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お菓子俳句とBL俳句

saint

『線と情事』第二号はお菓子特集。「SWEET HAIKU REPLAY」と題してお菓子俳句を紹介してます。『俳コレ』『新撰21』といったアンソロジーや個人句集、同人誌などから引用させていただいております。
前号に続いて、今回も挿絵自分で描いたよ♪

これ全部釈迦の鼻糞途方に暮れ  山口優夢(『新撰21』より)

にちなんで寝釈迦です。(意図したわけではありませんが、優夢さんにちょっと似てます)
同人誌専門店サッシのほか、中野のタコシェ、京都のYUY BOOKSなどの実店舗でもお求めいただけます。

* * * *

そして、BL短歌合同誌『共有結晶』vol.2

kyks

こちらはAmazonでの販売です。
「BL短歌クラスタに俳人能村登四郎をお薦めする3つの理由」という文章を書きました。
くどいようですが、これは「BL短歌」の本です。

\短歌のBL読みでつちかった技術を使えば俳句も萌えの宝庫だよ!/

と、涙ぐましいまでに俳句を売り込もうとしています。
そのうちどこかの俳句団体の方が感謝状をくださると思うので、スーツにアイロンかけて待ってます。

BL-TANKA PRESENTATION

日時: 2014年1月12日(日) 18:00~21:45
入場料:2000円(軽食・ドリンク付き)
場所:
場所:文学カフェ&バー「リズール」 大阪市中央区南船場4-11-9コムズビルB1F 地下鉄心斎橋駅③出口より徒歩2分
http://www7b.biglobe.ne.jp/~liseur/contact.html#tenpo

トークショー&BL読みプレゼン。
わたしは「能村登四郎 僧侶に萌える」と題して此岸と彼岸のあわいで桜にさらわれそうになっている僧侶俳句を紹介します。

能村登四郎がエロすぎるんでみんなに読んでもらおうと思って

 
BL短歌誌『共有結晶』vol.2 に、
「BL短歌クラスタに俳人能村登四郎をお薦めする3つの理由」という評論を書きました。

としろうは本当にエロくてかわいいんですよ。
 

シヤワー浴ぶ若き火照りの身をもがき   能村登四郎
潮焼を撫しつ叩きつ男同志   〃
腕撫して炎帝の寵ほしいまま   〃

一句目、シャワー浴びるひとをなんでそんなに見つめてるんでしょう!
二句目、日焼けの肌をべたべた触り合っててたいへん仲が良さそうです!
三句目、受け感覚。帝に愛されるお稚児さんとしての我、みたいな!

どうだ。どうだ。うちのとしろうは最高だろう!(←うちのって言うな。)
こんな感じでとしろうの野郎っぽい句から耽美な句までいろいろ紹介してます。
ハァハァしすぎてちょっと頭おかしい感じの仕上がりになっていると自負しておりますのでぜひお手に取っておたしかめください。
 
11月4日(月・祝)
第十七回文学フリマ (ブース番号: ウ-37) と、J.GARDEN35(ブース番号: け12b)にて頒布開始です。
文フリのウェブカタログはこちら

ロココごころ

rokokogokoro

ロココごころ

BABY,THE STARS SHINE BRIGHT 初詣
初夢を執事に聞かせたく目覚む
仏蘭西刺繍の仔猫をそつと押し洗ひ
つまさきのほのあたたかくミシン踏む
蛍火で焦がしてしまふドロワーズ
炎昼の庭師をじつと見るあそび
尺蠖や夢見ざる日の夢日記
薔薇を噛んでも悪い子になれません
少年はにかむ毒瓶をかたはらに
民草にティッシュを配る西日かな
バルコンに出て民草に手を振らず
月のつく名前着信してをりぬ
天蓋や桃は産毛を許さるる
どんぐり降る絵本の外の王国に
頬骨にオペラグラスの冷たかり
奨学金返還できず草紅葉
かつら梳くマリー・アントワネットの忌
遠火事にして革命と無関係
暖房やあなたは紐の多い服
闇汁にブーケガルニを投げ入れな

 

かりかり日記

かりかり日記

かりかり日記

うららかや尻尾の先が焦げておる
のどもとをじたじたとおる蛙かな
夏めくや変なにおいのする首輪
六月の革靴かすかなる浮力
梅雨寒し角の毛羽立つ紙袋
夏の港みんな荷物を持っている
地蔵盆舗道の染みを嗅ぐことも
厭世や蘭鋳の瘤たわわなる
野に放れり秋七草に囲まれて

