出演・掲載」カテゴリーアーカイブ

活動記録(2020年)

●『野性俳壇』2020年2月号にて佳作(長嶋有選)
枯蔓をひいておわりのなき世かな

●『野性俳壇』2020年3月号にて佳作(夏井いつき選)
猫柳スパイ暮らしは辛かろう

●『野性俳壇』2020年6月号にて特選(夏井いつき選)
子燕にちかづいてゆくガンマイク

●『野性俳壇』2020年8月号にて佳作(長嶋有選)
カルキくさいゆびからもらうフエラムネ

「週刊俳句」(2020年8月9日)に太田うさぎ「息災」評を寄稿

長嶋有『俳句は入門できる』(朝日新書)に一句掲載
メフテルは寝起きによろし夏の雲

〈その他のトピックス〉
◎BL句会で提案した「萌え選」システムが歌誌『かばん』の歌会にて採用 →2020年6月号「短歌とBL」
◎短歌ムック『ねむらない樹』Vol.5に谷じゃこさんがコラム「石原ユキオになりたい」を寄稿

#俳句生活安全缶バッジ メディア掲載情報

『俳句四季』2021年10月号
「忙中閑談」のコーナーで、野口る理さんの「ただ俳句だけ作っていたかったけれど」と題した随筆にてご紹介いただきました。

俳句雑誌『雪華』2021年10月号
鈴木牛後さんの「余音(よいん)−雪華集を読む(八月号より)−」で「わたしは作中人物じゃないですよ?」バッジをご紹介いただきました。

東京新聞2021年10月16日夕刊
外山一機さんの「俳句のまなざし」でご紹介いただきました。

▼『丘ふみ游俳倶楽部終刊記念句集』
中山奈々さんに「缶バッジ」という随筆でご紹介いただきました。

短歌雑誌『心の花』2021年11月号
佐藤博之さんの時評にてご紹介いただきました。


Sisterlee寄稿の件と情報提供のお願い


インターネットとフェミニズムに関するウェブマガジンSisterlee俳句生活安全缶バッジに関する記事を寄稿しました。どういった経緯で缶バッジを作ったのかわかりやすくまとめていますのでまだの方はぜひご一読くださいね。

俳句コミュニティにフェミニズムの視点を。私が「俳句生活安全缶バッジ」を作った訳

ツイッターではいろんな反響がありました。
好意的な意見もありますし、ハラスメント防止は大事だけど缶バッジの文言自体には抵抗を感じる、という立場の人もいる(うん、めっちゃわかるよ)。わたしの記事から考え始めたのにいつの間にか藁人形を叩いているひともいる。

ただ、わたしがどこか期待していた反応が返ってきていないなと思いまして。

「うちの句会(歌会)だってハラスメント防止の取り組みをしています! なんで子連れ句会だけ取り上げるんだ! そうやっておともだち同士で誉め合ってろこのあんぽんたんがーーーーーッ!」

という怒られが発生してほしいと思っていたのです。
そしたらさ、

「もっと! そこを!! アッピール!!! してください!!!! 大事なことなんだから!!!!!」

って言えるじゃないですか。
ハラスメント防止の取り組みって「ハラスメント防止の取り組みをしています」と大々的に言うことが大事だと思います。それだけでハラスメント予防になる(なんでもかんでもハラスメント扱いしやがってけしからん! なんていう歪んだ考え方のひとが向こうから避けてくれる)し、参加を検討しているひとの安心感につながる。わたしからも安心しておすすめすることができる。

ところがどっこい!
いまだに「うちだってやってます! ぷんぷん!」系のリプライが来ないんですよね!
敢えて言うならsororiさんが「現代俳句協会インターネット句会 利用規約」でハラスメント防止を掲げていることを教えてくれましたが、その一件のみなんです……。

うそだろ……ほんとはみんな宣言とか規約とか書いて持ってるけどあんまり周りに知られてないだけなんだろ。だって句会歌会結社協会連盟…って日本中にいっぱいあるもん。もっとあるでしょ。ガンガン来てくれ。外に向けて大声で言ってくれ。

