カテゴリー別アーカイブ: 出演・掲載

香水なんて季語は滅べ! | 俳句さんに似合う香水を見つけてあげる(3)

初回第2回はそれぞれ俳句に登場する「桃」「夏みかん」を手掛かりに似合う香水を探しました。
そのあと週刊俳句に出張して太田うさぎさんの「軽薄なふりで夜店に遊びしこと」という句に似合う香水をおすすめしてきました。
今回は「香水」という言葉が登場する俳句さんたちにどの香水が似合うか考えてあげようと思う。

俳句の中に「香水」っていう言葉は、まあまあの頻度で出てきます。
なぜなら「香水」は夏の季語だから。

でも香水好きの方は思うんじゃないだろうか。
夏は纏える香水の種類が限られてしまう。
重めの香りをつけて真夏の電車なんかぜったい乗れないじゃないか。
ちょっと歩き回ったら汗ですぐ流れちゃうし。
秋冬の方が選択肢が広がるしきれいに香らせることができるのに、と。
あるいは、次のようにも考えるだろう。
たった1本の香水でも、温度や湿度が違えば香りの印象が変わってしまう。
だから四季を通じてその香水を試し、さまざまな表情を楽しみたい。
夏だけを特別視するなんて馬鹿げている、と。

改造社の『俳諧歳時記(夏の部)』(昭和22年。たぶん初版は昭和8年)にはこうある。

香水

植物性の香料を酒精にて溶解したる化粧品なり。香料はそれより発散する微量の瓦斯蒸気又は微粒子が人の器官を刺激して快感を与ふるものなり。或ものは濃厚、或は温和、或は強烈、其他種々なる香を感ぜしむ。香料にはローズ・ジヤスミン・ヴアイオレツト・リリーなどあり。その適当なる調合によつて得らるゝ香水は近代人の薫りに対する感覚趣味に適する為め、在来の麝香・匂袋等に代りて用ゐられ、夏季殊に悪臭を消す為めに多く用ゐらる。近年天然香料の成分研究せられ、之が合成の研究進歩するに及び、人造香料の製造を見るに至れり・人造薔薇油の如し。《参照》 掛香

※漢字は新字体に改めました

ほらこれが改造社『俳諧歳時記(夏の部)』の「香水」が載ってるページよ。

そしてこちらは皆吉奏雨『俳句鑑賞歳時記 夏の俳句』(1973年 / 明治書院)での記述。

香水

常時用いられるものでもあるが、汗の臭いなどを消すための身だしなみとして夏の外出などにふりかける。そうしたところからの季題であって、就中夏季に使用されることを基にして公約的に季題となったものであって、人事の季語にはこれに類するものが多い。

なんというか、日本が香水砂漠(諸外国と比べて香水が売れないから流通する数や種類も少ない)なのは、この「におい消しとしての香水」「身だしなみとしての香水」というイメージがまだ滅んでないせいなんじゃないのかな。
義務だとしたら、人間は適当に選ぶだろうよ。それが証拠にサラリーマンのネクタイ選びなんていいかげんなもんじゃないか。(※こだわりを持って選んでらっしゃるごく少数の方ごめんなさい)
香水を夏の身だしなみだとなんとなく刷り込まれてしまったひとが「夏だしなんか匂いつけとこ」「ブランドがお墨付き与えとるから文句ないじゃろ」くらいの意識で真夏に激重オリエンタル系香水を腋の下(ギャー!)にブシュッとしたこともあっただろう。腋臭ミーツ香水、奇跡のマリアージュ。香水分子と手に手を取り合って空中へ飛び立ってゆく悪臭分子。それを鼻粘膜でキャッチしてしまった不運な人々は香水全般を嫌いになってしまったのであった……。
というのはわたしの想像でしかありませんが、そういう側面だってなきにしもアラブ香水アルハラメインじゃない?
(おっと失敬! ついフレグランス駄洒落が出てしまったね!)

