#副産物の会 vol.5

ブログでは告知できたりできなかったりいろいろですが、ネットプリントはすくすくと成長し、いまは5号が配信中です。
俳人の松本てふこさんと読書超人みやさとさん(すみません、この肩書きはいま考えました)に互いに積読本を勧め合ってもらう「お前も積読にしてやろうかバトル」、歌人・俳人で文芸同人「北十」代表の音無早矢さんによる「短歌テストステロン」(朗読も聴けるよ!)、そして石原の「ジェンダーアイデンティティとかのはなし」など、盛りだくさんな内容です。
諸事情によりコンビニから入手困難という場合にはツイッターのDMなどでご連絡ください。

#副産物の会 vol.5 セブンイレブン1月1日まで、その他のコンビニは1月9日まで。4ページ80円。
▼ネットプリント(セブンイレブン)
予約番号: 22411323
有効期限: 2023/01/01
▼ネットワークプリント(ローソン、ファミマほか)
ユーザー番号: WMDCTZEFLB
有効期限: 2023/01/09 09時頃

わたしたちこそが副産物ではないか

副産物の会 vol.2 先日配信終了しました。そのうちアンコール配信をするか、PDFにまとめるか、紙でまとめるかするんじゃないかと思います。
紙面のかなりの部分を占めていた「2044年の句会から」という小説は、アンチハラスメントポリシーが一般的になった未来の句会の様子を描いたものです。最後にまるでCMのように缶バッジが登場します(まだBOOTHからの引越しができておらず、メールやDMでご連絡いただいて発送する完全自力アナログ通販となるため、わたしに住所を知られても大丈夫な方のみご注文ください)。
実はこの小説自体、完全に「副産物」なのです。『俳句四季』8月号掲載の「俳句生活安全缶バッジに込めた思い」という文章を書きあぐねていたときに「どうしても書けなかったらこれを掲載してもらえないか交渉してみよう」と思って書いていました。結果として、小説を書いたあとはすっきりした気持ちで当該記事の執筆に移ることができました。よかった。
ちなみに 副産物の会 vol.3 では続編を配信予定です。

#副産物の会 vol.2 8月19日まで

「2044年の句会」

「2044年の句会」をテーマにAI(Midjourney)に描いてもらった画像です。

ネットプリント「副産物の会」vol.2 全国のコンビニで配信中です。
今回は俳句の未来について。
わたしの書いた「2044年の句会から」という小説が思いのほかボリュームが出てしまい紙面の約四分の三を占めていてすみません。
あとの四分の一はツイッターで募集した #2044年吟行 から何作か抜粋して紹介しています。
(忙しいひとはここだけ読みましょう)

#2044年吟行 と同時にもうひとつ、 #2044年の句会 というタグを作って皆さんに未来の句会はこうなってたらいいな、という夢を投稿してもらおうと思っていたのですが、こちらはみやさとさんが考えてくれたくらいのもので全然盛り上がりませんでした……。

いま句会をさかんに開催してるひとは、改善していきたい点とか、はやく手頃な値段で利用可能になってほしい新技術とか、存在していたらうれしい公共施設とか、そういう想像はしないものなんでしょうか。それとも22年後は戦争なり貧困なりのせいで句会なんてやってる場合じゃなくなってるだろうと思ってるんだろうか。塹壕の中でも、防空壕の中でも、俳句をやるひとがふたりいたら句会はできるとは思う。でもそんな悲劇的でドラマチックなシチュエーションは求めてなくて、俳句を含めて普通の生活を続けられる未来がいいです。

ところでこの記事を書き始めたら、台風の影響っぽい雨がやってきました。
家から出られないけど家にいても暇すぎるしネプリが読みたいぞ、という場合はお気軽にDMでご連絡ください。

『俳句四季』8月号に寄稿しています。

『俳句四季』2022年8月号「誰もが安心できる句座のために #MeTooのその先へ」と題した特集に「俳句生活安全缶バッジに込めた思い」という文章を寄稿しています。

ふだんからわたしを知る方には「またその話か」という内容だと思いますが、紙媒体に載って普段ならぜったい届かない相手に届けることができて(届いてるよな!?)よかった。

高松霞さんと山本千晶先生の対談は、「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」の冊子やnoteで伝わりにくい部分を補足するような内容になってます。