ということで、
「句会のサイトにこんな規約を掲げています」「結社誌にハラスメント撲滅宣言が載ってます」「実は相談窓口があります」といった情報をお待ちしています。可能ならURLや画像など、具体的に確認できるものを添えてほしいです。口頭での案内をしている場合にはメモとかでも。自分の参加している会以外の情報もぜひお寄せください。
連絡先:Twitter @yukioi

Sisterleeをきっかけにプチバズった勢いに乗じてよい取り組みを紹介したいです。
誉めるぞ。誉めたい。誉めさせてくれ。

現俳協のインターネット句会の利用規約にしても、作るの、すごく大変だったと思うよ。飽くまでハラスメントや法的な問題についての素人のわたしが見てだけど、よく考えてくれてると感じる。

「性的な関心を引く行為(作品及び選評を含む。但し、文学上のエロスはその限りでない)をしてはならない」

これは「性的な関心」「文学上のエロス」の定義で揺れるかもしれないけど、必要な曖昧さだと思う。性的な句をすべて禁止するなら姫始めの句も消えるものなあ……。

「ジェンダーを強く意識させるコンテキストで、個人や作品を誉めたたえたり貶したりする行為をしてはならない」

ここはつまり女性的なハンドルネームを持つひとが「そんな男性的な句ではなく、女性にしか作れないような句を作ったらどうですか」「女性らしい柔らかな作風ですてきですね」などと言われなくて済むということだ。すばらしい。これ、いい視点だからいろんな句会で導入してほしい。

ということで、まだわたしの目に入っていないすばらしい取り組みをどんどん教えてください。造った仏に魂を注入しようじゃないか!

【関連動画】(2021.11.30追記)

【文學界8月号】川野芽生さんの文章に登場してるよ!

文學界8月号「ファッションと文学」という特集で、歌人の川野芽生さんのエッセイに俳句を引用していただいてます。
めっちゃ嬉しい。夢かな!?
お手元にココシャネルが表紙の文學界がある方は106ページを開いてご確認をお願いします!

『文學界』2021年8月号

『文學界』2021年8月号です。プイプイ!

「この言葉をあなたが読まないとしても」と題してファッションがモチーフとなっている短歌を紹介されているのですが、一緒に引用されているメンバーを紹介すると、田丸まひるさん! 野口あや子さん! 平岡直子さん! ここに入れてもらっていいのか石原の俳句! このメンバーでバンドを結成するとかじゃなくてよかったと思う。プレッシャー半端ないですよ。このメンツに加わるのは。全身に血豆ができるまでタンバリンを練習しなければいけなくなるところだった……。

閑話休題。
かわいい服が好きだからかわいい服を着ているだけなのに、恋愛対象として見られたがっているように誤解されて苦しんだ大学時代の川野さん。セクシュアルハラスメントを行ってきた相手が卒業してようやくファッションやメイクを楽しめるようになったそう。そして昨年ついにロリィタ服を着るようになったという話からの流れで、田丸まひるさんの

わたしにはわたしを生きる意味がある BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 田丸まひる『未来』2020年9月号

に続いて

BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 初詣 石原ユキオ

を引いていただいたのですが、一足早く文學界8月号を手に入れた友人からの「ユキオさんの俳句でファッションが登場するものといえば!」というヒントからこれ一句かと思っていたらこの句を含む「ロココごごろ」という連作から何句も紹介していただいており、正直自分の俳句がここまで丁寧に読み込んでもらえるということがまったくの予想外で、わたしに憑依したひともどこかでびっくりしていると思います(憑依現象については過去の記事をご覧ください)。コミカルな部分を指摘されがちだったけど、その裏にある抑圧まできちんと読み取ってもらえるとは。すごい。

「この言葉をあなたが読まないとしても」川野芽生

「この言葉をあなたが読まないとしても」川野芽生

ものを書いていると、というか生きてると、こういうことがあるんですね……。
引用されてる他の方の短歌もすごくいいし、

わたしはうつくしいものが好きであり、そのうつくしさは世界に自分を贄として捧げるためではなく、世界に背を向けるためにある、という宣言を、旗印のように掲げることができる。