線と情事

ひとじゃらし

ひとじゃらし

ひとじゃらし

絶望の湯船に柚子と浮かびおり
重き布かぶせられたる聖夜かな
荒星の下にて耳をすり合わす
初明り我が似姿が皿の底
初空に真白き髭を張りにけり
元日や床にこぼるる花かつお
人間にはんぶん譲る嫁が君
双六の上は居心地よかりけり
初旅や首のまわりに何かある
三寒四温掻きむしってもよい柱
春遠し腹から糸が出ておりぬ
涅槃西風ペットボトルの林立す
啓蟄のゆっくり動くおやつかな
耐えがたき顔の痒さよ菜種梅雨
人間の大きな足や春炬燵
ひとの子を尻尾でじゃらす日永かな
倦怠やお内裏様の首を咬む
新しき瓦なめらか鳥雲に
三男や生命線に鰆の味
国境の外側にある燕の巣

ハイクラブまとめ

『里』2013年2月号から始まった佐藤文香選句欄「ハイクラブ」
佐藤文香氏の選を受けて誌上に掲載された俳句をまとめました。

2月号
まえばりをゆっくり剥がす夏の山
衣装ではないほうの麦わら帽子

3月号
冬深きところに魚の生殖器
薄氷に触れて匿名希望です
丸餅のたのしく黴びておりにけり
日脚伸ぶきつねうどんのいと甘く
北窓を座敷童が開けてしまう

4月号
父母の岐路にぜんまい繁茂せり
春めくって寒がることかピンクのシュシュ
かんたんな日本家屋や水温む
春の水はじく素材で自警団
スポーツは身体に悪しふきのとう
腕章を桜の下に見失う

5月号
春深しキリマンジャロを粉々に
このひとのどこにふれてもよい蒲公英
動脈のいそがしくなる桜かな
わたしたち長男長女かざぐるま
誰にでも吹かせてあげるしゃぼん玉

6月号
蝦蛄むいた指をかがせてくれませんか
籐寝椅子マリオは崖へ加速せり
脱いだシャツ脱がしたズボン夏布団
香水やこの身に棘を刺すように

7月号
ひきこもるための外出葱坊主
花は葉に建築鳶若干名募集
緑陰のほかは全体的に池
廃校に長々と注ぐビールかな
夏の星同心円状に痒し

8月号
明け易き北半球や正露丸
硝煙やトマト畑の乾いた土
秋暑し演歌のようなナポリタン
蟻の行列一匹一匹皆ゆるキャラ
正夢かしら坂道に水を打つ

9月号
靴脱げば小さなひとや乱歩の忌
乳色の陶枕に脈あるような
牛乳石鹼夏のおなかを撫でまわす
夜の秋ゆでてあふれてさぬきうどん

10月号
滝壺を見ている美しい脳波
秋時雨ト書きみたいに話すなよ
名月や下着を踏んで父祖に会う
揺れている草の中なる草雲雀

11月号
睦み合う無音の鳥や野外劇
方舟の柱を食みて羽蟻は
秋の夜の大きなクリスチャン・ラッセン
ハンガーが束ねて置いてある無月

12月号
行く秋のヒエログリフに鳥整列
蔦紅葉玄関灯がついてますよ
ゴーレムを土に還して暮の秋
彫像の指は秋めくおとがいに

1月号
空也忌のスポーツジムで跳ねまわる
鯨の穴を塞ぎにいくという妹
店舗兼住居の外階段に蕪
丸眼鏡まるく拭かれぬ冬日和

4月14日(日)文フリin大阪に行きます

第十六回文学フリマin大阪に参加します。

第十六回文学フリマin大阪: 2013年04月14日(日)11:00-16:00
堺市産業振興センター イベントホール/ブース: 【E‐42】NECOfan
目印は派手な格好をした(←推定。)甘茶茂氏です。

『線と情事』創刊号に憑依俳句「かりかり日記」を寄稿してます。

執筆陣:
石原ユキオ
木内絵美子
傷彦(ザ・キャプテンズ)
しまおまほ
島田虎之介
関根美有
橋本尚平
林岳彦
藤原大輔 (MU-STARS / M.S.G.)
甘茶茂

すごいメンバーの中に混ぜていただいて、緊張でおしりのあたりがそわそわ…
しかも、なんと、コミックナタリーで紹介していただいているではないですか。
自分の名前がナタリーに出ることがあるなんて…すごい…スクショ撮っとこう……!

