投稿者「yukioi」のアーカイブ

密着!俳句警察24時

週刊俳句第365号特集「悪い俳句」に「俳句警察24時~『遊戯の家』に潜入せよ!~」を寄稿しました。(イラストつき!)

もともと「俳句警察」や「歳時記警察」というのは表現よりも規範を優先する俳人のことを揶揄して言った言葉(……と、わたしはとらえているんですが、合ってますでしょうか)なのですが、今回の記事では文字通り二人の刑事が登場して事件性のある俳句を捜査します。

俳句警察

(右)山さん。ベテラン刑事。一人娘を溺愛している。
(左)インバネス。新米刑事。(日本の一般的な警察組織では刑事同士が『ジーパン』『テキサス』『スニーカー』といったニックネームで呼び合う習慣があるらしいので、俳句っぽいニックネームをつけてみました。)

ちなみに、『遊戯の家』のほかに捜査対象として考えられていた句集・アンソロジーは次のようなもの。
悪い俳句、探してみてくださいね。

  

 

ぺんぎん憑依

 
田丸まひるさん&しんくわさんのネットプリント、「ぺんぎんぱんつの紙 八枚目 俳句ください」に寄稿しました!

早速プリントして、読んで。

あれ……俳句ってこんなに面白かったっけ……!? と思いました。

(俳句は面白いよ! 面白いけど! 編集が上手いとほんとうに面白いことがちゃんと伝わるんだなって!)

(レイアウトを凝りまくったわけでも絵がいっぱい入ってるわけでもないのに! シンプルではきごこちのよいふしぎなぱんつ!)

というわけで、ぜひ最寄りのコンビニエンスストアでコピー機からペロンと取り出してみてくださいね。

妄想が捗る擬人化系季語

先日、男同士の性愛を描いたらBL?という記事を書きました。
ざっくり言ってしまうと「ゲイ向けコンテンツと腐女子向けコンテンツは違いますよ」という話ではあるのですが、
少し別の方向でも議論が盛り上がり、いろんな方の意見が聞けてとても嬉しかったです。
たとえば、こんなご意見。

RTの問に対して私の回答は×。
このリンク先の文章にはおおよそ同意できる。ただし、言葉の定義の問題だが、この文章中の『BL』を『やおい』と言い換えれば。
BLとは、BLを標榜している作品、あるいはBLレーベルから出版されているものを指す、と考えている。
やおいはBLを包括する。 —ホンゴさん(@book_go

非常にいいご指摘だと思います。
「BL」という言葉は商業出版から発生したもので、比較的新しい言葉です。(”商業”じゃないところに何があるかというと、”二次創作”や”オリジナルJune”といった同人誌の世界です)
ホンゴさんが書かれたように、狭義ではBLレーベルからリリースされた作品を「BL」と呼びます。ですからわたしが先日書いたように二次創作までBLと呼んでしまうのは少々強引。
しかし現在ではBLという言葉はより広い意味で使われるようにもなってきているようです。たとえば、2012年12月『ユリイカ』の特集は「BLオン・ザ・ラン!」。「やおい」「June」の歴史を踏まえて現在の「BL」の状況を捉えようとしている特集です。

「BL」という言葉は舌触りよく耳に心地よいので、わたしは「腐向けコンテンツの総称としてのBL」、つまり「広義のBL」としてこれを用いることが多いです。
また、これはまったくもって個人的な事情ですが、年下の友人の前で「やおい」という言葉を出して「やおい…?(´・ω・`)」というリアクションを頂戴してしまい、それ以来BL世代の彼女に合わせるためになんでもかんでも「BL」と呼んでいるという面も否めません。だって! 仲良くしてもらいたかったんだもの!
それから、実はこの理由が最も大きいのですが、BL俳句はBL短歌から派生したものなので、BL短歌の「BL」観(BL=広義のBL)を継承していると考えています。
『共有結晶vol.1』 『共有結晶vol.2』

平田有さんと実駒さんの会話を読むと名称の変遷の歴史や個々人の感覚のズレの問題がわかりやすいかと思います。

さて本題!

『共有結晶』vol.2でも少しだけ触れましたが、わたしが勝手に「擬人化系季語」と読んでいる季語があります。
佐保姫、炎帝、竜田姫、冬帝。
これらは、読者が積極的に擬人化するまでもなく、季語そのものが擬人化しているすぐれもの。
\甘栗むいちゃいました!/というノリで\季語あらかじめ擬人化しときました!/って差し出してくれてるわけです。
ありがとうございます。美味しくいただきます!

