着信は十件白玉をゆでる

 四年だか五年だかもうわからない。出会ってから数えると六年かもしれない。長く付き合ってると恋愛らしいときめきなんて消えてしまうくせに、会えないとやっぱり淋しいし苦しいし腹立ってくる。

 アドレス帳から彼の名前を消すだけで、携帯の番号も宅電のも携帯アドもPCアドも全部一気に消えた。彼から来たメールをハートマーク付きのフォルダごとバッサリ捨てる。こっちから送信したメールもソーティングかけて彼宛のだけまとめて削除。別れたいからこんなことするんじゃない。別れたくないから消すんだ。携帯にアドが入ってたら、「会いたい」ってメールを送ってしまう。間違いなく、返信があるまで送り続けてしまう。相手の身になって考えるって大事だ。こっちが会いたくないときに「会いたい」「会いたい」「会いたい」ってビョーキじみたメール大量に送ってくる女なんて余計会いたくない、てかうざい、てかきもい。電話番号だって携帯に入ってたら絶対かけてしまう。相手の携帯に呪いのような量の着信履歴を残してしまうに決まってる。嫌われる。今度こそ捨てられる。そうだ、着信履歴も送信履歴も全部消しとこう。彼の番号を残してはいけない。嫌われたくない。彼に嫌われたら生きていけない。あたしみたいなブスで頭でっかちで仕事のできないしかも片付けられない女とつきあってくれるそこそこ収入のあってそこそこ顔も良くてちょっとファッションセンスなくて死ぬほど優しい人なんて彼しかいない。淋しすぎて涙をこらえたら鼻水が止まらない。ティッシュ、ティッシュ……Tシャツで拭いちゃえ。ああ、こんなとこから腐ってくんだ、あたしは。いや、もうとっく。とっくに腐ってる。彼の声が聞きたい。

 あ、もう駄目。

 四年だか五年だかもうわかんないくらい付き合ってると、携帯番も宅電のもメアドも全部覚えてるんだ。いくらハムスター並の私の記憶力をもってしても、そう簡単に大好きな人のデータを忘れられるわけない。明日も明後日も彼が私のこと好きでいてくれるなら思い出なんて一つもいらないのに、現実はそうじゃなくて真逆なのだ。彼のデータも四年だか五年だかの楽しかった思い出もぎゅうぎゅう詰めに詰まったまま、いきなりポイって捨てられるんだ。捨てられるんだ、あたし。ああ。

 そんなの嫌だ。

 冷蔵庫から低脂肪じゃない牛乳出して電子レンジで温めて一気飲みした。携帯を冷凍庫にぶち込んだ。ベッドに潜りこんで毛布に丸まった。コールドスリープ作戦だ。次に目が覚めたら私が彼を愛する以上に彼が私を愛してくれる時代でありますように。

雪だるまみたいに痩せてゆく予定

切実に痩せたいです。
と言いつつどか食いしてしまいます。
 
 
ジェシカ・アルバのようなボディになりたいんですけど。

そして春が来たらネコ科なせいにして男子に襲いかかったりしたいんですけど。
(『ダークエンジェル』参照のこと。って古いな…)
 
 
とりあえず風呂ではリンパマッサージを頑張る。
頑張るんだ、もん。

あきさ句会1月

日曜日にあった倉敷あきさ亭のあきさ句会、高校生と大学生の姉妹が参加してくれました。
最近若い子に会うと、「こんな大人になっちゃあいけねえよ」って言ってしまう。
だってすっごいリアルにやばいよ、こんな大人になったら。
大人げなくて頭悪くて見た目ももっさくておまけに穀潰しです★
稼ぐ気がないならせめておしゃれして肌磨いてさっさと嫁に行けっちゅう話ですよまったく。
でもユキオはずっと乙女として生きて乙女として死ぬ予定なので嫁には行けません。
ごめんね、王子様たち!!(←妄想)
 
 

句会には、大阪に行ったときの吟行句を中心に出し、点はまあぼちぼち。
吟行句でも新年の句でもない句の方が好評でした。
例によってブログに載せるのは何ヶ月か先です。
お楽しみに。

来週日曜日(27日)はらんまん句会、兼題は「車」です。

桜桃忌知らない人と手をつなぐ

自作を語るなんてことは、老大家になってからする事だ。
っておっしゃいましたかね。
 

私の誕生日は太宰治と一緒。
卒論のテーマも太宰だった。
本当は大学時代に一番ハマっていた荻原裕幸さんで書きたかったのだけど、卒論として研究することで嫌いになってしまいたくなかったので太宰を選んだ。
誕生日が同じってだけで嫌いになっても痛くも痒くもない人だったもの。
 