『線と情事』創刊号のテーマは「猫」。
で、こんなポストカードを作ってみました。

憑依系ポストカード・猫鞄

心をこめて消しごむはんこを彫り彫り&ぺったんぺったん。
手作りのため、一点一点仕上がりが微妙に異なります。

憑依系ポストカード・猫雨

うらめしかわゆい高級にゃんこをイメージしました。
ノスタルジックなセピア色のインクで万人に愛される気満々☆

宛名面

宛名面は家庭用プリンターで印刷したので、濡れるとジワジワっと風合いが出ます。(晴れた日に使ってね!)

今回は、このポストカード二枚に、

三点セットどーん!

憑依系缶バッヂをおつけした三点セットでのご提供。
価格未定!

太田ユリのバニーガール姿が大好評の『guca紙』も持っていきます。
すでにお持ちの方、保存用に、ご贈答に、職場や学校のロッカーに置いておく用に、もう一冊いかがですか?

guca紙

君住む街角

花森こま個人誌「逸」のメンバーを中心とした俳句・短歌・川柳合同アンソロジーが完成しました。

俳句・短歌・川柳合同アンソロジー『君住む街角』

わたしも「ロココごころ」という連作で参加しています!

「ロココごころ」扉

「ロココごころ」本文

今回ももちろん憑依俳句です。
フリルたっぷりのブラウス、可憐に咲き乱れる薔薇、
モーツァルトのオペラ、執事に給仕されるティータイム……
そんなロココな世界を愛する女性に憑依してもらいました。

憑依儀式後に後遺症的なものが残ることがあるのですが、
「ロココごころ」を書いて以来、
スカートがふんわりとふくらんでいないとなんだか不安で、
古いチュールスカートと毛糸のパンツでボリュームを出しています。
ベランダに出るとおじぎがしたくなります。
パンがなくなるとむしょうにケーキが食べたくなります。
申し訳なさがつのると断頭台にかかろうかという気になります。

わたしに取り憑いたロココごころが、みなさまの御心に届きますように。
お値段は2,000リーヴル(税・送料込)です。

BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 初詣(石原ユキオ)

۵・ . ・۵・ . ・۵・ . ・۵・ . ・۵・ . ・۵・ . ・۵

<収録作品>
雷帝へ    五十嵐進
駅前天使    五十嵐秀彦
夜光時計    石原明
ロココごころ    石原ユキオ
常景    木戸葉三
私雨    小島ノブヨシ
服従の思春期    澤田澪
一度きり    杉山あけみ
パノプティコンの夜    武邑くしひ
41歳の夏休み    仲青
千鳥饅頭    楢崎進弘
雨降れば冬瓜に    楢崎進弘
老いらくの    渡辺隆夫
無音霊歌    花森こま

俳句・短歌・川柳合同アンソロジー
君住む街角

花森こま編
発行:平成二十五年三月四日
出版社:文學の森
判型:四六判並製・カバー装
ISBN978-4-86438-150-5

価格:2,000円(税・送料込)


お申し込みは、メールの件名を”『君住む街角』購入希望”として
花森こまさん hanamorikoma★hotmail.com(★を@に変えて)
までご連絡ください。
※石原のブログで見た!とお書き添えいただけると幸いです。

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『さよならバグ・チルドレン』のヒドさについて

こんばんは。ヒド歌評論家の石原ユキオです。作中主体(男性)が女性に対してヒドい言動をおこなう短歌のことを「ヒド歌」と呼び、蒐集・鑑賞することを無上の喜びとしております。

さて。山田航第一歌集『さよならバグ・チルドレン』の中にヒド歌はあるでしょうか。

やや距離をおいて笑へば「君」といふ二人称から青葉のかをり
てのひらをくすぐりながらぼくたちは渚辺といふ世界を歩む
翼なきふたりそれでも一対の薄き翼でありたし永遠(とは)に

青春ですね。「きみ」「ぼく」「ぼくたち」「ふたり」といった言葉で描かれる恋は、すこしぎこちないけれど、とてもやさしい雰囲気。残念ながらヒドくない。作中のふたりの幸せを願わずにはいられません。しかしここで引き下がってはヒド歌評論家としてのわたしの名が廃ります。どこかにヒドさを見つけなければ!

