ほっぺたのにきびをつぶす初鏡


 十二月三十一日。プレミアムビールの推奨販売(いわゆるマネキンさん)のバイトを終えた後、倉敷のライブハウスへ向かった。
 幼馴染みにベース弾きの彼氏ができたというので、さーてお手並み拝見という多少意地の悪いノリで聴きに行ったのである。
 彼氏さんは上手だったような気もするし、リズム感が悪かったような気もする。とりあえず人口密度の高さと音のデカさは格別で、空きっ腹にZIMAを叩き込んで、機嫌良く頭を振った。
 ライブハウスを出て、電車に乗って、岡山駅で降りて、桃太郎大通りを歩いたのだったか。路面電車の線路に沿って進み、コンビニでスパークリングワインを一本買った。どこかで除夜の鐘が響いている、と思ったのは気のせいで轟音の後遺症かもしれなかった。県庁から妙にクリアに流れてきた「蛍の光」で、年が変わったことを知った。
 アルコールの作用で、頬が熱い。夜風を額に心地よく受けて、そのまま京橋まで歩く。
阿部サダヲ -4-

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