不快なにおいはデオドラント製品で消しましょうと先日香水屋さん( LE SILLAGE ル・シヤージュ / 京都 )にもらった説明書に書いてありました。
悪臭を消すために香水をつけるのではなく、悪臭を消したあと香水をつけましょう。

今後、「身だしなみ」じゃなくて「自分が心地よくいられるために身につける香水」という方向に意識改革していくべきですね。
つけたくなければつけなくていいし、どうせつけるなら心地いいものを厳選して、つける場所も季節による香り選びも工夫して。
そうすることがかえって他の人を不快にさせない香水の使い方につながるのではないかと思う。
少し前になりますがイソップのヒュイル(ひのきの香り)がツイッターでバズったのは若い世代が潜在的に心地いいものとしての香水を求めてるからこそでしょう。

だからもう夏の季語としての香水は滅べ。
今後香水を夏の季語とすることはまかりならん。無季じゃ無季!

※こちらが件のバズったツイート。個人的にはヒュイルを試す前にサンタマリアノヴェッラとかラボラトリオオルファティーボとか、いわゆる「香水」のイメージとは違う心地よさのある香水を試していたので言うほどの衝撃はなかった。でも、うん、気持ちはわかる。

というわけでようやく俳句さんたちの登場です。

香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男

とりつくしまのない感じ! 一分の隙もない感じ!
N°5  P / EDP / EDT その他いろいろ | シャネル …香水の代名詞とも言える定番中の定番。お出かけ用の香り。デパート、参観日のお母さん、スナックのママさん。キツイ! というイメージがあって避けてきた。しかしせっかく縁あって香水沼にドボンしたのだから名香と呼ばれるものは試してみなければ。今回はEDTとEDPを試香紙で試してみました。ていうかちょっと待って。パルファン(P) とオードトワレ(EDT)を調香したのがエルネスト・ボーさん(シャネルの初代調香師)で、オードパルファン(EDP)を調香したのはジャック・ポルジュさん(三代目)なのね? そしてN°5シリーズのなかにN°5ローっていう軽めのやつもあるのね? は? ヘアミトもある? 君たちはなぜ物事をそんなに複雑にしたがるのか。
中村草田男の句ですが、鉄壁さんとお呼びしましょうか。「香水キツッ!」と思って相手の懐に入っていけない感じがしたわけですよね。その香りに拒否感を覚えているのは自分なんだけど、全力で拒否されたようにすら感じる。こういうとき人は「●●の花の香りに似た香水」なんて分析はできないと思うので、初めから特定の何かの香りと表現できない(抽象的な香りとして設計された)N°5がしっくりくると思います。いかがでしょうか。あれ? おすすめされたくなかったですか? ああ、逃げていく鉄壁さんの姿が見える……。
まさに抽象的な香りなので形容しがたいのですが、EDTは思ったよりフレッシュで若々しい香り。20代のBA(デパートのコスメカウンターのスタッフ)さんの香りという感じがしました。EDPは粉っぽさを強く感じて、おとなっぽい。うん、たしかによく言われるように「お婆ちゃんの鏡台」と言えなくもない。EDTにしてもEDPにしてもわたし自身の考えるの心地よさとは全然違う方向の香り。でもベテランBAさん曰く「お好きな方は安眠効果があるとおっしゃるんですよ」と。そうか。マリリン・モンローはシャネルの5番を寝香水にしたと言いますからな。

香水の香の内側に安眠す 桂信子

そしてこちらはまさに寝香水の句です。いい香りすぎて一瞬でスヤァ…( ˘ω˘ ) してしまうことありますね。目が覚めてもまた枕からいい香りがして再びスヤァ…( ˘ω˘ ) しちゃうよね。もうお布団から出られない。香水の香の外側に出られない。
サイプレスマスク EDP | トバリ …ひのきの香りと匂い袋のような甘さ。能の世阿弥をイメージした香りだそうです。あまりにも心地よいので大きく吸って大きく吐いてを繰り返しているうちに強烈な眠気に襲われました。イソップのヒュイルもそうですが、ひのきの香りってひのき風呂っぽいからリラックスしすぎちゃうんだよね。Byredoのジプシーウオーターみたいなとらえどころのなさも感じる。トバリのディスカバリーセット(全種類が少量ずつ入ってるセット)を買ってじっくり試したい気持ちもあるんだけど、全部大きいボトルでほしくなりそうで怖い。

香水をひとふりくよくよしてをれず 菖蒲あや

つらいこと、悲しいことがあったとき元気付けてくれるようなポジティブな香りですね。
お名前(菖蒲)にちなんでイリス(アイリス)の香水はいかがでしょう。
シルクイリス EDP | パルファンサトリ …上のトバリと同じくこちらも日本製の香水。フランキンセンスが入っているはずなのですがそこまでお香っぽさは感じませんでした。家事や仕事を落ち着いて淡々とこなせそう。

