぁ、というのを感じてもらえるかと思って。

自分を大切にして、パワーを回復して、それからまた世間に回し蹴りをくらわしましょう!

その他これから試したい柑橘系の香り

ユー オア サムワン ライク ユー | エタ リーブル ド オランジェ …こちらはフランスのブランドだけど、ヘレティックパルファムに近いヴァイブスを感じる。
グレープフルーツコロン | ジョー マローン ロンドン …試香紙で試した感じだとローズマリーが効いていてアロマティック。薬草っぽい癒しの柑橘。今度は肌に乗せたい。
レプリカ EDT アンダー ザ レモンツリー | メゾン マルジェラ フレグランス …特定の場所・特定の時刻の情景をイメージして香りを構成したレプリカオードトワレコレクションのうちの1本。シリーズの中では「レイジーサンデーモーニング」が人気らしい。10mlボトルがあるらしいじゃないですか。ほほう……。

<おまけ>
鈴木しづ子についての情報はKAWADE道の手帖の『鈴木しづ子』という本にざっくりまとまっているのですが、鈴木しづ子は「娼婦」だったという説に関して、その説を否定する立場で批評している文章もセックスワーカーへの差別意識にまみれたものが多く、ぶっちゃけ見るに堪えない。
救いをもたらしているのは雨宮処凛さんの文章なので気になる人はそこから読んで「あ、無理っぽいな」と思ったら放り出すのがいいと思う。わたしは全部読むのは諦めました。

#野性俳壇 第39回 | 野性時代2020年8月号

野性俳壇、兼題「泳ぎ」の回。
長嶋有さんの佳作に選ばれていました。

カルキくさいゆびからもらうフエラムネ 石原ユキオ

以下、他の方の入選句の感想。

<長嶋有特選>

手紙入りクリアファイルと夏の雲 友常甘酢

メールやSMSでなんでも済むので紙の手紙(おっとレトロニムだ。)を詠むと嘘っぽくなりがちだが、クリアファイルに入れたことにより急に実在感が増す。
というか、実際にこれをやることがありますね、わたし。
手紙が来て、その返事を書いた便箋と白紙の封筒と元の手紙を全部クリアファイルに入れて出かけ、出かけた先で住所を書き写して郵便局から出す。クリアファイルには相手の手紙だけが残っている。

背泳ぎの今か今かと天の罰 公木正

友人がこの句を読んだ瞬間笑った。「背泳ぎ、なんか(上から)来そうじゃん」と。
うん、ちょっとわかる。

泳ぎと予感「しかない」荒涼たる海だ。

との長嶋さんの評が良い。
俳句ってモノで書けと言われがちだけど、この句はモノのなさによって景が浮かぶ。水と空と自分だけの景が。

<夏井いつき特選>

夜行性の水を叩いて泳ぎゆく 仁和田永

「夜行性の水」がポエティックなんだけどかっこつけすぎにならないギリギリのバランスでかっこよくきまっている。
夜のプール。たぶん屋内の。「春ひとり槍投げて槍に歩み寄る(能村登四郎)」のような孤独を感じる。

<長嶋有佳作>

大恋愛じゃない恋愛半ズボン 中島潤也

そんなこと言うなよ。すべての恋愛は大恋愛なんじゃないの。照れ隠しで言ってるだろ。ちがうの?
半ズボンはおとなも穿くけど青春性があっていいですね。

アイスコーヒーのはっきりしない飲み終り 徳山雅記

わーかーるー! 明らかにもう味しなくても氷が解けてきたらまた飲んじゃう。

<夏井いつき佳作>

水泳や日陰に匂ひ立つギブス 木江

骨折して水泳の授業見学してるんだね。いまの自分の感覚では水に入れない生徒がプールサイドで見学しなきゃいけない合理的な理由がわからない。図書室なり保健室なりで涼しく勉強していてはだめだったのか。
ついつい思い出し怒りしてしまったがわたしは骨折したことがありません。
ギブスを「匂い立つ」と言ったのがすごいよね。メントールの匂いがしてきそう。ほいでちょっと色っぽいぞ。
余談だけどギブスと書くかギプスと書くかいつも迷いませんか。

