半分妄想トルコ日記 テロが怖いですか?


みなさんトルコのなにが怖いですか。テロリズムですか。
そもそも怖い前提で話を始めるのもどうかと思いますけど、だってみんなそういう反応したんだもん、わたしがトルコに行くって言い始めた頃。

できたてほやほやイスタンブル空港。

結論から言うと実際イスタンブルは東京より怖い。ただ、テロリズムはわたしにとっての差し迫った脅威ではなかった。
トルコ滞在中はセキュリティチェックが頻繁にあって鞄の上げ下ろしが忙しかった。美術館でもショッピングモールでも大きめのホテルでも、入り口にはセキュリティゲートがあり、ベルトコンベアに荷物を載せて自分もゲートをくぐる、空港で行うあの一連の動作を何度も繰り返さなければならない。
そして前回述べたように人の集まる場所にはマシンガンを持った警官がいたりする(仲間同士楽しそうに談笑しているので安全装置がちゃんとかかっているか心配にならないでもない)。
日本では考えられない、うんざりするほどの警備体制だ。
もちろん、それをもって「だから安心」ということはできないが、いちおう対策はしてくれているのである。

むしろわたしにとって恐ろしかったのは交通事情だ。横断歩道は少なく、道路の向こう側へ渡るタイミングは難しい。あちこちで絶え間なく鳴り響くクラクション。老いも若きも運転はワイルド極まりない。タクシー運転手は間違いなくあなたにジェットコースターに勝るとも劣らぬ最高のエンターテイメントを提供するでしょう。路線バスも同様なので覚悟しておいたほうがいい。

「イギリスに短期留学して帰ってきたらトルコ人の運転を怖いと感じるようになっていました」

そう語る友人の運転はというと、急ブレーキや無理な車線変更はないもののスピードはかなり出す。トルコは広いので法定速度を守っていては永遠に目的地に着かないのだ。

旅行保険、必要だな…って思った。

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半分妄想トルコ日記(1日目・後編)ちょっと祈ってきます

Q. せっかくちゃんとしたスカーフを買ったのに、大判ストール巻いて武蔵坊弁慶スタイルを続けているの?

A. ええそうです。とりあえず初日はこれで我慢です。5泊6日あるので衣類のペース配分が大事なのです。

当初の予定では、ホテルに着いてすぐ、荷物だけ置いてカーリエ博物館(モザイクで有名)もしくはハマム(トルコ式岩盤浴&垢すり)に行くつもりだった。
が、空港からの移動で思ったより時間を使った上にエセンレル・オトガルのホシュゲルディニス攻撃に疲弊してしまったので、ホテルの周りを散策して友人の到着を待つことにした。
通りに面したオープンカフェ(と表現するしかないが全くもっておしゃれではない)は中高年男性の溜まり場で、なんか見慣れないのが歩いてるぞおいおいなんだありゃあ、という視線を感じる。

どうも。日本から来たおとなしい珍獣です。

歩き疲れてフレディに連絡を取ってみるとちょうどホテルに着いたと言うのでホテルまで戻る。

ホテルの前にモスグリーンのシャツを着た細身の男性が立っていた。フレディだ。先日ビデオ通話で話したときよりもさらに痩せて見える。いまは断食月の終盤なのだ。断食月、ラマダン。トルコ語でラマザン。日の出ている時間に飲食を一切控えるかわりに夜間に大量に食べるから、ひとによっては太ってしまうらしいのだが。
手に持っていたスマートフォンをポケットに収めた彼は、滑るような足取りで近づいてきて右手を差し出した。
「はじめまして」
そうだった。見慣れた顔、聞き慣れた声なので忘れそうになるが、わたしたちは直接会うのは初めてなのだ。
「カーリエ博物館には行きましたか」
「まだです。飛行機で疲れちゃって」
「少し休みますか。それとも出かけたいですか」
「出かけたいです!」