交換しましょ香水とフラフープ 石原ユキオ

アッ! 香水を夏の季語にするのはまかりならんと言いながら過去の自分が夏の季語としての香水俳句を作っていた!
フラフープと交換しそうなのは100mlの豪華なボトルではない。
ファッションブランド系やセレブの名前を冠した香水など大量生産されている商品には100mlボトルのデザインをそのまま縮小したようなミニボトル(5mlくらい)が手に入るものがありますが、ここで言う「香水」はそうしたミニボトルではないでしょうか。あるいは樹脂製の軽いボトルに入ったボディスプレーとかフレグランスミストのような商品かもしれない。
サムライ ウーマン EDT | アラン ドロン …石原本人の20代の愛用香水。桃とサンダルウッドの組み合わせによるものか、なんとなく和風。空き瓶を嗅いでみてやや経年劣化しているものの「若い女の子の香り!」と思った。懐かしさこそあれ、もはや「自分の香り」ではない。現在販売されているものは初代の香りの雰囲気を残しながらリニューアルされたものになります。

<<引用元一覧>>
香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男『新歳時記 夏』平井照敏・編
香水の香の内側に安眠す 桂信子『新歳時記 夏』平井照敏・編
香水をひとふりくよくよしてをれず 菖蒲あや『現代俳句の鑑賞101』長谷川櫂・編


さて、次回からは再び俳句を一句だけ取り上げて長々とあの香水がいいこの香水がいいと語る形式に戻ります。
ついに! ついに!
海外通販デビューするぞー!!!

注:2020年8月10日現在ラッキーセントというアメリカの通信販売サイトに香水サンプルを注文し出荷連絡が来た状態です。初めての海外通販がうまくいくかどうか一緒にドキドキしてください!

#野性俳壇 第39回 | 野性時代2020年8月号

野性俳壇、兼題「泳ぎ」の回。
長嶋有さんの佳作に選ばれていました。

カルキくさいゆびからもらうフエラムネ 石原ユキオ

以下、他の方の入選句の感想。

<長嶋有特選>

手紙入りクリアファイルと夏の雲 友常甘酢

メールやSMSでなんでも済むので紙の手紙(おっとレトロニムだ。)を詠むと嘘っぽくなりがちだが、クリアファイルに入れたことにより急に実在感が増す。
というか、実際にこれをやることがありますね、わたし。
手紙が来て、その返事を書いた便箋と白紙の封筒と元の手紙を全部クリアファイルに入れて出かけ、出かけた先で住所を書き写して郵便局から出す。クリアファイルには相手の手紙だけが残っている。

背泳ぎの今か今かと天の罰 公木正

友人がこの句を読んだ瞬間笑った。「背泳ぎ、なんか(上から)来そうじゃん」と。
うん、ちょっとわかる。

泳ぎと予感「しかない」荒涼たる海だ。

との長嶋さんの評が良い。
俳句ってモノで書けと言われがちだけど、この句はモノのなさによって景が浮かぶ。水と空と自分だけの景が。

<夏井いつき特選>

夜行性の水を叩いて泳ぎゆく 仁和田永

「夜行性の水」がポエティックなんだけどかっこつけすぎにならないギリギリのバランスでかっこよくきまっている。
夜のプール。たぶん屋内の。「春ひとり槍投げて槍に歩み寄る(能村登四郎)」のような孤独を感じる。

<長嶋有佳作>

大恋愛じゃない恋愛半ズボン 中島潤也

そんなこと言うなよ。すべての恋愛は大恋愛なんじゃないの。照れ隠しで言ってるだろ。ちがうの?
半ズボンはおとなも穿くけど青春性があっていいですね。

アイスコーヒーのはっきりしない飲み終り 徳山雅記

わーかーるー! 明らかにもう味しなくても氷が解けてきたらまた飲んじゃう。

<夏井いつき佳作>

水泳や日陰に匂ひ立つギブス 木江

骨折して水泳の授業見学してるんだね。いまの自分の感覚では水に入れない生徒がプールサイドで見学しなきゃいけない合理的な理由がわからない。図書室なり保健室なりで涼しく勉強していてはだめだったのか。
ついつい思い出し怒りしてしまったがわたしは骨折したことがありません。
ギブスを「匂い立つ」と言ったのがすごいよね。メントールの匂いがしてきそう。ほいでちょっと色っぽいぞ。
余談だけどギブスと書くかギプスと書くかいつも迷いませんか。

