年下の夫に穿かす白タイツ

 高校の制服を着るなら必ずどこか一カ所はEAST BOYを入れたいし、EAST BOYのセーターを着るとなったら、ルーズソックスは絶対に外せない。いまどきの女子高生はルーズソックスなんか履かないんじゃ? って言う人。ルーソの女子高生全然います。残念ながら数は減ってるけど。疑問系にねじ上げる語尾が販売員と販売員の真似をする芸人の間に生きのこっている程度には健在ですって言えば感じつかめる?

 私が本物の女子高生だった頃から、校長先生は「東京ではもうルーズソックスのブームは終わっています」というデマを吹聴していた。そりゃあ先生の行った観光地では見かけなかっただろう。雷門の風神雷神がルーズソックスを履いてるって話はあまり聞かない。つか二十年前の卒業写真と同じ背広を着続けているおっさんに流行の何がわかんの。変わったのはカツラの毛の量だけ(注:先輩の先輩曰く三年前急激に増えた)じゃねえか。それより何より流行遅れだからやめろって理屈は教育者としていかがなものかと生徒たちは普通に思ってました。こっちの論理に合わせたつもりかもしれないけど、それならおっさんの論理に擦り寄ってわかりやすくお返事して差し上げよっか。あたしらは流行に流されない確固たる我を持ってるんです。だから東京で終わったルーズだからって簡単に捨てたりはできないのです、と。実際にはその当時、流行はまだ終わってなかった。下火になったと言えば下火になったのかもしれないが、定着と言ったほうがより適切だろう。紺のハイソが主流になったのは、私の高校卒業後の話である。

「実録!なでしこ学園ルーズソックス闘争」という小説を書いたことがある。原稿用紙換算で五十枚程の短編だ。ルーズソックスを禁止された女子高生たちが学園紛争を経験した女性(パン屋のおばちゃん)と出会って高校をバリケード封鎖し、教師たちに様々な要求を突きつける、というもの。未発表。教科書類と一緒に土蔵にぶち込んだんだったか。結末が、どうしても思い出せない。

阿部サダヲ -1-

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