黒々とプールサイドに尻の跡 徳山雅記

また徳山さん!
8の字にプールサイドに尻の跡がついてるのかわいいですよね。
どんな美男美女もどんな偉いひともプールサイドでは水を含んだスタンプなのよ。
人類かわいいな。

四代目中村地球三郎第一句集『宙乗』より

四代目中村地球三郎第一句集『宙乗(スペースフライト)』より
静かの海野外劇場公演
六方のいまさらながら着地せり
勘九郎兄さん
通信や紅筆鳥渡(ちよつと)宙に置き
言ひ伝へによると十一月三日
このそらに星またゝかぬライカの忌
ほろぐらむ夢のあなたを手にかけてしんと明るむ愛といふもの 穂崎円・訳
しらじらとほろぐらみたる褌かな
第十三アルカトラズ刑務所慰問
地表灼けて客席に千人の俊寛
勘太郎くん
父さんにパパにダディに紙の薔薇
定期健診
春日傘ゆつくりもどす骨密度
ネオ・コトヒラ名物ジンリキシャ
車夫(ドロイド)ピッと応ふる春の商店街
半減期の先にも歌舞伎はあるだらうか
初雪の予報うれしき防護服
名跡を継ぐといふこと
二十光年てふ大向ふより “Накамурая”

この作品は「現代詩手帖」(思潮社)2017年8~10月号連載の誌上アンソロジー企画〈川口晴美と、詩と遊ぶ〉の最終回「男だけの世界」のために、中村地球三郎丈憑依状態により制作されました。稀人舎『Solid Situation Poems』でアンソロジー全作をお楽しみいただけます。

穂崎円氏の作品は共有結晶文庫からどうぞ。

夜の桃 | 俳句さんに似合う香水を見つけてあげる(1)

桃ジュースを売るジューススタンド

桃ジュースの美味しい季節です。

香水にちょっとはまってしまった。
知識は少ないがひとに香水をすすめたい。
誰かがわたしの好きな香りを身につけてくれたら嬉しい。
だがたいていの香水ラヴァーはわたしより知識が豊富なので、わたしからすすめられる機会は少ない。

大丈夫。
わたしには俳句があるから。

俳句さんに似合う香水を勝手にすすめてあげようと思う。

まずは香るものが登場する俳句からいってみよう。
記念すべき第1回の俳句さんはこちら。

中年や遠くみのれる夜の桃 西東三鬼

季語は「桃」。秋の句です。
中年という人生の一時期と、夜の闇のむこう側に遠く実っているが気配としてはありありと感じられる桃の存在。
西東三鬼その人のいかにもダンディな写真や小説『神戸』『続神戸』のイメージが重なるから、中年男の胸をふとよぎった恋の気配(あるいはもっと生々しい欲望の比喩としての “恋” )、みたいに読んでしまう。
「恋は遠い日の花火ではない」というサントリーの古いコマーシャルがあるが、長塚京三が若い女性の部下に「課長の背中見るの好きなんです」と言われる、あんな感じではないだろうか。

そう、この「遠く」は「遠くだと思っておかなければいけない」「近づいて触れてはいけない」「でもぜったいおいしいだろ」「いやだめだめだめ」「あー」みたいな内心のジタバタ感をぐっと凝縮した「遠く」でしょ。もっと下世話な言い方をしてしまうと、若い子とセックスしたいけどエロオヤジだと思われたくないからすごく「夜の桃」なんて上品な (?) 比喩を考えたけどかえってエロオヤジっぽさが滲み出てしまってダサいパターンだ。いやだがそこがリアル。「みのれる」「夜の桃」とか音もマ行ナ行ラ行のヌルヌル感がいやらしいじゃないですか。桃に触れてないけど、脳内でもう何度も剥いてるでしょ!!!