黒々とプールサイドに尻の跡 徳山雅記

また徳山さん!
8の字にプールサイドに尻の跡がついてるのかわいいですよね。
どんな美男美女もどんな偉いひともプールサイドでは水を含んだスタンプなのよ。
人類かわいいな。

『俳句と雑文 B』を(やくざ映画として)読む −ディレクターズエディション−

 Image by JLB1988 from Pixabay

瀬戸正洋『俳句と雑文 B』における俳句の世界は、やくざ映画の世界観に極めて近い。

【暴力の匂い】

拳銃を撃つや春月落つこちさう

サンダルと人とプールに浮びけり

句集の左右のページに隣り合って並んでいる二句である。拳銃を撃つ。銃声が空高く響く(消音器つけなくてよかったのかな)。空には春の月。目の前のプールには撃たれた人間とサンダルが浮かんでいる。そんなシーンが見えてくる。前者が春の句、後者が夏の句なのは気にしなくていいだろう。サンダルもプールも一年中あるのだ。

冷素麺口中切れてゐたりけり

草いきれ顔殴られてしまひけり

こちらは同じページに並べられた二句。「顔を殴られて口の中が切れてしまった」という物語が浮かび上がってくる。夏草の生い茂った土手で殴り合う男たち。草を踏みしだけば、むせるほど濃いにおいが鼻腔を冒す。ゴロのあとの冷素麺は、できるだけ傷にしみないようにつゆをほとんどつけずに啜るのだろう。

荒梅雨の私ひとりが濡れにけり

土居組組長、土居清の殺害を命じられた広能昌三(菅原文太)が、土砂降りのなか土居が現れるのを待つ。雪駄履きの素足が泥水に濡れる。足元に何本も吸い殻が落ちていることで長時間待っていたことがわかる。『仁義なき戦い』第一作の名場面である。

大綿や繋がれたるもの飛び跳ねて

大綿とは綿虫のこと。繋がれているのは犬だろうか。いや、人間だ。これはリンチの様子なのだ。目前に迫る死からなんとか逃れようともがく人間のまわりを、まるで命の儚さの比喩であるかのように綿虫が飛んでいる。凄惨な場面に感傷的で繊細な音楽を流すような演出は、深作欣二ではなく北野武のスタイルだろう。

ばらばらな人間ばらばらな西日

ばらばらなのは人と人の気持ち。ばらばらな西日とはブラインド越しに差してくる縞々の西日のこと。そう読めばいいのかもしれない。しかし、これはやくざ映画である。ばらばらになっているのは文字通り……

家庭用高圧洗浄機日短

高圧洗浄機で洗い流すのは当然、床の血痕だ。

【エンコ詰め】

やくざ映画といえば、組員が指詰めによって落とし前をつける場面は欠かせない。

油照左手爆発してをりぬ

蒸し暑い夏の日に詰めた左の小指。爆発したように飛び散った血。拍動のたびに痛む左手。『BROTHER』にこんな場面がある。モー(ロンバルド・ボイヤー)が「(小指を)切ったらどうなる」とたずねる。寺島進演じる加藤はこう答える。
“He can’t swim straight anymore.”(まっすぐ泳げないね)
瀬戸正洋はこう答える。

短日の右手が重くなりにけり

【組員の日常】

新涼のもぬけの殻の事務所かな

事務所には代紋の入った提灯や額などが飾られているに違いない。季語が「新涼」なので、九月頃。秋祭りで的屋の仕事が忙しく、組員は出払っているのだ。

仕事始めのプライベートの名刺かな

『竜二』の主人公花城竜二は、堅気風の名刺と極道仕様の名刺の二種類を持っている。それらはどちらも仕事のために用意した名刺である。やくざにとってのプライベートの名刺とはどんなものだろう。見てみたい。

ボクサーが蜜豆食うてゐたりけり

ボクシングの興行も組の重要な資金源だ。「おい、おめえ蜜豆なんか食ってていいのか」「さっき体重測定パスしたんスよ」「おうそうか、しっかり力つけていい試合しろよ」
テーブルに千円札を置いて肩で風を切りながら甘味処を出ていくパンチパーマの男。誰も指摘できないが、口髭に生クリームがついている。