執筆者それぞれがそれぞれの切り口で短詩界隈のセクハラ問題について書いていて、特集全体として充実した内容だけに、基礎的な用語解説とかあった方がよかったのかな、ということもちょっと思ったりしました。

セクシャルマイノリティ関係に関しては明石市のウェブサイトがわかりやすいのでおすすめです。

LGBTQ+/SOGIEの基礎知識

休暇とお金がなんとかなりさえすれば実行可能な旅行計画/トルコ エフェス遺跡とシリンジェ村でのんびりすごす旅 #副産物の会

エフェス遺跡

ケルスス図書館(エフェソス遺跡)

LoggaWiggler FromPixabay

新型コロナウイルス蔓延による渡航制限も解除されつつあるので、トルコ旅行を計画することにした。
より正確に言うと、トルコ旅行の計画だけする遊びを再開することにした。
旅行の計画は楽しい。パンデミックが起きるまではスカイスキャナーで格安航空券を検索し、懐具合に見合った旅行を計画することを趣味としていた。この遊びにおいてはリアリティはとても重要なので、つねにエコノミークラスの設定である。五つ星ホテルのスイートルームに三ヶ月滞在するような計画は立てない。職場の空気を読まずに1週間程度の連休を取り、そして清水の舞台からバンジージャンプをする気持ちでクレジットカード番号を入力すれば妄想ではなくなる。まあもちろん行くつもりはないんだけど、少し力加減を誤ったら実際に行ってしまうかもしれない。「俺が本気出したら全てをなげうって飛行機乗っちゃうんだぞ」という、そういうラインの計画だからこそ楽しいのである。
疫病禍の世界にあって、飛行機は減便され、各国に渡航制限が敷かれ、旅行のリアリティを確保することが難しくなっていた。出発何時間前にどこの病院でPCR検査を受ける、というシミュレーションをしたこともあるのだが、そういうことをしていると計画の楽しさよりめんどくささのほうが勝ってしまう。1週間の自宅待機が可能な自分というのを想像すると、失職しているとしか思えず鬱々としてしまう。かといって自分だけが何の制限もなく渡航できてしまうような設定にしてしまっては、単なる絵空事になって満足感が得られない。自分が行かなくていいのなら、他人のトルコ滞在記を読んだり動画を見たりすればいいのだから。
ところで、トルコはずいぶん前から旅行者を受け入れている(ヨーロッパからのバカンス客が来てくれないと収入が激減しちゃうから、ってことなのかなと思う)。じゃあ何が問題だったかというと、日本に帰ったあと。5月頃は日本入国後に隔離期間が課されていたのだ。最近になって日本政府が対象ワクチン3回接種済の入国者は空港での検査も入国後の待機も不要と発表した。対策としてそれって本当に大丈夫なのかよ、空港で全員にPCR検査しろよ、とは正直思う(一応、日本に帰国する前、渡航先の国からの出国時72時間以内の陰性証明は必要らしい)。そういうもやもやした思いもありつつ、罪悪感も覚えつつの、久しぶりの海外旅行計画(ただし、実行する可能性はゼロに近い)をご覧ください。

航空会社:エミレーツ航空
航空券金額:総額135,720円(エミレーツ公式ウェブサイトより予約)
(大人1名、往復、エコノミークラス)
預入手荷物25kg 機内持込手荷物1個×7kg(55 x 38 x 20 cm未満)

必要な準備:地方自治体発行のワクチンの接種証明書を申請する(1週間程度で発行。手数料無料)。日本帰国時のPCR検査を行ってくれる病院についてトルコ大使館に問い合わせ。旅行保険への加入もしくは旅行保険が自動付帯するカードの申し込み。『地球の歩き方』の関係ないページを外して必要な部分だけ製本し直す。

旅行期間:2022年9月21日(水)〜2022年9月28日(水)

9.21 15:33 岡山駅より新幹線乗車(スマートEX往復割引 往復31,040円)
|(3時間21分)
9.21 18:54 東京駅到着

9.21 19:30 東京駅八重洲南口よりエアポートバス乗車(片道1,300円)
|(65分)
9.21 20:35 成田空港第2ターミナル到着
軽食。日焼け止めを落とすなど、搭乗前にあらかじめ就寝の準備をしておく。