どんどんでぃどん、しゅびらでん、おでーえーえーえーおー♪

むしろ俺がエロオヤジだ。

さて。
「ピーチ」とか「ネクタリン」とか書いてあったら桃の香りであろう、ということでいくつか量り売りで取り寄せてみました。

注:トップ・ミドル・ベースに関してはFragranticaを参考にしました。

昼の桃 – ネクタリン ブロッサム & ハニー –

Nectarine Blossom & Honey Cologne

ブランド:ジョー マローン ロンドン

トップノート:グリーンノート、ブラックカラント、プチグレイン(カシス)
ミドルノート:ネクタリン、ブラックローカスト(アカシアハニー)
ベースノート:ベチバー、ピーチ、プラム(ピーチ
カッコ内はFragranticaではなく公式ウェブサイト上での記載内容。

コロンなのでたっぷりめに(両腕+お腹)つけてみました。
生の桃ではないですね、これは。
桃を含むフルーツ、それからシトラスやグリーンの人工的なフレッシュさ。
デオドラントスプレーっぽい。中学生・高校生がつけていても違和感なさそう。
夜というよりは昼間の香り。
桃というと女性のイメージが強いと思うけど、敢えてメンズファッションと合わせるとおしゃれかもしれない。
かっちりしたスーツだとさすがにちょっと違う気がするので、くすみピンクのTシャツとハーフパンツ、足元はスポサンでコロンはネクタリンってどうですか。
いや、コーディネートの話ではなかった。
夜の桃の句にぴったりの香水を見つけてあげたいのだ。
これはあまりにも昼っぽいので却下です。
わたしの趣味とはちょっと違うけどデオドラントスプレーやシャンプーの桃の香りが好きで常にまとっていたい & ちょっとおとなな雰囲気にアップデートしたいひとにはおすすめできる。

仏壇に供えられた桃 – ミツコEDP –

MITSOUKO EAU DE PARFUM
(日本のサイトにミツコEDPがなかったからリンク先はUKよ! 2020年名香が日本から大量撤退と話題のゲランさん…)

ブランド:ゲラン

トップノート:シトラス、ジャスミン、ベルガモット、ローズ
ミドルノート:ライラック、ピーチ、ジャスミン、イランイラン、ローズ
ベースノート:スパイス、アンバー、シナモン、ベチバー、オークモス

ゲラン帝国より名香ミツコ様(EDP)をお招きしました。
調べるまで桃のイメージなかったけど、Fragranticaを見ると案外桃の画像が大きく出てる。
が、トップではどこかに桃がいる気がまったくしない。
お香っぽいスパイシーなオープニングに、ジャスミンかな? 中国の土産物屋かな? アッ、白檀扇子で扇がれた(白檀は入っていないはず……)? などと思いながらしばらく(30分? 1時間?)待つと徐々に甘みが現れ桃とシナモンが前面に出てきました。こっくりした完熟の桃。いいね。いい桃だね!
移り変わってゆく香りが美しいので、「ミツコは桃の香りです!」とは言えないのだけど、夜の桃の句のイメージにはかなり近い。
お香っぽいスパイスの香りって、もっと言えば線香の匂い。沈香とか、ちょっと塩辛い感じの。だからそこが「中年」ぽくもある。親戚や知人の死。逃避としてではなく現実的に意識し始める自分の死。だからこそ生命力の塊のような桃を対置したくなるのでしょうね。遠く離れた夜の闇の向こうに見いだすのは過去の自分の若さなのかもしれないね。ごめんな、エロオヤジ扱いして。
ただし、

おそるべき君等の乳房夏来る 西東三鬼

やっぱりこういう句を作るひとなんで、いっぺんハリセンでしばいておきたいですね、西東三鬼。

いちおう桃 – サムサラEDP –

SAMSARA EAU DE PARFUM
(今度はリンク先日本よ)

ブランド:ゲラン

トップノート:グリーンノート、ピーチ、イランイラン、ベルガモット、レモン
ミドルノート:アイリス、ヴァイオレット、オリスルート、ジャスミン、ローズ、水仙
ベースノート:アイリス、サンダルウッド、トンカビーン、アンバー、ムスク、ヴァニラ

ミツコを試したならサムサラも試してみなければ、と思って試しけり。
結論としては桃っぽさはあまりなかったです。
高級なおしろいっぽいパウダリーから始まり、何か強い花(イランイランとジャスミンかな?)がジャジャーンと来る。
そしてレモンを絞った手で白檀扇子を持ってあおがれます。
どちらかというと重めの香りのはずなのに、なぜかすっごい夏を感じる。
ああこれは。
夏の天満屋6階、冷房のきいた葦川(いせん)会館ですね。岡山に住んだひとにしかわからない比喩だが。
要するにデパートの催し物フロアに美術展を見に来た夏着物のご婦人っぽい。
ミツコのラストがスパイシーなのに対し、サムサラのラストはぐっと甘くなるのが意外でした。

