はばたこうとするから軽い羽毛布団

ベッドがいくつかあって、そのすべてに男がいて、わたしの眠る場所はそのどれかしかないので、なんとなく俳人G氏の布団に入り、キスなどもする。とくにどうこう思っていないひととするキスというのは気持ち悪くも気持ち良くもない。唇が触れている、唾液がちょっと入ってくる、呼吸しにくい、うっとうしい、めんどくさい、わたしは眠い、放っておいてほしい。古い型のノートパソコンが映画を再生している。透明な塩化ビニールを着た女がネオン管のけばけばしく光る路地を逃げ回ってやがて死ぬ。ここは北海道で、北海道から帰るにはショッピングモールから出ているバスに乗ればいいと教えられる。過去から現在にいたるまで世界中の数々の枕辺から洩れた重要機密を、そのために動いた歴史を思うならば、ショッピングモールから出ているバスは信じていい。にんげんの身体はあたたかい。あるいはつめたくても一向にかまわない。
 

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