とか痺れるフレーズに満ちているのでぜひ読んでください。

ところで、

わたしにはわたしを生きる意味がある BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 田丸まひる

BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 初詣 石原ユキオ

BABY, THE STARS SHINE BRIGHT 臣下みな解き放ちたる姫としてゐる 川野芽生

と、少なくとも現時点で3回も短歌や俳句になってるBABY, THE STARS SHINE BRIGHTすごいな!(コムデギャルソンで3つ即座に思いつく? なくない!?)

香水なんて季語は滅べ! | 俳句さんに似合う香水を見つけてあげる(3)

初回第2回はそれぞれ俳句に登場する「桃」「夏みかん」を手掛かりに似合う香水を探しました。
そのあと週刊俳句に出張して太田うさぎさんの「軽薄なふりで夜店に遊びしこと」という句に似合う香水をおすすめしてきました。
今回は「香水」という言葉が登場する俳句さんたちにどの香水が似合うか考えてあげようと思う。

俳句の中に「香水」っていう言葉は、まあまあの頻度で出てきます。
なぜなら「香水」は夏の季語だから。

でも香水好きの方は思うんじゃないだろうか。
夏は纏える香水の種類が限られてしまう。
重めの香りをつけて真夏の電車なんかぜったい乗れないじゃないか。
ちょっと歩き回ったら汗ですぐ流れちゃうし。
秋冬の方が選択肢が広がるしきれいに香らせることができるのに、と。
あるいは、次のようにも考えるだろう。
たった1本の香水でも、温度や湿度が違えば香りの印象が変わってしまう。
だから四季を通じてその香水を試し、さまざまな表情を楽しみたい。
夏だけを特別視するなんて馬鹿げている、と。

改造社の『俳諧歳時記(夏の部)』(昭和22年。たぶん初版は昭和8年)にはこうある。

香水

植物性の香料を酒精にて溶解したる化粧品なり。香料はそれより発散する微量の瓦斯蒸気又は微粒子が人の器官を刺激して快感を与ふるものなり。或ものは濃厚、或は温和、或は強烈、其他種々なる香を感ぜしむ。香料にはローズ・ジヤスミン・ヴアイオレツト・リリーなどあり。その適当なる調合によつて得らるゝ香水は近代人の薫りに対する感覚趣味に適する為め、在来の麝香・匂袋等に代りて用ゐられ、夏季殊に悪臭を消す為めに多く用ゐらる。近年天然香料の成分研究せられ、之が合成の研究進歩するに及び、人造香料の製造を見るに至れり・人造薔薇油の如し。《参照》 掛香

※漢字は新字体に改めました

ほらこれが改造社『俳諧歳時記(夏の部)』の「香水」が載ってるページよ。

そしてこちらは皆吉奏雨『俳句鑑賞歳時記 夏の俳句』(1973年 / 明治書院)での記述。

香水

常時用いられるものでもあるが、汗の臭いなどを消すための身だしなみとして夏の外出などにふりかける。そうしたところからの季題であって、就中夏季に使用されることを基にして公約的に季題となったものであって、人事の季語にはこれに類するものが多い。

なんというか、日本が香水砂漠(諸外国と比べて香水が売れないから流通する数や種類も少ない)なのは、この「におい消しとしての香水」「身だしなみとしての香水」というイメージがまだ滅んでないせいなんじゃないのかな。
義務だとしたら、人間は適当に選ぶだろうよ。それが証拠にサラリーマンのネクタイ選びなんていいかげんなもんじゃないか。(※こだわりを持って選んでらっしゃるごく少数の方ごめんなさい)
香水を夏の身だしなみだとなんとなく刷り込まれてしまったひとが「夏だしなんか匂いつけとこ」「ブランドがお墨付き与えとるから文句ないじゃろ」くらいの意識で真夏に激重オリエンタル系香水を腋の下(ギャー!)にブシュッとしたこともあっただろう。腋臭ミーツ香水、奇跡のマリアージュ。香水分子と手に手を取り合って空中へ飛び立ってゆく悪臭分子。それを鼻粘膜でキャッチしてしまった不運な人々は香水全般を嫌いになってしまったのであった……。
というのはわたしの想像でしかありませんが、そういう側面だってなきにしもアラブ香水アルハラメインじゃない?
(おっと失敬! ついフレグランス駄洒落が出てしまったね!)

