冷奴(仮)


 
きみのイメージで書きました と 渡された役を降板したのは
字面通りの意味でなく 暑いですね でも朝晩は冷えますね みたいな
打ち水
だと最初からわかっていた
ことをわかられてなかったこと が
ひたすらしゃくで
 
香港が不足している青蛙
 
あるいは豆腐の上で茗荷はいましがた
円月殺法で斬られたと主張する
 
現場ではカメラの前にからだを捨ててきた
 
吐瀉物 油 酒 苦椒醤 その他で磨かれた卓子
鍵束 爪 付爪 靴底 硬貨 その他で描かれた傷が
まるくまるく光るぎたぎたのまつ毛押し上げて
割り箸はじょうずに割れなかったときのが好き なんて
坊やだからさ、坊や。
口の端ゆがめるだけでさ
悪い女になれるのなら
無駄なテイクを重ねることもできた
 
純情な神様からすうりの花
 
モザイク越しに指示を受ける
青い青い
青紫蘇 葱 生姜
ひりひりと剥けた まだかさぶたになる前の
あなたの顔をブラシで刷いているのはムンクですから
どうぞご遠慮なく叫んでください
 
誰にだって貸せる着ぐるみだけど
しじゅう着られるのはごめんだ
ファブリーズして ちょうだい
 
二十六歳の誕生日
わたしの二十六歳が午前九時に生まれる
潮干狩りに行けなかった母の
遠い海から
現世の釣り針にえぐられて
しかたなく肺胞をふくらませた
 
ほたるいかいつか暗殺されますよ
 
とっくにぬるくなった器で
いまだ耳をそばだてている
木綿豆腐は醤油を吸い
クランクアップを待つことはない
 
つまりは
夏っていやですね みたいな
でもビールうまいし みたいな
吐瀉物 みたいな 茗荷 みたいな 靴擦れ ささくれ 二枚舌 みたいな
乗りかかった船で
もう皿は食らわない
 
冷奴ぼくらもっと駄目になれる
 
 
 
大朗読(2008.6.28)
 
 

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