黒人青年と白人少年(彼はアナキン・スカイウォーカーによく似ている)が、「同性愛者はすべからくカミングアウトするべきだ」と主張している。はしごをつかってわたしの部屋の高さまで来てさらに叫んでいる。わたしは窓を開けようとする、少年が窓枠に手をかけているので、バランスを崩して落ちやしないかと一瞬ためらうが、こんな非常識なことをする輩こどもだからといって容赦する必要はないと考え、勢いよく窓を開けた。
「おい、おまえら! ひとのセクシャリティなんてどうだっていいだろ! カミングアウトしようとすまいとそれは個人の自由だ! おまえらに強制されるようなことではない!」
黒人青年はわたしに怒鳴り返す。
「貴様はレズビアンか?」
「レズビアンの友人がいるストレートだ!」
突然、母が客を連れてくる。
大学生ぐらいに見える日本人の女の子。着物を抱えている。
「見てこれ。ほんとうは誰にも言っちゃいけないんだけど、この着物アレンさんが買ってくれたの」
「おれんさん?」と、うちの母。
「ウッディ・アレン。映画撮ってるひと」
アメリカで買ったというその着物は見返り美人のような柄がぽつぽつとついた風変わりなものだった。彼女はそれに、十二単の襟の合わさった状態を模した色とりどりの布を、アカデミックドレスのフードのようにかけて着こなしている。
「似合うね。写真撮るよ。アメリカに戻ったら畳の部屋はなかなかないでしょう」
わたしは彼女の白蛇腹ポラロイドカメラで、ふすまの前に座っている彼女を撮る。
「レズビアンのともだちって?」
「いま東京にいるから、長いこと会ってないんだ」
ポラロイドから印画紙が出てこなくて、ポラロイドに似た別の種類のカメラだったのかと思う。
いつの間にか着物の彼女にキスされていて、それは濃厚で、いつまでも終わらない。
大半の窓は宇宙に接続している
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