不快なにおいはデオドラント製品で消しましょうと先日香水屋さん( LE SILLAGE ル・シヤージュ / 京都 )にもらった説明書に書いてありました。
悪臭を消すために香水をつけるのではなく、悪臭を消したあと香水をつけましょう。

今後、「身だしなみ」じゃなくて「自分が心地よくいられるために身につける香水」という方向に意識改革していくべきですね。
つけたくなければつけなくていいし、どうせつけるなら心地いいものを厳選して、つける場所も季節による香り選びも工夫して。
そうすることがかえって他の人を不快にさせない香水の使い方につながるのではないかと思う。
少し前になりますがイソップのヒュイル(ひのきの香り)がツイッターでバズったのは若い世代が潜在的に心地いいものとしての香水を求めてるからこそでしょう。

だからもう夏の季語としての香水は滅べ。
今後香水を夏の季語とすることはまかりならん。無季じゃ無季!

※こちらが件のバズったツイート。個人的にはヒュイルを試す前にサンタマリアノヴェッラとかラボラトリオオルファティーボとか、いわゆる「香水」のイメージとは違う心地よさのある香水を試していたので言うほどの衝撃はなかった。でも、うん、気持ちはわかる。

というわけでようやく俳句さんたちの登場です。

香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男

とりつくしまのない感じ! 一分の隙もない感じ!
N°5  P / EDP / EDT その他いろいろ | シャネル …香水の代名詞とも言える定番中の定番。お出かけ用の香り。デパート、参観日のお母さん、スナックのママさん。キツイ! というイメージがあって避けてきた。しかしせっかく縁あって香水沼にドボンしたのだから名香と呼ばれるものは試してみなければ。今回はEDTとEDPを試香紙で試してみました。ていうかちょっと待って。パルファン(P) とオードトワレ(EDT)を調香したのがエルネスト・ボーさん(シャネルの初代調香師)で、オードパルファン(EDP)を調香したのはジャック・ポルジュさん(三代目)なのね? そしてN°5シリーズのなかにN°5ローっていう軽めのやつもあるのね? は? ヘアミトもある? 君たちはなぜ物事をそんなに複雑にしたがるのか。
中村草田男の句ですが、鉄壁さんとお呼びしましょうか。「香水キツッ!」と思って相手の懐に入っていけない感じがしたわけですよね。その香りに拒否感を覚えているのは自分なんだけど、全力で拒否されたようにすら感じる。こういうとき人は「●●の花の香りに似た香水」なんて分析はできないと思うので、初めから特定の何かの香りと表現できない(抽象的な香りとして設計された)N°5がしっくりくると思います。いかがでしょうか。あれ? おすすめされたくなかったですか? ああ、逃げていく鉄壁さんの姿が見える……。
まさに抽象的な香りなので形容しがたいのですが、EDTは思ったよりフレッシュで若々しい香り。20代のBA(美容部員 / コスメカウンターのスタッフ)さんの香りという感じがしました。EDPは粉っぽさを強く感じて、おとなっぽい。うん、たしかによく言われるように「お婆ちゃんの鏡台」と言えなくもない。EDTにしてもEDPにしてもわたし自身の考えるの心地よさとは全然違う方向の香り。でもベテランBAさん曰く「お好きな方は安眠効果があるとおっしゃるんですよ」と。そうか。マリリン・モンローはシャネルの5番を寝香水にしたと言いますからな。

