日記」カテゴリーアーカイブ

おしらせ

石原ユキオ商店をご愛読くださっている皆様、いつもありがとうございます。

当ブログは、現在、
運営会社のサーバー的なアレの関係でアレしているため(※)
リンク切れや画像の表示されない部分があります。

説明を受けましたが難しくてよくわかりませんでした。

いましばらくお待ちいただきますと、
部分的には正常な表示に戻り、
部分的にはわたくしの黒歴史的なアレで記事が消失し、
おおむねなんとなくちゃんと表示されるようになるのではないかと思います。

気長に生温くご覧ください。

石原ユキオ敬白

思想犯のコテージ

ぼんやりとしたつるんとしたぬぼっとした顔の若い男と添い寝している。
わたしは本来こんな安っぽい髪の染め方をした男は好まない。
量産型セクサロイドを竹夫人がわりに使っているのだ。
量産型セクサロイドには90年代田舎ヤンキーのようなデザインが多い。
夏なので庭にベッドを置いており、夜空が見える。
偵察用アンドロイドやアダムスキー型の飛行物体などが、とても静かに動いている。
脇腹をつついて腕枕の空気圧を調整する。

修学旅行

半面は芯がほぼ露出した状態、もう半面は普通、ひらさか氏はいつも鉛筆をそのような特殊な削り方に整えている。
ゆっくり、ゆっくり、一画ずつていねいに書く。
氏名を記し、捺印する。
そうやって渡航証明が完成する。
鉛筆で書くのは水に濡れたときにインクがにじんで判読できなくなるのを防ぐためだそうだ。
宙港について出発までは時間があったけれど、自分の向かうべき搭乗口がよくわからない。
出発のほんの数分前、アナウンスにより11番(9番)へ向かわなければならないことがわかり、走る。
手続きは締め切ったあとだったけれど、ドアはまだ開いたままで出発セレモニーが行われている。
セレモニーの終わり際、挨拶を終えたVIPの真横に飛び込んだら、誰にも止められることなく乗ることができた。
宇宙旅行は海外旅行扱いにならないぶん甘い面もあるのだ。

浸透圧を利用して謝罪を促す

にんげんのかたちを限界まで大きくしたような背の高い男。長く患った末に吹き抜けになった中庭めがけ身を投げて死ぬ。男の身体は石膏彫刻のように砕け散りはじめからその場所に置かれていた現代的なオブジェとしか見えなかった。
 
駅や空港を思わせる広い廊下に作業服の男女が行き来しておりここは工場であるらしい。
 
アンモナイトの化石を螺旋階段として使っている。

対位法

成績優秀なわたしは飛び級で外国の音楽学校に入学した。
学ぶのは、たとえば楽譜のおたまじゃくしをめだかに置き換える試み。
言っていることの半分も理解できないけれど、ほかの学生だって似たようなものだろう。
年上の同級生たちは、毎晩パーティやデートで忙しい。
故郷から送られてきた荷物を開けると、伝統的な赤い下着(首の後ろで紐を結ぶタイプのもの)、鬱金色のドレス、ラメ入りの靴。
大学生には必要だと両親は考えた。
しかし必要だろうか。
お酒が飲める年齢まであと何年もあるのに。
寮の薄い壁越しに、隣の部屋の二回生が男と睦み合う音が聞こえてくる。
壁に頭を付けて、教科書を開く。
みっしりと敷き詰められたローマン体の活字が小刻みに震える。

Papa, hold me.

30代後半の女性が20代の夫との間に娘を授かり
産後すぐに亡くなり
若く美しい夫を愛するあまり
その魂は娘に憑依して
表面上は夫のことを「お父さん」と呼んでいるけれど
中身はおとなだからものすごいおませさんで
拗ねたりもするけど概ねききわけがよく
70〜80年代あたりのSFにほとんどマニアックなほど詳しい
という話として
榛野なな恵の『Papa told me 〜私の好きな惑星〜
を読んだので
知世ちゃんはときどき
お父さんの飲み物に睡眠薬を仕込んで
お父さんの身体にいたずらとかしてるんじゃないかと
むしろわたしがしたいと
思いました
 
 

あのルドンを貼っておきます。

この本の、

109ページにある、

60棒109ページ

この部分。
わたしがツイートしたコラージュ画像を見て関さんが詠んだ俳句が載ってます。

元になったコラージュは、これ↓

さぬきルドン

さぬきルドン。
元の画像を知らないひとが気になってるかもしれないので。
後世の研究のために保存しとくとよいよ!

実は60棒にはツイートを元にした俳句が他にもいろいろ載ってる。
詞書(ことばがき)として、元になるツイートが添えられて。

《ぼくは一年前から機会あるごとに言い続けてきたんだが、意外と知られていないんだな。Twitter=神への長い道説。》東浩紀氏のツイート
超未来の言語の《我》や囀れる

ツイートという言葉そのものも、何度か登場する。

世界中とtweet僭主追放成る

※”tweet”に”さへづり”とルビ

(ああ、そうか。句集とは、俳句をトゥギャったものなのだ。)

ざぼん漬がない

旅館の売店にざぼん漬がないなんてまったく来た甲斐がなかった。
フェリーで帰ろうとするのだけど、切符を買うのが間に合わなかった。
このあたりの若い女性は、ヘルメットとプロテクターをきちんとつけて、インラインスケート状の靴で通勤するという。
スケートボードよりこまわりが利くし、いいかもしれない。
高架下がきれいに整備されている。

ふさいでいても伸びる爪は

 
山の上を歩いている。
谷という谷から花火が上がっている。
上にも下にも花火が見えるから平衡感覚がおかしい。
おまけに浴衣に下駄だから歩きにくい。
めまいにおそわれて倒れ込むと、
死者がおおいかぶさってきてぬるりと手が入った。
唇が動く。
 
「お・か・め・い・ん・こ」
 
おかめいんこではない。
わたしの卵巣だ。
 
 

伝統野菜

温泉にはすべりだいをすべって入る。
タオル専用レーンと水着専用レーンが分かれており、水着の上にタオルを巻いたわたしはどちらでも利用できるが、行き着く先の温泉はひとつ。
傾斜をすべって勢いよく湯に浸かり、スイムキャップをかぶっていなかったことに気づく。
 
洗濯してしまったので服がない。
チアのユニフォームを着る。
ユニフォームは赤系だが、ソックスは黄色系しかない。
しかしこれはこれで悪くない。
 
刈田に見覚えのあるこどもが遊んでいる。
小学校低学年の男の子。
先日わたしは彼の兄が顔白菜を植えるのを見た。
やがて彼は幼い頃の兄の顔にそっくりの、自分の顔にそっくりの、ふくふくとした顔白菜を収穫することになるだろう。