プロローグ

プロローグ

腐女子の章

ピノキオに精通のある朧かな
柳絮舞ふ昼を低音ボーカロイド
図書室にポーズ集あり百千鳥
雄乳(おつぱい)を塗るにマゼンタ風薫る
柏餅じやうずに剥いたはうが攻め
雲丹の棘つまみ上げたる誘ひ受け
餌奪ひ合ふ琉金の雄と雄

事務員の章

あぃまぃにメエルを返し山笑ぅ(*´ω`*)
わたなべのなべがわからぬめかりどき
メーデーになんの予定もない予定 _(:3 」∠ )_
先々代社長像あり水を打つ!
冷房のよくきいている段ボール
ひさびさの定時退社や白日傘♪
ひややっこ社内恋愛とゎちがう。。。

家庭教師の章

燈下親し文章題が解けるまで
大西日さいころ切れば展開図
蜩(ひぐらし)やけんかの傷を見せてくれる
おとなりの猫にバッタをあげている
ダンゴムシ用筆箱のあるらしき
なまぬるき葡萄いただく時間かな
秋暑し声を合わせてCHA-LA HEAD-CHA-LA

ショップ店員の章

マネキンを回れ右
あらゆるかたちを四角くたたんであげる
顧客名簿の澄子は母
試着室につけまつげが生えてる
ロッカーの傘黴びてペイズリー柄
掃除のおばちゃんがくれた飴にがずっぱい
ノルマ届かずあのへんが天の川

S嬢の章

初夢の龍に首輪を与えたる
熊の子のおなかせなかの縫い目かな
   昭和三十六年一月二十八日、絵師伊藤晴雨没
晴雨忌や宿のかみそり剃りにくく
冬深し蝋の温度をたしかむる
ガーゴイル氷雨を吐きて笑うなり
ひとを吊るほそきちからや星冴ゆる

地廻り

地廻り

地廻り

俎板にある掌の涼しさよ
ネオン街に連れてこられて葛餅は
傘もらうためのパチンコ梅雨長し
桜桃の種のピンクが灰皿に
若楓まぶし胸倉つかまれて
夏山に茶箪笥ほどの穴を掘る
青葉木菟置いた荷物が持ち上がらぬ
すこしずつ逃げるみみずの抱き枕
川床に長く取り出す財布かな
明け易き法治国家に歯を磨く
逃げるように導くように浮いて来い
覇王樹に匕首をさす不眠かな
夕涼みこれは小銭を入れる箱
生命保険証書あたらし糸蜻蛉
秋高し車体にうつる他人の妻
銀漢は眼窩を満たすには足りぬ
泡風呂に乳暈すべる良夜かな
任侠やハンカチーフをよく濡らす
満月が助手席からは見えるのか
吾子の髪みじかき指をもて洗う

事務所っつったら組事務所に決まってんだろ

月刊俳句同人誌『里』2014年3月号

『里』2014年3月号に「『俳句と雑文 B』を(やくざ映画として)読む」という文章を寄稿しました。
ええっと、いくらなんでも(やくざ映画として)が大きすぎないかな……。

わたしは洋の東西を問わず悪漢の登場する映画が好きなのです(オーシャンズ11〜13、タランティーノ、北野武、仁義なき戦いシリーズ、香港や韓国のアクション映画etc…)。この嗜好にどストライクで飛び込んできたのが瀬戸正洋さんの『俳句と雑文 B』です。
瀬戸さんの俳句、やくざ映画目線で見るとほんと最高だよね! という話をして同意してくれたのが現時点で親しい友人一名だけなのですが、それは単にわたしに友人が少ないからという理由に尽きると思います。『里』を読んでくださった方はきっと「石原ァ! こんなもたまにはええこと言うのう!」「瀬戸さんナイス極道じゃ!」「正洋兄貴激シブじゃあ!」と盛り上がってくれるはず!

記事で紹介した俳句を一部抜粋します。

拳銃を撃つや春月落つこちさう 瀬戸正洋
草いきれ顔殴られてしまひけり
新涼のもぬけの殻の事務所かな

『里』3月号、『俳句と雑文 B』についてのお問い合わせ・ご注文は島田牙城さんまで。

2014/3/17追記
週刊俳句第360号(2014年3月16日更新)で瀬戸正洋さんの「軽薄考」について書きました。題して「トイレットペーパーの使い方」
余談ですが右上の舎弟が着ている襟なしシャツは鯉口(こいぐち)シャツと呼ばれるもので、お祭り用品店などで購入できるようです。ほしい……。

男同士の性愛を描いたらBL?

