A「僕は男性とも経験があるんですけど、BL俳句には実際の経験活かせますよね。
珍しいんじゃないですか、バイでBL俳句書いてる人って」
B「男子校出身なので、男子校時代のこと思い出しながらBL俳句作りました!」
どちらも男性から言われた言葉です。
その場は笑って流したような気がしますが、かなり違和感を覚えたのでずっと心にひっかかってます。
君たちがBL俳句クラスタのことを気にかけてくれるのは嬉しいんだけど、うーん……たまには思ったことを言ってみるね。
Aさんへ。
経験、活かせばいいと思います。ただ、俳句のような小さな器では何をどう書いたって経験の有無はほとんど読み取れなくなると思います。百句二百句集めるなら効いてくるかもしれませんね。
バイでBL俳句書いてる人が珍しいかどうかはわかりません。参加者にいちいちセクシャリティを聞くことはないからです。ただ、バイだということを公言したとしてもBL句会でちやほやされることはまずあり得ないのではないでしょうか。ご存知かもしれませんが、腐女子界隈には作者自身の経験と作品を繋げて考えるのを忌避する傾向があります。
(話は逸れますが、この文化が一般に広まれば、歌会セクハラ問題なども改善していくのになーと思います)
もし、バイであることをギミックのように使いたいなら、わたしのやってるBL句会のような場所では十分な効力を発揮しません。芸能活動に近いことをしたほうがよさそう。
Bさんへ。
そうですかそうですか。いいんじゃないでしょうか。わたしは女子校で過ごした10年間のことを思い出しながらBL俳句を作ることありますよ。
「放課後の教室でキスしてるカップルを見た」というような話は男子校・女子校出身者からよく聞きます。その話自体は「かわいいなあ。いい話だなぁ」と思えるのです。ただ、そういった実際に見た情景を元に俳句を作ったからといって、見てきたままの三次元的リアリティが読者に伝わるとは限りません。ましてや、読者の胸を二次元的に濃縮した上質の萌えで煮えたぎらせようと思ったなら、実際に見たかどうかよりもそれを如何に書くかが問題になってきます。BL漫画・小説の作者はほとんどが女性だということを思い出していただきたい。
男子校出身だということは、たぶん、BL俳句的には思ったほどプラスにはなりません。Aさんのケースと同じく、何百句も集めてみたらまた違ってくるのかも。
そもそも一般的な俳句の話としても、作者は見たままを写生したつもりでも読者にはさっぱり伝わらなかった、ということはありますよね。
わたしの目には、AさんもBさんも、あたかも自分が「BL当事者」であるかのように勘違いしているみたいに見えました。「BL当事者」であることによって人気者になったり、自分の作品がよりよく読まれると思っているみたい。
そして、失礼ながらBLに対する思い入れはほとんどなさそう。
実在の男性がBLのモデルになることはあり得ても、男性であることを理由にBLの当事者のように振舞われると「いや、あなたのことじゃないんですが……」という気持ちになります。
BLの当事者はBL作品の中にしか存在しない。
あるいは、性別や性指向は関係なく、壁として天井としてベッドとしてときには登場人物に同化して作品世界に没入するBL読者が当事者です。っていうか、
まずはBLを読もうよ!
わたしがBL俳句作ってほしいな、BL句会に来てほしいな、と思うのは、性別関係なくBL(商業BLも二次創作も!)が好きなひと、BLに興味があるというひとです。
「こういうのって腐女子にウケるんじゃないかな?」というスタンスよりも「(あたしは/おれは)こういうのに萌えるんだよ!」っていうスタンスがはっきりしてるほうが楽しいと思います。
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(ところで、わたしがこういうことを書いたからといって、BLを愛する男性がBL句会に参加しにくくなると不本意なので、どうか萎縮しないでいただきたい。単に、そのひとが自分の経験をもとにBL俳句を作ったからといって読者には何ら関係のないことです、というだけです。それってすごく自由で気楽なことじゃない?)