*直航便のほうが荷物がなくなったりする心配がなくて安心なのですが、今回はいちかばちかドバイ経由でトルコのイスタンブール空港に着くコースで行きます。第一の目的はトルコ西部のエフェス遺跡とシリンジェ村を訪問することです。エフェス遺跡(エフェソス遺跡)は古代ローマの遺跡。シリンジェ村は果物の名産地でジャムやワインがおいしいそうです。都会から癒しを求めてくる人々に人気の観光地という感じ。一般的にトルコの西の方はギリシャ・ローマの雰囲気が強いしヨーロッパからの観光客も多いようです。
トルコ国内移動の経路はGoogleマップで示してみました。

9.21 22:30 成田空港より出発(エミレーツ)
|(10時間40分)
9.22 4:10 ドバイ国際空港到着
<6時間35分 空港で接続>
まずはターミナル3 G-FORCE Health Club のシャワーを使う。ジムだけど、シャワーだけ借りることができる。16ドル(予約不要)。それから免税店を回る。ちなみにエミレーツはターミナル3発着。
結構時間はあるものの、こんな早朝から空港の外へ遊びに行くわけにもいかないので、本を読んだりノートにあれこれ書いたりして過ごす。中東といえば香水の品揃えすごくてたがが外れそうになるだろうけど、調子にのっていっぱい試すなよ! 酔うぞ!
つぎのイスタンブール行きの飛行機に乗る前に化粧をしておきましょう。

9.22 10:45 ドバイ国際空港出発
|(4時間40分)
9.22 14:25 イスタンブール空港到着
入国審査、どこに滞在するかという問いにはイスタンブールとエフェスと答える。両方ともホテル泊(滞在先ホテル情報はプリントアウトして持っておく)。
空港のATMで3,000トルコリラくらい(約23,000円)出しておく。(これはキャッシング=借金なので日本に帰ったらATMから繰上げ返済すること)

9.22 15:15 イスタンブール空港よりHavaist(エアポートバス)乗車(46リラ=約360円)
|(80分)
9.22 16:35 BAKIRKÖY İDO 停留所到着
Le Marde Hotel 宿泊(バジェットダブル 4,802円 キャンセル不可)
ホテルはバス停から西に100mくらい。モールも港も公園も徒歩圏内。便利そう。ホテルにチェックインしたら遅くならないうちに夕食を食べておく。外で食べる元気がない場合は近所の店でピデ(トルコ式ピザ)とサラダをパケット(持ち帰り)にしてもらう。アイラン(飲むヨーグルト。見た目は日本のコンビニで売ってる飲むヨーグルトとほぼ同じだがしょっぱい)を一緒に買う。
イスタンブルの中心地(スルタンアフメット地区)からは結構離れたエリアなので過ごしやすいはず。

9.23 9:30頃 チェックアウト。
荷物をフロントに預けてイェディクレ要塞博物館へ向かう(9時開館)。Bakırköy駅でイスタンブルカードに20リラチャージし、マルマライ(地下鉄)に乗って3駅先のKazlıçeşme駅で下車。イェディクレ要塞は要塞とはいうものの監獄として利用され、失脚した皇帝が幽閉・処刑されたこともある場所。エモみが増すように、澁澤幸子『ハーレムの女たち』『落日のボスフォラス』を再読しておくとよい。一部修復中の模様。イェディクレ見学後、同じルートでホテルまで帰って荷物受け取り。果物やスィミット(ごまつきパン)など屋台のおやつを買うならこのタイミング。

9.23 13:35 BAKIRKÖY İDO 停留所よりHavaist乗車(46リラ=約360円)
|(80分)
9.23 14:55 イスタンブール空港到着
買っておいたおやつを食べて休憩。国内線出発フロアに入ったらメジャー系の香水ブランド置いてる店があると思うけど試しすぎるなよ、酔うぞ!

