週刊俳句 [1]8月26日号に掲載されている津田このみ氏の作品、「空蝉」 [2]について感想を書きました。当初は「週俳8月の俳句を読む」というコーナーの為に用意していたのですが、長くなりすぎたのでこっちに掲載。
地球暦平成19年7月某日(土)
この惑星の住人は夏と呼ばれる季節になると活発に発情する。花火大会の調査中、ギャルオという種族に属する一匹のオスがわたしに求愛行動を示した。身長178ネリリ。体重54キルル。心拍数123。「どこから来たの?」という問いに対し、咄嗟にギャル男の脳内にあった地名をスキャンし、答える。「ナガノケンマツモトシから来ました」移動式の店舗でギャルオの購入した氷菓を摂取する。
ギャルオと後日改めて会う約束を取りつける。通信端末のアドレスが古いと言われる。予想外だ。備品部に注意を促したい。
地球暦平成19年7月某日(水)
ギャルオの操縦する平面的な車両に乗り、ギャルオの住居へ行く。
この惑星の蝉は木の幹や枝、建物の外壁、鉄条網などに抜け殻を残す。この惑星の小学生は蝉の抜け殻を収集する。ギャルオの住居に来たオイッコという小学生に凡そ0.8ピロキルルの抜け殻を譲与された。オイッコはギャルオにシュクダイを手伝わせに来たようだ。シュクダイとは小学生による調査報告書の通称である。
地球暦平成19年8月某日(日)
この惑星の宿泊施設は楽しい。
ギャルオの身体には紫外線の影響による皮膚の剥落が見られる。資料に基づき、ギャルオの背面に擦過傷を残す。「痛えよ」と言われる。嬉しそうに言われる。
ギャルオの操縦する車両で娯楽施設へ移動し、大型のカメラで写真撮影する。撮影した写真はステッカーになる。ギャルオは自分の端末機にステッカーを貼り、私にも同様の行動をするように言った。
地球暦平成19年8月某日(金)
この惑星の夏と呼ばれる季節が終わろうとしている。ギャルオと端末機を用いて長く会話する。わたしのようなメスをこの惑星では「フシギチャン」と言うらしい。下等生物に不思議と言われても不思議はない。
地球時間午後九時、ギャルという種族に属する一匹のメスが訪ねてくる。頭部を殴打される。この惑星のギャルは好戦的だ。
地球暦平成19年9月某日(土)
ギャルに殴打されたときの傷が治癒しないため、ギャルオとのデートを断る。ギャルの手に付着していた発光性粉末及び香料が合成皮膚の治癒を妨げているらしい。薬局で同様の粉末塗料を購入する。帰還後詳しく分析の事。
地球暦平成19年9月某日(水)
ギャルオは「コスモスが咲いている」と言って河川敷に車両を停めた。コスモスはこの惑星の河川敷に多く見られる植物だ。
「コスモスのハナコトバは少女の純真なんだよ」ギャルオが言う。ハナコトバについては詳細不明。
「わたし本当は宇宙人なんです」と言ってみる。また「フシギチャン」と呼ばれる。この惑星の秋と呼ばれる季節、住人たちは皆感傷的になると資料に。「ずっと一緒にいようよ」と言われる。資料に基づき「うん。ずっと一緒だよ」と答え、互いの右手小指を絡めた。
地球暦平成19年9月某日(木)
本部より、調査を終了せよとの指示。
合成皮膚を粉砕処分。接触した住人たちの脳から記憶を消去。
地球時間午後八時、出発予定。
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