それが気に入らなかったんかしら。
太宰は大いに私を苛んだ。
読めば鬱。読まねば鬱。
太宰のダの字で気が沈む。
卒論は遅々として進まなかった。
太宰を連想させるものは天神様でも見たくない。
シュウジが出てくるなら「最終兵器彼女」だって読みたくない。(いや、あれはもともと苦手だから読みたくないのだけれど)
一時は「スナック津軽」の看板さえ目を伏せて通った。
 

一週間弱で卒業論文を書き上げて提出したのは、奇跡としか言いようがない。
あるいは、芸は身を助く。
太宰の文体模写で書いたあとがきが教授にウケたのだった。
 

  桜桃忌知らない人と手をつなぐ
 
 
心中ごっこみたいな、援交の思い出みたいな句。

シロップ

さっむいですね。
岡山市中心部ではお昼すぎに雪みたいなあられみたいなのが降りました。

「かき氷降りょうる」とメールしたら、
「シロップが仕上げにかかるから気をつけて!」と返ってきた。

詩を書かない人のほうがよっぽど詩人だと思った瞬間。
 
 
NHKの鞍馬天狗を観ました。
最近のNHKは、3Dのゲームみたいな時代劇ばっかり作りますね。
風林火山は顔も衣装もゲームっぽかったし、鞍馬天狗は刀の残像がゲームっぽい。
良純さんのお天気予報はちょっとウケました。
 
 
ところでまったくもって唐突すぎますが橘上氏がめっちゃくちゃ気になる今日この頃です。

矢印

黒鍵の押されて戻る五月闇 
 
桜桃忌知らない人と手をつなぐ
 
火取虫それは愛かもしれないし
 
まっさらな手首でかきまぜるプール
 
かさぶたのやわくなるまで水遊び
 
水着脱ぐ片耳はまだ水の中
 
夏蝶を留める休講掲示板
 
意地悪じゃなくてわがままパイナップル
 
曝さるることなき「球根栽培法」
 
ディエゴ・リベラのお腹みたいな西瓜割る
 
ひっくり返してかけざん青林檎
 
矢印の通りに歩く油照り
 
着信は十件白玉をゆでる
 
鉛筆と消しゴムの百物語
 
日に焼けて月刊少年ジャンプかな
 
 

黒鳥 秋季号(平成19年10月1日発行)掲載

 
 

誕生日

祖父の85歳の誕生日なので母がケーキを買ってきて「お」「め」「で」「と」「う」のろうそくを立てて家族で祝いました。
祖母(尿がパイナップルジュースのミヨシさんとしてお馴染み)は祖父と冷戦中なので不参加です。

祖父(半世紀前、職場句会に参加してた)に私の俳句を見せたところ、
「軽ーう作っとるとこがええ。
あんまり練らんのがええ。
練るばあしょったら粘り気が出るからなー」
と言われました。

 

回文だったのか!!

信頼は皆無と六日排卵し     井口吾郎

週俳2008新年詠より。
プロフィールを見るまで全く気付いていませんでした。
この句、回文なんですね……!!
ただのよくわかんない句だと思ってたよ!

回文作るだけでも難しそうなもんなのに「六日」っていう新年の季語がちゃんと入っている上にきっちり五七五におさまっててすごい。

【鑑賞】
「あなたのこと全く信頼してません。わたし今日排卵日なんです。子どもできますよ。子どもできても責任取る気ないでしょ。責任取るったって口先だけでしょ。あなたは信用できません。パイプカット?  あなたがそんなのしてるわけないじゃないですか。嘘ばかりつきよって。排卵日は本当ですよ。周期表見せてあげましょうか? だいたい六日ですよ。わたし明日から仕事ですよ。なんであなたを泊めないといけないんですか」