男同士の性愛を描いたものはBLである。

×か。

BLというものに対する考え方はいろいろあると思うが、腐女子を自認しているひとにアンケートを取ってみたら、八割方は×をつけるのではないだろうか。しかし○と考えるひとがいてもおかしくない。あるいは、いろんな可能性を考えて△をつける。

Wikipediaのボーイズラブの項にはこのように書いてある。

ボーイズラブ(和製英語)とは、日本における男性(少年)同士の同性愛を題材とした小説や漫画などのジャンルのこと。書き手も読み手も主として異性愛女性によって担われている。

つまり細かいことをバッサリ切り落として単純に言えば「女性向けに男性同士の性愛を描いたものがBL」ということになる。
男同士の性愛を描く創作物のジャンルはBLだけではない。
ゲイ当事者向けに描かれる漫画や小説もある。
書店では腐女子にも人気のゲイ作家の作品がBLの棚に並べられることもあるが(例:近所のジュンク堂では田亀源五郎作品がBLコーナーに陳列されている)実際に手に取って絵柄を見比べてみると、両者にはかなり違いがあると感じるはずである。
冒頭で×をつけたひとは「男同士の性愛を描いているからといってBLとは限らない」「男同士の性愛をゲイ当事者向けに描いたものはBLではない」という考えだろう。

BLとして提供されているもの以外をBLとして受容することもある。
いわゆる二次創作では、原作の「敵意」や「友情」を「愛」に読みかえていくような解釈がなされる。
また、個人の妄想の中でこれを行うこともある。
BLという言葉は商業BLから発生したものなので、多少の違和感はあるかもしれないが
「『進撃の巨人』はBLとしか思えない」
「学校で夏目漱石の『こころ』読んだんだけど…これなんてBL…(°言°;)」
というような言い方も成立する。
この考え方でいくと、男同士の性愛が描かれていなくてもわたしの妄想を刺激してくれるならBLと呼ぼう! ということになる。
BL的な匂いがすればわたしにとってBLだし、ゲイ当事者向けの創作物であってもBLとして楽しめるならわたしにとってはBLです。
そう。「わたしにとっては」を入れるならばなんでもBLになり得る。
男同士の性愛を描いたものはBLである。
うん、マル!
古典文学も鉛筆と消しゴムもゲイ漫画もわたしにとってはBL!

この○と考えるひとと×と考えるひとの違いは「ジャンル」を見るか「自分の萌えるツボ」を見るかの違いによる。
だから、「ジャンルとしてはBL漫画とゲイ漫画は違うけど、ジャンルをまたいで両方の雑誌に描く作家さんもいるし、ゲイ漫画の中にもBLとして萌える作品があるし…」などと考え始めると△をつけざるを得なくなってくる。

以上のようなことは、実際に書店に足を運んでBLを購入し(あるいは電子書籍を探し、購入し)読んでみれば感覚的にわかるはずなのだが、BLを読んだことがないひと(特に異性愛者・男性)の中には、短絡的に「男同士の性愛を描いたものはBLである」と考えるひとがいるように感じたので書きました。

ところで、「わたしにとってはBL」という目線が、いまツイッターで小さな盛り上がりを見せ始めた「BL俳句」を考える上で最も重要なことではないかと考えています。ですが、いまわたしは『ジェラールとジャック』を読み返すのに忙しいので、これについてはまたあらためて筆を執ろうと思います。

※Wikipediaの記載について補足
BLの書き手・読み手は飽くまで「主として」異性愛女性というだけで、実際にはバイセクシャル、レズビアン、異性愛者の男性、ゲイ男性、三次元での性愛に興味のないひと、自分の性指向がわからないひと……いろんなひとが存在する。
親しい友人にはバイセクシャルのBL読者がいる。わたしは現状として異性愛女性BL読者(ああ、わたしがマジョリティだなんて!)である。

くまねこ いちとにぶんのいち号

 
春のBL俳句まつり

セブンイレブン
プリント予約番号 05925346
A3 カラー 1枚 100円(白黒20円)
2014/03/05 23:59まで

サークルKサンクス・ローソン・ファミリーマート
ユーザー番号 F8JJBTQNE3
A3 カラー 1枚 100円(白黒20円)
2014/03/06 13時頃まで