春の女神「佐保姫」と秋の女神「竜田姫」については百合クラスタの方におまかせして(もちろん”姫”は受けちゃんの愛称として全く違和感がないのでBL読みも可能ではありますが)今回は「炎帝」と「冬帝」をBL読みしてみました。

【炎帝】「夏」の漢語の異名。人身牛頭らしいです。

炎帝に組み伏せられているごとし  谷雅子『シリーズ俳句世界1エロチシズム』(金子兜太・夏石番矢・復本一郎編)より

炎帝、情熱的です。「夏バテ」とか「夏負け」とか言ってしまうと貧乏くさいのに「炎帝に組み伏せられ」るって表現すると急にセクシーでゴージャス! 組み伏せられているのは線の細い少年でもいいし、屈強なアスリートが熱中症で倒れているところを妄想するのもいいですね。

弟子になるなら炎帝の高弟に  能村登四郎『能村登四郎全句集』より

炎帝の弟子って何をするんだろう。
「エルニーニョ現象を起こしてまいれ」「ははッ!」
みたいな感じでしょうか。
中国風のお城で暮らして長い煙管でたばこを吸って積乱雲を作ったりしそう。楽しそう。
同じ作者に「腕撫して炎帝の寵ほしいまま」という句もあります。

炎帝に召し使はれて肥担ぐ  上田五千石『合本俳句歳時記新版』(角川書店編)より

肥(こえ)は厠から汲み上げてきた人間の排泄物です。暑さと臭気にうんざりしながらも力強く天秤棒を担ぐ百姓。実用のためだけについた筋肉、汗まみれの赤銅色の肌。「召し使はれて」に漂う服従の苦痛が百姓の肉体をよりエロティックに飾っています。三島由紀夫「仮面の告白」を連想するせいか、BLというよりはゲイっぽさを感じる句です。

【冬帝】「冬」の漢語の異名。

冬帝先づ日をなげかけて駒ヶ嶽  高浜虚子『虚子に学ぶ俳句365日』(週刊俳句編)より

冬帝×駒ヶ嶽です。
山肌に差す冬の朝日という景。気温を下げるだけではなく、冬の日差しを司るのも冬帝のお仕事。飴と鞭という言葉が脳裏をかすめずにはいられません。そうやってまず日を当てておいてまた吹雪で襲ったりするんでしょう!!(エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!)

冬帝や捕虜のごとくに壁に立ち  山田露結『ホームスウィートホーム』より

冬帝や、で切れています。つまり、捕虜のように立っているのは冬帝ではなく作中主体。
彼は、寒々しい壁に向かって立っている。あるいは、壁を背にして立っている。
壁際に並んでパチンコ屋の開店を待っているのかもしれないし、会社のIDカードに入れる顔写真を撮っているところかもしれないし、立ち小便をしているのかもしれない。
「捕虜のごとく」という言葉から、敗北、薄着、疲弊、空腹といった事柄が連想されます。
そして、壁に立つポーズは銃殺のイメージや壁に手をついて後ろから犯されるイメージをはらんでいます。
BLの世界では監禁・拷問は日常茶飯事。壁の向こうから冬帝という名の攻め様の靴音が聞こえてきます。

この他に、土用太郎、土用二郎、土用三郎の三兄弟や、白玉姫(霞の異名)も擬人化系季語と言えます。
(白玉姫は歳時記には載っているものの、例句に出会ったことがありません。和菓子の白玉の印象が強すぎて使いにくいからかな?)
また、冬の厳しい気候に妖怪の姿を与えた「雪女」や「鎌鼬」も一種の擬人化と考えられるかもしれません。

擬人化系季語で良い妄想を得たら、ぜひTwitterで #BL俳句#BL読みできる俳句 のタグをつけてご報告くださいね。

プロローグ

プロローグ

腐女子の章

ピノキオに精通のある朧かな
柳絮舞ふ昼を低音ボーカロイド
図書室にポーズ集あり百千鳥
雄乳(おつぱい)を塗るにマゼンタ風薫る
柏餅じやうずに剥いたはうが攻め
雲丹の棘つまみ上げたる誘ひ受け
餌奪ひ合ふ琉金の雄と雄