9.23 16:35 イスタンブール空港出発(ペガサス航空 往復10,048円 受託手荷物15kgまで)
|(1時間10分)ペガサスはLCCなのでドリンクやお菓子は有料
9.23 17:45 イズミル アドナン・メンデレス空港到着
次は電車に一時間乗ることになるので水を買っておく。

*いよいよ電車で目的地エフェスとシリンジェの起点になる町、セルチュクへ向かいます。

9.23 18:39 イズミル アドナン・メンデレス空港駅よりİZBAN(イズミル高速鉄道)Menemen-Cumaovası線乗車(語学力が足りなくて検索しても正確な金額がわからないが、たぶん20リラ=約160円以下)
|(33分)7駅
9.23 19:12 テペキョイ駅到着
<Tepeköy-Aliağa線に乗換え>
9.23 19:30 テペキョイ駅出発
|(23分)3駅
9.23 19:53セルチュク駅到着
徒歩でホテルへ。
Urkmez Hotel 宿泊 9.23チェックイン – 9.26チェックアウト(3泊、朝食付き)12,489円(9.19までキャンセル可)
ホテルはセルチュク駅より西に100m。
24日・25日の2日かけてエフェスの古代ローマ遺跡巡り、シリンジェ村観光。ドルムシュと呼ばれる乗り合いバスで移動予定。
9.26 朝食後チェックアウトして荷物をフロントに預ける。気に入った遺跡を再訪するか、お土産探し。おいしいものを食べる。ホテルで荷物を受け取って駅へ。

9.26 15:20 セルチュク駅よりİZBAN Tepeköy-Aliağa線乗車
|(23分)3駅
9.26 15:43 テペキョイ駅到着
<乗換え>
9.26 15:55 テペキョイ駅出発
|(33分)7駅
9.26 16:28 イズミル アドナン・メンデレス空港駅到着

9.26 18:15 イズミル アドナン・メンデレス空港出発(ペガサス航空)
|(1時間10分)
9.26 19:25 イスタンブール空港到着
Havaist 乗車
イスタンブールで一泊(タクスィムスクエア付近を想定しているが前半の疲労度によってエリアやグレードを変える。現地で予約する)
9.27 9:00頃チェックアウト
渡航前にトルコ大使館に教えてもらった病院に行き、PCR検査を受ける。時間があればドライフルーツ、コロンヤなど土産を購入。

9.27 14:30頃 Havaist でイスタンブール空港へ
|(90分程度)
9.27 16:00頃 イスタンブール空港到着

9.27 19:25 イスタンブール空港より出発(エミレーツ)
|(4時間30分)
9.28 0:55 ドバイ国際空港到着
<1時間45分 空港で接続> ←時間短いから走って!
9.28 2:40 ドバイ国際空港出発
|(9時間55分)
9.28 17:35 成田空港到着
エアポートバス乗車、新幹線(最終は20:33)と、行きと同じルートを辿って帰る。

*この記事はネットプリント『副産物の会』 vol.1の関連企画です

俳句誌『豆の木』No.26

ha11ok from Pixabay

俳句誌『豆の木』No.26(2022年5月31日)に「加害者にならないために プロジェクト『短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために』に応えて」という佐々木紺さんの記事が掲載されている。
高松霞さんのプロジェクト「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」の報告書・要望書・パンフレットが豆の木にも届いたという報告および、俳句とセクハラに関するかなり親切な解説や紺さん自身が日々気をつけていることなどが書かれている。

想像してほしいのだが、自分が加害者の立場になって、知らず知らず他人にハラスメントを繰り返して、ある日突然ものすごく糾弾されてたくさんの人に恨まれながらコミュニティを追い出されるよりも、まだ傷が浅いうちに「それはまずいよ」「あ、ごめん、良くなかったね、次から気をつけるわ」っていうやりとりをできるほうがはるかにマシではないですか??

とか、「ほんまそれほんまそれ」と言いながらヘドバン不可避です。
が、現状としては、結社の偉い人ならかなりのやらかしをしても周りが「そんなつもりじゃなかったと思うよ」とか「お酒の勢いでちょっと距離感誤ったんだよ」とか守ってくれて被害を告発した側が去るしかないみたいな現状もあることないですか…? セクハラが原因で追い出されるとしたらそこまで有名じゃない人だろうなとは思う。つら…。

ポリシーや窓口を形だけ作るだけでは意味がなく、頻繁にポリシーの中身をアナウンスしたり、窓口が健全に機能しているかさらにチェックするような仕組みも必要になるだろう。

ここもすごく大事だと思います。
作った仏に魂を入れようぜ。

目次

紺さんの記事の後には代表のこしのゆみこさんの「句会で加害者にならないために」という小文、そして豆の木メンバーの「ハラスメントについて思うこと」が11人分、匿名で載っている。
匿名のうちのひとりの意見は、

