幾頭の虎をバターにしただろうきみの料理はときどき噛むね
恋以上生活未満フライパンにぱふんと帰還するパンケーキ
母たちが孫と名付けた苦瓜がぐんぐんのびた夏、でしたね
きみがいた八年分の夜いつも未遂に終わったアナルセックス
図書館の地方新聞コーナーであなたが死んでいないか探す
切り抜きが見あたらなくてもう一度潜ったホーム炬燵の真っ赤
三分以上働きたくない胸元で点滅してるスワロフスキー
列島に揺れる数多の雨傘の愛人二十七号泣きます
剥製を作る手順を言いながら鋭利な指が鳩尾をさす
キスマークつけるんですかまた会ってくれるんですか独身ですか
そのひとの死人のような胸板で眠り落ちるまでの海嘯
月曜日に会うのはだるい土曜日に会うのはきみの家族に悪い
こんなにもすてきなパパになったんだ あのとき刺しておけばよかった
焼肉屋に煙がない日三叉路を曲がりそこねて社に戻れない
会社員やめたらきっとホステスになるからちゃんと新聞を読む
窓口の山本さんが西さんにかわってもまだ待ち続けてる
「月が綺麗ですね」真顔で言ってみて吹き出してくれたなら合格
ただでさえくすぐったいし口髭の試着みたいで笑える、ゴメン
あまり良いセフレではないせいちゃんはいつか彼氏に降格します
動物は死んだら重いテーブルに出しっぱなしの雪見だいふく