【懲役】

雌伏十余年寒桜愛でにけり

組のために罪を被ってくれと頼まれ、懲役十余年。刑務所に植えられた寒桜に重ね合わせるのは愛しい女の面影か、兄貴の背中の桜吹雪か。

復活祭徒党を組んでゐたりけり

「復活祭」はイースターのことだが、懲役を勤め上げて娑婆に出た喜びに「復活」という言葉がふさわしい。組の仲間が何人も刑務所の出入り口の前まで迎えにきて、煙草を差し出し、火をつけ、労いの言葉をかけてくれる。「徒党を組む」とは軽い自虐だ。親分はイエス様、などとうそぶいて組を抜けていったかつての仲間に軽い皮肉を言っているのかもしれない。

【女たち】

烏貝嚙み難く妻は怖ろしく

おそろしいくらいでなければやくざものの女房は務まらない。噛みにくいながらも噛めばじわりと旨味の染み出てくる烏貝によって、苦楽を共にしてきた妻への信頼感が表現されている。

春の闇自宅へ帰るための酒

ときには妻の顔を見たくない夜もある。一杯ひっかけてほろ酔いで自宅へ向かう。

肌寒の思はず噓を付きにけり

ちからいつぱい頬叩かれて秋深し

これも二句の並びが鮮烈である。「あんた、またあの女のところに行ってたね」「いや、サブのとこだよ」「サブちゃんならさっき煙草屋の前で会ったわよ、馬鹿!」パシーン!
「秋深し」という叙情たっぷりの季語からは余韻が感じられ、叩かれた痛みをがいつまでも消えずに残っているような印象を受ける。

香水は厄除婦人警察官

男性の多い職場に女性が入れば「女のくせに生意気な」と言われるが、ことさらに「女らしく」振舞うことによって「わたしは弱い女性であり、あなた方男性の領域を侵犯するつもりはありません」というメッセージを発することができる。化粧は、スカートは、香水はまさに厄除なのだ。働く女性の処世術である。
しかし昭和なやくざがそこまで考えるだろうか。「うえっ! このねえちゃん香水付けすぎだな!」という気持ちをちょっぴり粋に言ってみたのだろう。

【ダメ。ゼッタイ。】

にんげんの顔がいつぱい瓜畑

出目金は生きるべきかを尋ねけり

扇風機左右に動く胃痛かな

薬物は人間の心身を蝕む。

夏負けの酒も薬も止めにけり

うん、うん。やめたほうがいいですよ。

この他、ガサ入れ、政界との癒着、密輸、彫物など、やくざ映画の定番モチーフを描いた(ように読める)句は枚挙にいとまがない。お疑いの向きはこぶしのきいた演歌を流しながらもう一度この句集を読み返してみてほしい。昔気質の極道の照れたような笑顔が、行間に見え隠れしているはずだ。

この文章は月刊俳句同人誌『里』二〇一四年三月号に掲載された「『俳句と雑文B』を(やくざ映画として)読む」に文字数の関係からカットしていた部分を加えたものです。

活動記録(2019年)

「タイマン句会ワールドカップ2019」優勝

●ウェブサイト「うたとポルスカ」にコラム「異郷幻灯/トルコ」を寄稿

●『野性時代』の野性俳壇で特選2回(うち1句は佳作とのダブル選)、佳作3回、選外佳作1回

〈特選〉
軽自動車も猪も無事ですか(野性俳壇11月号)
緋目高や寺に地獄を模した箇所(野性俳壇6月号)
〈佳作〉
ブルーシートもレジャーシートも花の冷(野性俳壇3月号)
アリバイのような訪問ところてん(野性俳壇7月号)

常夏ハワイ句会開催(1月27日)

活動記録(2018年)

第1回「ビバ!ユキオ俳句賞」を開催(応募者81名・計405句)

第2回「スイーツ句会」を開催(岡山市)