香水の香の内側に安眠す 桂信子

そしてこちらはまさに寝香水の句です。いい香りすぎて一瞬でスヤァ…( ˘ω˘ ) してしまうことありますね。目が覚めてもまた枕からいい香りがして再びスヤァ…( ˘ω˘ ) しちゃうよね。もうお布団から出られない。香水の香の外側に出られない。
サイプレスマスク EDP | トバリ …ひのきの香りと匂い袋のような甘さ。能の世阿弥をイメージした香りだそうです。あまりにも心地よいので大きく吸って大きく吐いてを繰り返しているうちに強烈な眠気に襲われました。イソップのヒュイルもそうですが、ひのきの香りってひのき風呂っぽいからリラックスしすぎちゃうんだよね。Byredoのジプシーウオーターみたいなとらえどころのなさも感じる。トバリのディスカバリーセット(全種類が少量ずつ入ってるセット)を買ってじっくり試したい気持ちもあるんだけど、全部大きいボトルでほしくなりそうで怖い。

香水をひとふりくよくよしてをれず 菖蒲あや

つらいこと、悲しいことがあったとき元気付けてくれるようなポジティブな香りですね。
お名前(菖蒲)にちなんでイリス(アイリス)の香水はいかがでしょう。
シルクイリス EDP | パルファンサトリ …上のトバリと同じくこちらも日本製の香水。フランキンセンスが入っているはずなのですがそこまでお香っぽさは感じませんでした。家事や仕事を落ち着いて淡々とこなせそう。

交換しましょ香水とフラフープ 石原ユキオ

アッ! 香水を夏の季語にするのはまかりならんと言いながら過去の自分が夏の季語としての香水俳句を作っていた!
フラフープと交換しそうなのは100mlの豪華なボトルではない。
ファッションブランド系やセレブの名前を冠した香水など大量生産されている商品には100mlボトルのデザインをそのまま縮小したようなミニボトル(5mlくらい)が手に入るものがありますが、ここで言う「香水」はそうしたミニボトルではないでしょうか。あるいは樹脂製の軽いボトルに入ったボディスプレーとかフレグランスミストのような商品かもしれない。
サムライ ウーマン EDT | アラン ドロン …石原本人の20代の愛用香水。桃とサンダルウッドの組み合わせによるものか、なんとなく和風。空き瓶を嗅いでみてやや経年劣化しているものの「若い女の子の香り!」と思った。懐かしさこそあれ、もはや「自分の香り」ではない。現在販売されているものは初代の香りの雰囲気を残しながらリニューアルされたものになります。

<<引用元一覧>>
香水の香ぞ鉄壁をなせりける 中村草田男『新歳時記 夏』平井照敏・編
香水の香の内側に安眠す 桂信子『新歳時記 夏』平井照敏・編
香水をひとふりくよくよしてをれず 菖蒲あや『現代俳句の鑑賞101』長谷川櫂・編


さて、次回からは再び俳句を一句だけ取り上げて長々とあの香水がいいこの香水がいいと語る形式に戻ります。
ついに! ついに!
海外通販デビューするぞー!!!

注:2020年8月10日現在ラッキーセントというアメリカの通信販売サイトに香水サンプルを注文し出荷連絡が来た状態です。初めての海外通販がうまくいくかどうか一緒にドキドキしてください!

#野性俳壇 第39回 | 野性時代2020年8月号

野性俳壇、兼題「泳ぎ」の回。
長嶋有さんの佳作に選ばれていました。

カルキくさいゆびからもらうフエラムネ 石原ユキオ

以下、他の方の入選句の感想。

<長嶋有特選>

手紙入りクリアファイルと夏の雲 友常甘酢

メールやSMSでなんでも済むので紙の手紙(おっとレトロニムだ。)を詠むと嘘っぽくなりがちだが、クリアファイルに入れたことにより急に実在感が増す。
というか、実際にこれをやることがありますね、わたし。
手紙が来て、その返事を書いた便箋と白紙の封筒と元の手紙を全部クリアファイルに入れて出かけ、出かけた先で住所を書き写して郵便局から出す。クリアファイルには相手の手紙だけが残っている。