スルタンアフメットジャーミィ。工事のためのテントに元の建物の形が印刷してある。日本でも最近こういうのよくあるよね。

わたしたちはバスに乗って、スルタンアフメット地区へ向かった。
スルタンアフメット地区にはブルーモスクことスルタンアフメットジャーミィをはじめとしたイスタンブルの有名な観光地がぎっしりと集まっている。
観光客の多いモスクではヒジャブ(ヘッドスカーフ)を貸し出したりするものだが、スルタンアフメットジャーミィではヒジャブだけではなく丈の長いスカートも貸し出しており、短パンで来てしまったらしい旅行者風の少年たちがお揃いのスカートを履いて歩き回っていた。愛らしい。
細いスカーフを頭頂部に軽く載せただけの女性は入り口の警備員に注意されていたが、わたしは無印良品のストールを装備した武蔵坊弁慶なので心配はない。靴を脱ぎ、渡されたビニル袋に突っ込み、モスクの中へ入る。
きれい、だったと思うのだが、人が多すぎて感動している暇がない。大規模な改修工事中ということもあって、ゆっくりと鑑賞する雰囲気ではなかった。
あと、たいへん申し上げにくいのですが噂通りちょっと臭いです。わたしが清掃会社を所有する石油王なら(石油王ってなんでも持ってるんだよね?)絨毯のクリーニングを申し出るところだ。

フレディは突然「ちょっと祈ってきます」と言った。
「ご存じのように我々は1日5回お祈りを行います。少し離れますがどうしますか。ここで待っていてくれますか」
わたしは頷いて、いま出てきたジャーミィにまた戻っていくフレディの背中を見送った。
ラマザン中の夕食はピクニックをして楽しむ習慣があるらしい。芝生のあちこちに場所取りをしている人たちがいる。家族連れの間に荷物を降ろしてストレッチした。フライトの後は腰が痛い。

お祈りから戻ってきたフレディにオープンカフェで搾りたてのアップルジュースをおごってもらいながら(もちろん断食中のフレディは何も口に入れず側に座ってつきあってくれている)わたしはトルコにいることがまだなんとなく信じられなかった。
ついこの前までストリートビューの解像度に歯がゆい思いをしていたのに、いまは気になったものにどこまでも近づいていき、間近に見て手に触れることができる。触れる、ということがとにかく不思議だ。アップルジュースのぬるいグラスに触れて、いましがた握手した彼の手のしっとりとした冷たさを思い出した。

ちゃんと生搾りアップルジュースが出てくるとは思わなかったよ。

アヤソフィア博物館も改修中だったのだが、建物の中に足場が組んである様子を「鑑賞」しようと試みたら、なかなかおもしろかった。姫路城の改修のように上の方までエレベータで見学できたらいいのに。

ほらほら、足場に登りたくなるでしょう?

金色のモザイクは生で見るとまったく印象が違う。タイルの一枚一枚がこまかく光をばらまいて、印刷でもTVでもPCのディスプレイでも表現できない情報量だ。あちこちの壁に描かれた壁画が太陽の角度によってまったく別の表情を見せるかと思うと、ここを何度でも訪れることができるイスタンブル在住者が羨ましい。
ミュージアムショップのスタッフに「どちらから?」と聞かれて日本からだと言うと「お元気ですか?」という日本語が返ってきた。日本でトルコ出身者と話すときも度々思っていたけれど、トルコの人は “nasılsınız?” の訳語として「お元気ですか?」とよく言う。日本ではそれは久しぶりに会った人が言うやつなんだよ。そう思いながら「おかげさまで」と答えた。

土産物屋を眺めながら歩いていると、突然若い男がフレディに話しかけきた。フレディはそれを無視して歩調を速めた。あわててわたしもついていく。男はまだ話しかけながら追ってくる。
「ちょっと待って。何これ何これ」
「なんでもありません」
フレディが足を止め、トルコ語で男に向かって強めに何か言った。男は諦めて離れていった。
「なにあれ? あのひと何か売りつけようとしてたの?」
「あれは一種の物乞いです」
「外国人? 難民?」
「いいえ。言っていることが支離滅裂だったので、なんと言えばいいか、たとえばヘロインかコカインかMDMAか……」
「ジャンキー?」
「そう、それです」
スリや詐欺師や客引きが問題になる地区だけれど、薬物は予想外だった。
「なんて言って諦めさせたの?」
フレディは答えずに、
トルコ・イスラーム美術博物館に行きますよ。普段なら閉まっている時刻ですが開館時間延長中、しかもラマザン割でお得です」
と真顔で言った。

