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【岡山市北区後楽園〜京橋町】花疲れというか歩き疲れ/俳枕DIY(第4回)

小橋中橋京橋渡る花疲れ  石原ユキオ

毎年春になると後楽園周辺は花見客で賑わい、ちょっと桜でも見ていこうかという車で土手は渋滞し、河川敷には焼肉の香りが漂う。
桜の季節に実際に吟行(俳句を作るのを目的に歩くこと)して作った句だけれど、後楽園前のバス停あたりから「旭川(あさひがわ)さくらみち」に沿って歩き、小橋→中橋→京橋※と進んだ場合の距離を改めて調べてみたところ2キロ(徒歩約30分)ほどだった。一緒に吟行したメンバーは六十代七十代もしくはそれ以上の年配の方がほとんどでみなさんよく歩いたなあと思う。半姓(はんしょう)さんという俳号の方が翌日の句会で「たくさん歩いてごはんがおいしかったです!」とおっしゃっていた。
このあたりを散歩するなら、大手饅頭伊部屋京橋本店(京橋の西)や廣榮堂中納言本店(小橋の東)で甘いお菓子を買うのもいいかもしれない。

※旭川の真ん中には二つの中洲があり、その中洲と両岸を小橋・中橋・京橋の三本の橋が結んでいる。桜並木の南の端が小橋のあたり。

【岡山市北区表町】至高のダルカレー/俳枕DIY(第3回)

春浅しダルカレーは辛くないカレー  石原ユキオ

ダルカレーをはじめて食べたとき、(相対的な)辛くなさに驚いた。ゼロ辛を選んだわけではないのにマイルドでとても食べやすい。スパイスは強く香るのに唐辛子のピリ辛は抑え気味。それ以来インドカレーの店でカレーを選ぶチャンスがある場合には積極的にダルカレーを選んでいる。
クワイエットビレッジはわたしが生まれて初めてダルカレーを食べた店で、そしてここのダルカレーを超えるダルカレーを食べたことがない。ひよこが初めて見たものを親と思い込むように、わたしにとって唯一無二のダルカレーだ。余談だがダルカレーの原料はひよこ豆です。

【岡山市北区後楽園】桜の季節に賑わう大名庭園/俳枕DIY(第2回)

耳石たゆたう回転性の桜かな  石原ユキオ

花・新婦・レフ板・新郎・カメラマン 石原ユキオ

当時三十代だったわたしは、ある日突然それまでの人生で体験したことのないグルングルンの眩暈におそわれた。こういうときインターネットの情報に頼るのはよくない、とは思ったものの、検索してみると「耳石剥離」というのが近いように思えた。もし正解ならば三日ほどで治るらしいので、吐き気に耐えながら仕事に行き、週末は育児中の友達とゼロ歳児ちゃんと三人で花見にも行った。肌寒いが天気はいい。結婚式の前撮りのひとたちが和装でポーズを取っている。
見上げると桜の花が回っていた。
楽しくて、気分は悪くて、景色が美しかった。

【岡山市中区門田屋敷】礼法室のある中学校/俳枕DIY(第1回)

礼法室みんなで雑に障子貼る  石原ユキオ

地元の中学校はわたしが小学校高学年になる頃には窓ガラスがあらかた割れ校庭を原付が爆走し廊下を自転車が行き来するマッドマックス(1979)もかくやの世界となっていた。両親と祖父母と塾の先生に心配されたわたしは中学受験をすることとなり、門田屋敷にある中高一貫の女子校の入試説明会に放り込まれた。パンフレットや過去問をもらい、学校生活や入試の内容についての説明を聞き、そのあとで礼法室という障子のある広い和室に移動して茶道体験をした。お茶菓子はグラデーションのきれいな紅葉の形の練り切りだったのを覚えている。実際にはそこには進学しなかったのだが、もし進学していたら礼法室の障子を張り替える日もあったのだろうか。
「障子貼る」は秋の季語。昔は冬が来る前に障子を張り替えていたらしい。