結論

中年や遠くみのれる夜の桃 西東三鬼

この句におすすめしたい香水はひとまず現時点ではミツコEDPです。ひとにすすめるのではなく俳句にすすめてあげているだけとはいえ、P(パルファン)もEDT(オードトワレ)バージョンもあるものをEDP(オーデパルファン)だけ試して判断するのは申し訳なさを感じないでもない。
これを書いているのは新型コロナウイルスの第二波とGoToキャンペーンが重なるという最悪の時期で、もしそうでなければ関西まで出かけてあちこちの香水売場でいろいろ試したかった。状況がよくなってあれこれ試せたら追記するね。たとえ誰も待っていなくてもな!

買ってきた桃

桃の香りって実物はどんなのだっけ……? と思って購入した白桃250円。そのうしろはつるむらさき100円。

その他気になっている桃の香り

1969 | イストワール・ドゥ・パルファン …チョコレートと桃らしい。
Tian Di | フラッサイ …「天地」の中国読みの名前をつけられたアルゼンチン生まれの香水。
ピーチ | 武蔵野ワークス …悩むような値段ではないのでサクッと買えばいいんだぞ。

『俳句と雑文 B』を(やくざ映画として)読む −ディレクターズエディション−

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瀬戸正洋『俳句と雑文 B』における俳句の世界は、やくざ映画の世界観に極めて近い。

【暴力の匂い】

拳銃を撃つや春月落つこちさう

サンダルと人とプールに浮びけり

句集の左右のページに隣り合って並んでいる二句である。拳銃を撃つ。銃声が空高く響く(消音器つけなくてよかったのかな)。空には春の月。目の前のプールには撃たれた人間とサンダルが浮かんでいる。そんなシーンが見えてくる。前者が春の句、後者が夏の句なのは気にしなくていいだろう。サンダルもプールも一年中あるのだ。

冷素麺口中切れてゐたりけり

草いきれ顔殴られてしまひけり

こちらは同じページに並べられた二句。「顔を殴られて口の中が切れてしまった」という物語が浮かび上がってくる。夏草の生い茂った土手で殴り合う男たち。草を踏みしだけば、むせるほど濃いにおいが鼻腔を冒す。ゴロのあとの冷素麺は、できるだけ傷にしみないようにつゆをほとんどつけずに啜るのだろう。

荒梅雨の私ひとりが濡れにけり

土居組組長、土居清の殺害を命じられた広能昌三(菅原文太)が、土砂降りのなか土居が現れるのを待つ。雪駄履きの素足が泥水に濡れる。足元に何本も吸い殻が落ちていることで長時間待っていたことがわかる。『仁義なき戦い』第一作の名場面である。

大綿や繋がれたるもの飛び跳ねて

大綿とは綿虫のこと。繋がれているのは犬だろうか。いや、人間だ。これはリンチの様子なのだ。目前に迫る死からなんとか逃れようともがく人間のまわりを、まるで命の儚さの比喩であるかのように綿虫が飛んでいる。凄惨な場面に感傷的で繊細な音楽を流すような演出は、深作欣二ではなく北野武のスタイルだろう。

ばらばらな人間ばらばらな西日

ばらばらなのは人と人の気持ち。ばらばらな西日とはブラインド越しに差してくる縞々の西日のこと。そう読めばいいのかもしれない。しかし、これはやくざ映画である。ばらばらになっているのは文字通り……

家庭用高圧洗浄機日短

高圧洗浄機で洗い流すのは当然、床の血痕だ。

【エンコ詰め】

やくざ映画といえば、組員が指詰めによって落とし前をつける場面は欠かせない。

油照左手爆発してをりぬ

蒸し暑い夏の日に詰めた左の小指。爆発したように飛び散った血。拍動のたびに痛む左手。『BROTHER』にこんな場面がある。モー(ロンバルド・ボイヤー)が「(小指を)切ったらどうなる」とたずねる。寺島進演じる加藤はこう答える。
“He can’t swim straight anymore.”(まっすぐ泳げないね)
瀬戸正洋はこう答える。