ジェッディン・デデン♪ ネースリン・ババン♪

外に出ると、人口密度のますます高まった広場でメフテル(トルコ軍楽隊)の演奏が行われていた。日程の関係上メフテルは聴けないだろうと諦めていたのに、とつぜん夢が叶ってしまった。

わたしたちは大きなマシンガンを抱えた警官が警備する広場を抜けて、ショッピングモールで夕食を摂り、ホテルに戻った。

それにしてもあの男が精神疾患ではなく薬物中毒だということを、フレディはどこから判断したのだろうか。

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半分妄想トルコ日記(1日目・前編)武蔵坊弁慶イスタンブルに参上

「ホシュゲルディニス!」
「ホシュゲルディニス!!」
「アンカラ? アンカラ?」

空港からのバスを降りた瞬間、タクシードライバーたちが口々に叫びながら追いかけてきた。スーツケースを引きずりながら無視して逃げる。無視しているのについてくる。ノーサンキューと言っても諦めないひとりには「マイフレンドが迎えに来るから」と言ってみた。通じたらしくようやく引き下がった。

エセンレル・オトガル。イスタンブルの主要なバスターミナルのひとつだ。
『地球の歩き方』およびインターネットで読めるいくつかのトルコ旅行記によるとここから地下鉄に乗り換えられるはずなのだ。
なのにいちばん近い階段には「○○商店街。メトロはこちらではありません」みたいなことが書いてある(ような気がする)。わたしのトルコ語レベルは2歳児ほどだ。「こんにちは」「ありがとう」「みず」「りんごジュース」「さびしかった」などが言える。1年勉強して2歳児ぐらい話せるのだから偉いと思う。普通2歳児は字が読めないはずだ。わたしはほんの少し読める。3歳かもしれない。ともかく地下鉄がここじゃないことは察した。偉い。偉いぞ。

ギラついた視線のおっちゃんたちに関わりたくないので女性の集団に声をかけて「メトロはどこですか」と聞いてみるものの、地方から遊びに来た若い女の子たちだったようで「キャハハ! うちらも旅行できてるからわかんないんだよね!」という反応で、楽しそうに通り過ぎて行った。
なんだかもう、声をかける相手を決めるだけで体力を消耗してしまう。
初夏とは思えない本気の日差しに腕も首筋もじりじりと炙られている。食堂の店先で焼かれるドネルケバブの気持ちがわかる。オトガルのドネルケバブ屋が「いらっしゃいませどうぞ!」とわたしに向かって叫んでいるような気がするが全て無視する。喉乾いたな。なんとか日陰に入って手持ちのストールを被った。なんだよヒジャブ(イスラム教の女性が頭に巻くヘッドスカーフ)って実用品じゃないか。楽だ。これで砂漠でも戦える。

(のちに知ったことだがトルコは乾燥しているものの “砂漠” はないらしい。むしろ中東にあって緑豊かな土地である)

一旦落ち着いたので、荷物貼り付けられていた「イスタンブル新空港行き」のタグとシールをむしり取った。そうだ。これが「いま飛行機から降りてまいりました!」というアピールになってしまうのだ。空港から来たばかりの客は物価を知らない格好の鴨と判断されてしまう。ところで鴨ってハラールだろうか。

トルコには連絡を取り合っている相手がふたりいて、ひとりは午後から合流する旅のパートナー、会計士のフレディ、もうひとりはゲーム会社勤務のルーク。彼らの名前がヨーロッパ風なのはこの日記がプライバシーに配慮しているからで、本名はちゃんとトルコの名前だ。予定ではフレディはいまバスでイスタンブルに向かっていることになる。ルークには今回の旅で会う予定はなかったのだが、いつも異様に返信が早いので試しにメールしてみた。