●手作り句集『香水とフラフープ』を制作

俳句同人「傍点」主催「タイマン句会ワールドカップ2018」で優勝

●フード性悪説アンソロジー『燦々たる食卓』(2018年11月25日発行)に俳句連作「風味Z佳」10句とショートエッセイ「わたしのおいしい肉」を寄稿

●『野性時代』の野性俳壇で特選3回(うち1回はダブル特選)、佳作3回、野性歌壇で入選1回、選外佳作1回
〈特選は以下の3句〉
資材部は土筆ゆがいているそうです
火のような魚のようなチューリップ
運動会のあといろいろとたたむなり

●やすたけまり版「ぺったん詩」(いきもにあ2018)に俳句3句を提供
刃物より火山がいいわ猫の恋
春の夜の濾紙ごとはこぶプラナリア
なめくじと東灘区をぬめりあう

タイマン句会W杯 投句一覧 #taiman_kukai

トルココーヒー

俳句同人「傍点」主催タイマン句会ワールドカップ2018
我がトルコチームの投句一覧です。
祝勝会の様子はこちら

水タバコの水を人魚の泳ぐ音
7/20 題「シーシャ(水タバコ)」

姉妹来てチェリータルトを鈍角に
7/9 題「角」

ギュレギュレとみんな手をふる避暑の荘
7/31 題「拗音が3つ以上ある句」

城傾く箱庭の木を抜けば
7/13 題「抜」

蓴菜をちいさく掬う接続詞
7/26 題「接」

口中に骨片のある夏の月
7/26 題「骨」

夜のプールにかぶとがに連れてきて
7/13 題「カブトガニ」

袋いっぱい金魚をくれるココ・シャネル
7/20 題「人名しばり」

避難所に寝かされているエレキング
7/9 題「安全しばり」

五号室に夏は果てたり面格子
7/31 題「格子」

(得点順)

 

【祝優勝】タイマン句会W杯2018 #taiman_kukai

 

俳句同人「傍点」主催「タイマン句会ワールドカップ2018」
トルコ代表監督として出場し、優勝しました!
やったー!
(は? なんぞそれ? という方、石原監督の勇姿をtogetterからご覧ください)

そんなわけで8月某日、祝勝会を開催すべく地元の句友である古本斑猫軒店主ミコシさんを強引にお誘いしターキッシュレストランへ。
トルコの優勝を祝っていただくとともに、惜しくも勝利を逃したチームの作品について語ってもらいました。

石 原「今日はどうぞよろしくお願いします。シェレフェ(乾杯)!」
ミコシ「おめでとうございます。シェレフェ!」

Efes

トルコビールEfesで乾杯。

石 原「ではさっそくタイマン句会W杯に投句された全作品の中から3句取り上げていただき簡単な感想をいただければと思います」

炎昼超能力バトル反る少女  凡コバ夫(ブラジル)

7/31 決勝 題「拗音を3つ以上含む句」

ミコシ「文句なくよかったですね」
石 原「うん、これはやられましたね」
ミコシ「“バトル” “反る” の韻を踏んだたたみかけもうまいし “反る” という音から “sol(ポルトガル語などで太陽の意)” を連想させて南米の感じも出てる」
石 原「そこ……!? いやでもブラジルのサックー(タイマン句会W杯では作句をこう呼ぶ)はもう一定の評価を得ているのでスルーしてこれ以外で3句いきましょう」
ミコシ「えー……(野性俳壇でなかなか選んでもらえない※から拗ねてるのかな……)」

古本斑猫軒店主ミコシさん

古本斑猫軒ミコシさん。シーシャ初体験とのことだが毎日吸ってるひとにしか見えない。

トルコ代表監督 石原

監督らしくしようとスーツを着てみた石原。監督というよりはやさぐれた保険外交員だ。

ガードレール灼けて漁村の道に縄  黒木理津子(クロアチア)

7/10 B1 題「海沿いしばり」

 

ミコシ「句もいいんだけど、この試合自体がよかったんですよね。クロアチアチームの “正統派” 的な句に対してポルデヴィアからは実験的な句が出てきたわけで、この試合は双方が持ち味を出しておもしろい句が揃った。ここからどうしてもひとつ選びたかったんです。
その中でもクロアチアの “ガードレール灼けて漁村の道に縄”。漁村というひなびたものとして描かれがちですが、ガードレールを出すことで近現代の漁村になっている」