「ハラスメント」「ハラスメント」という言葉が巷を闊歩するにつれ、わたしは居心地が悪くなり、人に対する不信感が募る一方。

というものすごいフレーズを含んでいて(いや、ここ以外にも全体がものっすごいのでぜひ読んでほしいのだが)まるでフェミニストの作家が家父長制どっぷりの年配の男性になりきって書いた小説みたいで、ハラスメント対策の教材としてかなりいいです。皮肉ですが本気です。ここから学べることは多いよ。
わたしは読んでショックも受けたけれど、おそらく「豆の木」代表としてはこの意見が誰から出たものかわかっているはずで、こういう考えのひともいるから要注意、と代表の方がよく把握してくれているという点では安心材料だ。可視化されてよかったと思いたい。
なお、ここで寄せられている意見の全体の傾向としてはハラスメント対策の必要性を認める方向であったことも申し添えておきます。読んでみたい方、直接代表やメンバーの方にお問い合わせください。

Haiku Group 豆の木

活動記録(2021年)

「俳句生活安全缶バッジ」を制作・販売

〈メディア掲載〉
・東京新聞2021年10月16日夕刊(外山一機「俳句のまなざし」)
・俳句総合誌『俳句四季』2021年10月号(野口る理「ただ俳句だけ作っていたかったけれど」)
・俳句雑誌『雪華』2021年10月号(鈴木牛後「余音−雪華集を読む」)
・『丘ふみ游俳倶楽部終刊記念句集』(中山奈々「缶バッジ」)
・短歌雑誌『心の花』2021年11月号(佐藤博之・時評「わたしは作中人物じゃないですよ」)

〈ちらっと登場〉
角川『俳句』2021年12月号
外山一機の評論「BL俳句という可能性」に、俳句生活安全缶バッジに関する文言が引用される。

●ウェブマガジン「Sisterlee」に『俳句コミュニティにフェミニズムの視点を。私が「俳句生活安全缶バッジ」を作った訳』を寄稿。

『文學界』2021年8月号
川野芽生「この言葉をあなたが読まないとしても」に石原ユキオの俳句「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 初詣」他が引用される。
(連作「ロココごころ」より)

●シリーズ「俳句さんに似合う香水を見つけてあげる」ブログ執筆

●YouTubeチャンネル「泣きみかん放送協会」を開設。「俳句を読む!」など配信スタート

活動記録(2020年)

●『野性俳壇』2020年2月号にて佳作(長嶋有選)
枯蔓をひいておわりのなき世かな

●『野性俳壇』2020年3月号にて佳作(夏井いつき選)
猫柳スパイ暮らしは辛かろう

●『野性俳壇』2020年6月号にて特選(夏井いつき選)
子燕にちかづいてゆくガンマイク

●『野性俳壇』2020年8月号にて佳作(長嶋有選)
カルキくさいゆびからもらうフエラムネ

「週刊俳句」(2020年8月9日)に太田うさぎ「息災」評を寄稿

長嶋有『俳句は入門できる』(朝日新書)に一句掲載
メフテルは寝起きによろし夏の雲

〈その他のトピックス〉
◎BL句会で提案した「萌え選」システムが歌誌『かばん』の歌会にて採用 →2020年6月号「短歌とBL」
◎短歌ムック『ねむらない樹』Vol.5に谷じゃこさんがコラム「石原ユキオになりたい」を寄稿

缶バッジの向こう側に ~クラウドファンディング「短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために」によせて~

「俳句生活安全缶バッジ」をリリースしたのが2021年5月。ちょっぴりお高めの価格設定(+送料)にもかかわらず、赤字にならず、すこし余力がもらえるほどご購入いただきました。その余力で24歳以下の方向けのプレゼント企画を行ったりもしました。ツイートで賛同を示してくださる方も多かった。SNSで話題になるだけでなく俳句総合誌・結社誌・新聞のコラムなどにも取り上げていただき、たいへんありがたく思っています。

ただ、すこし気になることもあってね。

紙メディアでわたしの缶バッジを紹介していただく際、もう一歩進んで、現実にどんな状況でどんなセクシャルハラスメントが行われたか、現実に被害に遭ったひとがどうなって、いまどんなことを考えているのか、そういった話題につながることはほとんどなかった。缶バッジがこれだけ支持されたのは実際に短歌・俳句などに携わるひとの間でセクハラや、法的にはセクハラと認められないような小さな侮辱の数々があるからだ。缶バッジの向こう側には生身の被害者がいる。そこに目を向けてほしいのに。

なんで現実の被害の話までもっていってくれないんだろう。
実例を調査して紹介するのは難しいから?