「ハーイ、ルーク。げんき? いまエセンレル・オトガルに着いたんだけど、地下鉄の入り口が見つからないんだ。知ってる?」

10分ほど待ったが返信がない。
諦めて、目を皿のようにしてロータリーになったバスターミナルをぐるりと取り囲む建物に取り付けられた看板を端から端から読んでみようと試みた。
馬蹄型になった建物のいちばん端に「メトロ」「イスタシヨン(駅)」と書いてあった。

地下鉄でホテルへ向かう。
トルコの公共交通機関は、基本的に運賃先払いだ。地下鉄の改札でイスタンブルカード(イスタンブル地域限定ICカード)をタッチして、ロックが解除されたバーをぐるっと回しながら改札を通過する。スーツケースの持ち手がバーにひっかかって外れなくなり「まじかよ…」とつぶやいていたら後ろからきた初老のベーシスト風男性が「大丈夫大丈夫」というジェスチャーをして同じゲートにタッチしてくれた。やさしい。
コロコロ付きスーツケースは空港内の移動には便利だけれど、石畳や段差の多いトルコの街ではなかなか過酷だった。即席ヒジャブ(無印良品のストール)の中で汗をだらだら流しながらしばらく歩き回っているうちに、事前にGoogleのストリートビューで予習しておいた景色に出会った。服や靴の店が多いにぎやかな通りだ。
まずはトルコ旅行の必需品、スカーフを手に入れなければならない。いつなんどき素敵なモスクに出会ってもいいように。モスクでは女性はヒジャブを被るのがマナーなのだ。(ちなみに、主要な観光地のモスクではスカーフの無料貸し出しを行っているので持参しなくても問題はない)
いま頭にのせているストールはヘッドスカーフとして身につけるには大きすぎるのだ。まるっとボリューミーで武蔵坊弁慶ぽさが出てしまっている。

ストリートビューで目をつけていたスカーフショップ、スタッフは若い女性たちだった。彼女たち自身もヒジャブを巻いて長袖の服を着ている。綿か麻を出してと伝えたかったが、麻という単語を知らない。綿はノーベル賞作家の苗字と同じだから覚えていた。一枚だけ選んでレジをお願いしたら、ちょっとがっかりさせてしまったようだ。ええ、わかります。せっかく遠くから来たんだからいっぱい買うと思うよね。ごめん、今日はまだ1日目だから買い物は様子見なんだ。

ホテルに到着し、予約してくれたフレディの名前を言ってチェックインした。聞き取ってもらえるまで3回くらい言わねばならなかった。まだ正午にもなっていないが、追加料金もかからずチェックインできてしまうらしい。さすがホスピタリティの国トルコである。
カードキーとWi-Fiパスワードをもらい、ポーターに荷物を運んでもらう。
誰かが荷物を運んでくれるホテルというものに普段泊まらないので緊張してしまいエレベータの中で「いまチェックインできると思わなかったです!だってチェックインの開始時刻よりだいぶ早いでしょう?」と英語で言ったつもりだったけど、いまいち通じなかった。英語が苦手なひとなのかわたしの英語が下手なのか。たぶん両方だ。
ポーターはざっくりと(いちおう英語で)部屋の説明をしてくれた。チップは渡しそびれた。

荷物を簡単に詰め替え、武蔵坊弁慶を巻き直して散歩に出た。日傘や帽子を持ってきていないわけではない。こんなに燦々と降り注ぐ日差しの中で帽子や日傘を使うひとにひとりも遭遇しなかったので、なんとなく使いたくなくなったのだ。せっかくのトルコなのだし、ヒジャブを活用しましょうヒジャブを。トルコ人たちは突然の武蔵坊弁慶出現に全然落ち着かないかもしれないが、いい。太陽が眩しかったから仕方がない。

1日目・後編へつづきます)

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活動記録(2018年)

第1回「ビバ!ユキオ俳句賞」を開催(応募者81名・計405句)

