学校で、中国のある地方の性風俗産業がテーマの映画を観る。
曇天。
浜辺。
女性がスポンジ状のものを股に挟んで横たわり、半ば砂に埋まって男性を待つ。
男性がそこに性器を挿入する。
何組もの男女がそのようにして粛々と(擬似的に)交わっている。
服を脱ぎ、男女でペアを組んで映像と同じ姿勢で鑑賞するように言われる。
ある種の参加型インスタレーションであるらしい。
しかし、男女ペアで映像の真似をしてみたところで、女子生徒が売る側の、男子生徒が買う側の役割をなぞるだけで、ともに一面的な不快感しか得られないだろう。
作品について下級生の女子と激しい議論になり、レポートを提出することを教師に約束して上映が続く教室を出る。
レアンドロ・エルリッヒほどの深さ
港に停泊している豪華客船。
母が白い水着を着ている。
わたしは小学生の頃買ってもらった蛍光オレンジの水着。
船のプールは思いのほか深い。おとなの背丈よりもまだ深い。
色とりどりの水着を身に着けたひとが泳いでいる。
潜ったり泳いだりしてプールから上がり、階段状になった甲板を歩いていると、突然人々が逃げ始める。
船が沈みかけているらしい。
わたしはベンチに腰掛けていた祖母を背負って船から脱出する。
母の姿は見当たらないが、母ならひとりで逃げられるだろう。
真夏の日差しがまぶしい。気温が上がる。祖母は脱水症状を起こしかけている。
周りにはわたしと同じように船から逃げてきたひとがいる。みんな女性だ。
日陰を選んで休憩し、しばらく歩くと寺院の石段、その上に蛇口が見える。
祖母を背負ったまま倒れそうになりながら石段を上ると、住職が立っていて中へ入りなさいと言ってくれる。
切磋琢磨ではなく、キャッキャウフフする句会です。
2014年8月31日(日)、2回目のBL句会となる「BL句会in大阪」を開催いたしました。
会場は歌人の牛隆佑さんによる短歌ワークショップも開かれたりしているコワーキングスペース往来。
司会のわたしを含めて参加者12名(うち欠席投句2名)。
事前に投句してもらった24句から並選6句、萌選※1句を選び、高得点順に合評&萌え語りしました。
最高点句は8点を集めた次の2句でした。
恥なんか捨ててしまへよ鳳仙花 龍翔 並8 萌0
白髪染め手伝つてゐる星月夜 なかやまなな 並8 萌0
鳳仙花は弾けて種を遠くまで飛ばす……これはエロい!!
白髪染めの句は、年配の紳士カップルでもいいし、年齢差カップルの年下のほうが「染めなくても好きなんだけどな」って言いながら白髪染めを手伝ってあげてるのも萌える!
といった意見が出ました。
「恥なんか捨ててしまへよ鳳仙花」ってなんかね、よしながふみ先生の描く紳士的なドSみたいじゃないですか!
いままさに爆ぜんとしている受けに対して優しくかつ残酷に囁くわけですよ!
ふおぉぉ……。
そして。
萌選を最も多く集めたのは、
ぼくたちの真夏くるしくひかりあう 佐々木紺 並2 萌3
でした。
待てよ、なんだこのデジャヴ感……。
そう、BL句会in神戸のとき萌選がいちばん多かった(4点)のが佐々木紺さんの「ともだちを抱くこともある夏の果て」だったのです!
萌選ハンター佐々木紺!
当日配布したもの。この絵、わたしが描いてます。ほめてもらえて嬉しかった!
さて。
BL句会を2回やってみて気づいたこと。
俳句をネタに萌え語りをするのはほんとうに楽しいし、初対面のひととの距離がすぐに縮まる。
俳句の巧拙も俳歴の長さも関係なく、みんなで盛り上がることができます。
その半面、テクニックの部分での熟達は難しいかもしれません。
ある程度わかっていた……というか、敢えてそのようにした部分もあるのですが、つい萌えを語るのに夢中になってしまって「ここは別の言葉に言い換えたほうがすっきりと仕上がるのではないか」とか、「語順は本当にこれでよかったのか」といった細かい部分での検討はおろそかになりがち。
若い世代を中心とした句会について語る際「同世代で切磋琢磨できる場として」といった言葉を聞くことがたびたびあるのですが、BL句会は「切磋琢磨」といった雰囲気からはおそらくかなり遠いです。
ん。でも。それもいいんじゃないか。
テクニックを極めたいひとは他の句会・勉強会に参加したり、同人誌・結社誌などで技を磨き、BL句会にはキャッキャウフフするために来ればいいのではないか。
俳句歴の長い参加者に聞けば初心者が比較的入っていきやすい句会・勉強会なども紹介してもらえますし、わたしもわかる範囲で答えます。と言っても田舎(岡山)に住んでいるので関西圏の情報には疎いのですが……。
二次会の席では「つぎはBL俳句合宿なんかもできればいいね」という話が出てきました。
また、トークライブ的な公開句会としての開催も実現したら楽しいのではないかなぁ、と考えています。
詳細が決まったらまたTwitterやこのブログでお知らせしますね。お楽しみに!
