正直でありなさいとサーシャは言った


地面に埋めた種が細く頼りない芽で空を指しやがて太い幹と立派な葉を持ち小さな実を結ぶ一本の木となる時間を逆回しにする手法で一枚の女をハンガーから外してください
 
  ◆
 
彼女は正確な英語で答えた。
「わたしは尼僧になりたいのです」
机の中で震える塊があった。
サーシャではない教師が掃除用具入れの前から歩いてきてそれを取り出した。
「ミズ・フリーゲル、これがわたしの濁世です」
 
 
  ◆
 
 
自分をいためつけることで男を傷つけるのが何よりの快感です
恋愛初期の醍醐味はここにあります
殴られてくれと言えば殴られてくれる男を殴ることなど楽しくもなんともありません
あなたを幸せにしたい
へらへらと踏み台をのぼる
夏の天井は蚊取り線香のにおいがする
へいきで脇腹を肘掛けにするくせに
そこにジッパーが付いていたら文句を言う 男たち
 
 
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「ヴィータ」
「たぬき村通信」
「なでしこ学園ルーズソックス闘争」
「pppp」
「五月の忙しい蝙蝠」
「あわだて忌」
「革命戦士と女流画家その夫と愛人」
「脱毛ブルース」
「ウロボロス高校第三演劇部」
 
 
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サーシャの赤い髪。赤い髪の女は頑固かもしれない、私がそうであるように。サーシャは言う。あなたたちには絶望が足りない。経験を通して見極めなさい。排除に次ぐ排除に次ぐ排除。いつも教壇にペットボトルを置いている。アルプスの水。冷水機の水。あなたたちの校長先生は私個人を必要としているのではない、赤い髪に緑色の目、私の言語、ここに存在する完璧な。おや、もう時間だ。石原さん、あなたの質問への回答はワークブックの33ページと34ページの間に挟んでおきました。また来週。
 
 
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霊長類専門食肉加工業者
 
 
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初代学長のまるい額に
百合の蕊で描く聖痕
 
 
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現実覗くにも手鏡の要る身の上を十重に二十重に折り畳んだ
赤の緑の黄色の青の紫のセロファンで包んだ
窓という窓
窓とよばれない窓
女優のサングラスが途中で引き裂かれている映画のチラシ
喜劇に倦んで
揺れる画を抄訳する
 
 
  ◆
 
 
さっさと帰ってください
 
未完です

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