第2回「スイーツ句会」を開催(岡山市)

●手作り句集『香水とフラフープ』を制作

俳句同人「傍点」主催「タイマン句会ワールドカップ2018」で優勝

●フード性悪説アンソロジー『燦々たる食卓』(2018年11月25日発行)に俳句連作「風味Z佳」10句とショートエッセイ「わたしのおいしい肉」を寄稿

●『野性時代』の野性俳壇で特選3回(うち1回はダブル特選)、佳作3回、野性歌壇で入選1回、選外佳作1回
〈特選は以下の3句〉
資材部は土筆ゆがいているそうです
火のような魚のようなチューリップ
運動会のあといろいろとたたむなり

●やすたけまり版「ぺったん詩」(いきもにあ2018)に俳句3句を提供
刃物より火山がいいわ猫の恋
春の夜の濾紙ごとはこぶプラナリア
なめくじと東灘区をぬめりあう

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1/27(日)常夏ハワイ句会のおしらせ


 
 
お申し込み・お問い合わせはTwitterもしくはEメールからお願いします。
 
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完全に自慢だがLOOPY!の服を見てくれ

ショッパー持ってご満悦

台湾のゆるゆる雑貨ブランドLOOPY!鹿皮のスエットを買ったので見てください。

口下手でも上手にケンカを売れるスエットなのです

象の顔のところがマジックテープでバリッと剥がせるようになっております。
中国語ではケンカを始めるときに「てめえの面の皮剥がしやがれ」みたいな言い方をするらしく、この象さんをバリッとすることにより!なんと!口下手なわたしも!簡単にケンカが始められる便利なスエットなんですよ!!!

LOOPY!のGAGAさん&LUCKYさん、今度大阪にいらっしゃるみたい〜。
大阪のみなさん会いに行ってみてね〜!

タイマン句会W杯 投句一覧 #taiman_kukai

トルココーヒー

俳句同人「傍点」主催タイマン句会ワールドカップ2018
我がトルコチームの投句一覧です。
祝勝会の様子はこちら

水タバコの水を人魚の泳ぐ音
7/20 題「シーシャ(水タバコ)」

姉妹来てチェリータルトを鈍角に
7/9 題「角」

ギュレギュレとみんな手をふる避暑の荘
7/31 題「拗音が3つ以上ある句」

城傾く箱庭の木を抜けば
7/13 題「抜」

蓴菜をちいさく掬う接続詞
7/26 題「接」

口中に骨片のある夏の月
7/26 題「骨」

夜のプールにかぶとがに連れてきて
7/13 題「カブトガニ」

袋いっぱい金魚をくれるココ・シャネル
7/20 題「人名しばり」

避難所に寝かされているエレキング
7/9 題「安全しばり」

五号室に夏は果てたり面格子
7/31 題「格子」

(得点順)

 

【祝優勝】タイマン句会W杯2018 #taiman_kukai

 

俳句同人「傍点」主催「タイマン句会ワールドカップ2018」
トルコ代表監督として出場し、優勝しました!
やったー!
(は? なんぞそれ? という方、石原監督の勇姿をtogetterからご覧ください)

そんなわけで8月某日、祝勝会を開催すべく地元の句友である古本斑猫軒店主ミコシさんを強引にお誘いしターキッシュレストランへ。
トルコの優勝を祝っていただくとともに、惜しくも勝利を逃したチームの作品について語ってもらいました。

石 原「今日はどうぞよろしくお願いします。シェレフェ(乾杯)!」
ミコシ「おめでとうございます。シェレフェ!」

Efes

トルコビールEfesで乾杯。

石 原「ではさっそくタイマン句会W杯に投句された全作品の中から3句取り上げていただき簡単な感想をいただければと思います」

炎昼超能力バトル反る少女  凡コバ夫(ブラジル)