俳句 なかやまなな @fukurofuaribai
妄想 石原ユキオ @yukioi

なかやまが俳句の同人誌『里』に発表した作品のなかから、石原がBL(ボーイズラブ)的な匂いのするものを選んで妄想しました。

職場や学校に掲示しやすいひろびろA3サイズです。コンパクトに持ち帰りたい方はB4で出力するのがおすすめです。A4でもギリギリ読めます。

★くまねこってなあに?
「くまねこ」は、なかやまなな&石原ユキオが発行するネットプリントペーパーです。

★ネットプリントってなあに?
コンビニのコピー機にお金を入れて番号を打ち込んだら文書が取り出せるサービスです。
セブンイレブンでの操作方法はこちら
その他のコンビニでの操作方法はこちら

くまねこ いちとにぶんのいち号

くまねこ いちとにぶんのいち号 春のBL俳句まつり

仄暗い池の底から

 
引用の誤りや不正確な記述が指摘されて「炎上マーケティングかよ!」と話題になった稲泉真紀氏の「俳句評 短歌の穴からのぞいてみれば・・・」、突っ込みたいところもいろいろあるが、おおいに同意できる点がある。

俳句の方へ目をむけた時、短歌の世界の住人である私には、俳句の新しい世代やスタイルの提案が見えにくいのか、情報が思うように手に入らないのだ。

俳句関係のサイトや出版物に、俳句に興味を持ちはじめた若者にとって役立つ内容、楽しめる内容が少ない、ということは7〜8年前から感じ続けている。いま何が熱いのか。句集を手に取って選べる場所はないか。俳人の○○さんと××さんの関係には萌えを禁じ得ないけどこんなこと考えてるのはひょっとして自分だけなのか……!? そういった情報に手軽にアクセスできるものは少ない。

(定年後に俳句をはじめる層に向けられたものや、ハウツーは多い)
(情報はあるのにサイトのデザインや装丁が渋すぎて気づかずスルーしちゃうことよくある)

俳句は、コツをつかめば上達がはやいから、初心者感覚はすぐ消え失せ、オンラインやオフラインの句会に参加してるうちに情報を共有できる仲間もすぐにでき、いつの間にか感性がベテランになっていくのかもしれない。
だから、初心者向けの情報の必要性が感じられなくなるんじゃないのかしら。

わたしは地方で孤立気味、しかも知能がおっとりしているので、初心者向け情報いまだにほしいし、深く詳しく論じた評論だけじゃなくて肩のこらない文章も読みたい。

『線と情事』の「SWEET HAIKU REPLAY」や『共有結晶』の「BL短歌クラスタに俳人能村登四郎をお薦めする3つの理由」は、俳句をはじめたばかりのひとにも楽しんでもらいたいと思って書きました。
届け、届け、と祈るような、呪うような気持ちで。

(炎上マーケティングに便乗して自分の載ってる本を宣伝する作戦)

ついでに、どうしても突っ込みたかったところを書いておきます。

・「時評」枠の記事のわりに論じる時間の幅がかなり広い。
・「若者」というときに、50歳未満を指しているような気配。(それは俳人の一般的な感覚である。短歌の穴から覗いているんだからそこは短歌ルールで書いてくれていい)
・この記事には直接関係ないけど、詩客ってかなり迷路だ。(週刊俳句は記事を遡りやすい)

吹きっさらしのプラットホーム

高橋千波『プラットホーム』

高橋千波(@_hushabye)さんの小さな歌集『プラットホーム』(2014.2.11発行)から好きな歌を。

そのひとを思い出すときホームではひときわ圧を増すあぶらぜみ  高橋千波

間違えてばかりの僕にぽたぽたと修正液の花びらが降る

かみころされたあくびたちふかふかとふりつもる百貨店のフロアに

一首目。油蝉の声が急に大きくなったように感じることを「圧を増す」と表現してる。そのひとは別れた恋人かもしれないし、亡くなった友人かもしれない。学生時代の部活のライバルかもしれない。山がすぐ側にある新神戸のホームを思い出す。
二首目。花びらの形と大きさ、わずかな厚み。修正液とそっくりっていう発見。
三首目。やなぎみわのエレベーターガールのシリーズみたい。

