はからずもデトックス

 

上司のちょっとした一言に憤りを覚え怒りにまかせてミックスナッツを一抱えイッキ食いした夜中に嘔吐を繰り返し発熱し、そのまま数日間寝込んだ。おそらく感染性胃腸炎である。上司の言い方は悪かったが上司のせいばかりではないと思う。もともと体調がよくなかったからいつもならスルーできる言葉に苛立ったのだ。

ものが食べられないと何もできない、まともに歩けない、考えられない、本が読めない、あんなに入り浸っていたツイッターに何も書き込む気にならない。階段は座ったままお尻歩きで三段ごとに休み、ジョージ・A・ロメロの熱心な演技指導を受けたゾンビのような緩慢な動きでゲロ袋を蓋付きゴミ箱に捨て、冷蔵庫から経口補水液を取り出して水で薄めながら飲んだ。

ずっと座っているのはつらいが寝転ぶと背中が痛い。全身が痛い。正岡子規の苦しさがちょっとだけ理解できた気がする。台所から経口補水液を持ってくるだけでこんなに疲れるんだからへちまの水を取る気力なんてないだろうそうだろう。

で、そんな数日を経て徐々に体力は回復したのだが、胃腸炎の前と後ではっきりと変化したことがある。

回復後、おなかの調子が妙にいいのである。

たとえて言うなら以前は駅員が一枚一枚切符に鋏を入れる古式ゆかしい改札口。ラッシュ時は混乱を極めしばしば暴動が起きていた。現在は自動改札が導入されマナーのいい乗客たちが自動改札にICカードをかざしてスルッと通過していく。おわかりいただけるでしょうかこの感じ。サニーナおしりふきに頼らなくても平気になりました。

ちなみに高熱が出たせいか上司に何を言われたのかはすっかり忘れてしまいました。