マッドマックス怒りのデス吟行お気に入りセレクション(2/3)

 

7月5日〜12日にかけて開催した「#マッドマックス怒りのデス吟行」から、個人的お気に入り作品を紹介します。第一回はこちら

◆これぞ吟行句!部門
吟行というのは詩歌を作るために散歩すること。リアル吟行をした場合、当然景色を詠んだ作品が多くなります。ということで今回はFURY ROADの景色が目に浮かぶような俳句を集めました。

スピードや振り落とされしものに月(るいべえ@Vault111 @ruibee)
https://twitter.com/ruibee/status/617468772090122241

スピードのあまり月が見えなくなることを「振り落とされ」ると言っているのだと解釈しました。遠くにある月が見通しのいい砂漠の中で見えなくなるなんて、絶対そんなわけないのでかなり大げさな比喩なんですけれども、速さの比喩としてなんだか妙にわかる。それはわたしたちが乗物に乗って移動しているとき、近くの建物に遮られて月が見えなくなるということを経験しているからでしょう。
上五(かみご※1)で「スピードや」と、とんでもないフレーズで詠嘆してしまうところもチャーミング。「や」の前って、「古池や」とか「降る雪や」とか、普通は和語・漢語が来るポジションですから。

風死して風を呼ぶなりウォー・タンク(ネムカケス @kakesunemu)
https://twitter.com/kakesunemu/status/617666387595497472

「風死す」は夏の季語。風が止んで暑い状態のこと。太陽が燦々と照りつける荒地をウォータンクが猛スピードで進み、ジョーの妻たちの髪やドレスが風にそよぐ様子が眼裏に蘇ってきます。進まなければ風は起きない。命がけで求めなければ何も得られない。マッドマックスの世界の過酷さを思いました。

道果てて晩夏の塩の明るさよ(ドーナツハンター正井 @kelmscott_masai)
https://twitter.com/kelmscott_masai/status/618388025991540736

ヒャッハー! 吟行句オブ吟行句ス!!
まるでその地に立って見てきたかのような書き方です。
この句をもし句会※2で見かけたら「道果てて晩夏の潮の明るさよ」(道がなくなったらその先は海でとても明るいなあ…)の書き間違いだと考えるでしょう。フュリオサたちが「塩の湖」と呼んでいるところは、かつて海だったという設定らしい。そのことを暗に示唆している俳句のように思えました。

さて。やや地味な場面に着目した作品もありました。

約束の地に整然と夏菜かな(千百十一 @L_Gar_2)
https://twitter.com/L_Gar_2/status/618833324753039360

砦の奥で植物が水耕栽培されているシーン。「約束の地」と呼ばれているということは、ラストシーンのその後なのかもしれません。他のひとが注目しないところを拾い上げていくのも吟行の醍醐味です。

次回はフュリオサ、マックス、ニュークス、鉄馬の女たちが登場します!

※1 俳句の五音、七音、五音を、それぞれ「上五(かみご)」「中七(なかしち)」「下五(しもご)」と言います。
※2 句会というのは俳句を無記名で提出し、誰がどれを作ったのかわからない状態で批評し合うMADなパーティのこと。高得点を集めた俳人はV8ポーズで讃えられます。