いや、その難しいことをすでにやってくれているひとがいるじゃないか。高松霞さんの「短歌・俳句・連句の会でのセクハラ体験談」のアンケートだ。2019年の3月から始めたアンケートは2021年9月の募集締め切りまでに110件の体験談と感想が寄せられた。体験談は二次被害を防ぐため個人が特定できないような編集を経てnoteで公開されている。この高松さんのnoteを併せて紹介してくれればいいのに。

わたしの缶バッジは、ユーモアまじりの威嚇で、ふんわりした問題提起で、短詩型文学界隈のセクハラ問題の解決に直接的に働きかけるものではない。かわいらしい応援団みたいなものだ。
対して、当事者の声を集める高松さんの活動は渾身の力で真っ直ぐに投げ込まれた豪速球だ。
むしろまっさきに紹介しなければいけないのはこういう直接的な活動であるはずだ。

え、待って。
もしかして、だから、ですか。
だから、みなさん紹介することをわざと避けているのですか。
自分の所属する結社が、協会が、セクハラの責任を問われて解体されてしまいそうな気がするから腰が引けてるんですか?
この活動に支持を表明したらあなた自身が干されるかもしれないと思ってびびってるんですか?
まあそれでも時代に取り残されてるダサい奴だと思われたくないから、わたしの缶バッジだけ紹介して、ハラスメントやジェンダーの問題に理解ある姿勢をアピールしているのですか……!? お、お前ら! 利用しやがったのかうちのかわいい缶バッジを……!

と、わたしの中の活動家人格がおもむろにヘルメットを装備して火炎瓶の製造を始めるのだが、そんなときには羽根を背負って頭の上に蛍光灯を灯した穏健派のわたしがやってきて「そんなことないよ。セクハラ体験談のことはまだ知らないか、たまたまうっかり忘れてたか、文字数が足りなかったか、次の機会に紹介しようと思ってたかだよ」となだめてくれるので「ですよね~♪」と気を取り直し火炎瓶のかわりにキャンドルを灯してクリスマスシーズンを楽しんでいます。

ところで今日の本題はクラウドファンディングのことです。

高松霞さんが2年間かけて行ったアンケート調査「短歌・俳句・連句の会でのセクハラ体験談」の最終地点としてのクラウドファンディングが行われている。このプロジェクトは下記の3点を全国の主要結社に提出することを目標としている。

(1)「報告書」110件の体験談とご感想をまとめたもの(非掲載希望、連絡先未記入は除外)

(2)「要望書」セクハラを許さないという姿勢を口頭ではなく書面で示して欲しい、そして専門窓口を作って欲しいという二点。回答期限は送付から1ヶ月後に設定し、noteで公開します。

(3)「パンフレット」これまでnoteに掲載した記事をまとめ、基礎となるガイドラインに書き直したもの。今後、配布しやすいもの、手に取りやすいものを、と考え、パンフレットという形をとりました。監修はジェンダー法学者の山本千晶先生です。山本先生には、活動当初からご助言をいただいています。また、まえがきにクラウドファンディングで制作した旨を明記します。

(2)は特に、受け取る側にしたらめちゃくちゃめんどくさいだろうと思うよ。それでもすごく大事なことだから、各結社は最大限の誠意を見せていただきたい。この回答一覧はこれから結社所属を検討するひとたちにとっての良い判断材料になるだろう。

クラウドファンディングの締め切りは1月20日。期限内に30万円の目標金額を達成した場合のみ決済が行われる “All-or-Nothing方式” だ。つまりわたしやあなたが財布を開いて30万円集めなければこの計画は前に進まない。せっかく集まった体験談なのだから、いままでセクハラ問題に目を伏せてきたひとにまでちゃんと届けられるような形になってほしい。