石 原「なるほど。たとえば灼けているのがガードレールじゃなくて石とかただの道だったら前近代の雰囲気になってしまうかも」

ミコシ「そうそう。漁村ということばに近代以前のイメージがつきまといがちなんだけど、そこへガードレールを持ってくることで現代的なリアリティが与えられている。
きっと人はそう多くない漁村で、灼けて真っ白な情景というのがそれにとてもよく合ってる。非常に夏らしい句だと思います。海のそば、人がほとんどいない中、道にぽつんと縄がある」

石 原「情景がしっかり見えますね」

ミコシ「叙情性もあるし、よくまとまってますよね」

夕菅にゆるい手綱の馬と行く  トオイダイスケ(スコットランド)

7/9 A1 題「安全しばり」

 

ミコシ「タイマン句会に出たものに限って言えば、トオイさんは全体にゆったりとした雰囲気の句が多くて、カメラワークで言うならば引きの画なんですよね。詠まれているものがはじめからひとつの画のなかに入っていて、カメラがパンしない。二物衝撃って要するにカメラがパンすることだと思うんですけど、そういうものをあまり感じさせない。
ゆったりとした時間の流れを引きの画で、なおかつカメラを動かさずに表現している。情報量としては多くないし情景として角の立ったものではないんだけど、空気感というのをよく伝えている、というのが今回トオイさんの句を読んで全体に受けた印象です。
その中でも “夕菅にゆるい手綱の馬と行く” は見事に言ってきたな! っていう。 “に” をどう解釈するかという問題はもちろんあるんですが、せっかくのロングショットなので細かい文字遣い以前にこの空気感を堪能したいですね」

石 原「“ゆるい手綱” は自分の語彙の中からは絶対出てこないフレーズなので痺れました」

内接円に半径とハンモック  ネル山ネル子(クロアチア)

7/26 準決勝1 題「接」

 

ミコシ「意外と点が伸びなくてもったいないな、ということもあって選びました。これたしか、しばりが “接” ですよね。そこからの句の連想の流れがスムーズで後を追いやすかった。
“接” から “内接円” を連想し、“内接円” から “半径” も連想しやすい。で、今度は単純なイメージの連想ではなく “半” という音から “ハンモック” に飛躍している。一回意味で連想を飛ばし、その次は音で飛ばしましたっていう。読者が連想の軌跡をたどりやすく、なおかつおもしろさもあるんです。結果的に、ひとつの抽象的な情景ができあがっている。そういうそつのなさがあったので、もうちょっと点が伸びてもよかったのかなと思います」

石 原「“半径と” までは実体のないもの、数学的なものなんですよね」

ミコシ「そう、形而上というか、概念」

石 原「それがハンモックでいきなり実体のあるモノが出てくる。そこがおもしろいですね」

タイマン句会得点一覧表

得点一覧表を見ながら語り倒す。たのしい。

石 原「それでは最後に斑猫軒からお知らせやおすすめ商品があればお願いします」

ミコシ「うーん、そうですねえ。俳句関連の在庫から具体的に何かおすすめしたいところなのですが、たぶんこのページをご覧になる皆さんのほうがよほど目も肥えていらっしゃると思うので、弊店ウェブショップの「短歌・俳句」カテゴリーページをご覧ください、という程度に留めておきましょうか。
つい先だって、『増補 現代俳句大系 全15巻揃』ほか、俳句の本を少し仕入れたんですが、すみません、まだウェブに掲載する作業を進めてない……。近日中にとりあえず何点かは載せますので。
他のジャンルでしたら、幻想文学妖怪関連書籍に力を入れていますので、ご興味ございましたら是非!」

俳句関連書籍入荷してます

店舗を持たない幻の書店古本斑猫軒へぜひお越しください。

古本斑猫軒(はんみょうけん)
〜幻想文学・人文書から絵本・暮しの本まで、古書買取販売いたします〜

「野性俳壇」「小説 野性時代」の俳句投稿欄。長嶋有(=ブルボン小林)夏井いつき両氏が選者をつとめており石原は毎月投句しているが長嶋さんに選んでもらえることは激レア。

実は『野性時代』4月号にも載ってました

3月号に続き、2ヶ月連続で入選。

夏井いつき・特選
火のような魚のようなチューリップ  石原ユキオ

1月のスイーツ句会にも来てくださったトートバッグ職人にして敏腕デザイナー中原ポール氏が長嶋有さんの選外佳作に入ってる。

ポールさん発案の #ロードサイド俳句 シリーズ、Twitterでもっと盛り上がるといいな。

載ったど!『野性時代』3月号

野性時代2018年3月号

KADOKAWAのロゴと鳳凰マークが燦然と輝く(イメージ)封筒を開けてみると野性俳壇のステッカーが入っておりました! わーい!
このステッカーは特選入賞者がもらえるものだそうですよ。どこに貼ろう。歳時記? Macbook?