7/31 決勝 題「拗音を3つ以上含む句」

ミコシ「文句なくよかったですね」
石 原「うん、これはやられましたね」
ミコシ「“バトル” “反る” の韻を踏んだたたみかけもうまいし “反る” という音から “sol(ポルトガル語などで太陽の意)” を連想させて南米の感じも出てる」
石 原「そこ……!? いやでもブラジルのサックー(タイマン句会W杯では作句をこう呼ぶ)はもう一定の評価を得ているのでスルーしてこれ以外で3句いきましょう」
ミコシ「えー……(野性俳壇でなかなか選んでもらえない※から拗ねてるのかな……)」

古本斑猫軒店主ミコシさん

古本斑猫軒ミコシさん。シーシャ初体験とのことだが毎日吸ってるひとにしか見えない。

トルコ代表監督 石原

監督らしくしようとスーツを着てみた石原。監督というよりはやさぐれた保険外交員だ。

ガードレール灼けて漁村の道に縄  黒木理津子(クロアチア)

7/10 B1 題「海沿いしばり」

 

ミコシ「句もいいんだけど、この試合自体がよかったんですよね。クロアチアチームの “正統派” 的な句に対してポルデヴィアからは実験的な句が出てきたわけで、この試合は双方が持ち味を出しておもしろい句が揃った。ここからどうしてもひとつ選びたかったんです。
その中でもクロアチアの “ガードレール灼けて漁村の道に縄”。漁村というひなびたものとして描かれがちですが、ガードレールを出すことで近現代の漁村になっている」

石 原「なるほど。たとえば灼けているのがガードレールじゃなくて石とかただの道だったら前近代の雰囲気になってしまうかも」

ミコシ「そうそう。漁村ということばに近代以前のイメージがつきまといがちなんだけど、そこへガードレールを持ってくることで現代的なリアリティが与えられている。
きっと人はそう多くない漁村で、灼けて真っ白な情景というのがそれにとてもよく合ってる。非常に夏らしい句だと思います。海のそば、人がほとんどいない中、道にぽつんと縄がある」

石 原「情景がしっかり見えますね」

ミコシ「叙情性もあるし、よくまとまってますよね」

夕菅にゆるい手綱の馬と行く  トオイダイスケ(スコットランド)

7/9 A1 題「安全しばり」

 

ミコシ「タイマン句会に出たものに限って言えば、トオイさんは全体にゆったりとした雰囲気の句が多くて、カメラワークで言うならば引きの画なんですよね。詠まれているものがはじめからひとつの画のなかに入っていて、カメラがパンしない。二物衝撃って要するにカメラがパンすることだと思うんですけど、そういうものをあまり感じさせない。
ゆったりとした時間の流れを引きの画で、なおかつカメラを動かさずに表現している。情報量としては多くないし情景として角の立ったものではないんだけど、空気感というのをよく伝えている、というのが今回トオイさんの句を読んで全体に受けた印象です。
その中でも “夕菅にゆるい手綱の馬と行く” は見事に言ってきたな! っていう。 “に” をどう解釈するかという問題はもちろんあるんですが、せっかくのロングショットなので細かい文字遣い以前にこの空気感を堪能したいですね」

石 原「“ゆるい手綱” は自分の語彙の中からは絶対出てこないフレーズなので痺れました」

内接円に半径とハンモック  ネル山ネル子(クロアチア)

7/26 準決勝1 題「接」

 

ミコシ「意外と点が伸びなくてもったいないな、ということもあって選びました。これたしか、しばりが “接” ですよね。そこからの句の連想の流れがスムーズで後を追いやすかった。
“接” から “内接円” を連想し、“内接円” から “半径” も連想しやすい。で、今度は単純なイメージの連想ではなく “半” という音から “ハンモック” に飛躍している。一回意味で連想を飛ばし、その次は音で飛ばしましたっていう。読者が連想の軌跡をたどりやすく、なおかつおもしろさもあるんです。結果的に、ひとつの抽象的な情景ができあがっている。そういうそつのなさがあったので、もうちょっと点が伸びてもよかったのかなと思います」

