2023/7/9(日)開催・文学フリマ札幌8にて頒布開始の『砂時計』第5号に寄稿しています。
「創作と表象」をテーマとした特集に「俳句に憧れる八歳の女の子のためにーー俳句におけるはたらく女性の表象について」という題で文章を書かせてもらいました。
わたしは女性として生まれ育ち(実感はさておき)いまも女性として生活しています。小説、映画、ポップスの歌詞や広告などにおける「女性」の描かれ方には違和感を覚えることが多く、俳句や俳句評論でも「女の扱いがひどすぎんか?」とたびたび感じてきました。今回の文章ではそういった違和感やむかつきをエネルギー源にしつつ、特に労働する女性の表象に焦点を絞り、次のような俳句を紹介しました。
酌婦来る灯取虫より汚きが 高浜虚子
→超有名句ですが読むたびに新鮮に腹立つ。
炭俵かつぐ乳房を縛されて 菖蒲あや
→菖蒲あやさんは小節のきいたブルースだよね。
母という脱げ易きもの夏木立 花森こま
→「母」の描き方として発表された当時(1995年)としては異色だと思う。
銀漢や女所帯の編集部 松本てふこ
→この句については神野紗希さんの『女の俳句』での評が納得できないぞ! ということを書きました。
薔薇ピンクイエローのり子美容室 岡田一実
→かわいい。めでたい。好き。
ちなみに「俳句に憧れる八歳の女の子のために」というフレーズは、『オーシャンズ8』という映画の「これは私のためでもあなたたち自身のためでもない/この世界のどこかで犯罪者を夢見る8歳の少女/彼女のためにやろう」という台詞に由来しています。
世の中を変えていくのは容易ではないけれど、みんなで壁を少しずつ殴ったり削ったりして小さな罅を入れていけば、いつかはぶっ壊せるに違いないのです。わたしの文章は、先人の作った罅のそばを狙って打った小さな小さなハンマーの一撃にすぎないけれど、それでもきっとつぎの誰かの戦いの一助になるだろうと信じて書きました。(激重!)
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