夏井いつき・特選
資材部は土筆ゆがいているそうです  石原ユキオ

夏井さんがコメントで ”建築土木会社の「資材部」を想像。” と書いてくれていたのが嬉しかったです。俳句を受け取ったひとが妄想を広げてくれるとすごく嬉しいよね。

この上機嫌のいきおいで今月号の野性俳壇からぐっときた句を紹介します!

少女ぴよんぴよんす春の列車のとほければ  くらげを

「跳ぶ」でも「跳ねる」でも「跳躍す」でもなく「ぴよんぴよんす」なのがいい。口語の「ぴよんぴよん」に文語の「す」がつくとコミカルな雰囲気に。遠くの列車を見ようとするというよりは、はやる気持ちがおさえられなくてこころぴょんぴょんの状態なのではあるまいか。

麗かや分かった順に笑ふ寄席  霞山旅

たぶん昼席ですね。あったかくて客席はみんなぼーっとしてて、噺家さんのネタが笑いに変わるまでにタイムラグが生じる。ああ、繁昌亭に行きたい。

麗らかや婆さんは池に落ちない  井口可奈

落ちそうで落ちないんだと思う。落ちたら面白いのではないかと淡く期待してしまう。余談だがわたしは川に落ちそうな爺さんを拾ったことがある。

鈍行が一番早く着く春野  徳山雅記

誰も死なない時刻表トリック。

そういえばビバ!ユキオ俳句賞に応募してくださった方、野性俳壇の常連さんがけっこう多いです。野性俳壇でわたしの名前を見かけてSNSでチェックして応募してくださったんだと思う。野性俳壇のオフ会があったらいいなー。句会しないのかなー。あったらいいなー。あったらいいなー。

活動記録(2017年)

●月刊俳句同人誌『里』2017年1月号に瀬戸正洋『へらへらと生まれ胃薬風邪薬』一句鑑賞を寄稿。

●「谷川俊太郎トリビュートLIVE 俊読2017」に出演(原宿クロコダイル)。俳句と詩を朗読する。2010年に続き2度目。

●BL俳句誌『庫内灯』スタッフとイベント「ことばや俳句と遊ぶ会」を開催(岡山市)。「ちょめ俳しせ俳クイズ」のコーナーを担当。

●円錐新鋭作品賞落選(高柳蕗子選上位5作品にノミネート)

●「poecrival 1」2席入賞(関悦史選)

●『小説 野性時代』の投句欄「野性俳壇」で特選に入賞。他、入選数回。

●『共有結晶別冊・二次創作短歌非公式ガイドブック』(2017年5月7日発行)に「石原ユキオインタビュー 憑依俳句と二次創作俳句」を寄稿。

●アートイベント「まちのすきまカフェ」(岡山市)にて「ぺったん詩」ワークショップと、短詩をめぐるトークライブ「短歌と俳句とぺったん詩」を開催(共演:荻原裕幸、中山奈々)。

瀬戸内ブッククルーズ「イチョウ並木の本まつり」(岡山市)に参加。俳句関連書籍を販売。また、トークコーナー「店主のオススメ本Z」で瀬戸正洋『俳句と雑文B』を紹介。

『現代詩手帖』2017年10月号「川口晴美と、詩と遊ぶ」に連作「四代目中村地球三郎第一句集『宙乗』より」を寄稿。
『Solid Situation Poems』稀人舎から発売中です。

●ワークショップ「ぺったん詩ぺったん会」を開催(東京)。

●『共有結晶別冊 萬解』(2017年11月23日発行)の「俳句百合読み鑑賞バトル」に寄稿。

●月刊俳句新聞『子規新報』第64号(2017年11月30日発行)「次代を担う俳人たち」に掲載。

●BL俳句誌『庫内灯3』(2017年11月23日発行)の「海外文学海外文学感想文BL俳句」に連作「レニー、俺たちいつかちひさな土地を手に入れてぜいたくざんまいに暮らすんだ。」を寄稿。