事務員の章

あぃまぃにメエルを返し山笑ぅ(*´ω`*)
わたなべのなべがわからぬめかりどき
メーデーになんの予定もない予定 _(:3 」∠ )_
先々代社長像あり水を打つ!
冷房のよくきいている段ボール
ひさびさの定時退社や白日傘♪
ひややっこ社内恋愛とゎちがう。。。

家庭教師の章

燈下親し文章題が解けるまで
大西日さいころ切れば展開図
蜩(ひぐらし)やけんかの傷を見せてくれる
おとなりの猫にバッタをあげている
ダンゴムシ用筆箱のあるらしき
なまぬるき葡萄いただく時間かな
秋暑し声を合わせてCHA-LA HEAD-CHA-LA

ショップ店員の章

マネキンを回れ右
あらゆるかたちを四角くたたんであげる
顧客名簿の澄子は母
試着室につけまつげが生えてる
ロッカーの傘黴びてペイズリー柄
掃除のおばちゃんがくれた飴にがずっぱい
ノルマ届かずあのへんが天の川

S嬢の章

初夢の龍に首輪を与えたる
熊の子のおなかせなかの縫い目かな
   昭和三十六年一月二十八日、絵師伊藤晴雨没
晴雨忌や宿のかみそり剃りにくく
冬深し蝋の温度をたしかむる
ガーゴイル氷雨を吐きて笑うなり
ひとを吊るほそきちからや星冴ゆる

地廻り

地廻り

地廻り

俎板にある掌の涼しさよ
ネオン街に連れてこられて葛餅は
傘もらうためのパチンコ梅雨長し
桜桃の種のピンクが灰皿に
若楓まぶし胸倉つかまれて
夏山に茶箪笥ほどの穴を掘る
青葉木菟置いた荷物が持ち上がらぬ
すこしずつ逃げるみみずの抱き枕
川床に長く取り出す財布かな
明け易き法治国家に歯を磨く
逃げるように導くように浮いて来い
覇王樹に匕首をさす不眠かな
夕涼みこれは小銭を入れる箱
生命保険証書あたらし糸蜻蛉
秋高し車体にうつる他人の妻
銀漢は眼窩を満たすには足りぬ
泡風呂に乳暈すべる良夜かな
任侠やハンカチーフをよく濡らす
満月が助手席からは見えるのか
吾子の髪みじかき指をもて洗う

事務所っつったら組事務所に決まってんだろ

月刊俳句同人誌『里』2014年3月号

『里』2014年3月号に「『俳句と雑文 B』を(やくざ映画として)読む」という文章を寄稿しました。
ええっと、いくらなんでも(やくざ映画として)が大きすぎないかな……。

わたしは洋の東西を問わず悪漢の登場する映画が好きなのです(オーシャンズ11〜13、タランティーノ、北野武、仁義なき戦いシリーズ、香港や韓国のアクション映画etc…)。この嗜好にどストライクで飛び込んできたのが瀬戸正洋さんの『俳句と雑文 B』です。
瀬戸さんの俳句、やくざ映画目線で見るとほんと最高だよね! という話をして同意してくれたのが現時点で親しい友人一名だけなのですが、それは単にわたしに友人が少ないからという理由に尽きると思います。『里』を読んでくださった方はきっと「石原ァ! こんなもたまにはええこと言うのう!」「瀬戸さんナイス極道じゃ!」「正洋兄貴激シブじゃあ!」と盛り上がってくれるはず!

記事で紹介した俳句を一部抜粋します。

拳銃を撃つや春月落つこちさう 瀬戸正洋
草いきれ顔殴られてしまひけり
新涼のもぬけの殻の事務所かな

『里』3月号、『俳句と雑文 B』についてのお問い合わせ・ご注文は島田牙城さんまで。

2014/3/17追記
週刊俳句第360号(2014年3月16日更新)で瀬戸正洋さんの「軽薄考」について書きました。題して「トイレットペーパーの使い方」
余談ですが右上の舎弟が着ている襟なしシャツは鯉口(こいぐち)シャツと呼ばれるもので、お祭り用品店などで購入できるようです。ほしい……。

男同士の性愛を描いたらBL?