短日の右手が重くなりにけり

【組員の日常】

新涼のもぬけの殻の事務所かな

事務所には代紋の入った提灯や額などが飾られているに違いない。季語が「新涼」なので、九月頃。秋祭りで的屋の仕事が忙しく、組員は出払っているのだ。

仕事始めのプライベートの名刺かな

『竜二』の主人公花城竜二は、堅気風の名刺と極道仕様の名刺の二種類を持っている。それらはどちらも仕事のために用意した名刺である。やくざにとってのプライベートの名刺とはどんなものだろう。見てみたい。

ボクサーが蜜豆食うてゐたりけり

ボクシングの興行も組の重要な資金源だ。「おい、おめえ蜜豆なんか食ってていいのか」「さっき体重測定パスしたんスよ」「おうそうか、しっかり力つけていい試合しろよ」
テーブルに千円札を置いて肩で風を切りながら甘味処を出ていくパンチパーマの男。誰も指摘できないが、口髭に生クリームがついている。

【懲役】

雌伏十余年寒桜愛でにけり

組のために罪を被ってくれと頼まれ、懲役十余年。刑務所に植えられた寒桜に重ね合わせるのは愛しい女の面影か、兄貴の背中の桜吹雪か。

復活祭徒党を組んでゐたりけり

「復活祭」はイースターのことだが、懲役を勤め上げて娑婆に出た喜びに「復活」という言葉がふさわしい。組の仲間が何人も刑務所の出入り口の前まで迎えにきて、煙草を差し出し、火をつけ、労いの言葉をかけてくれる。「徒党を組む」とは軽い自虐だ。親分はイエス様、などとうそぶいて組を抜けていったかつての仲間に軽い皮肉を言っているのかもしれない。

【女たち】

烏貝嚙み難く妻は怖ろしく

おそろしいくらいでなければやくざものの女房は務まらない。噛みにくいながらも噛めばじわりと旨味の染み出てくる烏貝によって、苦楽を共にしてきた妻への信頼感が表現されている。

春の闇自宅へ帰るための酒

ときには妻の顔を見たくない夜もある。一杯ひっかけてほろ酔いで自宅へ向かう。

肌寒の思はず噓を付きにけり

ちからいつぱい頬叩かれて秋深し

これも二句の並びが鮮烈である。「あんた、またあの女のところに行ってたね」「いや、サブのとこだよ」「サブちゃんならさっき煙草屋の前で会ったわよ、馬鹿!」パシーン!
「秋深し」という叙情たっぷりの季語からは余韻が感じられ、叩かれた痛みをがいつまでも消えずに残っているような印象を受ける。

香水は厄除婦人警察官

男性の多い職場に女性が入れば「女のくせに生意気な」と言われるが、ことさらに「女らしく」振舞うことによって「わたしは弱い女性であり、あなた方男性の領域を侵犯するつもりはありません」というメッセージを発することができる。化粧は、スカートは、香水はまさに厄除なのだ。働く女性の処世術である。
しかし昭和なやくざがそこまで考えるだろうか。「うえっ! このねえちゃん香水付けすぎだな!」という気持ちをちょっぴり粋に言ってみたのだろう。

【ダメ。ゼッタイ。】

にんげんの顔がいつぱい瓜畑

出目金は生きるべきかを尋ねけり

扇風機左右に動く胃痛かな

薬物は人間の心身を蝕む。

夏負けの酒も薬も止めにけり

うん、うん。やめたほうがいいですよ。

この他、ガサ入れ、政界との癒着、密輸、彫物など、やくざ映画の定番モチーフを描いた(ように読める)句は枚挙にいとまがない。お疑いの向きはこぶしのきいた演歌を流しながらもう一度この句集を読み返してみてほしい。昔気質の極道の照れたような笑顔が、行間に見え隠れしているはずだ。

この文章は月刊俳句同人誌『里』二〇一四年三月号に掲載された「『俳句と雑文B』を(やくざ映画として)読む」に文字数の関係からカットしていた部分を加えたものです。