背泳ぎの今か今かと天の罰 公木正

友人がこの句を読んだ瞬間笑った。「背泳ぎ、なんか(上から)来そうじゃん」と。
うん、ちょっとわかる。

泳ぎと予感「しかない」荒涼たる海だ。

との長嶋さんの評が良い。
俳句ってモノで書けと言われがちだけど、この句はモノのなさによって景が浮かぶ。水と空と自分だけの景が。

<夏井いつき特選>

夜行性の水を叩いて泳ぎゆく 仁和田永

「夜行性の水」がポエティックなんだけどかっこつけすぎにならないギリギリのバランスでかっこよくきまっている。
夜のプール。たぶん屋内の。「春ひとり槍投げて槍に歩み寄る(能村登四郎)」のような孤独を感じる。

<長嶋有佳作>

大恋愛じゃない恋愛半ズボン 中島潤也

そんなこと言うなよ。すべての恋愛は大恋愛なんじゃないの。照れ隠しで言ってるだろ。ちがうの?
半ズボンはおとなも穿くけど青春性があっていいですね。

アイスコーヒーのはっきりしない飲み終り 徳山雅記

わーかーるー! 明らかにもう味しなくても氷が解けてきたらまた飲んじゃう。

<夏井いつき佳作>

水泳や日陰に匂ひ立つギブス 木江

骨折して水泳の授業見学してるんだね。いまの自分の感覚では水に入れない生徒がプールサイドで見学しなきゃいけない合理的な理由がわからない。図書室なり保健室なりで涼しく勉強していてはだめだったのか。
ついつい思い出し怒りしてしまったがわたしは骨折したことがありません。
ギブスを「匂い立つ」と言ったのがすごいよね。メントールの匂いがしてきそう。ほいでちょっと色っぽいぞ。
余談だけどギブスと書くかギプスと書くかいつも迷いませんか。

黒々とプールサイドに尻の跡 徳山雅記

また徳山さん!
8の字にプールサイドに尻の跡がついてるのかわいいですよね。
どんな美男美女もどんな偉いひともプールサイドでは水を含んだスタンプなのよ。
人類かわいいな。

『俳句と雑文 B』を(やくざ映画として)読む −ディレクターズエディション−

 Image by JLB1988 from Pixabay

瀬戸正洋『俳句と雑文 B』における俳句の世界は、やくざ映画の世界観に極めて近い。

【暴力の匂い】

拳銃を撃つや春月落つこちさう

サンダルと人とプールに浮びけり

句集の左右のページに隣り合って並んでいる二句である。拳銃を撃つ。銃声が空高く響く(消音器つけなくてよかったのかな)。空には春の月。目の前のプールには撃たれた人間とサンダルが浮かんでいる。そんなシーンが見えてくる。前者が春の句、後者が夏の句なのは気にしなくていいだろう。サンダルもプールも一年中あるのだ。

冷素麺口中切れてゐたりけり

草いきれ顔殴られてしまひけり

こちらは同じページに並べられた二句。「顔を殴られて口の中が切れてしまった」という物語が浮かび上がってくる。夏草の生い茂った土手で殴り合う男たち。草を踏みしだけば、むせるほど濃いにおいが鼻腔を冒す。ゴロのあとの冷素麺は、できるだけ傷にしみないようにつゆをほとんどつけずに啜るのだろう。

荒梅雨の私ひとりが濡れにけり

土居組組長、土居清の殺害を命じられた広能昌三(菅原文太)が、土砂降りのなか土居が現れるのを待つ。雪駄履きの素足が泥水に濡れる。足元に何本も吸い殻が落ちていることで長時間待っていたことがわかる。『仁義なき戦い』第一作の名場面である。

大綿や繋がれたるもの飛び跳ねて

大綿とは綿虫のこと。繋がれているのは犬だろうか。いや、人間だ。これはリンチの様子なのだ。目前に迫る死からなんとか逃れようともがく人間のまわりを、まるで命の儚さの比喩であるかのように綿虫が飛んでいる。凄惨な場面に感傷的で繊細な音楽を流すような演出は、深作欣二ではなく北野武のスタイルだろう。