石 原「“半径と” までは実体のないもの、数学的なものなんですよね」

ミコシ「そう、形而上というか、概念」

石 原「それがハンモックでいきなり実体のあるモノが出てくる。そこがおもしろいですね」

タイマン句会得点一覧表

得点一覧表を見ながら語り倒す。たのしい。

石 原「それでは最後に斑猫軒からお知らせやおすすめ商品があればお願いします」

ミコシ「うーん、そうですねえ。俳句関連の在庫から具体的に何かおすすめしたいところなのですが、たぶんこのページをご覧になる皆さんのほうがよほど目も肥えていらっしゃると思うので、弊店ウェブショップの「短歌・俳句」カテゴリーページをご覧ください、という程度に留めておきましょうか。
つい先だって、『増補 現代俳句大系 全15巻揃』ほか、俳句の本を少し仕入れたんですが、すみません、まだウェブに掲載する作業を進めてない……。近日中にとりあえず何点かは載せますので。
他のジャンルでしたら、幻想文学妖怪関連書籍に力を入れていますので、ご興味ございましたら是非!」

俳句関連書籍入荷してます

店舗を持たない幻の書店古本斑猫軒へぜひお越しください。

古本斑猫軒(はんみょうけん)
〜幻想文学・人文書から絵本・暮しの本まで、古書買取販売いたします〜

「野性俳壇」「小説 野性時代」の俳句投稿欄。長嶋有(=ブルボン小林)夏井いつき両氏が選者をつとめており石原は毎月投句しているが長嶋さんに選んでもらえることは激レア。

スイーツ句会 ワッフルと珈琲

ワッフル、チーズケーキなど

4月14日(土)は2回目のスイーツ句会でした。
前回(2018年1月6日)は特に名前のない新年句会だったのですが、生クリーム山盛りのパンケーキを囲んだため「スイーツ句会」と呼ぶことになったのでした。

参加者募集はこんな感じ。

スイーツ句会の告知画像

進行役の自分を入れて4名(欠席投句2名)でこぢんまりと実施しました。
この句会では進行役はゲームマスター的な存在です。
通常の句会では出席者の俳句を無記名で並べて選句や合評を行う、場合によっては投句のみ参加の「欠席投句(不在出句)」も混ぜて行うのですが、ここにゲームマスター権限で手元の句集や入門書からピックアップしたお気に入りの俳句を加えます。
いわば部分的な「借り物句会」(別称「つくらない句会」)。

お借りした俳句はつぎの6句。

しやぼん玉ことばにふれて失明す  小津夜景『フラワーズ・カンフー』
死者生者こみ合ふ春の回転扉  はるのみなと/大井恒行著『俳句 作る楽しむ発表する』
▶︎「死者」と「生者」の語順はこれでいいのか、逆だとどうなるのか、と検討したのが面白かった。
抽斗につかはぬ音叉春の虹  菅原鬨也(大型俳句/俳句関連文書検索エンジン)
▶︎ひきだしにあるってことは使ってないんだから「つかはぬ」は説明的では? という意見あり。
しんじてもかぜはさくらを書きくだす  宮﨑莉々香/佐藤文香編著『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』
葉桜や空は疎にして鳴らせば葉  田島健一/佐藤文香編著『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』
つばくらや小さき髷の力士たち  津川絵理子/佐藤文香編著『天の川銀河発電所 Born after 1968 現代俳句ガイドブック』
▶︎つばめのかわいさと力士のかわいさ。

以下、わたしの出した句。

蕗味噌トーストねむいとき怒るのね   石原ユキオ
宗教につかう音叉や暮の春
春日傘KGBに狙われたい

次回は5月下旬か6月にできるといい……かな?
開催地は岡山・倉敷・総社あたりのどこかの予定です。

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実は『野性時代』4月号にも載ってました

3月号に続き、2ヶ月連続で入選。

夏井いつき・特選
火のような魚のようなチューリップ  石原ユキオ

1月のスイーツ句会にも来てくださったトートバッグ職人にして敏腕デザイナー中原ポール氏が長嶋有さんの選外佳作に入ってる。

ポールさん発案の #ロードサイド俳句 シリーズ、Twitterでもっと盛り上がるといいな。