フランスパン輪切りしながらわかつてる君が誰よりがんばつてること

やっと見つけました。この歌はヒドいと言えるのではないでしょうか。「NIJNTJE(ナインチェ)」と題された八首の連作のうちのひとつです。

ナインチェ・プラウス 横顔は無く本当にかなしいときは後ろを向くの
ミッフィーが無敵を誇るにらめつこ大会けふも君の部屋にて

ナインチェ・プラウス(=ミッフィー)の大好きな彼女。感情を表に出すことの少ない人物であるように思えます。「にらめつこ大会」は楽しい遊びではなく、彼女と彼がどう言葉にしていいかわからない気持ちを抱えて黙り込んでいる状況でしょう。

すこし風に乱れた髪とリクルートスーツの君が抱く白うさぎ

彼女は就職活動中。「白うさぎ」と言われて思い浮かぶのは、ぬいぐるみではなく生きているうさぎ。疲れ果てて帰ってきた彼女はスーツに毛がつくのもおかまいなしに、癒しを求めるようにペットのうさぎを抱き上げる。そんな光景のすぐ後に置かれたのが、「フランスパン輪切りしながらわかつてる君が誰よりがんばつてること」です。
部屋の隅の小さなキッチンで二人ぶんのパンを切りながら、彼女が誰よりがんばってると信じる彼。けなげではあるけれど、彼女と対話することで生じる軋轢を避けているようにも見えます。この「誰より」というのがヒドい。「誰より」だなんて実際にはあり得ないし、なんの根拠もない。真に彼女の気持ちを慮っているなら出てくるはずのない言葉です。就職活動はストレスの溜まるもの。ミッフィーの口が開いたときに飛び出す言葉は、彼に対する罵詈雑言かもしれません。一見やさしい彼のようですが、自分が傷ついてまで彼女を癒す気はないのでしょう。よけいなお世話を承知で言いますが、きみたち、もっと話し合ったほうがいい。

君といふ小箱の内に満ちてゐる真水に嘘は溶けてゆくんだ

この歌もなかなかヒドい。「君」のついた嘘でしょうか。それとも「僕」のついた嘘でしょうか。どちらにしても、「君」のなかにある純粋なものが嘘によって汚されていくイメージ。嘘そのものにヒドさは感じません。ヒドいのは「真水」という決めつけです。水質検査でもしたのか。わたしの内に満ちている水なんか、仮に真水だったとしても、ミカヅキモとゾウリムシとアオミドロがびっしり詰まっててドロッドロです。少々の嘘くらい餌にしてしまいます。結局この作中主体は「君」をきれいなものとしてちょっと離れたところに置いておきたいのではないでしょうか。そんな関係で本当にいいのですか。ともに泥水を飲み合ってこその恋愛でありませんか。やっぱりきみたち、もっと話し合ったほうがいい。

噴水に腰かけ授乳してゐたる女はみづのつばさをまとふ

噴水からの連想がはたらいて哺乳瓶ではなく胸をはだけて授乳しているように読めます。場所は公園でしょう。重い乳児を抱えて座るには噴水の縁は不安定すぎるのでは。誰もベンチを譲らなかったのでしょうか。現実の道具立てを用いながら現実にはなかなか存在しない美しすぎる世界が描かれているような気がします。天使のように、あるいは聖母のように、過剰に美化された母性。女性をこんなふうに見ている男は子育てに参加しなさそうです。現実に目を向けるために、翼の正体を顕微鏡で観察してみるといい。きっとミカヅキモとゾウリムシとアオミドロがびっしり詰まってて……くどいですか。すみません。

こうして見ていくと、山田航短歌に登場する男のヒドさは、一見やさしそうに見えて対象との衝突が起きないように身をかわしている点と言えるでしょう。女性は美しい別の生き物、みたいな感覚。キュンとするようなきれいな世界が描かれていますが、恋人にはしたくないタイプの作中主体です。わたしにとっては。

あ、例外が一つありました。

揺すつたくらゐぢや起きないきみに捧げよう目覚めのための濃き一滴を

強制モーニングフェラからの口内発射。こういう遠慮のない男、嫌いじゃない。

初出『かばん』第29巻第9号(2012年12月1日発行)

◆

山田航氏のブログはこちら→トナカイ語研究日誌