※萌選について
普通の句会では並選(なみせん)数句と特選(とくせん)1句を選びますが、BL句会では並選数句と萌選(もえせん)1句を選びます。
萌選はBL句会独自のシステムです。俳句としての完成度はちょっと横に置いておいて、作者の描こうとしている世界が自分の萌えに近いものを萌選とします。
卒業論文
卒業論文
小夜時雨司祭の混ぜるヨーグルト
体温計くわえれば来る大天使
冬晴や尼僧両手でマイク持つ
伏線を回収できぬ狸の死
女子寮や蛇口の下に柚子まわる
寝酒酌みかわす東方三博士
しあわせに電気をつかうクリスマス
明け方のユダは湯婆抱きしめる
初日さす論文検索データベース
下着ずらして元旦をたしかめる
初鏡風の足りないドライヤー
行間に白い兎を飼っている
葛根湯ぬるし口頭試問怖し
卒業したい卒業したい酢茎噛む
白無垢を着ているような風邪ごこち
友情の果てに豆乳鍋爆発
冬ぬくし端から錆びる缶バッジ
院生のストッキングの迷路かな
なぞなぞを出しては潜るかいつぶり
寮監と神父ぶつかる冬の虹
BL句会 in 大阪
BL句会in大阪
〜萌えすぎてスベリヒユまで歩かれへん〜
日時 2014年8月31日(日)13:30-17:00(13:00開場)
場所 コワーキングスペース往来
(〒542-0012 大阪市中央区谷町6-5-26 複合文化施設「萌」2階)
会費 600円
二回目のBL句会を開催いたします。(前回のレポートはこちらから。)
事前にメールで投句(2句)。
当日、無記名で並んだ俳句の中から自分の好きな句を選び、感想を話し合います。
俳句初心者の方にもお楽しみいただけるよう「萌選」ルールを設けました。
必要なのはBL・やおいに萌える心だけ! ぜひ、お気軽にご参加ください。
**定員に達したため募集を締め切りました**
◎特別ルール<萌選>について
普通の句会では並選(なみせん)数句と特選(とくせん)1句を選びますが、BL句会では並選数句と萌選(もえせん)1句を選びます。
萌選はBL句会独自のシステムです。俳句としての完成度はちょっと横に置いておいて、作者の描こうとしている世界が自分の萌えに近いものを選んでください。つい選んじゃった、選ばざるを得ない、きゅんきゅんする、こういうのもっと作ってほしい、そんな気持ちを最優先してください。
例1)文法的におかしい部分があったが、探偵と医師が登場したので、つい選んでしまった。
例2)何が書いてあるかよくわからなかったが、命令形がスーパー攻め様っぽくて萌選にした。
例3)わたしは普通の句会でもBLとして萌える句しか選ばない。唯一にして絶対の判断基準は萌えだ。なので普段はいちばん萌えた句を特選にしていますが今日は萌選にしますね!
※「踏切のスベリヒユまで歩かれへん」は永田耕衣の俳句です。
真逆にいたり、引き合ったり。
アネモネアネモネ顔を上げたらその口にアネモネを活けているような愛 野口あや子
葉牡丹に霜のきらめき 水たばこ 佐藤文香
俳句・短歌とエッセイに、みんな大好き安福望さんのイラストがついた贅沢なZINE。
個人的なツボは、野口さんがカラオケで歌うのが相対性理論、山口百恵、椎名林檎と歌集のイメージ通りなところと、さとあやが薄毛愛を語っているところ。
最近自分が関わったものは何故か食がテーマになる本が多くて(『線と情事』 『別腹』)、ついでにわたしが尊敬して止まない『生活考察』vol.05も “食” 本考察という特集を組んでいたし、食、流行ってるのか、いや、食わずに生きていけるひとなんていないし人類普遍のテーマだからか、などと思っていたら『S極N極』にも野口さんによる「あなたと食いつなぐ短歌」という文章が。
こんな短歌が紹介されてます。
買ったんはボルビックやったのに半分くらい飲むとクリスタルなんとかなんですわええかげんなもんですわ 吉岡太朗
お取り寄せはこちらから。
BL句会 in 神戸レポート
2014年6月27日(金)、BL句会 in 神戸を開催いたしました。
メンバーは司会のわたしを含めて8名、内訳は俳句関係で知り合った方3名、BL短歌関係で知り合った方4名。
なんだか妙に馴染んでいてわかりにくいのですが男性の参加者が2名。
(ふたりとも俳句経験者で、とても良い批評&妄想を披露してくれました!)