ばらばらな人間ばらばらな西日

ばらばらなのは人と人の気持ち。ばらばらな西日とはブラインド越しに差してくる縞々の西日のこと。そう読めばいいのかもしれない。しかし、これはやくざ映画である。ばらばらになっているのは文字通り……

家庭用高圧洗浄機日短

高圧洗浄機で洗い流すのは当然、床の血痕だ。

【エンコ詰め】

やくざ映画といえば、組員が指詰めによって落とし前をつける場面は欠かせない。

油照左手爆発してをりぬ

蒸し暑い夏の日に詰めた左の小指。爆発したように飛び散った血。拍動のたびに痛む左手。『BROTHER』にこんな場面がある。モー(ロンバルド・ボイヤー)が「(小指を)切ったらどうなる」とたずねる。寺島進演じる加藤はこう答える。
“He can’t swim straight anymore.”(まっすぐ泳げないね)
瀬戸正洋はこう答える。

短日の右手が重くなりにけり

【組員の日常】

新涼のもぬけの殻の事務所かな

事務所には代紋の入った提灯や額などが飾られているに違いない。季語が「新涼」なので、九月頃。秋祭りで的屋の仕事が忙しく、組員は出払っているのだ。

仕事始めのプライベートの名刺かな

『竜二』の主人公花城竜二は、堅気風の名刺と極道仕様の名刺の二種類を持っている。それらはどちらも仕事のために用意した名刺である。やくざにとってのプライベートの名刺とはどんなものだろう。見てみたい。

ボクサーが蜜豆食うてゐたりけり

ボクシングの興行も組の重要な資金源だ。「おい、おめえ蜜豆なんか食ってていいのか」「さっき体重測定パスしたんスよ」「おうそうか、しっかり力つけていい試合しろよ」
テーブルに千円札を置いて肩で風を切りながら甘味処を出ていくパンチパーマの男。誰も指摘できないが、口髭に生クリームがついている。

【懲役】

雌伏十余年寒桜愛でにけり

組のために罪を被ってくれと頼まれ、懲役十余年。刑務所に植えられた寒桜に重ね合わせるのは愛しい女の面影か、兄貴の背中の桜吹雪か。

復活祭徒党を組んでゐたりけり

「復活祭」はイースターのことだが、懲役を勤め上げて娑婆に出た喜びに「復活」という言葉がふさわしい。組の仲間が何人も刑務所の出入り口の前まで迎えにきて、煙草を差し出し、火をつけ、労いの言葉をかけてくれる。「徒党を組む」とは軽い自虐だ。親分はイエス様、などとうそぶいて組を抜けていったかつての仲間に軽い皮肉を言っているのかもしれない。

【女たち】

烏貝嚙み難く妻は怖ろしく

おそろしいくらいでなければやくざものの女房は務まらない。噛みにくいながらも噛めばじわりと旨味の染み出てくる烏貝によって、苦楽を共にしてきた妻への信頼感が表現されている。

春の闇自宅へ帰るための酒

ときには妻の顔を見たくない夜もある。一杯ひっかけてほろ酔いで自宅へ向かう。

肌寒の思はず噓を付きにけり

ちからいつぱい頬叩かれて秋深し

これも二句の並びが鮮烈である。「あんた、またあの女のところに行ってたね」「いや、サブのとこだよ」「サブちゃんならさっき煙草屋の前で会ったわよ、馬鹿!」パシーン!
「秋深し」という叙情たっぷりの季語からは余韻が感じられ、叩かれた痛みをがいつまでも消えずに残っているような印象を受ける。

香水は厄除婦人警察官

男性の多い職場に女性が入れば「女のくせに生意気な」と言われるが、ことさらに「女らしく」振舞うことによって「わたしは弱い女性であり、あなた方男性の領域を侵犯するつもりはありません」というメッセージを発することができる。化粧は、スカートは、香水はまさに厄除なのだ。働く女性の処世術である。
しかし昭和なやくざがそこまで考えるだろうか。「うえっ! このねえちゃん香水付けすぎだな!」という気持ちをちょっぴり粋に言ってみたのだろう。

