蛾のくせに蚊取り線香ごときでふらついて蛍光灯をばたばたするので引っつかんで窓の外になげうってやりましたよ。昨晩はねぐるしさの極まりに正座してとても悪夢でした。中身なぞ覚えていないけれど。
界遊004、森安範氏の「はじめての美容院」が読ませる。
ざっくり言ってしまえば、二十代半ばの、若くもないけどトシでもないからこそ焦ってるお年頃のサラリーマンが、初めて美容院に行くだけなんです。
ふだん美容院でなんとなく違和感を感じてることが(←私は美容院にしか行かないにも関わらず)、ちゃんと指摘されていて、あるある、と思う。
幼い頃の理髪店の思い出に阪神大震災が絡んだりする。(あ、語り手はわたしと同世代なんだ、とドキっとする)
語り手の話し言葉が関西弁中心、地の文での語りは共通語が中心で、その温度差みたいなものが面白い。
たぶんわたし、この語り手みたいな男性は少しもタイプじゃない。ぶっとんだ妄想をしてる様子もないし、真面目に働いているようだし、地の文の一人称が「私」だし、結局とてもポジティブな諦め方をするし。この手の男の人もまた、絶対にわたしのことを好きにならないと思う。だからこそ引き込まれる。語り手は自分が特別な何かであることを全く主張しない。(わたしの読み慣れている太宰さんはやたら特別ぶるのに)
この前「地元有名企業の会社員やら公務員やらは好きにならないよね、君」と言われましたが、接点がないうえに向こうがわたしに興味を持つと思えないんですもん。嫌じゃろ。仕事より趣味を優先して世の中にとことん疎くて部屋が汚い二十代後半の女なんて。しかも絶望的に丸顔で寸胴で短足でTシャツGパン運動靴ですよ。デートがいちいち短歌や俳句のネタにされるし。個人情報漏洩もええとこです。
これがある程度年配の男性なら「童顔で小柄でおとなしい夢見る夢子ちゃん」ぐらいに受け取ってくれます。たぶん。
これから、今すぐにでも、自分よりもっと若い人達を踏みつけていくんやと自覚している。金を貯めて、余裕を身に纏って、私のことを過大評価する幼い女の子と寝て。幼かったころと同じように私も怯えながら。
そう、過大評価してもらわなきゃ。