*
句会での高点句を引用します。
(あっ! 大事なことを言い忘れていました。句会というのは無記名で俳句を並べて、参加者が自分の気に入った句を選ぶゲームのことです。何人に選ばれたか点数をつけて、高点句から批評します。批評が終わったら作者が名乗ります。ちょっと “人狼” っぽいところもあるかも)
紙魚に名を奪われている美少年 正井(萌選0 並選5)
ともだちを抱くこともある夏の果て 佐々木紺(萌選4 並選0)
蜘蛛の子や御身の膝をよじのぼる 正井(萌選1 並選3)
桃の蜜したたる肘の先を食む 実駒(萌選1 並選3)
殺人もこの際ありか朝曇り 岡田朋之(萌選1 並選3)
普通の句会では参加者がそれぞれ自分の心に響いた句を複数句選び、その中で特に優れたものを「特選」としますが、BL句会では「特選」のかわりに「萌選」を設けました。
「俳句としての完成度はちょっと横に置いておいて、作者の描こうとしている世界が自分の萌えに近いものを選ぶ。つい選んじゃった、選ばざるを得ない、きゅんきゅんする、こういうのもっと作ってほしい」
という気持ちを最優先して選びましょう、というのが「萌選」です。
二句目、佐々木紺さんの「ともだちを抱くこともある夏の果て」は、「BL俳句的にこれは選ばざるを得ないだろう」というような句。4人が萌選をつけました。俳句玄人っぽく表現するとBL句会という座への直球で豪速球の「挨拶句」と言えるかもしれません。
三句目の批評では「仏教的な法悦ともうひとつの悦び」「御身(=あなた)はノンケ」「陰陽師っぽい」、四句目の批評では「食む側を受けとして想像しても攻めとして想像しても萌える」「俳句的には言いすぎかもしれないけどBL俳句としては『食む』は絶対必要!」といった面白い批評が飛び出しました。いや、なんていうか、全体的に、BL句会じゃないとぜったい聞けない言葉をたくさん聞きました。こんなに頻繁に笑いや悲鳴(キャー♡)が起きる句会って初めてです。
BL句会は、”BL俳句を投句する句会”というよりも、”俳句をBL読みして萌えを語っていただく会”にしたいという思いで企画しました。
メールでの事前投句をお願いした際には、
「BL俳句を意図して作ったものでなくてもかまいません。みんなでBL読みの可能性を探りましょう!」
という連絡をしました。
俳句は短い。情報が少ない。だから、大抵の句は書かれてない部分をBL成分で補って読むことができる。人間が二人出てきたら男性同士。植物や動物は擬人化してBL的に消費可能。極端なことを言えば「緑蔭に三人の老婆わらへりき(西東三鬼)」でも、三人の老婆の手元に薄い本があるというメタ的なBL俳句であると解釈することもできる。
つまり、すべての俳句はBL(読みできる)俳句なのです。
BL読みしたときにめちゃくちゃ萌える句とちょっぴり萌える句があるだけです。
俳句と腐女子を同時に病んでいるひとからは「BLは好きだけどBL俳句を作ることに関しては興味がない」「BL読みは面白いけどBL俳句を作るのは難しい」といった声もある(というか、わたしもBL俳句を作ろうとして作るのはとても難しいと感じている)のですが、普段通りの俳句を投句してBL読みを楽しむ会として気軽に遊びに来ていただきたいと思っています。
今回の句会場と日時は、わたしが神戸で行ってみたい場所・そこが空いている時間、ということで参加者の方の交通の都合はあまり考えずに決めてしまったので、京都から二時間かけて来てくださった方もいたりして、ほんとうにありがとうございました。(;▽;)
岡山から神戸は新幹線使っちゃうと30分だったりします……。
(帰りは二時間かけて在来線で帰りました。線路沿いの家のベランダを見るのが楽しいから鈍行大好き!)
次回は大阪での開催を予定しております。俳句初心者の方もBL初心者の方も是非ご参加ください!
関連リンク:曾呂利亭雑記
ルッカリー
ルッカリー
極東の冬あたたかく休園日
ガラパゴスゾウガメ鳴くや午後は雨
いかなごをひとすじ銜え愛妻家
だれそれのとつぜん不在竹の秋
ぺんぎんに歩く自由や斑雪
春の昼ひよこまみれになりやすい
万愚節擬卵のようにわが子かな
柵を舐め桜吹雪を食み麒麟
鉄柵に園児はさまる日永かな
行く春のゴム長靴をつつこうか
町田康さんや坂田明さんが載ってる号です
2014年6月…
ブーン……
『俳句界』に…
ブーン……
۵ 憑依俳句 ۵ が掲載された……!
ズバァァァァーン!
(ブーン…やズバァァァァーン!は予告編のブーンだと思って読んでください)
はい。というわけで、たいへん珍しいことに拙句が俳句総合誌に登場しています。
お手元に『俳句界』がある方はP260をご覧ください。
ない方は買ってください!
総合誌に掲載されたときに「書店で読んでくださいね!」って言うひと多いけど
わたしが出てるときは立ち読み禁止な!
記念に持っとけばいいじゃん?
もう載ることないかもしれないからな……。
BL句会 in 神戸
2014年6月27日(金)、神戸にてBL俳句を鑑賞・批評する会を行いたいと思います。
事前にメールで投句(2句)。
当日、無記名で並んだ俳句の中から自分の好きな句を選び、感想を話し合います。
俳句初心者の方にもお楽しみいただけるよう「萌選」ルールを設けました。
必要なのはBL・やおいに萌える心だけ! ぜひ、お気軽にご参加ください。
連絡先 @yukioi