プラットホームはどこかへ行くために一時的に立つ場所。その心もとない感じ。
中綴じの冊子を手に取ったときの薄さやわらかさが、繊細な歌の佇まいによく合っている。

行間からフェロモン

 
榮猿丸さんの句集『点滅』からいい匂いがするような気がして、鼻を近づけていっしょうけんめい嗅いでみたのですが、気のせいでした。
 
こんばんは、石原です。
 
ちょっと前に掲載していただいたものの報告ですが、週刊俳句第351号(2014年1月12日)「それでも愛し愛されて生きるのさ 小津夜景「ほんのささやかな喪失を旅するディスクール」について」という文章が載ってます。
 
ロラン・バルトってよくわからないけど、天ぷらをレースにたとえたのはとても素敵なことだと思います。

『冬夕焼』のお菓子俳句について

『線と情事』第二号の「SWEET HAIKU REPLAY」では紹介できなかったのですが、金子敦さんの『冬夕焼』(2008年、ふらんす堂)はお菓子俳句的にかなり熱い句集です。

如月のざらめびつしりリーフパイ  金子敦

二月の寒さと乾燥がリーフパイのかさかさした感じとよく合っていて美味しそう。
(もし六月ならリーフパイは湿気でべちゃっとしてると思う。)

かき氷ひかりをこぼしつつ運ぶ  〃

運びながら崩れて落ちていくかき氷の粒を「ひかり」と言っています。
手元も濡れてきらきらして、運んでいるひとの汗も光ってます。
少女漫画っぽい。

飴を切る音の幽かに寒牡丹  〃

庭で寒牡丹を見ていると、どこからか、かすかに飴を切る音がする。柔らかい飴をバチンと鋏で切る音なのか、硬い飴を包丁で叩き切る音なのか。なんとなく前者の飴細工のような気がします。老舗の和菓子屋さんっぽい。冬のさびしい庭に一点だけ咲いた寒の牡丹と、口の中にほんのりと甘味を感じさせるような飴の音。抑制のきいた華やぎがかっこいいです。

行く春やロールケーキの緩き渦  〃

「SWEET HAIKU REPLAY」では相子智恵さんの「ロールケーキ切ればのの字やうららなる」(『新撰21』より)について書きました。
この二本のロールケーキを比較すると、パティスリー・アイコのロールケーキはスポンジにもクリームにも弾力が感じられるのに対し、パティスリー・カネコのロールケーキは生クリーム多めで全体的にとろけるような柔らかさが感じられます。
この印象がどこから来るかというと、「行く春」「緩き」の「ゆ」音から導かれる柔らかさ。そして、春の終わり頃であることから、気温が高め、よってクリームが溶けやすい、という連想だと思います。
(どちらもすごく美味しそうです。ううう。食べてみたい……)

水たまり跳び越えバレンタインデー  〃

これはすごくかわいらしい句。好きな人にチョコレートを渡したったぞ! 笑顔で受け取ってもらえたぞ! という喜びなのか、好きな人からチョコレートもらったぞ! という喜びなのか。それともこれから意気揚々と渡しに行こうとしているところなのか。冷たい冬の雨のあと、あるいは雪がとけたあとにできた「水たまり」が、幸せな未来を予感させます。

お菓子俳句とBL俳句

saint

『線と情事』第二号はお菓子特集。「SWEET HAIKU REPLAY」と題してお菓子俳句を紹介してます。『俳コレ』『新撰21』といったアンソロジーや個人句集、同人誌などから引用させていただいております。
前号に続いて、今回も挿絵自分で描いたよ♪

これ全部釈迦の鼻糞途方に暮れ  山口優夢(『新撰21』より)

にちなんで寝釈迦です。(意図したわけではありませんが、優夢さんにちょっと似てます)
同人誌専門店サッシのほか、中野のタコシェ、京都のYUY BOOKSなどの実店舗でもお求めいただけます。

* * * *

そして、BL短歌合同誌『共有結晶』vol.2

kyks

こちらはAmazonでの販売です。
「BL短歌クラスタに俳人能村登四郎をお薦めする3つの理由」という文章を書きました。
くどいようですが、これは「BL短歌」の本です。

\短歌のBL読みでつちかった技術を使えば俳句も萌えの宝庫だよ!/

と、涙ぐましいまでに俳句を売り込もうとしています。
そのうちどこかの俳句団体の方が感謝状をくださると思うので、スーツにアイロンかけて待ってます。