男同士の性愛を描いたものはBLである。

×か。

BLというものに対する考え方はいろいろあると思うが、腐女子を自認しているひとにアンケートを取ってみたら、八割方は×をつけるのではないだろうか。しかし○と考えるひとがいてもおかしくない。あるいは、いろんな可能性を考えて△をつける。

Wikipediaのボーイズラブの項にはこのように書いてある。

ボーイズラブ(和製英語)とは、日本における男性(少年)同士の同性愛を題材とした小説や漫画などのジャンルのこと。書き手も読み手も主として異性愛女性によって担われている。

つまり細かいことをバッサリ切り落として単純に言えば「女性向けに男性同士の性愛を描いたものがBL」ということになる。
男同士の性愛を描く創作物のジャンルはBLだけではない。
ゲイ当事者向けに描かれる漫画や小説もある。
書店では腐女子にも人気のゲイ作家の作品がBLの棚に並べられることもあるが(例:近所のジュンク堂では田亀源五郎作品がBLコーナーに陳列されている)実際に手に取って絵柄を見比べてみると、両者にはかなり違いがあると感じるはずである。
冒頭で×をつけたひとは「男同士の性愛を描いているからといってBLとは限らない」「男同士の性愛をゲイ当事者向けに描いたものはBLではない」という考えだろう。

BLとして提供されているもの以外をBLとして受容することもある。
いわゆる二次創作では、原作の「敵意」や「友情」を「愛」に読みかえていくような解釈がなされる。
また、個人の妄想の中でこれを行うこともある。
BLという言葉は商業BLから発生したものなので、多少の違和感はあるかもしれないが
「『進撃の巨人』はBLとしか思えない」
「学校で夏目漱石の『こころ』読んだんだけど…これなんてBL…(°言°;)」
というような言い方も成立する。
この考え方でいくと、男同士の性愛が描かれていなくてもわたしの妄想を刺激してくれるならBLと呼ぼう! ということになる。
BL的な匂いがすればわたしにとってBLだし、ゲイ当事者向けの創作物であってもBLとして楽しめるならわたしにとってはBLです。
そう。「わたしにとっては」を入れるならばなんでもBLになり得る。
男同士の性愛を描いたものはBLである。
うん、マル!
古典文学も鉛筆と消しゴムもゲイ漫画もわたしにとってはBL!

この○と考えるひとと×と考えるひとの違いは「ジャンル」を見るか「自分の萌えるツボ」を見るかの違いによる。
だから、「ジャンルとしてはBL漫画とゲイ漫画は違うけど、ジャンルをまたいで両方の雑誌に描く作家さんもいるし、ゲイ漫画の中にもBLとして萌える作品があるし…」などと考え始めると△をつけざるを得なくなってくる。

以上のようなことは、実際に書店に足を運んでBLを購入し(あるいは電子書籍を探し、購入し)読んでみれば感覚的にわかるはずなのだが、BLを読んだことがないひと(特に異性愛者・男性)の中には、短絡的に「男同士の性愛を描いたものはBLである」と考えるひとがいるように感じたので書きました。

ところで、「わたしにとってはBL」という目線が、いまツイッターで小さな盛り上がりを見せ始めた「BL俳句」を考える上で最も重要なことではないかと考えています。ですが、いまわたしは『ジェラールとジャック』を読み返すのに忙しいので、これについてはまたあらためて筆を執ろうと思います。

※Wikipediaの記載について補足
BLの書き手・読み手は飽くまで「主として」異性愛女性というだけで、実際にはバイセクシャル、レズビアン、異性愛者の男性、ゲイ男性、三次元での性愛に興味のないひと、自分の性指向がわからないひと……いろんなひとが存在する。
親しい友人にはバイセクシャルのBL読者がいる。わたしは現状として異性愛女性BL読者(ああ、わたしがマジョリティだなんて!)である。

くまねこ いちとにぶんのいち号

 
春のBL俳句まつり

セブンイレブン
プリント予約番号 05925346
A3 カラー 1枚 100円(白黒20円)
2014/03/05 23:59まで

サークルKサンクス・ローソン・ファミリーマート
ユーザー番号 F8JJBTQNE3
A3 カラー 1枚 100円(白黒20円)
2014/03/06 13時頃まで

