ひとじゃらし

ひとじゃらし

ひとじゃらし

絶望の湯船に柚子と浮かびおり
重き布かぶせられたる聖夜かな
荒星の下にて耳をすり合わす
初明り我が似姿が皿の底
初空に真白き髭を張りにけり
元日や床にこぼるる花かつお
人間にはんぶん譲る嫁が君
双六の上は居心地よかりけり
初旅や首のまわりに何かある
三寒四温掻きむしってもよい柱
春遠し腹から糸が出ておりぬ
涅槃西風ペットボトルの林立す
啓蟄のゆっくり動くおやつかな
耐えがたき顔の痒さよ菜種梅雨
人間の大きな足や春炬燵
ひとの子を尻尾でじゃらす日永かな
倦怠やお内裏様の首を咬む
新しき瓦なめらか鳥雲に
三男や生命線に鰆の味
国境の外側にある燕の巣