【ダメ。ゼッタイ。】

にんげんの顔がいつぱい瓜畑

出目金は生きるべきかを尋ねけり

扇風機左右に動く胃痛かな

薬物は人間の心身を蝕む。

夏負けの酒も薬も止めにけり

うん、うん。やめたほうがいいですよ。

この他、ガサ入れ、政界との癒着、密輸、彫物など、やくざ映画の定番モチーフを描いた(ように読める)句は枚挙にいとまがない。お疑いの向きはこぶしのきいた演歌を流しながらもう一度この句集を読み返してみてほしい。昔気質の極道の照れたような笑顔が、行間に見え隠れしているはずだ。

この文章は月刊俳句同人誌『里』二〇一四年三月号に掲載された「『俳句と雑文B』を(やくざ映画として)読む」に文字数の関係からカットしていた部分を加えたものです。

活動記録(2019年)

「タイマン句会ワールドカップ2019」優勝

●ウェブサイト「うたとポルスカ」にコラム「異郷幻灯/トルコ」を寄稿

●『野性時代』の野性俳壇で特選2回(うち1句は佳作とのダブル選)、佳作3回、選外佳作1回

〈特選〉
軽自動車も猪も無事ですか(野性俳壇11月号)
緋目高や寺に地獄を模した箇所(野性俳壇6月号)
〈佳作〉
ブルーシートもレジャーシートも花の冷(野性俳壇3月号)
アリバイのような訪問ところてん(野性俳壇7月号)

常夏ハワイ句会開催(1月27日)

活動記録(2018年)

第1回「ビバ!ユキオ俳句賞」を開催(応募者81名・計405句)

第2回「スイーツ句会」を開催(岡山市)

●手作り句集『香水とフラフープ』を制作

俳句同人「傍点」主催「タイマン句会ワールドカップ2018」で優勝

●フード性悪説アンソロジー『燦々たる食卓』(2018年11月25日発行)に俳句連作「風味Z佳」10句とショートエッセイ「わたしのおいしい肉」を寄稿

●『野性時代』の野性俳壇で特選3回(うち1回はダブル特選)、佳作3回、野性歌壇で入選1回、選外佳作1回
〈特選は以下の3句〉
資材部は土筆ゆがいているそうです
火のような魚のようなチューリップ
運動会のあといろいろとたたむなり

●やすたけまり版「ぺったん詩」(いきもにあ2018)に俳句3句を提供
刃物より火山がいいわ猫の恋
春の夜の濾紙ごとはこぶプラナリア
なめくじと東灘区をぬめりあう

[amazonjs asin=”4041068746″ locale=”JP” title=”小説 野性時代 第180号 2018年11月号 (KADOKAWA文芸MOOK 182)”]

[amazonjs asin=”B01I4MCJGS” locale=”JP” title=”トルココーヒー・デミタスコーヒーカップ&ソーサー2客セット:ゴールデンホーンハリチ/ターコイズ”]

タイマン句会W杯 投句一覧 #taiman_kukai

トルココーヒー

俳句同人「傍点」主催タイマン句会ワールドカップ2018
我がトルコチームの投句一覧です。
祝勝会の様子はこちら

水タバコの水を人魚の泳ぐ音
7/20 題「シーシャ(水タバコ)」

姉妹来てチェリータルトを鈍角に
7/9 題「角」

ギュレギュレとみんな手をふる避暑の荘
7/31 題「拗音が3つ以上ある句」

城傾く箱庭の木を抜けば
7/13 題「抜」

蓴菜をちいさく掬う接続詞
7/26 題「接」

口中に骨片のある夏の月
7/26 題「骨」

夜のプールにかぶとがに連れてきて
7/13 題「カブトガニ」

袋いっぱい金魚をくれるココ・シャネル
7/20 題「人名しばり」

避難所に寝かされているエレキング
7/9 題「安全しばり」

五号室に夏は果てたり面格子
7/31 題「格子」

(得点順)