俳句 なかやまなな @fukurofuaribai
妄想 石原ユキオ @yukioi

なかやまが俳句の同人誌『里』に発表した作品のなかから、石原がBL(ボーイズラブ)的な匂いのするものを選んで妄想しました。

職場や学校に掲示しやすいひろびろA3サイズです。コンパクトに持ち帰りたい方はB4で出力するのがおすすめです。A4でもギリギリ読めます。

★くまねこってなあに?
「くまねこ」は、なかやまなな&石原ユキオが発行するネットプリントペーパーです。

★ネットプリントってなあに?
コンビニのコピー機にお金を入れて番号を打ち込んだら文書が取り出せるサービスです。
セブンイレブンでの操作方法はこちら
その他のコンビニでの操作方法はこちら

くまねこ いちとにぶんのいち号

くまねこ いちとにぶんのいち号 春のBL俳句まつり

仄暗い池の底から

 
引用の誤りや不正確な記述が指摘されて「炎上マーケティングかよ!」と話題になった稲泉真紀氏の「俳句評 短歌の穴からのぞいてみれば・・・」、突っ込みたいところもいろいろあるが、おおいに同意できる点がある。

俳句の方へ目をむけた時、短歌の世界の住人である私には、俳句の新しい世代やスタイルの提案が見えにくいのか、情報が思うように手に入らないのだ。

俳句関係のサイトや出版物に、俳句に興味を持ちはじめた若者にとって役立つ内容、楽しめる内容が少ない、ということは7〜8年前から感じ続けている。いま何が熱いのか。句集を手に取って選べる場所はないか。俳人の○○さんと××さんの関係には萌えを禁じ得ないけどこんなこと考えてるのはひょっとして自分だけなのか……!? そういった情報に手軽にアクセスできるものは少ない。

(定年後に俳句をはじめる層に向けられたものや、ハウツーは多い)
(情報はあるのにサイトのデザインや装丁が渋すぎて気づかずスルーしちゃうことよくある)

俳句は、コツをつかめば上達がはやいから、初心者感覚はすぐ消え失せ、オンラインやオフラインの句会に参加してるうちに情報を共有できる仲間もすぐにでき、いつの間にか感性がベテランになっていくのかもしれない。
だから、初心者向けの情報の必要性が感じられなくなるんじゃないのかしら。

わたしは地方で孤立気味、しかも知能がおっとりしているので、初心者向け情報いまだにほしいし、深く詳しく論じた評論だけじゃなくて肩のこらない文章も読みたい。

『線と情事』の「SWEET HAIKU REPLAY」や『共有結晶』の「BL短歌クラスタに俳人能村登四郎をお薦めする3つの理由」は、俳句をはじめたばかりのひとにも楽しんでもらいたいと思って書きました。
届け、届け、と祈るような、呪うような気持ちで。

(炎上マーケティングに便乗して自分の載ってる本を宣伝する作戦)

ついでに、どうしても突っ込みたかったところを書いておきます。

・「時評」枠の記事のわりに論じる時間の幅がかなり広い。
・「若者」というときに、50歳未満を指しているような気配。(それは俳人の一般的な感覚である。短歌の穴から覗いているんだからそこは短歌ルールで書いてくれていい)
・この記事には直接関係ないけど、詩客ってかなり迷路だ。(週刊俳句は記事を遡りやすい)

吹きっさらしのプラットホーム

高橋千波『プラットホーム』

高橋千波(@_hushabye)さんの小さな歌集『プラットホーム』(2014.2.11発行)から好きな歌を。

そのひとを思い出すときホームではひときわ圧を増すあぶらぜみ  高橋千波

間違えてばかりの僕にぽたぽたと修正液の花びらが降る

かみころされたあくびたちふかふかとふりつもる百貨店のフロアに

一首目。油蝉の声が急に大きくなったように感じることを「圧を増す」と表現してる。そのひとは別れた恋人かもしれないし、亡くなった友人かもしれない。学生時代の部活のライバルかもしれない。山がすぐ側にある新神戸のホームを思い出す。
二首目。花びらの形と大きさ、わずかな厚み。修正液とそっくりっていう発見。
三首目。やなぎみわのエレベーターガールのシリーズみたい。

プラットホームはどこかへ行くために一時的に立つ場所。その心もとない感じ。
中綴じの冊子を手に取ったときの薄さやわらかさが、繊細な歌の佇まいによく合っている。