「週俳」2008新年詠を読む。

舞ふ猿にわつと泣き出す子供かな   青島玄武
泣いている赤ちゃんが目に浮かぶ。一瞬で猿より真っ赤な顔に。
正月のビーチをとんで雀かな     上田信治
ビーチに初雀。ハワイな気がする。ハワイに行きたい。ハワイに雀がいるかどうかは知らない。
三が日客を見てゐるインド人     岡田由季
インド料理屋。通りから見えるガラス張りの厨房。目が合うと手を振ってくれる。見ているはずの側が逆にめっちゃ見られてる。ぴりっとスパイシー。ちょっと毒。
新年の干支といえども逃がしません  お気楽堂
亥年も辰年もその意気で。
娘のすでに婚家の味となる雑煮    小野富美子
友達が暮に結婚した。mixi日記には手作りのおせち料理の写真が貼られていた。息切れしないか心配だ。
寝正月とはこの人のことを言う    神野紗希
家族? 親戚? 彼氏? それとも名前のつかない微妙な関係の誰か?
門松をちょっと直して家出せり    こしのゆみこ
すぐ帰る予定の家出。わくわくする。
獅子舞のビルの隙間に獅子を脱ぎ   近 恵
汗ばんで、軽く湯気が立つ。漢(オトコ)のエロス。
曳猿のやや着崩れてをりにけり    さいばら天気
正月用に和装系の衣装を着せられた猿。そう言えば猿ってたいてい「やや着崩れ」てる。大発見じゃね!?
みすぼらしき元旦のわたしなり    澤田和弥
みすぼらしき(日本の)元旦のわたし。
もうすでにはみだしてゐる今年かな  鈴木茂雄
今年になった瞬間から今まですでに時間が進んでいる。ダイエットしようと心に誓ったのに餅五個食った後に出前のピザも食った。はみだしている肉をなんとかしたい。
橙はテレビの下へ転げけり      そわもとあき
でもでもテレビの下は大掃除のときに掃除したから埃まみれになったりしないんですよーん。ふふふーん♪
七草粥第七官界彷徨         高橋洋子
尾崎翠は不幸なんかじゃなかった説を支持します。
窓枠に窓おさまりぬ寝正月      谷 雄介
カーテンは大晦日から開きっぱなしだったような気がします。
開閉のたおやかなりし姫始      津田このみ
戸なのか布団なのか口なのかジッパーなのかひきだしなのかコンドームの箱なのか足なのか性器なのかわからない。ちなみに私は何につけあたふた(ry
恵方とは反対へ行くお父さん     峠谷清広
来年は離れて住むかもしれないうちのお父さん。
忠実な語呂合わせある賀状かな    永井 誠
どうせあたしの人生語呂合わせなんだもん。と椎名林檎さんがおっしゃってます。
初空や黒船に塗る黒きもの      中村安伸
リア・ディゾンのウェット&メッシー。すごいゴージャス。
丁度よく疲れ双六始まれり      西川火尖
麻雀に疲れたおいちゃんやお兄ちゃんのところへ親戚の子どもが双六を持ってきた感じ。
十二月三十二日寝酒かな       野口 裕
二十五時とかいう表現はあるけど三十二日って!! 上手い。よく眠れますように。
初春の部屋着に部屋のにおいかな   宮嶋梓帆
水玉とか太めのストライプとか。フリルとかレースとかリボンとか。かわいい部屋着しか思い浮かばない。仕事着や普段着とは全く別に存在する部屋着というスペシャルなものに憧れる。
手毬子の影踏まれたり轢かれたり   谷口智行
新年の華やぎと、すぐ隣にある潜在的な恐怖。

週刊俳句2008年1月6日号、拙作も掲載していただいております。見てね♪

さだまさしに泣かされている三日かな

TVをつけたらさだまさしが「風に立つライオン」を歌っていました。
「風に立つライオン」は名曲です。
「償い」よりもむしろこっちがやばい。
最初に聴いたのは高校時代。
何度聴いても、やばい。

さだまさし、なんであんなに泣かせる曲ばっかり作るんでしょうね。
保守系なのはわかっているんだが、それでもいいもんはいい。
保守的すぎるところ、偏見に満ち満ちているところは、「んなわきゃあない」と突っ込みながら、それでもウルウルとして聴いてしまう……。

さだまさしで一番好きなのは、「まほろば」です。
「飛火野」「黒髪に霜のふる」などなど典雅な平城京ワードを挟みつつ、泥沼ラブの末期症状を歌い上げるこの曲。

遠い明日しか見えない僕と
足元のぬかるみを気に病む君

とか

君を捨てるか僕が消えるか
いっそ二人で落ちようか

とか

例えば此処で死ねると 叫んだ君の言葉は
必ず嘘ではない けれど必ず本当でもない

とか、ほんと言ってくれます。
あるあるソングだよね!!

初めて聴いたときから、駆け落ちするなら行き先は奈良と決めております。
どうかみなさん探さないでください。