半分妄想トルコ日記(4日目・中編)トゥズ湖、いかついSABON

トルコの旅も折り返し地点を過ぎた。
フレディの運転でアンカラまで帰って一泊、飛行機でイスタンブルに戻り一泊すれば、翌朝にはシンガポール経由日本行きのフライトが待っている。

カッパドキアからアンカラへの帰路、道路脇にポリタンクを持った白髪のおじいさんがいて、フレディは車を止め、彼を乗せた。いやちょっと待って。運転してくれているのはあなただけれど、そういうことをするなら何か説明がほしい。

「ガソリンがなくなったそうです。ガソリンスタンドまで行きます」

へえ、と思った。割とドライなこの人の、意外なトルコっぽさに驚いた。ふたりはトルコ語で何か話し合っていたけれど「タクシー」と言った気がしたから「帰りも頼めるかな?」「悪いが帰りはタクシーでも使ってくれ」だろうか。
「お嬢さん、お元気で!」というようなことを言って老爺は降りていった。
ガソリンスタンドはほんの10分ほどの距離だった。

トゥズ湖(塩湖)に立ち寄った。地面に貼られた巨大な鏡のようだ。
わたしは靴と靴下を脱いで塩水に浸かりに行き、フレディは待っていてくれた。足元の小石はたぶんぜんぶ塩の塊。足の裏のツボが刺激されてめちゃくちゃ痛い。
敬虔なムスリム女性は手首から先・足首から先・顔以外を見せてはいけないから、靴と靴下だけ脱いでドレスの裾が濡れるのもおかまいなしに塩水の中をずんずん進んでいく。

18:00頃。昼間見るとぜんぜん違う表情だと思います。

足を洗うシャワーはちゃんと男女別になっており有料、といっても入り口で1リラを払うだけだった。服が濡れて気持ち悪くて泣いている子供、それをあやす若いお母さん。
ふくらはぎから下をシャワーでざっと洗って手ぬぐいで拭く。手ぬぐいを用意しておいてよかった。靴が無印良品の撥水スニーカーなのも我ながらグッドチョイスだった。履き古したコンバースなら確実に泣いていた。
土産物屋は結構立派で、トゥズ湖の塩を使ったボディスクラブその他の化粧品、石鹸、塩そのものなどを売っていた。塩スクラブは半強制的にお試しさせてくれる。いわば店員がいかつい兄貴しかいないSABONだ。油断すると手のひらに塩を乗せられて「こすって、洗って!」とジェスチャーで示される。店内のPOPは主に中国語、それから韓国語。中国語と韓国語で話しかけられ、反応しないでいると最後に日本語が出てくる。日本語を上手に話す年かさの(といっても20代後半か30代前半に見える)店員は、日本人観光客が多かった時代から商売をやってる人なのかもしれない。スクラブは自分が普段使っているものの倍くらいの値段なのだが、使用感は以前オリーブオイルと粗塩で自作したものとほとんど変わらなかった。
(あ! いいこと思いついたんだけど! 荷物が重くなっても平気な人は記念にトゥズ湖で塩だけ買ってきてオイル類をエジプシャン・バザールで買って帰国してからスクラブやバスソルトを自作するといい思い出になるのではないでしょうか!)

アンカラについたのは夜の8時過ぎだったろうか。フレディはわたしをホテルに送り届けて家に帰った。首都の駅前のちゃんとしたホテルなので入り口にセキュリティゲートがあり、フロントは訛りの少ない英語を話す。「きれいなプーチン」とでも呼びたくなるような金髪で長身のポーターがわたしの荷物を運んだ。プーチンも流暢な英語だ。わたしはきっついトルコ語訛りの英語が好きなので「さすがー!」と思うと同時にすこしさびしい。2リラだったか3リラだったか財布にあった小銭をチップとして渡したんだけど、妙な顔をされたのでおそらく少なすぎたのだろう。2019年現在、ホテルのポーターに渡すチップは5リラくらいがいいようです(というのが友人の説だが地方やホテルのグレードにも関係するかもしれないし真偽のほどは不明)。

この日記の中にあるリンクを経由してamazonでお買い物していただくと筆者の自作ボディスクラブがいい匂いになります