セクハラ体験談に関する活動を知っているのは、短詩の人々の中のほんの一握りです。私たちだけの間で「セクハラがあるんだね」「気をつけようね」と言い合うだけではじゅうぶんだとは思えません。セクハラがあるという事実に、各結社はどのような姿勢を示すべきなのか、一緒に考えていただきたいし、答えていただきたい。また、自分や身近な人が自覚のないままハラスメント加害者にならないように、もしハラスメントが起こったときには早い段階でお互い注意しあえるように、価値観をアップデートする手助けをしたいと考えています。(短歌・俳句・連句の会でセクハラをしないために 高松霞/READY FOR

アンケート調査としてはここが最終地点だけど、実際には短詩型文学の分野からセクハラをなくしていくための長い長い旅の最初の一歩だと思う。その一歩をできるだけ多くのひとに一緒に踏み出してほしい。金銭的な支援は1000円から可能だし、SNSでの紹介や句会・歌会で口頭で話題にすることも支援になる。みんなそれぞれ可能なやり方で支持を表明してね。俳句総合誌・結社誌・新聞その他、各メディアでぜひ取り上げてください。

同意できなさと連帯について

高松霞さんの「短歌・俳句・連句の会でのセクハラ体験談」に関連して書かれた坂西涼太さんの「創作活動とサステナビリティの視点からみるハラスメント問題」という記事を読みました。

同じ問題に関心を持っているにもかかわらず、同意できない部分が多かった。

坂西さんは「自分用にまとめたメモ」と前置きした上で

  1. 一般的視点から:ハラスメント対策を講じることが結社・団体のサステナビリティにつながる
  2. 個別的視点から:ハラスメントによる民事上のリスクは個人的な活動のサステナビリティ問題である
  3. まとめ:ハラスメントの結果として活動終了する個人や団体が存在することは損失

という内容を書かれているのですが(ざっくりした要約ですみません。実際の文章はリンク先をご確認ください)持続可能性をベースに人権問題を扱うことには忌避感があります。※1

人権は尊重されなければならない。それには理由はない。傷つけちゃだめだから傷つけちゃだめなんだと言いたい。
個人の権利が守られた結果として社会が持続可能になることはたしかにあるかもしれない。これはたとえば、貧富の差が少ない方が凶悪犯罪が起きにくいとか紛争が起きにくいとかそういうことだよね。

でもこれを結社にあてはめられるのかどうか、ハラスメント対策が結社や団体の維持のために必要かどうか正直わたしはわからない。※2
それから「個別的視点」についてはセクハラで訴訟を起こす大変さを思うとどのくらい脅し文句として効くのか疑問。

とはいえわたしは坂西さんに対して「お前さんはなーんもわかっとりゃせんのう!」などと文句を言いたいわけではなく、こういうのは考え方の違い、問題の捉え方の違いであって、さしあたりなにも問題はない。批判するつもりはない。

坂西さんのメモは、組織を維持していく側のひと、つまり結社の主宰にハラスメント対策を講じるメリットを説明する視点で書かれている文章のように感じられる。だからわたしにはピンとこないということもあるのだと思う。組織にいた経験が実質ないからね。でも、こういった視点で説得したほうがわかってくれる相手もきっといるのだろう。

わたしと坂西さんは考え方が違うけれど「ハラスメントは許さない」という点においては問題意識を共有できている。この一点においては連帯できる。むしろそこに希望を感じた。

いろんなひとがいろんな視点でハラスメント問題に関わって、それぞれの言葉で発信していくことが大事なのだと思う。どんな言葉が誰に響くかわからないから。


※1 SDGsの掲げる目標の中には「ジェンダー平等」や「人や国の不平等をなくそう」などもあるわけで、わたしがSDGsをちゃんと理解できてないからそう思うのかもしれません。

※2 だってさー。SMや昼ドラみたいな搾取と愛憎にまみれたドロドロの師弟関係もあるじゃないですか。そっちのほうが組織を維持できるのかもしれないと考えてしまう。わたしはハラスメントのない結社にする方向でお願いしたいけど「ハラスメント対策したほうが結社の維持につながります!」と自信いっぱいには言えない。「結社の維持に繋がるかどうかは知らないけど人間を傷つけてはいけないのでハラスメント対策してください」としか言えない。あとついでに「SMプレイは他人に見えない場所でやってください」も言いたい。