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しづく美し樹の名つけられ女たち 大木あまり「シリーズ俳句世界」第1号
樹の名さん。
初めてあなたを知ったときに一瞬考えました。
樹の名の女性なんているだろうか、と。
すぐに思いついたのは、桜。
ほう、たしかにいる。さくらさん。それから梅。小梅ちゃん。桃。椿。杏。外国語でもジャスミンとかローザとか。
わたしはそれらの名前を花に由来するものと認識していた。桃や杏に関しては、果実の名前、と。けれど樹に咲く花であり樹に実る果実なのだから、樹の名前とも言えるのだ。花の名ではなく樹の名と言われたとき、可憐な花や瑞々しい果実のイメージに硬質でタフな樹木のイメージが重なり新たな一面が見える。それは新鮮な驚きだった。
1992年にセルジュ・ルタンスによって「フェミニテ デュ ボワ(=木の女性性)」が発表されたときも人々は驚いたことだろう。
香水産業が始まって男性用・女性用の香水が製造されるようになって以来、ウッディノートは男性のものとされていたそうだから。
わたしが試したのはとろんとした曲線が美しい初代ではなく現在簡単に入手可能な四角いボトル(当然いくつかの材料が見直されて香りも少し変わっている)から更に小分けされたもの。当時の人々の驚きを香りから感じることは不可能だけど、わたしが樹の名さんと出会ったときの驚きに近いのかもしれないな、と思う。
ジンジャーの瑞々しさとシナモンが華やかに香る。それから徐々に濃厚さを増すプラムの香り。この梅感、優雅な小梅ちゃん(飴)と言えるかもしれない。『リリカル・アンドロイド』さんの回に登場したプラムジャポネにも結構近い。フローラルでスパイシー。わたしの場合香料の知識が少ないせいなのか、本来主役であるはずのシダーウッドやサンダルウッドの香りは残念ながらよくわからなかった。仮説として、自分はもうフェニニテデュボワ以降の、ウッディ成分多めかつフェミニンな香水に慣れすぎて特別感がわからないのかもな、と思ったりしました。昔の香水っていまよりももっと花花してたのかなー……。
女性性ってなんだよって話はひとまず置いといて。 – フェミニテ デュ ボワ [木のフェミニティ] EDP –
Feminite du bois
ブランド:SERGE LUTENS
トップノート:ヴァージニアシダー、プラム、シナモン、ピーチ
ミドルノート:クローブ、ジンジャー、イランイラン、ヴァイオレット、ローズ、アフリカンオレンジフラワー
ベースノート:サンダルウッド、ベンゾイン、ムスク、ヴァニラ
注:トップノート・ミドルノート・ベースノートに関してはfragranticaを参考にしています。
【参考文献】『香水のゴールデンルール』新間美也